河野太郎大臣がまた面白いことを言いだしたようです。役所に支払う手数料から「印紙」を追放する、というのです。これについては、会社経営者のひとりとして、もし実現するなら、素直に喜びたいと思います。また、野党やメディアがワンイシューで置いてけぼりにされるなか、ハンコ、デジタル庁、印紙と次々に改革に手を付ける菅政権のスピード感はスキャンダル追及を許してくれないようですね。
日本学術会議どころじゃない、すごいスピード感!
「日本学術会議の任命拒否問題についての説明を尽くしていないにも関わらず、次から次へと争点を作るのは、いかがなものか」――。
特定野党や特定メディアの気持ちをあえて代弁すると、そういう愚痴のひとつでも言いたくなるのかもしれません。というのも、日本学術会議側が推薦した候補者のうち6人の任命を内閣が見送っていたとされる問題を争点化しようとしたら、完全にアテが外れてしまったからです。
これについてはジャーナリストの長谷川幸洋氏も指摘したとおり、マスメディアにとって「日本学術会議問題」は「負け戦」です(『長谷川幸洋氏「日本学術会議問題はマスコミの負け戦」』等参照)。
それなのに、マスメディアがいつまでも「負け」を認めず、日本学術会議「問題」を追及しようとすること自体、マスメディア業界がドツボに嵌っている、という言い方をしても良いでしょう。なぜなら、彼らが騒げば騒ぐほど、日本学術会議自身の問題に対する国民の関心が高まってしまうからです。
このあたり、日本の特定野党やマスメディア、さらには韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)政権、中国の習近平(しゅう・きんぺい)政権に至るまで、共通の特徴があるとすれば、それは「思考が硬直化してしまっている」という点ではないかと思います。
要するに、自分の頭の中で描いていた、「日本学術会議問題を追及すれば政権支持率も落ち、菅義偉政権は窮地に立たされるに違いない」といったストーリーが完全に破綻しているにも関わらず、負けを認めることができないのでしょう。
「印紙見直し」報道
さて、ワンイシューで置いてけぼりにされる野党やメディアはこの際放置しておくとして、本稿で取り上げたいのが河野太郎・規制改革担当大臣です。そして、その河野大臣とといえば、「ハンコ廃止」で注目を集めている人物のひとりです。
さりげなく会社経営者でもある「新宿会計士」にとっては、無駄なハンコ手続が多い無能な役所(たとえば日本年金機構とか日本年金機構、あと日本年金機構など)を絞めてくれるのはありがたいという気持ちが強いです。
もうひとつ、個人的な心情を申し上げるなら、定期的に個人情報漏洩事件などの不祥事を発生させる日本年金機構、さっさと解散して職員全員を解雇したら良いのに、という気持ちもあります(※ただ、さすがに法律の改廃を伴う行政機構改革は大臣の一存ではできませんが…)。
こうしたなか、本稿ではこんな話題について触れておきたいと思います。
【独自】次は「収入印紙」 河野大臣が見直しへ
―――2020年11月5日 19:23付 FNNプライムオンラインより
リンク先は、タイトルに「独自」という文言が入ったFNNプライムオンラインの記事ですが、これによると、河野大臣の直轄チームがこのほど、国に納付する各種の税や保険料の手続を巡って、その利便性向上を図るための実態調査を始めたのだそうです。
(※なお、河野氏自身がこの記事を引用してツイートを発信していたため、「飛ばし報道」という可能性は非常に低いと考えて良いでしょう。)
FNNプライムオンラインの記事の内容が、「河野大臣が印紙税法の廃止を検討している」という意味だとしたら、これに関してはちょっと無理があります。なぜなら、くどいようですが、法律の改廃を伴う行政機構改革は、大臣の一存ではできないからです。
おそらくここで言いたいのは、「手数料を納付するのに印紙を貼りつけている事例」のことでしょう。
たとえば、会社経営をしていると、定期的に会社の登記事項証明書や印鑑証明書を取得しなければならない事態が頻繁に訪れるのですが、法務局に直接足を運んで請求する場合、手数料を支払うためには収入印紙を買わなければならず、直接、現金やクレジットカードで手数料を支払うことはできません。
このことを逆手にとって、少し時間があるときには、金券ショップで少しだけ安い値段で印紙を購入する、というテクニックもあるのですが、いずれにせよ煩雑です。
とくに最近だと、社会のキャッシュレス化が進行していますが、収入印紙は依然としてクレジットカードや電子マネーを使って購入することができない商品のひとつです(※ただし、一部のコンビニ等ではキャッシュレス購入が可能であるようです)。
このように考えていくと、いちいち印紙を買わなくても手数料が納付可能、という仕組みは歓迎すべきものですし、おそらく河野大臣が企んでいるのも、印紙税法の廃止ではなく、印紙で手数料を納付させる実務にメスを入れる、ということなのでしょう。
(※余談ですが、最近だと、郵便はがきや切手なども、郵便局であれば電子マネーやクレジットカードで購入できるようになりつつあるようですが、印紙については依然としてほとんどの場合、現金のみでしか購入できないようです。このあたりの利便性も高めてほしいものです。)
国が音頭を取っているのにキャッシュレス決済が進まない理不尽
このように考えていくと、たしかに各種手数料などを印紙で支払うというのは、私たち一般人の社会常識あるいは実務感覚に照らすと、不便ですし、いちいち面倒くさいです。その意味では、河野氏の目の付け所はなかなか面白いと思います。
個人的な希望を申し上げるなら、今までどおり印紙での支払いも可能としつつも、ウェブ決済(とくに電子マネーやクレジットカードなど)にも対応してほしいという気持ちがあります。
そもそも、昨年10月に消費税と地方消費税の税率が引き上げられた際、期間限定でキャッシュレス還元という仕組みが取られていました。当ウェブサイトなりの理解に基づけば、これは国を挙げてキャッシュレス決済を進めようと音頭を取ったものだと思います。
つまり、国が音頭を取っているにも関わらず、公的サービスを受けるための手数料がキャッシュレス決済に対応していないというのは、ある意味では理不尽でもあります。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、余談ですが、キャッシュレス還元に関連し、最近個人的に体験した出来事をお伝えしたいと思います。このキャッシュレス還元、スマホアプリを組み合わせると、なかなか面白いことができるのです。
先日、わりと特徴的な「m」のマークで知られる某ハンバーガーチェーン店に出掛けたときのこと。
例の武漢コロナ騒動以降、同チェーン店が大人気らしく、今日もこの店は大盛況で、店の外にも長蛇の列です。
ただ、ここでふと思いついて、同チェーン店のアプリをスマートフォンに入れていたことを思い出し、それを既読してみたら、いつのまにか「モバイルオーダー」という機能が出現していました。
なんでも、クレジットカードの情報を登録したうえで店に入り、座席を確保したうえで、スマホ上でオーダーを入れて座席番号を入力すると、アプリ上で支払いが完了し、お店の人がその座席まで注文品を持ってきてくれる、という仕組みだそうです(ほかにテイクアウトなどにも対応しています)。
実際にやってみたのですが、これが本当に楽チンなのです。
細かい不満はいろいろありますが(たとえばポテトの塩抜きなど、注文内容の細かい指定ができない、株主優待券が使えない、テイクアウトの場合は店舗到着時間を指定できない、など)、モバイルアプリを使うことによる労力の節約は、これらの不満を補って余りあります。
法務局の登記事項証明書・印鑑証明も、将来的には「スマホ上でキャッシュレス決済」まで行けば面白いのですが、さて、どうなることやら。
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登記関係書類の提出を求められて法務局へ足を運ぶ機会が当方にもあります。数年に一度くらいです。電車で数駅先なのはありがたいのですが、出かけるたびに業務手順が改善されており、到着してから書類を首尾よく受領して立ち去るまで15分掛かっていません。空いている時間帯を狙った行動が功を奏しているからでもありますが、法人印鑑カードのおかげで書類に文字を書き込む手順がゼロになって、時間節約効果は絶大だったと思います。
1.機械に法人印鑑カード挿入
2.本日の要件、すなわち交付を受けたい書類および必要数を指先選択
3.てろてろ出てくる感熱紙を受け取って
4.数メートル歩いて印紙窓口へそれを提示、手数料支払い=現金のみ
5.印紙を受け取って、回れ右するとそこが受領カウンター
6.番号で呼ばれるので感熱紙と印紙と交換で、書類を受領
7.法務局退出
こんなふうになってます。ネットで「予約して」受け取りに行くことも、郵送してもらうことも可能ですが、当方の場合は電車ですぐの距離なので敢えて直接受け取りしてます。
この流れは、歳入庁構想につながりそうですね。
序でに決済手数料のアンバンドル化もお願いしたい所です。
(これが始まると、決済機関の生き残りのバトルも開始されるかも)
免許の更新の時に印紙を買うくらいしか、思いつきませんでした。
私はアナログ派(ただ付いていけないだけ?)なので、電車と新幹線しかICカードは、持ってません。
私も免許更新でしかお世話になりません。
なぜ直接支払いではないのか、未だに謎です。
>なぜ直接支払いではないのか、未だに謎です。
直接支払いを認めれば、免許更新など一般人相手の役所や事務所等で現金を取り扱う事務処理が発生するからです。
民間でもお役所でも現金を取り扱うのは煩雑で余計な人件費を発生します。
ところが収入印紙方式だと個々の事務所で現金を取り扱う必要がないだけでなく、各事務所では一般人相手の金銭の清算処理すらも必要ありません。提出された書類に印紙が正しく貼られているかさえチェックすれば良いのですから。
だから直接支払いを認めないのは向うの側から見れば極めて当然と言えば当然ですよ。こちら側(我々一般人の側)は不便で堪ったものではありませんが。
ありがとうございます。現金取り扱い業務は1か所に集約して、それぞれの窓口では現金を扱わない、という仕組みなのですね。
領収書で良い気もしますが、そこはあの切手みたいな形になるのか…
現金を扱うのがイヤ、ということであれば、印紙(証紙?)もしくはカードのみ可、とするのは合理的に思えます。素人考えですが。
>免許の更新の時に印紙を買うくらいしか、
免許の更新に買うのは「収入証紙」です。
収入証紙は発行する各都道府県にお金が入ります。
免許証の発行者は「各県の公安委員会」なので
手数料は県に支払う必要があるからです。
法務局は国の機関なので手数料は国に支払います。
収入印紙は財務省にお金が入ります。
額面の大きい領収書も発行に国の税がかかりますので
所定の金額の収入印紙を貼り付ける必要があります。
一万円札の足元に及ばない偽造対策なのに
額面十万円の印紙が存在する理不尽。
犯罪の温床でしょうに・・・
ボーンズさま
お金の払い方が問題なのだという視点は重要です。善き心の持主は、不正するつもりはなく、請求対価額が正当で、支払い手段が手軽であるなら、なんでもほいほい買ってくれるものです。
法人銀行口座にデビットカードが持てることは知っていました。001銀行です。そこではないのですが、通帳を排すためにしばらく前にネット銀に口座を作ってみました。実体店舗を持たない銀行です。一度も店頭に足を運ぶことがない口座開設手順に「作為」といいますか「設計」を感じました。
次回法務局へ行く用事があって、もしこのデビットカードで印紙代が支払えるなら、立替払い精算はチャラ、手順消滅です。めでたしめでたし―。
はにわファクトリー 様
遅レスですが、手間を省く事はとても大事です。
(「面倒」というのは、進化のトリガーとなる)
立替払い清算事務がオフィスから一切消滅したら大変な効率向上になります。
いわゆる購買は、法人クレジットカードと法人Amazon口座に切り替えました。monotaRO はこれから使わないかも知れません。産業資材がバンバン買えると分かりましたので。
Amazonダッシュボードの情報一覧性には圧倒されました。すべて Amazon に巻き取られそうな勢いです。Amazon が金融機能に進出するのは時間の問題と思えます。すべてが向こうの側にあるからです。どうやれば現金精算を排除できるか知恵を絞っているところです。キーポイントは記録性&閲覧容易性です。
更新ありがとうございます。
素直に言いまして、印紙は高すぎる(笑)。3万円!え?高ッ。たまに用事で出かけると、窓口のオ◯チャンが暇そうに座ってますね。「あ〜あれだけで1日終わるんか〜。電子マネー使えたら人件費浮くのにな。あの方一人で最低でも4〜500万円かかるのに」と思ってしまいました(笑)。
法務局や警察での、なぜか別にある窓口での収入印紙購入が無くなるなら嬉しい限りです。
市役所などでは普通に現金でやり取りしてますし、窓口が別である意味がないのは明らかです。
しかし、各収入印紙窓口は役人ではなく、特定の業者が担当しているよう見えます。
このあたりの利権者から河野大臣が攻撃されないことを願います。
5万円以上の領収書に対する収入印紙がなくなると手間が減って非常に楽になります、
貼り忘れた所で領収書としての効力が無効にはなりませんが。(過怠税は取られます)
たい 様
>5万円以上の領収書に対する収入印紙がなくなる
たぶん、印紙税法の廃止という話ではないので、無くならないのでは。
>牛人さま
いまでも○○税務署長承認と書式表示しているのもありますね。
なので印紙税はなくならないでしょう。印紙を貼付する必要がなくなるだけで。
つーか、印紙(税納付)を電子化すると、今は非課税となっている電子契約が課税化されるのではないかと…これなら国税庁もニコニコで反対しないでしょう。河野さん、恐るべし!
>みったぁ 様
>非課税となっている電子契約が課税化
非課税根拠が通達なので、法改正をせずにできますから、ありえない話ではないですね。
ただ、ペーパーレスの推進にはなりませんし、実務的にどう取り締まるかの問題もあるので、しばらく先ではないでしょうか。
>牛人 様
ペーパレス推進のインセンティブが確保されればいいと思います。
つまり、紙での取引には炭素税(予定)を加算すればいいのです。ついでに暫くは移行期間として電子取引への印紙税を軽減適用すれば…
紙での印紙もどれだけ把握されているのでしょうか。私見ですが、認証の関係で電子の方が把握されやすいと思うのですね。
>みったぁ 様
>ペーパレス推進のインセンティブが確保されればいい
それは、全くもって然りであります。
>紙での印紙もどれだけ把握されているのでしょうか。
やはり、目で見ている分ではないかと。
>認証の関係で電子の方が把握されやすい
電子の方とは、電子取引の事ですよね。
う~ん、電子認証の有無で電子取引の法的効力が変わるのか、という問題(電子認証がなくても法的拘束力が生じる場合がある)や、
電子書面の複製も課税文書に該当するのか、という問題(電子書面は複製が容易すぎる)(契約書を複数枚作る場合と契約書をコピーする場合のような区別ができるか)がありそうです。
そもそも、電子認証は商慣習としてどうなのかという事もありますので、まずは、電子認証の位置づけをハッキリさせてからではないでしょうか。
電子認証自体の把握は容易でしょう。
電子契約書,電子領収書,無通帳口座など,印紙税のシステムがデジタル化についていかなくて,税収が減っていることを財務省が気にしている可能性はあると思います。ただ,財務官僚の能力だと,それに対応するのは難しい気がします。あと,国際取引の契約書も形態によって印紙不要なので,そのあたりを抜け道に使うこともできます。
登記手数料という趣旨は分かりますが、領収書など取引に係る印紙税というのは何なんですかね?
これを支払ったからと言って、取引上のトラブルに対して政府が保証・補填してくれるわけでもなさそうですし、消費税や法人税などとの2重課税の様にも思うんですが。
>門外漢さん
取引税。
法人税は儲けに対するものですし、消費税は最終消費者に対する利用税をインボイスで受け渡すものでは。
商取引すなわち経済活動全般を対象とした間接税だと思っています。
みったぁ様
牛人 様
ご教示有難うございます。
でもこれが無くなったからと言って、経済が滞るってものでも無いんでしょう?
むしろ無ければ企業にとっては減税になって、それなりの効果があると思うんですけどね。
印紙の廃止じゃなく、印紙税の廃止にまで踏み込んでもらいたいと思ったもので書いてみましたが。
門外漢 様
>印紙税というのは何なんですかね?
印紙税は流通税と呼ばれる租税のカテゴリに該当します。
流通税は、登録免許税や不動産取得税など、経済取引に課税する租税です。
経済取引をしているのだから、担税力があるのだろうという事です。
歴史のある税なので、詳しくは参考URLをどうぞ。
雑にまとめますと、取れる所から取れる税なのでずーっと続いている、です。
私見ですが、高額の契約書に高額の印紙が必要なため、
架空契約の偽造を防止する効果があるのではと思っています。
参考
フランスにおける流通税の歴史
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/backnumber/journal/11/pdf/11_01.pdf
毎々の執筆、ありがとうございます。
昨晩の河野太郎大臣の呟きで収入印紙にメスを入れることは存じていましたが、契約書や注文書等に収入印紙を貼る手間などが削減できるようになるのは、大歓迎です。
ただ
それと同時に危惧しているのは、デジタル庁開設と関連するのですが、電子契約(FAX等を利用した電子取引やメーカー指定ソフトを利用した注文取引)に対するデジタル課税が始まるのかな?と考えました。
今現在では電磁的記録物は非課税ですが、それらを利用した取引は増加しており、徴税主義の財務省が見逃すとも思えず、収入印紙見直しで課税対象に加えるのではないかと考えた次第です。「払ったよ」というのを何で証明するか、悩みどころではありますが。
失礼致しました。
現金を扱うとなると、レジ打ちが必須になりますかね。
現金の扱いは、結構、デリケートです。衛生面も含めて。
パターンを絞れるのなら、印紙というのはそれなりに便利だと思います。
まあ、代替手段もあるとも思いますが。