日韓議連という組織があります。正直、この組織の幹部は韓国側の韓日議連との合同総会に合わせて実施された竹島付近での軍事演習などに毅然と抗議の声を上げなかったほどのポンコツぶりですので(『能天気過ぎる日韓議連の共同宣言と自民党内の韓国への怒り』等参照)、個人的にはその存在意義を大いに疑っているのですが、韓国側でも事情は似たようなものであるようです。
日韓関係は韓国側が壊した
現在の日韓関係が「良いか、悪いか」と問われれば、「良い」と答える人は少数派だと思います。
2015年12月28日に、当時の安倍政権下の岸田文雄外相が、韓国の尹炳世(いん・へいせい)韓国外交部長官と取り交わした「日韓慰安婦合意」を巡っては、朴槿恵(ぼく・きんけい)政権が倒れ、文在寅(ぶん・ざいいん)政権が発足すると、事実上、反故にされてしまいました。
日本政府側は慰安婦合意に基づき、すでに10億円という資金を韓国側に支払済みなのですが、韓国側はソウルの日本大使館前の慰安婦像問題を適切に解決するという約束を、いまだに果たしていないにも関わらず、です。
また、2018年10月30日と11月29日には、あいついで、日本企業が「戦時中、強制徴用された」と自称する者たちに対し、韓国国内の裁判で敗訴して損害賠償の支払を命じられました。もちろん、こんな判決は1965年の日韓請求権協定に違反しています。
次に、日本政府は韓国における輸出管理に不適切な事例があったなどとして、2019年7月1日には韓国に対する輸出管理を厳格化・適正化する措置を発表すると、韓国側は勝手にこれを自称元徴用工判決問題などへの経済報復だと決めつけ、対抗措置を講じました。
具体的には、「日韓GSOMIA」と呼ばれる日韓間の軍事情報共有に関する協定を一方的に破棄すると宣言したり、日本を世界貿易機関(WTO)に対して提訴したりして、国際社会に対し、大々的に日本の不当性を宣言したのです。
つまり、韓国という国は、約束をしても、条約を結んでも、自分たちの都合で勝手にそれらを踏みにじってくるわけであり、そんな国が「法の支配」という日本が重視する価値観を共有しているとはいえません。
さらには、2018年12月には韓国海軍駆逐艦が日本の海自哨戒機に火器管制レーダーを照射するという事件も発生しましたし、2019年2月には当時の国会議長が現在の上皇陛下を「日王」、「戦犯の息子」などと侮辱したという出来事もありました。
日本が譲歩する?まさか!
ただ、冷静に考えていけば、これらはすべて韓国側から仕掛けられたものばかりであり、日本として何の落ち度もありません。このため、日本が日韓関係を「改善」するための何らかの積極的なアクションを起こすとしたら、従来型の思考に基づけば、日本が韓国に対して譲歩する以外に方法はありません。
慰安婦問題については韓国側が納得いくまで再交渉し、韓国がもう良いというまで首相が謝罪し、賠償金を支払うべきでしょう。自称元徴用工問題に関してもまったく同じで、韓国がもう良いというまで日本側が謝罪し、賠償しなければんりません。
また、日本が韓国に対して適用した輸出「規制」についても白紙撤回(?)しなければなりませんし、火器管制レーダー照射を巡っては日本側がむしろ低空威嚇飛行したことを、韓国に対して謝罪しなければなりません。
さらに、上皇陛下に対する侮辱問題についても、私たちの側に過去の植民地支配という落ち度があると納得しなければならず、韓国に対しこの問題を追及することを控えなければなりません。
「日本が韓国に譲歩すべきだ」と主張する人は、究極的には、こういうことを言っているのです。
いまから一世代か二世代前であれば、日本の側にもまだ朝鮮半島統治時代に教育を受けた人たちが政界、財界、官界などに残っていましたし、韓国側にも日本式の教育を受けた人たちが現役世代に残っていました。
その時代に、日韓がなあなあで矛を収めるということは、べつにおかしな話ではなかったのかもしれません。しかし、現代の日本において、日本政府が原理原則を捻じ曲げて韓国に譲歩するという姿勢を取れば、国民世論がそれを許さないでしょう。
普段から当ウェブサイトとしては、現在の日韓関係を待つ「落としどころ」は、次の3つしかあり得ないと考えています。
日韓関係「3つの落としどころ」
- ①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することで、日韓関係の破綻を避ける
- ③韓国が国際法を破り続け、日本が原理原則を貫き続けることで、日韓関係が破綻する
このうち②の選択肢については、韓国が「やりすぎた」ことにより、もはや日本としては絶対に取り得ないものであることを、そろそろ日本の政界関係者としても認識しなければならないのではないでしょうか。
日本語が喋れるから日本と外交ができる、というわけでもないだろうに
こうしたなか、なかなか難しい外交を正面から突破するのではなく、「議員外交」などのチャネルで解決しようとする動きがあることは確かでしょうし、これはべつに日本に限った話ではありません。ただ、日韓間は政府間外交だけでなく、議員外交も難航しているようです。
日本側の日韓議連といえば、2018年の年次合同総会の日程に合わせて、韓国側が竹島付近で軍事演習を実施していたにも関わらず、それにきちんと抗議の声を上げなかったという「ポンコツ組織」です(『不誠実な韓国政府と無能すぎる日韓議連 議連総会は期待外れ』等参照)。
しかし、そうした「ポンコツ」のカウンターパートは、やはりポンコツではないかと思います。というのも、発想が明らかにズレているからです。そうした様子をうかがうことができるのが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載された、次の記事でしょう。
韓経:行き詰まる対日議会外交…本格稼動するか
韓日議員連盟が来月に定期総会を開き新たな幹部団の人選を公式化する。菅義偉首相就任後に韓日間の対話ムードが醸成される中で、対日議会外交も本格稼動する見通しだ。<<…続きを読む>>
―――2020.09.29 07:30付 中央日報日本語版より
タイトルに「韓経」とありますので、おそらく元記事は韓国経済新聞のものだと思います。これによると韓国の韓日議連は、代表に「ともに民主党」の金振杓(きん・しんひょう)議員、幹事長に「国民の力」の金碩基(きん・せきき)議員を内定、来月6日の総会で正式に選出するのだそうです。
韓経によると、韓国側の慣例では、会長は与党議員、幹事長は最大野党から選ばれていたのだそうですが、会長だった姜昌一(きょう・しょういち)元議員が政界を引退して以来、議連会長が空席となっており、また、野党議員でも幹事長を務められる人物が見当たらなかったため、選任が遅れていたそうです。
ちなみに金碩基氏が選任された理由は、東京で駐在官を経験し、2011年には駐大阪総領事を務めるなどしたことがあり、かつ、日本語にも堪能だからだそうです。
ただ、「日本語に堪能」だからといって、「日本側と話ができる」というものでもないでしょう。「相手が何をしゃべっているか、文法的にわかる」ということと、「相手と真意を通じあう」ことは別だからです。
いずれにせよ、中央日報によると、この議員外交は11月以降本格始動するのだそうですが、日韓議連自体が日本側でも事実上、有名無実化しつつある中で、議員外交というチャネルも壊死していくのかどうかが見物だと思う次第です。
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独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(なにしろ、韓国メディアと違って自分は間違う存在であると自覚しているので)
韓国メディアとしては、日韓関係が改善する(?)という根拠として、韓日議連の新幹事長が日本語が得意であるということしか、見つけられなかったのでしょう。
駄文にて失礼しました。
>現在の日韓関係が「良いか、悪いか」と問われれば、「良い」と答える人は少数派だと思います。
現在の日韓関係は「これで良い」と思います。韓国がしつこく絡んでこなくなれば「より良い」です。更なる疎遠化を希望します。
言葉が通じても会話が成立しないと意味がありませんね。
そう言えば、どこかの外交部長官は英語の通訳だったとか・・・
イーシャ 様へ
>外交部長官は英語の通訳だったとか・
さぞかしポンペイオ長官とは肝胆相照らす親密さなんでしょうなあ。裏山椎。
そういえば、新宿会計士様が先に取り上げていたマイケル・グリーン氏は日本語にも堪能だとか。それであの寄稿記事ですからね。
外国語ができるからって、エラいわけじゃないんだぞぉ!(学生時代壊滅的だったらしい)
お前らの価値観ではなく、海洋国家共通の価値観で会話できない限り、会話する意味なしかと。
日韓関係は良いかと訊かれたら、価値観を共有しない関係が壊れるだけなので良いと自信を持って答えられます。
>韓日関係に進展があるだろうという期待が大きくなる
韓日関係を進展させたいなら、日本が何を求めているのかを理解しなきゃいけないはずなのに、そういう考察もなく、良く期待が持てるものだと、感心すらするのです♪
>「相手が何をしゃべっているか、文法的にわかる」ということと、「相手と真意を通じあう」ことは別だからです。
ほんと新宿会計士様のおっしゃるとおりだと思うのです♪
康京和は英語が堪能なので韓米同盟はバッチリですねヤッター。
まぁ相手国に明るい人間の方が期待感が高いのは、一般論としてはあるでしょう。とはいえソンウジョンのように東京生活をした上で結局日本の空気を読めなかった御仁も居るし、日韓関係の場合は真の知日派ほど匙を投げていると思いますが……
うちの政府は絶対に譲歩せず、
例え米国からどんな圧力があろうとも屈せず、
原則原理を押し通してくれる!
そんな風に信じる事が出来たなら、どんなに良い事でしょう。
日韓議員連盟は日韓の未来の「真の敵」
韓国が問題を起こせば、彼ら議連は官邸に
「これ以上の追及をするな」「早期解決を図れ」
と働きかける。
それが韓国をのさばらせ、日韓関係を異質なもの
にしてきた。日本の外交にとっては不必要存在、
日韓議員連盟の解散と、額賀、河村の
ような議員は選挙で落とすしかない
何を持って日韓関係の破綻とするか?
多分日本と韓国とはこれすらも考え方が違う気がする。
日本政府は今まで韓国政府、および韓国人、在日韓国人に対して数々の優遇を与えてきたと思う。
まずこれを無くして欲しい。
あと韓国は今経済的破綻の危機にある。
今までのように助けないでほしい。韓国人の就労ビザも出さないでほしい。犯罪率が高いから。
反日国認定をして反日国だから○○しない、できないと突っぱねてほしい。
言葉は通じても、話が通じないのが問題なんですよね。
カズさま
言語は、関係無いですね。
思考回路の方が、重要。
改善の期待が高まっているのは嘘。
日韓両国民とも、改善の必要無しが大半。
高まっているのは、韓国政治家の日本側の譲歩への期待だけ。
だんな様
そうですね。認識が大事ですね。
それがないから前後の脈絡に関係なく、大丈夫です。いいです。構いません。結構です。・・なんて日本語的な言い回しは、ご都合主義で解釈されてしまうのだと思います。
*対韓交渉においては「さらなる曖昧さの排除」が必要だと思っています。