昨日の『日韓関係悪化:米国の責任に言及しないグリーン氏』では、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に先週金曜日付で掲載された米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級副所長であるマイケル・グリーン氏の寄稿記事を「極めて無責任だ」と結論付けました。これについては読者の方から中央日報英語版ウェブサイトに記載された原文と思しき記事を紹介していただいたのですが、その原文を読んだうえで、改めて結論は同じであると申し上げておきたいと思います。
目次
読者コメントに感謝!英語版の原文
昨日の『日韓関係悪化:米国の責任に言及しないグリーン氏』では、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に先週金曜日付で掲載された『菅義偉時代でも韓日葛藤解決は難しいもよう』という記事について紹介しました。
これは、米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級副所長であるマイケル・グリーン氏が寄稿したとされるものですが、「韓日両国は小さな事案から少しずつ協議を詰めていくときだ」などとするもので、当ウェブサイトは「韓国の不法行為を『日韓どっちもどっち論』に落とし込む、極めて卑劣で無責任な論考だ」と結論付けました。
ただし、これについてはグリーン氏の英語版の原文を読んでいないので、「あくまでもグリーン氏が本当にそのように主張したのだとすれば」、という限定がついています。
こうしたなか、Hitomi様という読者の方から、中央日報英語版に掲載された記事を紹介していただきました。それが、次のリンクです。
Japan’s new prime minister
With the selection of Suga Yoshihide as prime minister of Japan, could there be a change in Japan-Korea relations? Suga’s nickname is “Mr. Fix It,” but before considering whether he can fix the troubled Japan-Korea relationship, we have to remember how many constraints he faces at home and in Seoul.<<…続きを読む>>
―――2020/09/24付 中央日報英語版より
記事タイトルは日本語版と英語版でずいぶんと異なっていますが、おそらくこれが、昨日紹介した記事の原文なのでしょう。とうのも、文章の構成が(まったく同じではないにせよ)非常に似ているからです。ためしに、上で引用している記事の書き出し部分を、日本語版と比較してみましょう。
「菅義偉首相は韓日関係に変化をもたらすだろうか。彼のニックネームは『解決者』だ。しかし韓日葛藤の打開は期待しにくい。」
ずいぶんと意訳されていますが、だいたい同じような内容が記載されていることがわかります。
お詫び:「菅氏のニックネーム」は事実でした
さて、ここでひとつ、お詫びをしておきたいと思います。昨日は日本語版の「彼のニックネームは『解決者』だ」の部分、「そんなニックネームを寡聞にして知らない」と申し上げましたが、これについては事実誤認があったからです。
「彼のニックネームは『解決者』だ」の部分、原文では “Suga’s nickname is ‘Mr. Fix It’.” とあります。
英語版のニューズサイトなどを調べると、たしかにこの “Mr. Fix It” はいくつかのメディアで使われていることが確認できます(たとえば米ワシントンポストの9月1日付の “Japan’s ‘Mr. Fixit,’ Yoshihide Suga, set to succeed Shinzo Abe as leader” など)。
ここで “fix-it” とは通常、「直す」「修正する」、「解決する」などの意味に加え、「修理屋」という意味で名詞的に使われることや、「調整・調停・改善」などの意味で形容詞的に使われることがあるようで、辞書で調べると “fix it up with” は「人と話を付ける」とあります。
さらに、 ”it” を省いた “fix” に “er” を付した “fixser” には「取りまとめ役」、「仲介者」という意味に加え、「事件のもみ消し役」など、何らかの「悪だくみ」を行う人、という意味が生じることもあるようです(フィクサーは日本語にもなっています)。
いずれにせよ、「解決者」という訳語が適切であるかどうかは別として、少なくともワシントンで “Mr. Fix It” が菅総理のニックネームとして使用されている実例があるというのは事実であり、この点は自身の不明を恥じたいと思います。
なお、どうでも良い話かもしれませんが、菅総理の表記が “Yoshihide Suga” ではなく “Suga Yoshihide” となっているのは、河野太郎氏の功績でしょうか?(『シンゾー・アベじゃなく、アベ・シンゾーと呼んでください』等参照)。
日本語版記事は「誤訳」ではなく「雑」なだけ
さて、このグリーン氏の主張、英語で読んでいくと、日本語版といくつかの違いがあります。
たとえば、日本語版の
「韓国大法院は1965年韓日請求権協定で強制徴用被害者の損害賠償請求権が消滅していないという判決を下した。日本政府は一方的な協定廃棄は国際法違反だとしている」
という記述は、英語版では次のように記載されています。
“The more complicated problem is the Korean Supreme Court ruling that Korea’s Constitution takes precedence over the 1965 normalization treaty with Japan, and therefore claims can be brought against Japanese firms by Korean plaintiffs. Tokyo’s position is that the 1965 treaty was signed by two sovereign governments, and to rescind it unilaterally violates international norms and legal precedent.”
あながち間違いではありませんが、ずいぶんと省略されてしまっていますね。もし原文にそって、もう少し精緻に翻訳するならば、
「問題をさらに複雑にしているのは、韓国の憲法が1965年の日本との国交正常化による条約に優先するとする判決を韓国大法院が下したことだ。したがって、これによって韓国の原告が日本企業に対し債権の請求ができることになった。これに対し日本政府は、1965年の条約は2つの主権国家が署名したものであり、これを撤回すること自体が国際的な規範と判例に反するものだとの立場を取っている。」
などとすべきでしょう。また、原文にある
“Japan and Korea are also the two countries in Asia most closely aligned on questions of democracy and maintaining an open-rules based order.” (※意訳「日韓両国はまた、アジアにおいて民主主義の問題と開かれたルールベースの秩序の維持という点で最も緊密に同盟している」)
という文章で始まる段落にいたっては、丸ごと欠落しています。
ちなみにこの段落では、「韓国側の指導者は1965年の日韓請求権協定などについては韓国が民主化する前に締結されたものである点を問題視しており、その意味からも協定の再交渉が必要だと考えている」、といった記述が含まれています。
ほかにも英語の原文の記述が日本語化に際して欠落しているくだりがいくつもありますし、誤訳とまではいかないまでも、グリーン氏の主張のニュアンスが伝わり辛い箇所がいくつか見られます。要するに、翻訳が雑なのです。
やはりグリーン氏の論考は卑劣で無責任だ
ただし、上記を勘案しても、やはり昨日指摘した、「グリーン氏の論考は卑劣で無責任だ」という結論を撤回することはありません。なぜなら、原文においても、グリーン氏は韓国の行動の無責任さをきちんと指摘しておらず、これを「日韓どっちもどっち」論に矮小化しようとしているからです。
あらためて繰り返しますが、2015年12月の日韓慰安婦合意は、事実上、米国が後ろ盾となって結ばれたものであり、その履行の責任は第一義的に日韓両国にありますが、米国としてはその履行を見届ける義務があります。無関係を決め込むことはできません。
事実関係を述べておくならば、慰安婦合意で謳われた「安倍晋三総理大臣(当時)の謝罪と政府予算からの10億円の資金の拠出」という日本側の義務は果たされていて、これに対し、「大使館前の慰安婦像の問題を適切に解決する」という韓国側の義務は果たされていません。
それどころか、文在寅(ぶん・ざいいん)政権は2017年12月ごろ、慰安婦合意を巡る交渉の文書などを勝手に公表してしまいましたし、みずからが約束した慰安婦財団を、2019年7月頃までに一方的に解散してしまいました。
グリーン氏が米国の国際戦略に従って日韓関係を議論している以上、この韓国政府の合意違反行為に、無関係・無関心を貫くことは許されません。
また、2018年10月と11月に下された大法院判決が、日韓請求権協定に違反した状態を生み出していることについても、グリーン氏はあたかも第三者的な視点で「日韓双方に言い分がある」かのような言い方をしていますが、これも大変に卑劣で無責任な態度です。
ここで重要な点は、国内で政権が交代したからといって、以前に交わした国際条約を反故にして良いわけではない、という点であり、これが日韓問題だけではなく「韓国による戦後秩序への挑戦でもある」という点を指摘しない時点で、「ルールベースの秩序」を大事にする米国の論客とは思えません。
日韓関係ではなく米韓関係
もちろん、グリーン氏の論考はテーマが「菅総理の就任に伴う日韓関係」である点に加え、これ自体が韓国メディアに寄稿されたものであるという時点で、グリーン氏が韓国にかなり配慮しているという可能性は否定できません。
しかし、グリーン氏の論考で十分に指摘されていないのは、韓国が米韓同盟自体にコミットしておらず、米中間で曖昧さを保持しているという問題点であり、また、韓国が日韓関係を壊そうとすれば、それにともなって米韓同盟も壊れるかもしれないという問題点です。
米国が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想は、もともとは日本の麻生太郎、安倍晋三両総理らが提唱した概念ですし、「日米豪印のクアッド」という構想は、まさに安倍総理のいう「セキュリティ・ダイヤモンド」そのものでしょう。
そして、米国の対中包囲網に乗ろうともしないことと、自分勝手な「韓国流法解釈」で日本との関係を壊そうとしていることは、じつは根っこの部分ではまったく同じです。要するに、米韓同盟へのタダ乗りという問題に加え、土壇場で米国を裏切って中国側に着くかもしれないという彼らの行動こそが問題なのです。
その意味で、韓国の対日不法行為を「日韓どっちもどっち」論に落とそうとする姿勢は無責任なだけでなく、米国自身にとっても大変に危険でもある、という点については、申し上げておきたいと思う次第です。
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「ウリは民主化したんだから以前の条約は re-arbitrate されなければならないニダ」
とか戦後秩序に対する重大な挑戦でさえ、
韓国人はこう言ってるよー(ボクが言ったんじゃないよー)、
二人で仲良くしてねー(アメリカは関係ないよー)。
とか何傍観者ヅラしとんねん。
英語版も十分卑劣で無責任ですわー。
…あれ? そういえば韓国は仲裁委員会 (arbitration board) から逃げてるよね。
その席で堂々と言えばいいのに。
韓国新聞への寄稿ということで、敢て苦言ととられる言辞は避け、日本新首相がどんな政治家なのか解説し、韓国に助言をしたという体裁ですね。ですから当然、我々日本人(現在の日韓間の行き詰まりは韓国が一方的に招いたと考える)の立場からすれば韓国側に肩入れした主張に見えるということです。とはいえ、日本側の主張や客観情勢もそれなりに書いてあり、それほど偏っているようにも見えません。ということで、この論一つを取り上げどうこう言っても仕方ない気がします。
更新ありがとうございます。
またHitomi様、中央日報英語版をお知らせしていただきありがとうございます。
ほらね!昨日はグリーン氏を擁護するコメントや新宿会計士さんが前からグリーン氏が嫌いだーーとか言ったご意見もありましたが、英語で訳しても、ホンネは「日韓お互いに協議を」で韓国紙は「雑」な編集なだけ。でもこんな人が日米韓のスペシャリストだとは、情けないハナシです。
私は前からこのグリーン氏の発言は、いつも韓国寄りだったと記憶しています。「どっちもどっち」なんてあり得ない。本当に朝鮮戦争前から現在に至るまで、米国がどのようにかかわり、マズイ所は日本に押し付け、出来るだけ米国は直接関わらないようにして来たのが、分かってるでしょうに。
2015年12月の慰安婦合意はバイデン氏が押した。日本はすべての決定事項を履行した。韓国はまったく動かない。米国はその履行を見届ける義務があります。強く出なければ韓国はうやむやで済ます。米国は無関係を決め込むことはできませんよ。
全く、新宿会計士様の言われる通りだと思います。
マイケル・グリーン氏は、まず、「問題をさらに複雑にしているのは、韓国の憲法が1965年の日本との国交正常化による条約に優先するとする判決を韓国大法院が下したことだ。したがって、これによって韓国の原告が日本企業に対し債権の請求ができることになった。」と、事実だけを述べて、この韓国大法院判決が、国際法に照らして適法か違法かという点について、自身の判断を示していません。
「韓国の憲法」とは、大韓民国憲法前文の「悠久の歴史と伝統に輝くわが大韓国民は、3・1独立運動(1919年)により建設された大韓民国臨時政府の法統を継承する」を指し、大日本帝国による併合は不法・無効との主張を意味すると思います。
しかし、日韓両国とも締約国である「条約法に関するウイーン条約」第27条は、「当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。」と定めており、これに違反することは明白だと思います。
また、「韓国側の指導者は1965年の日韓請求権協定などについては韓国が民主化する前に締結されたものである点を問題視しており、その意味からも協定の再交渉が必要だと考えている」というのも事実ですが、これについても、こうした考え方が国際法的に妥当かどうかという点について、自身の判断を示していません。
マイケル・グリーン氏が、国際法を知らないはずがなく、自身の判断を正直に書いてしまうと、中央日報に掲載されず原稿料が貰えないのでしょうが、「米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長」という肩書で執筆する以上、無責任であると言わざるを得ません。
日韓慰安婦合意については、米国が仲介し、その実現に大きな役割を果たしたことを、マイケル・グリーン氏が知らないはずがありません。これについても、自身の判断を正直に書いてしまうと原稿料が貰えないのでしょう。
(日本の産経新聞が依頼すると、自身の判断を正直に述べるのかも知れませんが。)
日本としては、このように無責任な論考は気にせず、国際法に基づき、粛々と対応していけばよいと思います。
原文はまだ読んでませんが、まあ、マスゴミのよくあるやり方ですね。第三者的立場と思われる人物に都合の良い文章を書かせる。それが外国人なら、対象国言語に翻訳する際、更に都合よく改変する。憶測ですが、韓国語版記事が存在するなら韓国世論に受けが良いようにさらに改変されていることでしょう。
先の文は日本人向けに改変したものなのである程度は日本でも受け入れられると思った内容にしてあったのでしょうけど、考えが甘い。日本人はそんなの受け入れられない、論外ですね。
国と国との約束を守れ、としか言いようがないですね。
そんなにマイケルグリーンの言ってることに不満があるのなら直接言ってみれば良いと思うよ。CSISはメール、FAX、TEL、全部公開されてるよ。マイケルグリーンの個人アカウントでも良いと思うし。日本人しか見てない場末のサイトで無責任だとヒソヒソ話して何になるのか。マイケルグリーンに近い日本の国会議員とかにあたっても良いだろうし。
意見を表明する意図は、その意見で相手を動かすという直接的な目的であることもあるでしょう。匿名様のご指摘はこの面のことを示唆されているのだと推測します。
ただ意見表明にはその他にも色々な目的があり得ます。自分の意見に賛同が集まるかどうか一石を投じてみる、反対意見を募って自分の意見のブラッシュアップに役立てる、別な意見に出会って違う観点を得る、丁々発止の知的刺激を楽しみたい、等々。匿名様はこちらの可能性を排除してしまっているように思われます。
そんなに新宿会計士様の言ってることに不満があるのならコテハンで言ってみれば良いと思うよ。
匿名様
ここのサイトを見てるのが、日本人だけとは限らないですよ。かなり以前ですが、韓国人らしき人(若い人)から、たどたどしいが日本語で会計士さんにメッセージが来てました。暇なら探して下さい。
会計士さんの考え方に「そうではない」と、韓国のネイティブな方のご意見だったように記憶してます。発信元も日本じゃない。
でも文章の内容よりも、「よくここまで頑張って投稿してくれたな」と感心しました。だから、それ以外にも何処の国の人が読んでるか、日本人だけと決めるのは貴方の早合点です。
それと「日本人しか見てない場末のサイトで無責任だとヒソヒソ話して何になるのか」と言う発言、許し難き(笑)。場末などと仰る貴方こそ、投稿やめたら?サイトが穢れます。HN付けないでボロクソに言うのはやめて下さい。
私は「匿名」でしかエラソーなことを言えないチキンを相手にするのは止めました。どうせ、ピンポンダッシュと同じで、「わ~い、言ってやった言ってやった、オレって賢い」と一人悦に入ってるだけなんだろうと思うので。
ただ、まあ、あまり閉鎖的になるのも善し悪しですわな。
世の中には変態が多いとしみじみ感じます。このサイトにもよく出没しますね。
①ピンポンダッシュがお好き
②リアル捨てゼリフのバイキンマンな人
③道場破り?
④自らプロレスのヒール役をかって出る奇特な人
たまに同一人物かなと思ったりします。しかし誰でも初めは匿名から入るのかもしれませんね。
設定上で匿名(無HN)投稿がありになっているのは、新宿会計士さんがそういうピンポンダッシュみたいな意見も吸い上げようというお考えだからでしょう。生あったかく見守っておきましょう。
ちなみに、上記は丁寧語を使わないいつもの匿名氏ですかね。
コテつきだろうが匿名だろうが
陰湿な性根が透けて見えるのがココでキャンキャン喚いてる人たちの特徴ですかねw
議論なさりたいのなら、冷静にかつ堂々と記述されればよいと思います。陰湿だとかキャンキャン喚いているとか、そういう不必要な煽りを入れるのは、議論の障害になります。
議論をしたいわけでもなく、他を謗って満足したいだけなのなら…貴方は熱烈な立憲民主党支持者に違いない。
fixには「直す・調停」するということですが、「(ペットを)去勢する」という意味もあります。不要なものを取り去って状況を安定させてもfixedです。
J島とK半島の間にKBという橋があったとして、その橋がたわみ始めて通行が危険となったとします。それでも渡ろうとする者が多数いるならば、通行制限をかけることもfixですし、危険防止のために橋を解体撤去してもfixと言えます。グリーン氏の意図するところとは正反対かもしれませんが。
以下の文章は私の勝手な想像であり、米国をかなり悪者にしてしまっていることを最初にお断りしておきます。
太平洋戦争後、米国は戦争への反省と(おそらく)復讐心をもって、日本の軍備と闘争心を折りにかかりました。東京裁判史観、平和憲法、再軍備禁止、戦前の価値観否定、アメリカン・ウェイ・オブ・ライフの顕示、等々。朝鮮戦争によってそのプランは早々に方向転換を余儀なくされましたが、それにより不足した対日抑圧を補う足枷として、米国は生まれて間もない韓国を、日本の足を引っ張る位置に据えたのではないでしょうか。
分割統治の根幹は、被統治者が団結しないように、グループ同士の反目を煽ることです。そのために使われるのが「不公平」です。韓国を優遇し日本を冷遇することで、日韓の連帯を未然に防ぐことができます。中国が巨大化する前のアジアにおいて、日本は米国の主要な同盟国であり最大の競合貿易国でした。米国視点では日本へ直接圧力をかけることに加えて「思い上がった日本に韓国という重荷を背負わせる」ことはいいアイデアだと思えたのでしょう。
米国の圧力に日本は退きました。米国の矯正によって、もはや戦闘国家ではないのです。商業>メンツです。日本はその後、米国と競合するのではなく、協業する方向へ舵を切ったように思えます。韓国への弱腰や度重なる譲歩も、米国の肝いりだとすると、ある程度納得できるのです。
「計画通り」米国はほくそ笑んだかもしれません。
いやいや、非常にまずい誤算がありました。韓国の勘違いです。韓国は上記のような国際力学を理解せず、政策的に優遇された境遇であるというのに、自国は日本の上位存在だと思い込みます。米韓は血盟関係で、米国は韓国の横車を常に許してくれるという甘えを肥大させてしまいました。日本に対する番犬のつもりが、狂犬に育ってしまったのです。
米国がこのことに気づき始めたのは、ここ10年くらいのことかと思います。オバマ後期・トランプ政権と安倍内閣の時期、朴・文大統領の時期になります。これは中国が日本を抜いてGDP世界2位になった時期とも重なります。対日から対中に切り替えるべく、米国は暴走する韓国にブレーキをかけて日本と協力させようとします。しかし肥大した甘えは分不相応な自負心となり、韓国はコントロール不能なまま、伝統・本能に従って中国の膝下へ行く動きや従北の構えまで見せます。ここに至って米国も日韓不公平待遇を改め、日本を矢面に立てて、あるいは直接に、韓国へ圧力をかけることにしたのです。
グリーン氏はこの新しい流れに乗れていないのだと思います。あるいは新しい流れを知りながら、狂犬の扱いに怖れを抱いて、忠犬である日本になんとかしてくれるよう泣きついているという見方もできます。知らんがな。
もし上記の妄想が正しくて、日韓は米国の思惑に乗って嫌韓・反日になっているのだとしても、結果オーライだと思います。米国の示唆があろうとなかろうと、日韓の価値観は相性が悪すぎて協力関係は築けません。そのことをここ十年で日本人はつくづく思い知ったことでしょう。
私は、感情によって嫌韓となるよりは、理性によって嫌韓となることが日本にとって益だと信じています。日本人のネガティブな感情は長続きしません。燃え上がって消えてしまう熱い怒りではなく、永久凍土のような不動の冷たい論理によって、韓国に対処したいものです。「韓国のバーカ!」と叫んで鬱憤を晴らしても、不毛です。
> 自国は日本の上位存在だと思い込みます。
これを除き同意します。朝鮮人は李氏朝鮮時代から日本を蔑んでいました。高麗も、元に日本征服を提案したことからも反日性向が窺えます。
中華思想に染まり、朱子学に染まり、宗主国様から東方礼儀之国と呼ばれて嬉ションを漏らし、日本を野蛮国と見做す「侮日」が定着します。
「侮日」は日韓併合によって地下に潜伏し、「光復」によって再浮上します。併合されたという記憶が生々しい間は、無邪気に「日本より上」とは信じられませんので、「民族主義」を掲げ、「私たち民族(ウリミンジョク)は世界一優秀ニダ」を国民に刷り込んでいきます。「侮日+民族主義=反日」というのが私の見立てです。
米国の意向は当然働いたでしょう。理由も自転車の修理ばかりしている様の仰るとおりです。
> 新しい流れを知りながら、狂犬の扱いに怖れを抱いて、忠犬である日本になんとかしてくれるよう泣きついている
グリーン氏の内心は不明ですが、彼が「新しい流れ」を拒んでも、この流れは止まらないでしょう。例え今度の大統領選挙でバイデンが勝利し、再び日本への風当たりが強まろうとも、日本の輿論が管内閣を後押しする限り、従来のように米国に屈っして韓国に利益を与えることは政権の崩壊に繋がりますから、おいそれとはできません。
恐らく管さんは、米国から隠然と圧力がかかれば、それを公論化すると思います。「文書で申し入れてくれ」とか。
阿野煮鱒様
こんな長々しい書き込みにリプライありがとうございます。自分でもかなりトンデモ系の内容だと思っていたので、まじめに読んで下さって感謝します。
菅首相が公論化するとのお見立て、なるほどと思いました。過去の机の下でのやりとりでのしくじりや、そのつじつま合わせを見聞きし、さらに経験した菅さんなら、そういう切り替えをしてくるかもしれません。その動きで、菅首相がご自分をショートリリーフと考えているかどうかもわかる気もします。
グリーン氏のこの記事で私が面白いと思ったのは、氏が日本と韓国はアジアにおける戦略的利益に関して利益相反関係にあると明確に述べていることです。日米が戦略的利益を共有していることは誰もが知っている事実ですから、日韓の戦略的利益相反は、即ち、米韓の戦略的利益相反を意味します。アメリカの専門家でこれを公に指摘した人を、私は見たことがありません。私が知らないだけかもしれませんが。
鈴置高史氏によると、マイケル・グリーンは共和党系でありながら現政権からは干されているそうです。だから言えたのかもしれません。ならばもう一歩進んで、韓国はもはやアメリカと戦略的利益を共有しないとでも言えばよさそうなものですが、そこは韓国人に与える衝撃とそれから生じる米韓同盟の動揺を懸念して、寸止めにしたのではないでしょうか。
いずれにせよ、米韓同盟の弱体化を隠そうともしない、のみならず積極的に壊そうとする昨今の韓国政府の態度には、目を見張るものがあります。北の方も、コロナ防疫のために中朝国境を閉鎖したことによる経済的疲弊は著しいと聞きます。半島情勢、ますます目が離せません。
ところで、申し遅れましたが、私は鈴置高史氏の連載「早読み 深読み 朝鮮半島」を通じて新宿会計士様のことを知り、その後少しずつ拝読しています。客観的根拠を示した論考にはいつも感心し、楽しませていただいています。特にご専門の金融に関するものは、ド素人の私にとっては他では得ることのできない情報や知識が満載で、とても勉強になります。いろんなことを知れば知るほど、いかに自分がものを知らない人間か分かってきます。少しはましな馬鹿になりたいと思っていますので、末永くこの評論サイトを続けてほしいと思います。
日経・CICS共済シンポジウムというのが10月23日に開催される様子。河野大臣など講師になります。マイケル・グリーン氏も参加予定。無料。https://www.global-nikkei.com/csis20/
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