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「小中学生が医療機関に大量の折鶴」、拭えない違和感

先週、『福井新聞オンライン』というウェブサイトに「折鶴」に関する話題が出ていました。これによると、福井市内の小中学生らが約1ヵ月の時間をかけ、34万羽にも達する折鶴を作り、それを医療従事者に送るつもりだ、というものです。思わず目を疑います。たしかにそれを作る労力は大変なものですが、「もらった人がそれを喜ぶ」とは限らないからです。

折鶴34万羽

少し前から気になっている話題がひとつあります。

今から約1週間前、『福井新聞オンライン』に、新型コロナウイルス感染症の対応に当たる医療従事者に感謝を伝えようと、福井市内の小中学生らが1ヵ月をかけて34万羽にも達する折鶴を作った、とする話題が掲載されていました。

医療者に感謝の折り鶴34万羽、福井/小中学生手作り、ギネス記録上回る

―――2020年8月24日 午前7時20分付 福井新聞オンラインより

これによると、発案したのは市内のある中学校の生徒会で、市PTA連合会を通じて加盟校などに呼び掛け、市内のほとんどの小中学校が参加。折り鶴と合わせて呼び掛けた募金とともに、福井市医師会を通じて医療機関に贈る予定、としています。

誰か止めなかったのでしょうか。

職場に子供たちが作った折鶴を飾るとたしかに美しいかもしれません(※このあたりは好みの問題もあるでしょうが)。しかし、冷静に考えて、折鶴を作ることが感染症を予防するうえで、具体的になにか役に立つものなでしょうか。むしろ保管場所に困るなど、医療現場に負担を与えたりしないでしょうか。

どうやって使うのでしょうか?

この点、個人的に医療現場の事情に詳しくないため、「折鶴をもらうと医療関係者は困ってしまうのではないか」という仮説は、当ウェブサイトなりに勝手に述べているものです。なかには「うちの医療現場は大量の折鶴大歓迎!」などとする医療現場があるのかもしれません。

ただ、自然に考えて、一般に大量の折鶴を送りつけられると、それらを受け取った側が困惑することも多いような気がしてなりません。詳細については伏せますが、著者自身も大災害に際して送られた莫大な折鶴に直面し、途方に暮れた経験があります。

また、東日本大震災や阪神・淡路大震災などの大災害が発生した際には、現地に「支援物資」と称して、使い物にならない古着や賞味期限切れのおにぎりなどとともに大量の折鶴が送られ、いずれもただでさえ多忙な現地の自治体はさらに混乱し、その扱いに困惑した、などとする話もよく耳にします。

もちろん、折鶴を作ってくれている人たちは純粋な善意でそれをやってくれているので、無碍に「要りません」とは言い辛いでしょう。ましてやメディアの目があるなかで、それを拒絶すれば、

せっかく小中学生が作った折鶴の受け取りが拒否された

などと一部メディアが喜んで報じるのは目に見えています。

正しい「エネルギーの出し方」が大事

いずれにせよ、この手の話題を「美談」として報じるメディアには、辟易します。

記事では何人が折鶴に参加したかが明記されていないのですが、34万羽ということは、たとえば1000人で分担して作ったならば1人340羽、という計算です。しかも、単に折るだけでなく、それらを数えてつなげる、といった作業も必要でしょう。

約1ヵ月かけて折鶴を折るのは大変な労力でしょうし、また、今回集まった34万羽は「ギネス記録(33万羽)を上回る」分量に達したのだそうですが(※ただしギネス記録認定にはカネが掛かるので、申請しないのだそうです)、その膨大な努力を、もう少し他のことに向けられなかったのかと思います。

この点、福井新聞オンラインの記事では、関与した生徒会の会長が「学校行事や大会の中止で出せなかったエネルギーを出してくれたんだと思う。福井の底力を実感した」などと述べたのだそうですが、それは「正しいエネルギーの出し方」とは言えません。

もしも小中学生が医療関係者にエールを送るつもりで何か努力をするならば、一番良いのは、勉強することです。勉強して知識を蓄え、ある人は医療従事者に、ある人は学者に、ある人は政界に、ある人は官界に、ある人は民間企業に就業し、社会をより良い方向に変えていくことではないでしょう。

そして、「正しいエネルギーの出し方」を指導するのが大人の役割であり、本来の教育です。ここでは「発案した」とされる中学生よりも、これに関係した教師や保護者がいったい何をしていたのか、という点については、非常に興味深いと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (62)

  • 小中学生の好意になんてことを!と言われるんでしょうが、はっきり言って、迷惑です。
    こういう時こそ、大人が「相手の立場に立って考えてみては?」とかいうべきなんでしょうが、最近の教師はモンペ怖さもあってか、美談っぽいことには迎合しかしないんでしょうね。

  • リンク先を辿ったら、体育館の床全面に拡げられた千羽鶴の写真を見ることができました。

    福井市内の小中学生達がしたかったことは、医療関係者に感謝の意を示すことだったのか、はたまたギネス記録を出すことだったのか、どっちだったのだろうと考えずにはいられない光景でした。

  • このような善意は難しい問題ですね。まして教育というスタンスも含む事案であれば尚更でしょう。募金も送られていることが救いかもしれませんが。

    医療機関への励ましという本来の目的のほかに、小中学生であれば折る人自身の癒し、感謝の意を伝えられる手段を得たこと自体が、子供たちのモチベーションや力になっているように思います。

    この話で想い出しましたが、広島では毎年大量に送り付けられる折り鶴を再生紙としてリサイクルしているとか…。

  • もしかして、家庭の事情や他校との競争が起きない分野でしか活動ができないという暗黙の掟みたいなものがあるのではないかと考えてしまいます。
    (募金は家庭の収支に影響するし、授業に力を入れるのは、学校間の学力へ影響が出る)

    精神的充足のみの教育は止めて欲しいと考える次第。
    (当該記事の件は知っておりましたが、コメントする気にもならなかった)

  • 「気持ちはありがたく、受け取っておくニダ。」と言っても、置き場に困るニダ。
    思い出には、なりそうだから、全否定はしないニダ。
    これで、将来お医者さんや、看護師さんになろうと思う人も、きっといるニダ。

  • 指導した教師の社会常識を疑う事態ですね。

    以下、学校教諭の皆様には無礼・失礼なことを申し上げます。予めお詫び申し上げます。

    学校の先生は、学校を卒業したら直ちに学校に戻る人たちです。学校しか知りません。社会常識を身につける機会は少ないので、人によってはアレなことになりやすい職場環境です。いわゆるモンスター・ペアレンツから厳しい批判を受けることはあるでしょうが、非常識 vs 非常識な構図も起こりえます。人間的生長に繋げられないこともあるでしょう。

    学校教諭を養成する教育機関と言えば、各県に設置された国立大学(いわゆる駅弁大学)の教育学部その他の教員養成課程です。ぶっちゃけ、偏差値50程度なのです。人間的には善良かもしれませんが、知能的には凡人です。

    私はPTA役員として多くの教師と関わる機会を得ましたが、率直に言って知的好奇心を刺激された先生は希でした。仕方が無いことです。

    この状態を改善するには、学校を、より優れた人材が集まる魅力的な職場にする必要がありますが、ご存じの通り、学校は長時間労働を強いられるブラック職場です。変な親が結構いて、対人ストレスも大きく、余り魅力的とは言えません。

    教育予算も、OECD加盟国の中では低位です。
    https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab200901/1295628_005.pdf

    かといって、増税の口実に使われるような教育予算の増大は困ります。

    だったら、正しい「エネルギーの出し方」の一種として、生徒達の生産物を地域に販売し、学校が独自に使える予算を増やすように規制緩和しては如何かと思います。

    それから、学校給食食堂はどうでしょうか。給食の原価はおよそ200円から300円らしいですが、これを500円程度で地域住人が学校で食べらられるようにします。数量管理の面から予約制ですね。今の給食は美味しいですよ。

    また、部活動の指導者は、地域の経験者を募集するなどして、先生方の負担を減らすことも、もっと盛んにしていただきたいと思います。

  • 正しいエネルギーの使い方ではないとしても、もしかしたら新型コロナの影響で、小中学生の余暇の過ごし方としては、次善の策、だったかもしれません。
    でも、結果として出来上がった大量の千羽鶴は、もはや産業廃棄物レベルw
    現物そのものを贈るより、写真に撮って額にでもして「感謝の千羽鶴34万羽○○小中学校生徒一同より」くらいにしては?
    実物はリサイクルに回すしかないと思いますがね。
    写真入りの感謝状が一つ増えるくらいなら、喜んで受け取ってもらえると思います。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (なにしろ、私はひねくれていますので)
     (他国のことは良く分からないので日本に限らせてもらいますが)日本の場合、目的を実現するための手段が往々にして目的になってしまいます。だから、感謝の気持ちを表す折鶴が、作ること自体が目的になってしまったのではないでしょうか。
     駄文にて失礼しました。

  •  記事から読み取る分には「34万羽が1列に繋がった」もののようですね。写真のもの(体育館に並べ置き)を搬出できるとも思えないので、病院には送っていない?であれば学校内で済ませたものということで、送り付けるのであればおい待てやめろという所ですが、それなりに良いやり方だったのではないかなと。体育館自体もコロナで使用していないのかな?詳細は有料記事っぽいので未確認です。

  • 「折り鶴と合わせて呼び掛けた募金は、福井市医師会を通じて医療機関に贈る」
    記事中のこの部分が、折り鶴も募金も医療機関に贈るのか、募金だけ贈るのか、少し迷いますね。
    多分あれを病院に送りつけられたら、病院が満艦飾りみたいになってしまいます。
    募金を贈るだけなら医療機関もそれほど困らないのではないでしょうか。
    折り鶴はコロナ禍の中、とにかくみんなで一つの目標に向かって何かやりたかったのだろうと。自己満足のためと言われたらそれまでですが、折り鶴を自分の所で片付けるのであれば、まあ好きにしたらと言う所です。

    • 折鶴と募金とを共に募集するのですから、募集で集まった折鶴を贈らないことは(衛生的な問題への理解に欠け情緒的な市民感覚に基づく一般社会の)常識から考えて有り得ない。

        • たい 様
           追加情報ありがとうございます。一方的に送り付けるのではないようで何より。
           ……あとはどこも受け取り希望が出ずに持て余して子供たちが途方に暮れたり、それを見越して受取希望の同調圧力がかからないと良いですね。病院はむしろコロナ感染症配慮のため~と断りやすいでしょうか。
           大人たちの責任は、着地点探しで果たしてもらいましょう。

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