韓国政府が日本の輸出管理適正化措置を「不当な輸出『規制』だ」などと騙り、世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、韓国メディア『東亜日報』は本日、米国務省への取材の結果、「米国は韓国を支持していないようだ」と報じました。というよりも、米国政府の言い分は「安全保障マターをWTOに持ち込むな」という点では、以前から一貫しています。いや、もっと言えば、米中二股外交を繰り広げる韓国に対し、米国が怒りを爆発させる可能性がある分野のひとつが、半導体産業ではないでしょうか。
WTOの「日本の輸出規制巡る当事国の発言」
韓国政府が「不当な輸出規制」を巡って日本を相手取り、世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、先月開催されたWTO紛争解決委員会の会合の議事録に関し、当ウェブサイトでは『【資料編】7月29日に開催されたWTO会合の議事録』などで取り上げました。
該当する議事録はWTOウェブサイトの7月29日付の “Panels established to review Indian tech tariffs, Japanese export restrictions, EU palm oil measures” というウェブページに全文が掲載されていますが、これに韓国、日本、米国それぞれの主張が掲載されています。
これらを当ウェブサイトの文責で日本語化し、要約しておきましょう。
韓国の主張
- フッ化ポリイミド、レジストポリマー、フッ化水素およびそれらの関連技術の輸出に一定の追加要件を課す日本の輸出許可制度変更により、これらの品目の輸出は厳しい制約を受けている
- これらの要件は、商品、サービス、貿易関連投資措置、知的財産保護を対象とするWTO協定に違反している
日本の主張
- この措置は民生・軍事の双方に使用可能な物資の輸出管理に関する国際慣行と整合的である
- これら品目の対韓輸出については継続していて、韓国企業は今回の措置により何の被害も受けていない
- 韓国は武器や機微軍事技術の不拡散に関する国際的に確立した枠組みの根底に対して挑戦している
- この事項はWTOではなく両国の対話により解決を図るべきである
米国の主張
- 安全保障上の重要な利益を守るために必要な事項を判断できるのは日本のみである
- 過去のWTOにおける「ロシアの貨物輸送経由地に関する紛争」では誤審がなされたため、いくつかのWTO加盟国が国家安全保障の問題と通商の問題を混同して申し立てを行う事例が急増している
- このような訴訟が急増すれば、WTOに深刻なリスクをもたらすとともに、70年以上にわたって賢明に回避してきた国家安全保障問題にWTOを巻き込みかねない
これをどう読むか
まず、韓国側の主張は、「日本の輸出『規制』(export restrictions)」によって「日本から韓国への3品目の輸出が厳しい制約を受けるようになった」とするものです。
ただ、日本が輸出管理上のリスト規制品を巡って個別許可などを課しているという事例は、韓国以外の国に対しても事例がありますし、この時点でどうも韓国の主張は無理筋ではないかという気がしてなりません。
これに対し日本の主張は「今回の輸出管理(export control)上の措置は物資の軍事転用を防ぐためのものであり、WTOで扱う自由貿易の問題とは別次元である」、とするものであり、これは2019年7月1日に対韓輸出管理適正化措置を発表したとき以降、一貫した言い分です。
また、日本政府は「この問題は両国の対話によって解決を図るべき筋合いのものである」と述べているのですが、これも日本政府が以前から一貫して求めている「輸出管理を巡る政策対話」と整合する考え方でしょう。
さらにいえば、韓国政府は日本との政策対話を拒絶しているため、こうした事実と照らし合わせて日本政府の言い分を読めば、あたかも「韓国は大量破壊兵器の拡散に間接的に関与している」と批判しているかにも見えます。
米国「軍事問題をWTOに持ち込むな」
ただし、ここで注目したいのは、米国による非常に強いメッセージです。
「安全保障上の重要な利益を守るために必要な事項を判断できるのは日本のみである」という記述は、単に日本の今回の措置を米国政府が支持している、というだけのものではありません。むしろ日本の措置発動には、米国の全面的な同意が存在していることを強く示唆しています。
また、米国の意見は、むしろ「安全保障上の問題をWTOに持ち込むな」という強いメッセージとして読むべきであり、当たり前の話ですが、今回の韓国による対日WTO提訴を、米国としては一切支持しない、という意思表明として読むべきでしょう。
東亜日報記事「米国は韓国を支持しない」
ただ、こうした米国の姿勢に不満でもあったのでしょうか、韓国メディア『東亜日報』がわざわざ米国務省に対し、WTO提訴について見解を尋ねたようですが、その結果が、次の記事です。
【単独】韓国の支持要請に米国「日本との貿易紛争、WTO審理対象ではない」【※韓国語】
韓国が日本の半導体素材の輸出制限措置を世界貿易機関(WTO)に提訴したことと関連し、ドナルド・トランプ米政府が「韓国を支持しない」との立場を再確認した。<<…続きを読む>>
―――2020-08-24 09:41付 東亜日報より
翻訳ソフト等を参考にしながらリンク先記事を読んでみると、だいたい次のようなことが書かれています。
- 韓日GSOMIAの終了通知期日である24日を控え、東亜日報はその出発点となった貿易紛争事案について米国務省に質問を行った
- その結果、米国務省は現地時間21日、WTOでの両国の貿易紛争については「韓国を支持しない」という立場を再確認した
- 米国は同盟国間の紛争については「どちらか一方の肩を持たない」としつつ、7月29日のWTO紛争解決委員会(DSB)での発言を巡っては「米国の長年の政策的立場と一致している」と付け加えた
東亜日報はDSBでの米国の発言を巡っては、「日本の輸出規制(※原文ママ)は国家安保措置であるため、韓国がこの問題をWTOに持ち込むことに米国が同意しないという意味と解される」、「日本側に傾いたという解釈を生んだ発言の趣旨を国務省が再確認した」などと述べています。
日本政府が講じた措置自体、輸出「規制」でも貿易制裁でも何でもないのですが、韓国政府がこれを「輸出『規制』」だと騙り、米国に支持を求めていることに、いいかげん、国務省も辟易している様子が見て取れます。
やっぱり水面下のロビー活動をやっていた
ただ、個人的に注目したいのは、東亜日報の記事にある、次の趣旨の記述です。
「これに先立ち、韓国政府は米国側に水面下で『WTOで韓国を支持してほしい』と要請したと伝えられているが、このような努力にもかかわらず、米国の立場は変わっていない。」
さもありなん、ですね。
興味深いのは、それだけではありません。
東亜日報によると、本来、WTO関連案件は米貿易代表部(USTR)が実務を管轄しているのですが、「韓日関係に関する部分は国務省が政策協議を通じて関与してきた」のだとか。つまり、日本の輸出管理適正化措置は、米国が外交マターにしている、ということなのです。
考えてみれば、もともと対日WTO提訴自体が「無理筋」な話ですが、これに米国が関与しているという事実は、やはり、日本が輸出管理適正化措置を発動するきっかけとなった何らかの事件では、米国がその事実を握っている可能性がある、ということでしょう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
こうしたなか、半導体産業を巡っては、米国による「ファーウェイ外し」への圧力が強まっていますが、こうしたなかで韓国は米国の同盟国でありながら中国にどこまで肩入れするのかが気になります。
おりしも中国の外交トップとされる楊潔篪(よう・けつち)中国共産党政治局員が 先日、韓国・釜山を訪問し、徐薫(じょ・くん)韓国大統領府国家安保室長と会談を行いました。
これについては内容自体が公表されていないようですが、米中両国間での韓国の「コウモリ外交」が続けば、米国は韓国の半導体産業をそのままにしておくとも思えません。その意味では、今後は「日韓紛争」という視点というよりは、「米中代理戦争」という意味での展開が気になるところなのです。
View Comments (39)
取引先とも話をして、「最後は人間性。」という結論に達した事を思い出しました。
安部総理、無理をせず少しお休みになって欲しいとおもいます。
韓国に対する道は、つけていただいたとおもいます。
安倍さんはホントゆ~くり休養して欲しいですね
【日本革命的共産主義同盟革命的マルクス主義派・エダノ】の下集まった、にっぽん国会ぎーんとしての矜持もインテリジェンスも無い帰化人(陳哲郎・他)国籍不明人、サイコパスが税金を欲しい侭貪る【売国党】は
これを吉向と捉えられない(笑)
ポコペン拝
WTOへの提訴は文政権が国内世論に対してメンツを損なわずに実現可能な「唯一の振り上げた拳の下ろしどころ」なのかもですね。
彼らが生き残るためには、負けるためのプロセスを経た後で「最後まで抵抗したにもかかわらず下された国際的裁定なのだから理不尽でも受け入れざるを得ない。私たちがもっと強くなるしかない!」と被害者ポジションでの弁明に終始するしかないような気がします。
「アメリカは同盟国であるまじき行動で我が国を陥れた!
非常に遺憾であり許されざる行為だ!我々はこの不当な扱いを甘んじるわけにはいかない!核開発、軍備増強を行いアメリカの同盟をやめ、この原因である日本を叩き潰さなければならない!」
くらいの世論が形成されると思いますね
日韓間にある問題の多くは、韓国側がむちゃくちゃの主張をしてなおかつ話し合いに応じないので、解決が困難になっています。
韓国むけには、個別の問題に対しては適切な対応が必要ですが、国際社会においては、第3国の常識的な意見を積み上げていく必要があるでしょう、今回のように。
>韓国が日本の半導体素材の輸出制限措置を世界貿易機関(WTO)に提訴したことと関連し、ドナルド・トランプ米政府が「韓国を支持しない」との立場を再確認した。
東亜日報は、この反応が「トランプ政権」の方針だというような書き方ですが、政権が変わっても貿易ルールや安全保障上の原則は変わらないというアタリマエのことをスルーしているように思えます。
どうしてアメリカが、支持すると思った?と言うと、おしまいですね。
ロビー活動とかでは無く、支持してくれと言った程度だと思います。何せアメリカは、一ヶ月前に、WTOに相応しくないと言ってますから。
韓国では、アメリカが「安全保障を決めるのは、当時国のみ」と言うのを見て「日韓GSOMIAを破棄しろ」と言い出す始末です。
半導体産業が安全保障上重要だと言う事が、分かっていないのは、確認されました。中国には、きつく言われたと思います。
「両方を選ぶことは出来ない」の始まりになると良いんですけどね。だけど、年内に始まるような気がしてきました。
だんな様
「他山の石」:よその山から出た粗悪な石も自分の宝石を磨くのに利用できる、転じて他人のつまらぬ言行も自分の人格を育てる助けとなる(文化庁)
まあ粗悪な石がつまらぬ言行で今後どういう末路をたどろうが自己責任でお願いします。日本は日本で韓国の亡国の有様をよく見て学習することが未来にとって重要だと思うのです。現在は米国にとって日本は地理的中国封じ込め国家としての存在価値がありますが、経済戦争後に仮想敵国を失ったパックスアメリカーナ2.0の矛先がどこに向くのかを危惧しています。狡兎死して走狗烹らることのないよう布石を打っていくことが、国家として求められると考えます。
アメリカも、いい加減韓国には外交的な言い回しが通じないことを学習したと思うんですけどねぇ。
韓国に対しては「お前はバカだ」とはっきり言ってやる方がむしろ親切なのだということを、そろそろ習得してほしいもんです。
龍さま
>韓国には外交的な言い回しが通じない・・。
はっきり言っても通じない可能性もあるのかな?
韓国:自由陣営から感動されたnida!〔喜
日米:自由陣営から勘当されたのに・・。
良く言えば″めげない″
悪く言えば″懲りない″
何にしても″食えない″
かける言葉も「さよオナラ=3」くらいしか思いつかないんですよね。
m(_ _)m
韓国が日本と「仲直りする」ために手を尽くした、前オバマ大統領と副大統領ジョーバイデンご両名は日本にとって毒以外の何ものでもありませんでした。当方がオバマ大統領を信用しないことにしたのは二期目の始まりごろでした。その理由を知り合いの経営者さんに説明したところ彼には納得していただけました。あと3年もやるのかとそのかたは不満げでした。
本論からははずれますが・・・
米国の対中政策は、単なるファーウェイ外しではなく中国への最新半導体の供給禁止そのものだと考えます。
そうすることにより、デジタル人民元構想も破綻しUSドル一強体制を維持できますし、暗号解読などに於いても優位を保てます。
更新ありがとうございます。
日本の韓国に対する輸出管理適正化措置は、米国からの『韓国クロ』の重要な事実が示されてたのでしょうね。軍事衛星を使い或いは協力者を使い、動かぬ事実を積み上げ、日本政府に明らかにしたと思います。
イランに安倍総理が急遽飛んだのもその確認でしょう。或いは海自機レーダー照射事件の際、北朝鮮籍と思われるボロ船に重要人物が乗っていたか、船籍まで判明出来ていたか。
いずれにしても核開発・製造関連の物資が、「敵性国」に持ち込まれたのは間違いない。
またいかにも下朝鮮らしいのが、WTOの前に水面下で『韓国を支持してほしい』と米国に要請していた(失笑)こと。いったいいつまで駄々こねるガキみたいなことが通用すると思っているんだろう?
韓国は、無いですネ、ハイ。私には韓国はいっっっさい信用出来ない愚かな国家です。
WTOで米国が韓国を支持しないのが気に入らないのか、下朝鮮の一介の新聞屋が、あろうことか米国政府に再度確認しよった!(爆笑)
なんて恥ずかしい行為だろう。無視すれば良いのに、わざわざ答えた米国国務省もドエライ時間とヒトの浪費でしたネ!
まあ、米国には身銭切って、どんだけ鬱陶しい奴等かを思い知って貰いたい。今まで散々に韓国の雑用当番をさせられて来た日本ですから。それぐらい言ってもバチは当たらんでしょう。
ハイ、米国さん、貴国の番ですヨ(笑)。
めがねのおやじ様
>いったいいつまで駄々こねるガキみたいなことが通用すると思っているんだろう?
韓国はことの善悪ではなく、「なんで、日米は韓国の味方をしてくれないんだ!」だと思います。
そこで止まっている(笑)。「何故か。」というSTEPに進めればまだ別の判断もできると思いますが、ムリかと思います。
そこから、一歩も進めないので、数えあげるのもウンザリするような行動になります。
>下朝鮮の一介の新聞屋が、あろうことか米国政府に再度確認しよった!
あの国の人間には説明してもムダになります。「何故か。」というSTEPに進めていないので、説明されても理解できません。理解せず、相手を呪うだけとなります。これは民族性というより、あの国の社会が持つ宿痾のような気がいたします。同義だったかしら?
あの国のこうした問題は、人である身がなんとかできるようなものではないと考えます。
本日午前の記者会見で、管官房長官は「日韓間の安全保障分野における協力と連携を強化し、地域の平和と安定に寄与するものだ」と述べたそうです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b4f160bf8190927acdb511e98140f347baf36af7
その後、韓国政府側からは、なんの反応もないまま19時を過ぎました。まさか25日への日付変更直前に、在日韓国大使がGSOMIA破棄通告文書を首相官邸に届けるというような離れ業をすることはないでしょう。ほぼ確実に文政権は自動延長を渋々ながら認めたと見るべきでしょうね。
ただ、これを韓国サイドでは、いつでも破棄できる協定と誤解している可能性もあるらしいので、今はジタバタする必要はないと、かなり大甘な判断をしているだけなのかもしれませんが。(笑)
しかし、そんなことよりも楊潔篪中国共産党政治局員と徐薫韓国大統領府国家安保室長との会談の中身の方が気になります。当然米国の関心もそちらに向いていることでしょう。両者ともに会談後「有意義な対話だった」と語っているところを見ると、さぞや中国にとって耳障りのよい会談であったであろう事は容易に察せられます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d67c96444f8593a27fd8c7d94651d03a11c8ea45
しかし米国との軋轢が続く中、香港市民への不当弾圧や台湾への不法な圧力等で世界中から問題視されている、そんな中国から頭を撫でられて悦に入っているその鈍感力には呆れるばかりです。
この会談に対するホワイトハウスの反応は、今のところはっきりとは伝わって来ておりません。しかしこうした中韓の動向に対する、トランプ大統領を始め米高官らの言動には今後も継続的に注目して行くべきでしょう。
長らくここで記事を読ませて頂き、逆に感じています。日本の輸出管理についてアメリカより何らかの指摘をされ、韓国に輸出管理強化措置をしたのであれば、日本の緩さが気になります。
日本からアメリカを巻き込んだ形なら、よくやった!と言いたいですが。
前者であれば米中対立が先鋭化していく中で、日本は自らの立ち位置を決めて行けるのでしょうか? 心配になります。
韓国は、現時点でも、円満な「米韓関係」と円満な「中韓関係」の両立は可能であると考えていると思います。傍から見れば明らかに「二股外交」であり「コウモリ外交」ですが、韓国自身は「米中等距離外交」だと考え、自身の存在価値と能力に自信があるのだと思います。
この「二股外交(コウモリ外交)」ですが、最終的には、関ケ原の戦いにおける小早川秀秋のように、銃を突きつけられて「米中どちらを選ぶかはっきりせよ」と迫られるのは火を見るより明らかですが、韓国はそうなるとは考えていないのでしょうね。
> 自身の存在価値と能力に自信がある
それこそがまさに「夜郎自大」「厚顔無恥」と評される由縁であるということに全く思い至らないんでしょう。