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冷ややかに眺めるのが正解~韓国の「ブーメラン判決」

「韓国は三権分立の国だ」。「裁判所が下した判決に、韓国政府は介入できない」。これは自称元徴用工問題などの日韓懸案に対し、韓国政府がずっと言い続けてきた「言い訳」です。ただ、もし韓国政府がこの言い訳を今後も主張していくつもりがあるのならば、足元で自分自身に火が付きそうになっていることを無視するわけにもいかないでしょう。それが、「北朝鮮訴訟問題」です。

自称元徴用工判決の支離滅裂さ

自称元徴用工判決問題とは、朝鮮半島で「強制徴用工だった」と自称する者やその遺族などが日本企業を相手取った訴訟で、日本企業が韓国の最高裁にあたる「大法院」で相次いで敗訴しているという問題です。

そして、当ウェブサイトではこれまで何度も指摘してきたとおり、この自称元徴用工判決問題には、大きく(1)日韓請求権協定違反である、(2)韓国が根も葉もないウソを捏造して日本に難癖をつけている、という2つの問題点があります。

自称元徴用工判決の何が問題なのか
  • (1)日韓間の過去のすべての問題は1965年の日韓請求権協定において法的に完全に決着が付いているはずなのに、それをあとから蒸し返した。
  • (2)そもそも自称元徴用工問題や慰安婦問題を含めた「歴史問題」自体、その多くが韓国(や悪意を持った日本人)によるウソ、捏造のたぐいである。

まったく懲りない人たちだと思います。

そもそも論ですが、国際法に違反する判決を国内の裁判所が下したところで、そんな判決を相手国に強制する手段はありませんし、それをゴリ押ししようとしたら、国交が壊れてしまうのは当然の話です。

たとえば、日本の活動家が日本の最高裁で「1945年のポツダム宣言は無効だ」という判決を勝ち取ったとして、それで千島、樺太、朝鮮半島、台湾が日本領として復活し、満州国も再建国される、というものではないでしょう。

程度の差こそあれ、今回の韓国の自称元徴用工判決問題も、言っていることの支離滅裂さはたいして変わらないと思います。

日本政府は「積極的放置」

この点、あくまでも当ウェブサイトなりの主観的な見方で恐縮ですが、日本政府が現在採用している戦略は、「積極的放置」です。というのも、現在の日韓両政府の動きを見ると、この自称元徴用工問題(あるいは日韓関係全体)の落としどころといえば、結局、次の3つしかあり得ないからです。

自称元徴用工問題の「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することで、日韓関係の破綻を避ける
  • ③韓国が国際法を破り続け、日本が原理原則を貫き続けることで、日韓関係が破綻する

もちろん、日本の側から日韓関係を破綻させるようなことは、しないでしょう。ただ、日韓関係の破綻を避けるために、日本が無理やり原理原則を捻じ曲げて良いという話でもありません。したがって、日本としてはあくまでも表面上は「韓国は国際法と約束を守れ」と言い続けている、というわけです。

もっとも、当ウェブサイトとして、この日本政府の現在のやり方について、100%賛同しているわけではありません。というのも、現在の日本政府は米国と整合的に動くことをあまりにも重視し過ぎていると感じてしまうからです。

とくに今年11月の米国大統領選で政権交代が実現してしまうと、トランプ政権の対北朝鮮政策を前提に組んでいた日本の外交戦略が見直しを余儀なくされます。したがって、日本政府は上記①~③以外にも、いくつか「落としどころ」を探っておくべきでしょう。

要するに、日本政府がやらねばならないことは、日本企業や日本国民に不当な不利益が生じないようにすることであり、それ以上でもそれ以下でもありません。極端な話、

  • ④韓国の北朝鮮支援などと絡めて、経済制裁によって日本が韓国を経済的に焦土化する
  • ⑤中国との交渉を通じ、韓国を中華圏に引き渡す

など、さまざまな選択肢があってしかるべきでしょう。

韓国側の期待は「日本の譲歩」

さて、韓国政府側が望んでいる選択肢は、おそらく②です。

というのも、日本政府はこれまで、過去に何度か、原理原則を捻じ曲げて韓国に譲歩したことがあるからです。先日の『「韓国とは交渉するな、叩き潰せ」=慰安婦問題の教え』でも紹介した「(従軍)慰安婦問題」など、その典型例でしょう。

つまり、韓国側としては「自分たちが被害者だ」という「被害者コスプレ」を通じて日本に対し精神的優位を楽しむことができるほか、日本から賠償金をむしり取るという経済的利益に加え、さまざまな局面での日韓交渉を自分たちにとって有利に進めるというメリット(?)があるのです。

(※余談ですが、韓国側にこんな「成功体験」を植え付けたという意味で、これまでの日本政府(自民党、外務省など)の姿勢にも非常に大きな問題があったのですが、これこそ当ウェブサイトが指摘する「日本側の責任」です。)

自称元徴用工判決を巡る「資産売却詐欺」も、これとまったく同じ文脈で理解して良いでしょう。

現在、日本製鉄と不二越については現地の合弁会社株式を、三菱重工に対しては知的財産権(特許権や商標権)を、それぞれ韓国側の原告が差し押さえている状況にありますが、これは明らかに、「売却したら困るでしょ?」と嫌がらせをする目的だと考えて良いと思います。

当ウェブサイトの感覚だと、日本製鉄が保有するPNR株の売却が可能になるとされる8月4日以降、韓国で同社株式が売却されてしまう確率は10%もないと思います。おそらく9割以上の確率で、韓国側の弁護士・メディアなどが

  • これでいつでも売却できるようになった!
  • これを売却したら日本企業にも大変な損害が発生するし韓日関係も破綻する!
  • 韓日関係が破綻したら韓日両国に被害が及ぶ!
  • 日本企業・日本政府は高齢の強制徴用被害者(※)のために今すぐ譲歩すべきだ!

などと大騒ぎしてお終いです(※「強制徴用被害者」とは自称元徴用工のこと)。

個人的には「いい加減、さっさと売却して日韓関係を終わらせてくれないかなぁ…」などと感じているのはここだけの話として、おそらく韓国側は延々、「売却するする詐欺」「対日WTO提訴」などを繰り返し、日本が韓国に譲歩するのを待っているのだと思うのです。

盛大なブーメランか?

ただ、この自称元徴用工判決問題が、韓国に対して盛大なブーメランになりかねない判決が、韓国側であったようです。

「日本強制動員賠償」判決と類似…脱北国軍捕虜判決、南北関係に大きな波紋呼ぶ可能性(1)

脱北国軍捕虜が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で勝訴したことを受けて、北朝鮮政権の人権および財産犯罪に対して正恩氏を相手に金銭的賠償を受け取ることができる道が開かれた。<<…続きを読む>>
―――2020.07.08 08:14付 中央日報日本語版

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の記事によると、北朝鮮を脱出した元「国軍捕虜」(おそらくは北朝鮮の捕虜となった韓国軍兵士のこと)が北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)を相手取って起こした損害賠償訴訟で、地裁レベルで勝訴したのだそうです。

そして、これについて中央日報は、「北朝鮮政権の人権および財産犯罪に対して正恩氏を相手に金銭的賠償を受け取ることができる道が開かれた」としているのですが、それと同時にひとつ、困った問題が生じたようでもあります。というのも、

特に今回の判決は文在寅(ムン・ジェイン)政府が尊重すると強調してきた『強制動員被害者に対する日本戦犯企業の損害賠償判決』と同じ性格の判決で、同じ論理で政府が簡単に介入できない状況なので南北関係に大きな波紋を呼ぶ可能性がある

からです。

確かに、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領自身、自称元徴用工問題を巡っては、「三権分立なので政府は介入できない」などと言い張っていますが、その理屈を援用するならば、今回の判決についても韓国政府として口をさし挟むことはできないはずです。

個人的には、たしか「大韓民国憲法」では北朝鮮も韓国の領域に含まれているはずなので、韓国法上、金正恩自身は「韓国国民でありながら韓国政府に抵抗する反逆者」という地位であるはずだと思うのですが、この点はとりあえず無視しましょう。

しかも、もし被告である金正恩自身が控訴できなければ、この地裁判決が確定してしまいます。中央日報によると、今回の地裁勝訴を受け、国軍捕虜80人に加え、韓国人拉致被害者に至るまで、それぞれ北朝鮮と金正恩を相手取って損害賠償請求訴訟を続々と起こす見込みなのだそうです。

なかなか興味深いことになって来ました。

北朝鮮大好きな韓国政府はどうするのか?

もちろん、本件については純粋に韓国の国内問題であり、本来であれば私たち日本人が首を突っ込む問題ではありません。

ただ、それと同時に私たち日本国民は、いわれもない自称元徴用工問題などで韓国によって国際的に名誉と尊厳を傷つけられている立場でもあるため、このような立場からは、韓国国内の問題に論評する権利くらいはあるでしょう。

今後、韓国が北朝鮮の在韓資産を差し押さえ、「売却するする詐欺」を仕掛けてくれたら面白いところですが、ただ、北朝鮮がそもそもめぼしい資産を韓国国内に保有しているとも思えないため、このあたりは判決自体が絵に描いた餅になることは間違いありません。

ただ、今回の判決が画期的なのは、北朝鮮の韓国に対する不法行為を巡って、韓国が国内法で北朝鮮を裁くということができるようになった(と韓国の司法関係者が思っている)可能性がある、ということではないでしょうか。

ちなみに中央日報によると、開城(かいじょう)にある南北連絡事務所を北朝鮮が爆破したことに対し、韓国政府が北朝鮮を相手取って損害賠償訴訟を起こすことも可能になったとする弁護士のコメントが紹介されています(※現在の韓国政府にそれができるとも思えませんが…)。

また、北朝鮮との関係を何より重視している現在の文在寅政権が、この判決を出した判事に対して圧力を掛けるということは可能ですが、いったん出てしまった判決自体を撤回させることができるのかどうかはよくわかりません。

いずれにせよ、中央日報は

2018年に大法院(最高裁に相当)は強制動員被害者に対して日本戦犯企業が損害賠償をしなければならないという確定判決を下した後、文在寅(ムン・ジェイン)政府は『司法府の判断には政府が介入できない』という基本立場を守ってきた。日本政府が輸出規制報復措置を強行するなど韓日葛藤が悪化の一途をたどる状況の中でも『裁判所の判決を尊重しなければならない』と強調した。

と述べているのですが、日本に対して仕掛けている自称元徴用工判決問題を巡る瀬戸際外交の数々を思い起こすなら、韓国は北の同族国家に対しても同じことを実施しなければおかしいのではないでしょうか。

このあたり、日韓関係崩壊劇を見せられている最中に、ウソツキ・インチキ国家が仕掛けてきた愚かな行為が盛大なブーメランとなって自分自身に突き刺さるのを冷ややかに眺めるのも、「箸休め」にはちょうどよいのかもしれないと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (34)

  • >⑤中国との交渉を通じ、韓国を中華圏に引き渡す
    下関条約の第一条を破棄すれば良いのかな?条約自体に韓国は関係ないから、日本と中国だけで決定できそうなのです♪

    下関条約第一条(出典:ウィキペディア)
    清国は朝鮮国が完全無欠なる独立自主の国であることを確認し、独立自主を損害するような朝鮮国から清国に対する貢・献上・典礼等は永遠に廃止する。(第一条)

    • 七味さま
      下関条約の第一条を破棄すれば良いのかな?条約自体に韓国は関係ないから、日本と中国だけで決定できそうなのです♪
      →良いご意見だと思います。
      座布団2枚。

      • * ∧_∧
        (=・ω・) オトト…
        (つ( ̄ ̄ ̄ ̄)
        | ( ̄ ̄ ̄ ̄)
        ∪ ( ̄ ̄ ̄ ̄)
         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

        1枚自分で追加しといたのです♪

        • イーシャさま
          このしれっと、スパッと、馬鹿にする芸風は、真似できませんよね。
          距離が有っても、話を繋げてきますもの。
          うちら、理屈っぽいし、その辺のものの寄せ集めで、新鮮味が無い思います。

        •   (・ω・)
           ( ̄ ̄ ̄ ̄)
           ( ̄ ̄ ̄ ̄)
           ミ ( ̄ ̄ ̄ ̄)
           ( ̄ ̄ ̄ ̄) 
           ( ̄ ̄ ̄ ̄)
           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

          イーシャ様に貰ったのも追加しといたのです♪

  • 政府がどれだけ司法を掌握しているかで結末が変わってきそうですね。
    どちらにしても、表立って行うかは判りませんが、司法に圧力を掛けるのは間違いないでしょう。

    個人的な予測としては

    ①司法を掌握している場合
    裁判所が訴えを退ける⇒三権分立を尊重する為、政府は不介入という立場を堅持。

    ②司法を掌握していない場合
    立法で回避(笑)

  • 文在寅政権にできる弥縫策(やほうさく、なぜか変換できない… じゃないですよ!)は多分、金正恩からの依頼という体裁で被告の国選弁護士から控訴の手続きを行わせ、控訴審の裁判官に裏から圧力をかけて一審の判決を覆すか、あるいは裁判期間をズルズルと引き延ばして風化させるか、だと思います。

    二重規範は韓国の常ですし、国民もそういうのには慣れっこですから、何とでもなりますよ。

      • もちろん。
        このサイトの皆様は真面目な方が多くて、2ch/5chでは普通の釣りへの食いつきがよいです。

        • 阿野煮鱒様

          しまった!

          うかつにも「弥縫策」の読み方をググってしまった・・・orz。

    • 阿野煮鱒さま
      北朝鮮政府は、この裁判自体を認めてません。
      そうすると、金正恩からの依頼という体裁で被告の国選弁護士から控訴の手続きを行わせる、という事も出来ない様に思います。
      判決は、確定するんじゃ無いと思います。
      後で、親日的行為だと言われて、取り返されるのは、如何でしょうか。

      • だんな様

        半島が分断されたのは、日本に責任があるニダ。

        よって、日本が謝罪して賠償するニダ。

        法律がなければ、今から作って訴求させるニダ。

        となるんじゃないでしょうかね。www

      • > 北朝鮮政府は、この裁判自体を認めてません。

        そうなんですか。
        民事裁判なら「俺はこの裁判自体を認めない」と言い張って裁判を欠席した瞬間に原告の勝訴が確定しますよね。
        でも被告はガン無視、と。

        それで良ければ、同じ手口を日本にされても仕方がないということになります。

  • 北に請求して都合が悪いなら、韓国政府が払ってくれてもいいニダ。
    金をせびれるなら、相手は誰でもいいニダ。

  • ネロナムブルの御国ですから、文政権はなんとかするでしょう。
    どんな無茶な理由を出すのか期待してますが。

  • あっさりと司法壟断という伝家の宝刀を使用。上級審にて話題から目を反らせる事件が起こるまで待つ。みたいなことでしょうねぇ。
     北が静かなのが不気味です。

  • 阿野煮鱒様                          弥縫策 びほうさくと今まで読んでいたので、急ぎ調べたら(びほうさく)で変換できました。   

  • 更新ありがとうございます。 

    『司法府の判断には政府が介入できない』というのが文政権だから、元韓国軍兵士捕虜の北朝鮮と金正恩に対する勝訴は、尊重して欲しいですネ。
    相変わらずブーメラン大好き民族ですわ(笑)。でもダブスタの民ですから、二審(最高裁)で与党系の裁判官が、勝訴破棄+北への誣告罪で原告人懲役20年で結審するかもしれませんよ(笑)。

  • ・・・もし被告である金正恩自身が控訴できなければ、この地裁判決が確定してしまいます。

    それなら控訴できるようにすれば良いと考えます。
    韓国は表向き法治国家ですが、政治が絡む事件は法を無視します。

    金委員長は韓国国内に住所がない。

    これでは不公平。

    特例として金委員長に代わって韓国法務省が控訴する。

    金委員長の逆転勝訴。

    • 中日タイガーズさま

      >特例として金委員長に代わって韓国法務省が控訴する。

      どうせ何でもアリな反社組織なので、

      北朝鮮首席報道官文在寅が控訴する

      のがベストかと。
      何ちゃって「人権派」弁護士ですし・・・

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