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「蚊帳の外」にいたはずの日本に「逆ギレ」か?=韓国

ジョン・ボルトン前米大統領補佐官が執筆した回顧録に、ドナルド・J・トランプ米大統領と並んで、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領に対する極めて辛辣で批判的な記述が溢れているとして、この回顧録が最近、韓国国内で波紋を広げているのだそうです。これに加えて安倍総理が「朝鮮戦争の終戦を妨害した」として、その恨みが日本にも向けられている、という話も聞こえてきました。

安倍のせいで朝鮮戦争終了が実現しなかった

少し前から世間を騒がせているのが、米国のジョン・ボルトン元大統領補佐官による回顧録です。

個人的には原文を読んでいないなどの事情もあるため、基本的に当ウェブサイトではここ数日「静観」を決め込んでいたのですが、韓国メディア、あるいは韓国人ジャーナリストらがこの回顧録をもとに、(なぜか)日本に対する逆恨みのようなものが出て来ているため、これについて少し取り上げてみたいと思います。

まずは、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に掲載されていた、この記事です。

「トランプは朝米終戦宣言を望んだが、安倍が反対した」

米国のジョン・ボルトン前国家安保担当大統領補佐官の主張によると、ドナルド・トランプ米大統領は<<…続きを読む>>
―――2020-06-23 07:06付 ハンギョレ新聞日本語版より

タイトルに「朝米」とあるのは「米朝」の意味でしょう。

ハンギョレ新聞によれば、ボルトン氏の回顧録の93~94ページに、シンガポールでの米朝首脳会談を1週間後に控えた2018年6月5~6日、ドナルド・J・トランプ米大統領に対し、日本の安倍晋三総理大臣が「北朝鮮にあまり大きな譲歩をしてはならない」と説得した、と書かれているのだそうです。

これが事実なら、安倍総理は非常に良い仕事をしたといえます。というのも、ハンギョレ新聞が記事第1段落で指摘しているとおり、

当時、米国と北朝鮮の両首脳の初会談を控え、『朝鮮戦争終了』宣言が出るとの見方が少なくなかったが、宣言は行われなかった

からです。

ちなみにボルトン氏はトランプ大統領について、「『米朝終戦宣言』をひとつのジェスチャー、あるいはメディア宣伝用の好材料と考えたに過ぎず、国際関係に及ぼす重要な影響をまったく考えていない」、などと批判しているのだとか。

韓国政府高官が「逆ギレ」?

こうしたなか、昨日は『JBプレス』というウェブ評論サイトに、こんな記事が掲載されていました。

ボルトン回顧録で韓国民の怒りが日本に向かう理由/「南北統一を邪魔して回る日本」、韓国高官が次々と批判の声

米国・国家安全保障問題担当補佐官として至近距離から見守ったトランプ大統領の首脳外交秘話を思いっきり暴露したジョン・ボルトン氏の回顧録『それが起きた部屋』(The Room Where It Happens)に対する韓国社会からの糾弾が絶えない。<<…続きを読む>>
―――2020.6.25付 JBプレスより

ウェブページで3ページに及んでいますが、文字数自体は2000字弱であり、さほど長くありません(執筆したのは韓国出身のジャーナリストの方だそうです)。

この記事によると、ボルトン回顧録では文在寅(ぶん・ざいいん)大統領を意味する “Moon” という単語が153回も登場し、朝鮮半島関連ではトランプ大統領だけでなく、文在寅氏と鄭義溶(てい・ぎよう)大統領府安保室長を辛辣に批判しているのだそうです。

しかし、同記事によれば、韓国で同書が原因となり、「日本に対する激しい糾弾」が続いているのだそうです。とくに、韓国与党「ともに民主党」の金泰年(きん・たいねん)院内代表はボルトン氏と日本に対し、次のように批判したのだとか。

ネオコン・ボルトンの手管や日本の妨害によって、70年間の分断を終え、韓半島統一への歴史的転換となる千載一遇の機会が消えたという、実に嘆かわしい真実が残念だ/ネオコンや日本と手を組む土着分断勢力が、韓半島の平和と繁栄を妨害する『三大分断勢力』であることが明らかになった

また、ほかにも政治家や政府系の国策研究機関の院長らが日本を舌鋒鋭く批判しているようなのですが、逆ギレも良いところですね。

さらに思わず笑ってしまったのは、韓国国内のケーブルテレビで、「日本は南北統一を恐れている」、などとする主張が流された、というくだりです。JBプレスの記事ではこうした韓国国内の雰囲気について、次のように指摘します。

多くの韓国人、特に文在寅政権支持勢力は、朝鮮半島の平和に最も邪魔になる存在が日本と考えている。南北が統一を果たし、経済力や国際的地位の面で日本を超えることを日本が恐れ、南北の和解を妨害しているというのが彼らの主張だ。

日本語には「開いた口が塞がらない」という表現がありますが、これは、あまりにも突拍子もない主張を聞いたときに、思わずあきれ返ってしまうという状態のたとえです。

朝鮮戦争が終了していたらどうなっていたか?

このボルトン氏の回顧録、トランプ氏や文在寅氏らに対してはじつに辛辣なものであるらしく、韓国で連日のように、この回顧録について報道が行われている事実に照らしても、韓国における波紋の大きさの一端をうかがい知ることができます。

この点、ボルトン氏の回顧録に書かれている内容(とくに韓国メディアを通じて知った内容)については、それを事実だと盲信すべきではないと思いますし、あくまでも当時の状況証拠などに照らして判断していく必要があります。

ただ、ひとつだけ確実な点があるとしたら、もしも2018年6月12日のシンガポール米朝首脳会談で「朝鮮戦争の終了」、「北朝鮮に対する経済制裁の解除・緩和」などが実現していたとすれば、それは過去に何度も何度も何度も何度も騙されてきた轍を踏むことになっていたはずだ、ということです。

とくに、経済制裁が緩和・解除されていたとしたら、北朝鮮は嬉々として、秘密裏に核開発・ミサイルを再開していたはずですし、また、皮肉なことに、韓国に対してはより一層高圧的に接するようになっていたのではないでしょうか。

安倍総理がトランプ大統領に対し、「安易な譲歩をするな」とクギを刺していたのかどうかについては、実際のところはよくわかりません。

しかし、ボルトン氏の主張が事実ならば、北朝鮮に対する経済制裁は現在に至るまで解除されていない大きな理由のひとつは、安倍総理がしっかりと仕事をしたからだ、という仮説が成り立ちます。だからこそ、日本国内でも特定勢力が「アベは辞めろ!」と大騒ぎしているのかもしれませんね。

蚊帳の外にいたはずなのに…

もうひとつ、皮肉のひとつも言ってやりたいような気持にもなる材料が、「蚊帳の外」理論です。

これは2018年当時、日本や韓国のメディアがしきりに主張していた内容で、わかりやすくいえば「朝鮮半島問題から日本は完全に蚊帳の外に置かれている」、「南北和解の際には日本は意思決定に関われず、朝鮮半島復興費用のみ出すことになる」、といった主張です。

また、この「蚊帳の外」理論とともに、もうひとつしきりに唱えられていたのが「運転席理論」、つまり「朝鮮半島問題」を「バス」にたとえ、その運転席に座っているのが文在寅大統領で、安倍総理はバスに乗り遅れて右往左往している、といった主張です。

この「蚊帳の外論」や「バスの運転席論」、当ウェブサイトでは『ビジネスを知らない記者が「日本は蚊帳の外」と無知を晒す』や『どうなった「韓国運転席論」と「日本蚊帳の外論」』などでも取り上げて来たとおり、当ウェブサイトとしてはかなり懐疑的です。

当時、大見得を切って「蚊帳の外論」などを唱えていたはずの韓国メディアが、ここにきて一斉に「日本悪玉論」に舵を切るというのも興味深いところですね。

韓国に対して輸出管理をもう一段厳格化すべき?

さて、こうした「ボルトン騒動」の裏で、昨日はこんな報道もありました。

国連に対北制裁の一部緩和要請へ 韓国国会外交委員長(2020.06.25 11:44付 聯合ニュース日本語版より)

韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の記事によると、韓国の与党「ともに民主党」の議員で韓国国会の「外交統一委員会委員長」を務める宋永吉(そう・えいきつ)議員は25日、「国連安全保障理事会に対北朝鮮制裁の緩和を要請する」との考えを示したそうです。

韓国国民の血税で作られたはずの南北連絡事務所を爆破されておきながら、どうしてそこまで北朝鮮におもねるのか、いまひとつ理解に苦しむところではあります。

もちろん、これに対しては、「北朝鮮に対する融和的な姿勢を示しているのは、『ともに民主党』など、ごく一部の議員に限られる」、「韓国国民の多数が北朝鮮に融和的なわけではない」、といった主張があることは存じ上げています。

しかし、残念ながら「ともに民主党」は、その衛星政党などとあわせて現在の韓国の国会で3分の2近い多数を占めており、この手の「北朝鮮制裁緩和論」に代表される北朝鮮に対する融和的な主張は、決して「少数派」の意見ではありません。

そして、こんなおかしなことを主張する人物が所属する政党に、国会で3分の2近い多数を与えたのが韓国国民であるというのはれっきとした事実であり、その意味で、韓国は現在、「国として」北朝鮮に融和的な姿勢を取っていると見られても文句は言えないのです。

こうしたなか、日本政府が韓国に対する輸出管理の厳格化・適正化措置を発表してから、もうすぐ1年が経過しますが、韓国に対する輸出管理をもう一段、厳格化する、という話が出て来ても不思議ではないと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (49)

  • 怒りに任せた脊髄反射で、日本企業資産の売却に突っ走ってくれれば話が早いですね。
    ついでに、GSOMIA もお忘れなく。

    あっ、そうそう、朝鮮戦争時に日本に避難・密航してきて居着いている在日の方々に帰国いただけば、終戦気分を少しは味わえるのではないでしょうか ?

    • イーシャさま
      ハンチョッパリは、差別されるニダ。
      →差別するのは韓国人で、日本のせいでは、有りません。
      差別される原因を作ったのは、日本が植民地にしたせいニダ。
      →朝鮮戦争の時は、韓国が独立してましたので、日本のせいでは、有りません。
      うーん、キリが無いニダ。

  • ボルトンさんの本でもって、韓国にいらついてたのは日本だけじゃなかったと気付けただけでも有用な出来事でした。みんな同じこと考えてるのにかみつかれると面倒だからと避けてただけと。

  • 新宿会計士さんが、丁度良いスレを立ててくれました。
    中央日報からです。
    韓国与党であふれる終戦宣言論…民主党院内代表「運転者論を強化して再推進しよう」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/4aafb43773f218ad12a7a750da47791b952f334d
    ゴミ箱に入った「運転者論」を強化し、再推進しようという、「アンタ、バカァ?」な話です。

    「対北朝鮮物資搬入などを厳しく規制する国連司令部が、悪いニダ」「北朝鮮が核武装したのは、オバマ大統領のせいニダ」「終戦宣言が必要ニダ」など、妄言が続いています。
    アメリカを中心とする国際社会は、終戦宣言するには、北朝鮮の非核化が必要だと、考えていますが、韓国側からは「非核化」の文言も無くなりました。
    文大統領が就任してから言われていた、韓国を北朝鮮に差し出す流れが、出来上がりつつあるように思います。

  •  この中にも出てくる鄭義溶大統領府安保室長と日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)が最近よくニュースに出てきます。

     因みにこの両者発音がよく似ています。

     鄭義溶:정의용(チョン ウィヨン)
     正義連:정의연(チョン ウィヨン)

     これは韓国に住む外国人にとって難度の高いものです。両者の名称だけでは中々話が通じず、色々と形容しないといけません。

     本文とはあまり関係ない内容ですみません。

     駄文にて失礼します。
     

    • 母音の微妙な違いと、語尾の子音が“ng”か“n”かの違いですね。
      これは超ムズいですね。私には聞き取り不可能!

  • ・蚊帳の外論
    蚊帳というものは害虫がいる方が外側なのでは?

    ・バスの運転席論
    向こう見ずな運転で、米朝両国から「同乗させられるならカネをくれ!」と迫られてます。
    (根回しは条件をすり合わせること。嘘ついて会わせることではないはず・・。)

    ・北朝鮮制裁緩和論
    北朝鮮に国境近くで砲門を開けたり閉じたりされるのが堪らなければ釜山に首都を移転すればいいのに・・。
    って感じです。

  • 日本は「蚊帳の外」から親北韓国人が火病れるほど影響力を示せるんですね.日本スゴイ

    聯合ニュース資本のTV局であるYTNのサイトで「韓国戦争70周年、日本を考え直す (2020-06-24 19:30)」というビョン・サンウクという人物のアンカーレポートが掲載されています.
    内容は、
    韓国戦争(朝鮮戦争)で「日本は天の祝福の様な恩恵を受けた」「戦争の最大受恵者は他でもない日本」と指摘したうえで、「日本は朝鮮戦争を契機に軍事・外交的にも息を吹き返した」とちょっと強引すぎる結論を引き出して、
    「侵略戦争で戦争物資を供給した罪で解体された日本財閥もこっそりと立ち上がった。財閥復活が10年以上前倒しになった。」 と悪意満々で語り、
    「安倍は自身の再任のために、日本の東北アジア地域覇権のために、韓半島の終戦宣言を妨害し」
    「もしかしたら安倍と日本は今でも韓半島での「天佑神助」戦争が再び勃発することを待ちこがれているのかも知れません。」 と陰謀論を述べています.

    ハンギョレなど民間メディアは当然、今の韓国政権下で「韓国の人民日報」「朝鮮中央通信ソウル支局」と言われる聯合ニュースやYTN、KBSなど政府系報道でもこういった日本に対する悪意に満ちたプロパガンダが日常茶飯事です.

    • >> 「運転席理論」
      その道路、先が無くなってますよ?
      標識見えませんでした?

      • あっ、すみません。
        記事にコメントしたつもりが返信になってしまいました...。

    • 捨韓人さま

      >「もしかしたら安倍と日本は今でも韓半島での「天佑神助」戦争が再び勃発することを待ちこがれているのかも知れません。」

      日本は関係ない。勝手にドンパチ心行くまでやってくれぃ、と言うことですね。

  • 北朝鮮が何度も核放棄の約束を破ったから、経済制裁があります。

    文大統領は、そこは真剣に考えなかったのでしようか?
    ヨーロッパで相手にされなかったことで、気付けなかったんでしようか?
    世界は北朝鮮の核放棄より統一を重要視すると、文大統領と同じように考えている、と思ったのでしょうか?

    結果は今のところ、そうではなかったです。

    北朝鮮も経済制裁で世界との距離が出来て、正しい情勢、判断が出来てないように感じます。
    そこを考えて、一部の核放棄ではなく、完全な核放棄をアドバイスすれば少し状況は変わったんではないでしょうか?

    反日に目がくらんで、欲張ったんでしょうか?

    今からでも、完全な核放棄をアドバイスして欲しいです。

    それとも逆ギレして突っ走るか、私にはわからないです。

    日本政府はどちらにも対応してくれるとおもいます。

    • jさま
      文大統領は、各武装した北朝鮮と、統一したいと考えていると思いますよ。

  • ボルトン氏の回顧録は、あくまで一個人の主張であり、公文書(一次資料)とは違った捉え方をすべきだし、あくまでこの間の東アジア情勢で何が起こったか、その出来事の経過といった事実と照合しながらその真偽を判断することが必要だと一歩引いて眺めていました。しかも原点を読まずさらにメディアを通して流れてくる断片情報で判断はできませんから。
    甚だ主観的な感想で申し訳ないのですが、印象としては、ボルトン氏の話は「さも、ありなん。」という話で、今まで漠然と感じていたり、勘繰ったりしていたことをはっきり言葉にしてくれたというだけで、違和感は全くありません。

    ただ
    >ハンギョレ新聞によれば、ボルトン氏の回顧録の93~94ページに、シンガポールでの米朝首脳会談を1週間後に控えた2018年6月5~6日、ドナルド・J・トランプ米大統領に対し、日本の安倍晋三総理大臣が「北朝鮮にあまり大きな譲歩をしてはならない」と説得した、と書かれているのだそうです。

    これが事実とすれば、安倍総理の説得はごく真っ当なものだと思います。というのは、嘘つき、告げ口、食い逃げ、瀬戸際外交は、韓国のみならず北朝鮮のお家芸でもあるからです。先代の金正日のとき、6ヶ国協議のテーブルに着くとか、核軍縮や非核化交渉に応じるフリをして、節目節目で国際社会から経済支援を引き出し、陰では核開発を続けてきたという立派な「嘘つき、食い逃げ外交」の実績が積み上がっているのですから。当然米国も日本もこの二の舞はしないので、確実に非核化が実行される(た)ということが明確にされない限り単なる約束だけで経済制裁を緩めることはできないからです。

  • 以前作った替え歌の通りになりましたね(笑)

    (「もう恋なんてしない」の2番のサビから)

    北からの ミサイルが ソウルに届かないうちは
    ハノイで止まっている 対話を思って心配だけど
    制裁を解けなかった 言い訳は今度考える
    金(キム)じゃなく日本のせいと 言ってみせるから

    本当に 本当に 金(キム)が大好きだったから
    もう統一はしないなんて 言わないよ絶対〜♫

     ……駄作にて失礼します(笑)

    • どんなときも どんなときも
      イルボンのせいにすることが
      答えになること 僕は知ってるから~

      • 阿野煮鱒 様

        お見事です!ハマりましたね〜♫ (パチパチパチ) 「どんなときも」は思いつきませんでした。

        どんなときも どんなときも ウリがウリらしくあるために
        「謝罪と賠償を!」と 言える気持ち 大事にしたい〜♫

  • いろんな状況が整っていたとしても、統一したら日本を追い抜くとか言いながら、
    統一の費用は日本に出させるつもりのようですし、どうして日本の賛成なんか期待するんでしょうね。

    まあ、朝鮮戦争終結で実際に起こるのは

    国連軍の活動終了→
    在日国連軍司令部の廃止と在韓国連軍の撤退=在韓米軍の大幅削減→
    南北パワーバランスの北朝鮮優位の固定化→
    速やかな北朝鮮による半島の武力統一

    ですから、韓国国家の自殺行為を止めてやっているだけなのに完全な逆恨みです。

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