当ウェブサイトでもときどき紹介して来た報道各社の世論調査については、昨日、その信頼性に疑義を生じさせるような事件が発生しています。産経・FNNの合同世論調査で一部不正が行われていたのだとか。これについてどう考えるべきでしょうか。
世論調査とは?
当ウェブサイトでは以前から、各メディアが調査した世論調査結果を紹介することがあります。
たとえば、『「ネズミも逃げ出す泥の船」と化しつつある立憲民主党』で元格闘家の須藤元気参議院議員が立憲民主党に離党届を出したとする話題を紹介した際には、「いくつかのメディアの調査で日本維新の会と立憲民主党に対する政党支持率が逆転している」などとして、図表1のようなものを紹介しました。
図表1 日本維新の会と立憲民主党に対する政党支持率
メディアと調査日 | 維新 | 立憲 |
---|---|---|
産経・FNN(4/11~12) | 5.2% | 3.7% |
毎日新聞(4/18~19) | 6.0% | 5.0% |
共同通信(5/8~10) | 8.7% | 6.9% |
(【出所】著者調べ)
また、『落ちているのは政権支持率か、マスメディアへの信頼か』などを含め、内閣支持率についても、図表2のような形式のものを引用しています。
図表2 2020年5月~6月分 世論調査
メディアと調査日 | 支持率(前回比) | 不支持率(前回比) |
---|---|---|
共同通信(5/8~10) | 41.7%(+1.3) | 43.0%(±0) |
読売新聞(5/8~10) | 42.0%(±0) | 48.0%(+1.0) |
日経・テレ東(5/8~10) | 49.0%(+1.0) | 42.0%(±0) |
産経・FNN(5/9~10) | 44.1%(+5.1) | 41.9%(▲2.4) |
朝日新聞(5/16~17) | 33.0%(▲8.0) | 47.0%(+6.0) |
朝日新聞(5/23~24) | 29.0%(▲4.0) | 52.0%(+5.0) |
共同通信(5/29~31) | 39.4%(▲2.3) | 45.5%(+2.5) |
時事通信(郵送)(5/21~1) | 38.1%(▲1.2) | 61.3%(+22.5) |
産経・FNN(5/30~31) | 36.4%(▲7.7) | 52.5%(+10.6) |
日経・テレ東(6/5~7) | 38.0%(▲11.0) | 51.0%(+9.0) |
読売新聞(6/5~7) | 40.0%(▲2.0) | 50.0%(+2.0) |
(【出所】各メディア報道をもとに著者作成)
世論調査を紹介する目的
図表1、図表2はあくまでも事例であり、ほかにもこのような世論調査は折に触れて当ウェブサイトにて紹介しています。
この点、『「国民激怒」?勝手に国民の声を代弁しないでください』などを含め、何度も申し上げたとおり、当ウェブサイトとしては、新聞社・テレビ局などが実施する世論調査自体、全幅の信頼を置いてよいとは考えていません。
というよりも、当ウェブサイトでは『足を引っ張る野党とメディア、まったく休まぬ安倍総理』のなかでも申し上げたとおり、政権に対する通知表は世論調査結果ではなく「国政選挙の結果だ」と一貫して考えています。
とくに、ごく一部のメディアは内閣支持率調査を悪用し、あたかも「政権転覆」を企てているのではないか、と思えてしまうような事例もあるからです。その意味で、当ウェブサイトが世論調査を紹介する目的は、各メディアが発表する調査結果をありのままに紹介するという点にあるのです。
したがって、もしこれらの調査結果が公正でなかったとしても、当ウェブサイトの議論にはさほど影響を与えません。というのも、あまり言いたくはないのですが、当ウェブサイトとしては正直、これらの調査結果が本当に公正に行われているのかどうかすら疑問だ、などと考えているほどだからです。
こうしたなか、一部の社が実施する世論調査で一部のデータが不正入力されていたことが明らかになりました。その調査とは、産経・FNN合同世論調査のものです。
FNN世論調査で一部データを不正入力
FNN(フジニュースネットワーク)と産経新聞が実施していた世論調査で、委託先の社員が一部のデータを不正に入力していたことが明らかになった。<<…続きを読む>>
―――2020年6月19日 11:30付 FNNプライムオンラインより
FNNプライムオンラインによると、調査業務を委託された「株式会社アダムスコミュニケーション」が、実務のおよそ半分を「日本テレネット株式会社」のコールセンターに再委託した際、同社のコールセンターに勤務していた従業員が不正を行っていたのだそうです。
不正は褒められたことではないが…
具体的には、「実際には電話をしていないにもかかわらず『電話をした』として、架空のアンケート結果が一部入力されていた」、「14回のサンプル数のうち約17%が架空だった」、などとしています。
この点、FNNは
「世論調査は、確実な調査方法が確認できるまでは休止し、問題の期間に行われた調査結果とそれに関する放送は取り消します。」
などと述べています(※ただし、現在のところ、産経ニュースの一部の世論調査結果については閲覧が可能でした)。
この点、もちろん不正が行われるのはけっして褒められたことではありませんし、「報道機関に対する信頼を傷つけた」として同業者から批判されるであろうことは想像に難くありません(※当ウェブサイト的には、いまさら「報道機関に対する信頼」などといわれても片腹痛いという気がしますが…)。
しかし、不正が行われていたという事実をきちんと認め、そのことを発表して謝罪したことについては、なかなか潔いと思います。どことは言いませんが、捏造報道を認めず開き直ったり、謝罪をしなかったり、英語版の訂正記事を「noindexタグ」で隠したりする卑劣な自称報道機関も存在するからです。
「他社も襟を正せ」
ただし、これについては個人的にいろいろと知りたい点は多々あります。
ひとつめは、FNN・産経の「虚偽調査」については、安倍政権の支持率を高める方向に働いたのか、低める方向に働いたのか、という点ですが、この点、図表2で読む限り、FNN・産経の5月30日~31日に実施された支持率・不支持率は、他メディアと比べて著しく乖離しているとはいえません。
もしかすると、今回の「不正」は、担当者が政権支持率を実態より高める(または低める)ために結果を捏造したというよりは、どちらかといえば「面倒臭いから」、適当にほかのサンプルを見ながら、結果を捏造したという方が実態に近いのかもしれませんね(といっても、根拠はありませんが…)。
ふたつめは、世論調査で何らかの不正を働いているのが、はたしてFNN・産経だけなのか、という点です。そもそも新聞社などが実施する世論調査のプロセスは、外部の第三者によって検証されているわけではありませんが、この点については個人的には非常に知りたい気がします。
そしてみっつめは、「新聞等の世論調査に全幅の信頼を置いている人たち」の見解です。
たとえば、「埼玉大学社会調査研究センター」の方のウェブサイトにある『センター紹介』のページの末尾にある『センター長挨拶』というコラムで、同センターが報道6社(※)が実施した支持率・不支持率の単純平均をトップに掲載している理由について、
「報道機関の世論調査結果が最も客観的な世論の指標であることを社会に再認識してほしいという、ささやかなメッセージを込めている」
などと述べています(※「報道6社」とは、朝日、日経、毎日、読売の4新聞社と共同通信社、NHKのこと)。
個人的には以前から「報道機関の世論調査が『最も客観的な世論の指標』だとは思えない」と申し上げて来たのですが、そもそも論としてこうした「事件」が発生したことに関しては、報道各社は「自社にそのような不正はない」と説明する義務があるように思えてなりません。
というのも、報道各社は「もりかけ問題」で舌鋒鋭く安倍政権を追及してきた際、「潔白であることを証明する責任は疑われた側にある」などと騙ってきたからであり、そうであるならば、「同業者」である産経・FNNの合同調査に不正が発見された以上、「自社には不正はない」と証明すべきではないでしょうか?
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
もっとも、他社に対し「襟を正せ」などと申し上げたところで、本当に「襟を正す」社があるのかどうかは微妙でしょう。繰り返しになりますが、報道各社が実施する世論調査は、あくまでも各社が勝手に実施しているだけであり、正直、そのプロセスについては、さほど第三者の目が入っているとは言い難いです。
今回は「明白な不正」だということですが、「サンプルを恣意的に選ぶ」、「適切な年齢補正を実施しない」といった「調整」が加えられているという可能性は否定できないからです。
いずれにせよ、当ウェブサイトでは今後とも、世論調査に関してはあくまでも「参考情報」という位置付けで接するというスタンスを維持したいと思いますが、産経・FNN合同調査を紹介し続けるかどうかは、同社の説明を見て判断したいと思います。
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独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(というよりも、個人的感情丸出しなのは自覚しているので)
今回のFNNの世論調査不正問題を受けて、(主にネットで)「毎日新
聞の世論調査に不正はなかったのか」、「これまで慰安婦報道をしていた
朝日新聞は、世論調査不正を隠蔽しているのではないか」という声があが
ることが予想されます。(これに対して、他のメディアは、「これはFN
Nだけの問題であり、わが社は違う」、さらには「世論調査不正をしたF
NNは、けしからん」と言い出すでしょう)
蛇足ですが、今は「(新型コロナウィルス感染がゼロでない)安倍総理
の対策に不満はないのか」、「新型コロナウィルス感染で今後、雇用に不
安はないのか」、「これらを解決してくれる総理の方が良いのではないの
か」と言われれば、必ず、安倍総理の支持は低く出るのではないでしょう
か。(他の国で新型コロナウィルス感染があるのに、政府への支持が高く
出るのは、「ビフォーコロナに戻ることは出来ない」と完全に諦めて(?)
いるのではないでしょうか)
駄文にて失礼しました。
すみません。追加です。
朝日新聞の記事からですが、「今回の世論調査不正は、知らない電話に
は出ないという昨今の事情から、必要なデータ数が集められなくて、焦っ
たのが原因ではないか」という記事がありました。もしそうなら、どのメ
ディアも、電話で調査するという方法ではなく、別の世論調査の方法を考
えなければならないのでは、ないでしょうか。(もっとも、開き直って、
国民全体の安倍総理への支持率ではなく、ある特定の集団の安倍総理への
支持だと、言い切る方法もありますが)
駄文にて失礼しました。
たしかに当該の「日本テレネット」に委託して世論調査してるマスメディアは、きっとFNNだけじゃないですよね。
それにいまどき番号非通知とか知らない番号からの電話に出ないですし、出る人は情弱の人でしょう。
情弱の人たちはオールドメディア依存ですから、オールドメディアのテレビ新聞には都合がいい対象なんでしょうね。
実際の数字とは掛け離れた大きさの円グラフとか平気で使うんだからまともな調査なんてやってるわけないよね、産経の対応で世論調査なんてこんなもんだと広く認識されたらそれはそれで良い
個人的な感想になりますが、「産経・FNN」でさえ世論調査で不正を行うなら「新大橋通り沿いの貸しビル屋」を筆頭に自称報道機関の行う世論調査には何の信頼も置けないと思います。🐧
会計士様のサイトで、各社が実施した世論調査結果比較を見る時に「産経」を基準にして、自称報道機関の認知バイアス度と悪質な対日情報操作の現況(実際に各社が報道している数字そのものが対日情報操作)が推測出来ると考えていましたが、それもあてに出来なくなったのは残念なことです。🐧
ハゲ親父様
仰る通りです。新聞屋、テレビ屋の発表数字はまっったくアテに出来ません。しかし産経はまだATMより少ーしだけマシかなと思ってました。ちょっと同じ程度だと認識を改めます。こんな事を家人、兄弟、知人に言っても、50%ぐらいは「変わった奴」と思われますが(笑)。
「不正は褒められたことではないが…」
「他社も襟を正せ」
はあ?なに言ってんだw
認めたから急ぎよい?おいおいおいw
急ぎすぎてよかったことはありませんでした(残
マスゴミ関係者乙www
>匿名様
急ぎよい?とか書いている貴方こそ何を仰っているのですか?(笑)
貴方もマスゴミ同様襟を正すべきですね。
>はあ?なに言ってんだw
>認めたから急ぎよい?おいおいおいw
だけではなくて、あなたの見解が聞きたいものです。
なぜ「はあ?なに言ってんだw」と思ったのか、
「おいおいおいw」と思ったのか。
それなくして、単に同調を求めるためだけの書き込みなら、ゴミ同様と思います。
正直、何が言いたいのかわからないです。
不正を働いたのは委託業者。
謝罪したのは委託元。
で、委託元に何を求めるの?
ヒント:木に縁りて魚を求む
他社は、我が社の世論調査では、○○、○○の方法で信頼性を担保しているから大丈夫です。という論理的な根拠を示すべきだと思います。
信頼できる相手だから、みたいな希薄な根拠しかない気がしますが。
フジサンケイは不正を認めるのなら、それによって調査がどのように歪んだのかについて検証して、結果を知らせて欲しいと思います。
アメリカで前回の大統領選でマスメディアの予想が悉く外れたのは、有権者が左寄りのマスメディアに不信感を持って正直な回答避けたことが原因、と言われています。
日本でも世論調査に同様の現象が起きている可能性はないのか、という感じもします。
文中にある
「報道機関の世論調査結果が最も客観的な世論の指標であることを社会に再認識してほしいという、ささやかなメッセージを込めている」
は、大嘘ですね。
「報道機関の世論調査は、調査会社に恣意的に作成され、読者を中心とする日本国民の扇動に利用される」
で、如何でしょうか。
良かったら、あなたもご参加ください。
寧ろチェックしてた事に驚いた
業界全体のチェック機構は無い事の裏付けでもあるけど
世論調査に限らず情報源の秘匿に拘るなら実績で信頼出来る事を示すしかないけど、とてもじゃないが…