ジム・ロジャーズ氏という方がいらっしゃいます。世間では「投資家」として有名ですが、当ウェブサイト的には「私なら日本を脱出し中韓に移住する」だの、「日本人は東京五輪後に自動小銃で武装せよ」だの、「黒田東彦はクレイジーだ」だの、なにかと支離滅裂な発言でネタとして楽しませていただける貴重な人材でもあります。そんなジム・ロジャーズ氏が最近、やたらと日本のウェブ評論サイトに顔を出されているようであり、複数のメディアの主張をまとめると「国境を閉じるな、これからは中国の時代だ」、といったところですが、これらの発言を眺めていると、実に味わい深いと言わざるを得ません。
ジム・ロジャーズ氏の迷言集
ジム・ロジャーズ氏といえば、世間では投資家として有名なのだそうですが、当ウェブサイトとしては貴重な「ネタの提供源」として活用させていただいています。
たとえば、『【どうぞご自由に】米投資家「私なら日本脱出し中韓に移住」』では、次のような発言を紹介しました。
「私が日本に住む10歳の子供であれば、一刻も早く日本を飛び出すことを考えるだろう。中国や韓国に移住したほうが、よほど豊かに生活できるのだから。」
どうぞご自由に、としか言い様がありません。
また、『米著名投資家「日本人は自動小銃で武装せよ」』では、東京五輪を契機に治安が悪化するはずだ、などとして、
「もし私が今、10歳の日本人ならば、自分自身にAK-47(自動小銃)を購入するか、もしくは、この国を去ることを選ぶだろう」
とする発言についても取り上げました。
少々論理が飛躍しすぎていて、何やらよくわからないというのが正直なところですが、そのジム・ロジャーズ氏の「ホンネ」が出たのが、おそらく『ジム・ロジャーズ氏「黒田日銀総裁はクレイジー」』でも取り上げた、次の発言でしょう。
「日銀の黒田総裁は、恐るべき規模で金融緩和を行い、さらに国債や上場投資信託を大量に買い入れている。黒田総裁はクレージーだ。安倍首相と黒田総裁は日本を破滅に導いている。今すぐ辞任すべきである」
外国人に日本の総理大臣や日銀総裁の人事に口出しして欲しくはありませんが(笑)、いずれにせよ、ジム・ロジャーズ氏の発言を真に受けるのが正しいとも思えません。どなたかがツイッターなどで発言されていたとおり、みずから積極的に自分自身の手の内を明かす投資家などいないからです。
本日は豪華2本建て
ちなみに、ジム・ロジャーズ氏の論考が頻繁に掲載されているウェブ評論サイトは、『東洋経済オンライン』や朝日新聞系の『AERA.dot』ですが、豪華なことに、本日はこの両サイトにジム・ロジャーズ氏がご登場になられているようです。
ジム・ロジャーズ「中国は必ず世界の覇権を握る」/新型コロナでアメリカの凋落はもはや決定的
ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。前回の「日本は20年後、必ず没落する」に引き続き、『ジム・ロジャーズ 大予測:激動する世界の見方(東洋経済新報社)』から天才投資家による世界情勢の見方をお伝えしたいと思います。<<…続きを読む>>
―――2020/05/29 6:00付 東洋経済オンラインより
東洋経済の方の記事では、ジム・ロジャーズ氏は「天才投資家」と持ち上げられていますが、そのジム・ロジャーズ氏の今度の主張は、
「長期的な視点に立てば、今回の新型コロナ危機を分岐点として、世界経済の成長が大きく減速し、アメリカや欧州の凋落が決定的になる」
というものだそうです。
あらゆる国が国境を閉じ、国境を越えた経済活動が停止したこと自体、大航海時代以来の自由貿易に逆行する動きであり、第1次大戦後のブロック経済が第2次大戦の遠因にあったという点を挙げたうえで、今回の局面が米欧凋落の契機になる、ということなのでしょう。
ただ、珍しく理論的にツッコミを入れてみたいのですが、「開放された国境と世界経済の成長に大きく依存して成長してきた国」といえば、中国そのものではないでしょうか。「国境を閉じたことで世界経済の成長が大きく減速」するなら、崩壊するのはむしろ中国のほうではないかと思えるのですが、いかがでしょうか。
国境閉じないスウェーデン見習え
そのジム・ロジャーズ氏は同日、『AERA.dot』にもご登壇になり、こんな論説をかましています。
ジム・ロジャーズ「国を閉じないスウェーデンを見習え」
「世界3大投資家」の一人とされるジム・ロジャーズ氏の本誌連載「世界3大投資家 ジム・ロジャーズがズバリ予言 2020年、お金と世界はこう動く」。今回は、ロックダウンがもたらした弊害について。<<…続きを読む>>
―――2020.5.29 08:00付 AERA.dotより
スウェーデンといえば、5月28日時点における人口100万人あたりの感染者数は約3500人で、130人少々に留まっている日本と比べると25倍に達していますが、そのスウェーデンの状況が「悪くはない」というのもなかなか凄い主張だと思います。
もちろん、国境を閉じることが防疫上、どのような効果をもたらすのかについては、いずれ科学的見地から事例の研究を行い、明らかにすることが求められると思いますし、現時点では「効果がある」とも「効果がない」とも申し上げるべきではないでしょう。
ただ、国境を開いたとしたときに、防疫上考えられる、コロナのさらなるパンデミックという点に言及せず、「国境を閉じないスウェーデンに見習え」も無責任極まりない発想でしょう。
オマケに1つ:「日本経済は大変なことになる」
以上、本稿では「豪華2本建て」でジム・ロジャーズ氏の発言の紹介を終えようと思っていたのですが、もうひとつ、ウェブ評論サイト『日経ビジネス電子版』に、こんな記事も発見してしまいました。
ジム・ロジャーズ 2021~22年の日本経済は大変なことになる
日経ビジネスの取材に対し、2019年時点で「2020年にも未曾有の危機が到来する」と予言していた世界的な投資家のジム・ロジャーズ氏。5月25日に日経BPから出版した新刊『危機の時代 伝説の投資家が語る経済とマネーの未来』では、大恐慌からリーマン・ショック、ブラックマンデー、新型コロナウイルスに至るまで、歴史を振り返りつつ、繰り返される危機の本質とどのように行動すべきかを詳細に読み解いている。<<…続きを読む>>
―――2020年5月27日付 日経ビジネス電子版より
こちらの記事は本日ではなく27日付のものですが、「絶対に破綻する」はずの日本のウェブ評論サイトに、やたらとご登場になられているのも不思議です。やはりそこまでして日本人にメッセージを伝えたいと思っているからなのか、はたまた単に暇なのでしょうか。
(※日経ビジネスといえば、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏や、日本を代表する優れたチャイナ・ウォッチャーである福島香織氏の連載が終了した時点で読まなくなったという方も多いような気がしますが、これも同誌の編集方針なので、何も言うつもりはありません。)
日経電子版の記事では、ジム・ロジャーズ氏は次のように述べます。
「日本は、すでに膨大な債務を抱えている。そして人口も減少している。事態に対処するためにさらに借金を増やさざるを得ない中にあって、人口は今後もますます減り続けていくだろう」
「国の借金論」と「人口減少論」は「日本は絶対に成長しない教」という宗教のお題目でもありますが、正直、日本が「国の借金」とやらを1000兆円以上積み上げておいて、いまだに金利がゼロやマイナスとなっている点を踏まえると、どうもジム・ロジャーズ氏が経済学を得意とされているようには見受けられません。
いずれにせよ、ジム・ロジャーズ氏が一生懸命に日本のメディアにご登場になられているという事実については、実に興味深い話だとしか言い様がないのです。
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その人の思想や主張を持知りながら専門家の意見として代弁させるところが、マスメディアのずるいところだと思います。
ジム・ロジャーズ氏
明らかに反日思想の方なのでスルーしてますw
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。
ジムロジャーズ氏の
「国境を閉じるな、これからは中国の時代だ」
は管理人様に取っては不本意かもしれないですが、
社会が無策ならばそれが現実になると思います。
厳密に言えば、人間の自由と権利は一切無くなったAIとネットワークが人間を管理して無能な(とはいっても今の人間より遥かに有能)人間をこの世から自由にリストラする中華専制システムに基づくシステムであり、情報の全ては権力者がフィルターを通じて決定するだけなく、権力者に不都合な存在は過去を含めて消去される世の中になると思います。
おそらくAIとネットワークの技術発達は最終的に人間の自由と権利を根こそぎ奪います。
今は自由と権利を人間が享受する人数が多い最後の時代ではないでしょうか。
以上です。駄文失礼しました。
ジムロジャース、飛ばない豚はタダの豚がしっくりくる見た目w
天才投資家(笑)?
確かに’70年代(半世紀前)の10年間くらいは、クォンタム・ファンドを設立したりしてトップクラスの運用をやったプロの投資家だった人のようですが、その後は第一線を引退しています。
今の職業は 雑誌レベルの「物書き」、話題作りのエンターテイナーみたいな人でしょうか。 自分の資産を本当に投資していたらとっくに破産していると思います。 つまり スポンサーの依頼通り発言する「役者」なんでしょうね。
たぶん、本国アメリカでは誰にも相手にされず居場所がないので 海外に逃げて来たのでしょう。
日本にもいますよね。 詐欺師的な元官僚、物書き、地方議員、、、。
ジムロジャース殿は高名な投資家と記憶しておりましたが、一昨年あたりに北朝鮮が経済開放して新しい市場ができると思い込んで、大韓航空株をしこたま買ったという記事を読んだ記憶があります。
その後に日本と韓国との輸出管理の問題で、韓国と日本の人の行き来が減って大韓航空の業績が悪くなったのを、一方的に日本が悪いという論調を書いていたと記憶しています。
たぶん、韓国や中国の株式を大量に買い込んだんでしょう。俗にいうポジショントークと言われる程度の戯言です。
本当にあれだけ言ってて大韓航空株をどうしたのか教えてほしいですよね。
冒険投資家で、グローバル経済の発展に乗っかった発展途上国に投資してしこたま儲けたので、その手法が忘れられないのでしょう。いまでは投資に値する国は減って、残っているのは変な国ばかりなんですけどねえ。
航空株で大損したと言うのはこの方ではなかったかな?
シンガポール在住 子供には中国語を学ばせているようです
「子供が15歳なら韓国語1歳なら中国語…略」
韓国語?わけわからん
↑中国よりの発言ばかり WHOの事務総長と同じですね
同感です。
売り逃げを目論んでるけど多分上手く行ってないんでしょうね。
典型的な詐欺師の手口
K資金でも貰ってるんでしょう
相手にする必要ありません
1990年頃まで中国はまだ閉鎖的でした。
低賃金を武器にしてサプライチェーンを上手に利用しながら世界経済に食い込んでいった訳です。
価格的なことは中国の値上げもすすんでいるので(知財を無視するから安いともいえる)
時間は少しかかるでしょうが別に中国に依存しなくても経済は回ります。
日本以上に少子高齢化が進む中国は焦りこそあれ、余裕はないでしょう。
日本人を扇動することで一儲けを企んでいるのが見え見えですね。
ジョージ・ソロスにしろこのジムさんにしても、「その種」の人たちです。金融関係の記事にもよく現れる方々ですが、経済専門家ではなく、金融でお遊びをしている「ギャンブラー」にすぎません。
「その種」の会社であるゴールドマンサックスにしろブルームバーグというメディアにしろ、韓国経済が不調の兆しを見せているときに「韓国企業株を買え!」という、その種の人たちの集まりです。※むろん、国家が不景気であっても、中身を判断したうえで株の価値を判断するべき、と言えますが。分かっている人は分かっているでしょうけど。
実はこのジム・ロジャースさんに関わらず、特に日本がらみの記事はこうした「怪談」じみた話題に満ち満ちています。経済から政治にかかわらず、それこそ日本文化紹介や日本語学習者のための英語のサイトにも「怪談」が満ち溢れています。日本人は自分たちは良い国に住んでいるし世界の人たちも分かってくれるだろうと、楽観的な態度です。毎日のように英語の日本がらみの話題を見ている私の身からするとこうした「怪談」が大勢を占めてしまっています。
こうしたジム・ロジャースさんの例を反面教師に、日本もいい加減「自分から打って出る」くらいの気構えが必要です。受け身になってはいけません。
ジム・ロジャースさんのよう話をする人が「100%」間違えているとは言いきれないないのが、今我々が立たされている状況です。消費増税の時、それを批判する流れがほとんどありませんでした(※野党の主張は論外)。保守を自任する人たちでさえ、データも見ずに「社会保障費財源確保のために、消費増税はやむを得ない」などと断定している人がほとんどでした。
ジム・ロジャースさんのような人が感じていることも、「100%間違っている」とは断定できません。多くの日本国民が、情勢が変化していることを理解し、正しい選択・素早く賢い対応ができているかが疑問です。
内戦や戦争に巻き込まれているような国を除き、主だった主要国は後進国を含め、この数十年のGDPの伸びを軽く分析しても、ゼロ成長というよりマイナス成長をしてしまっているのもまた日本くらいですから。このジムさんのような人が怪談話をしてしまうというのもうなずけてしまいます。
さて、経済予測といった数ある将来分析の中で、ほぼ100%確実に信頼できる未来予測データがあります。それは「人口予測」です。戦争や大災害のような事態が起こるときを除き、人口予測は確実です。「20年後の50歳代の人口は?」というのは、現在の30代の人口を調べて統計学的な数式を使って自然減を考慮して未来の人口予測はほぼ確実に当たります。
チャイナの場合「一人っ子政策」という時限爆弾を抱えています。2020年代は、この労働人口減・その他人口減による衰退を見る時代に入ると思われます(※もう始まってますが)。
日本の少子・高齢化も問題ですが、チャイナのこの問題は我々の想像をはるかに超えるスケールで影響すると予想できます。チャイナへの投資価値?自己責任で。
サムライアベンジャー 様
ニッセイ基礎研究所のレポートは大変興味深いです。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=59452&pno=4?site=nli
上記のレポートでは中国の介護保険制度はまだこれからのようです。
高齢化に伴う負担を個人と国が担うわけですが
中国として外貨を稼げないビジネスモデルはあり得ないのです。
今後は相当苦しいと思います。
ジム・ロジャース氏がまだイグ・ノーベル経済学賞を受賞していないのは、学会の怠慢だと思います。