本日の速報は「１ドル＝1270ウォンの大台突破」、ですが、それだけではありません。今朝の『ウォン安の韓国　なぜ日本とのスワップにこだわるのか』で予言したとおり、さっそく、韓国メディアにスワップ待望論がまたしても出てきました。「ドルの方舟」、だそうです。正直、自分の国の都合しか考えていない議論を眺めていると呆れて物も言えませんが、逆に、その論考を読めば、なぜ韓国が正面切って堂々と動こうとせずに水面下でこそこそと動くのか、何となくその理由がわかるような気がするのです。

【速報】１ドル＝1270ウォンを突破！

昨日の『【速報】USDKRWが1250の大台を突破』で報告したとおり、韓国ウォンの対米ドル相場（USDKRW）については、昨日夕方時点で１ドル＝1250ウォンの大台を突破し、日本時間の深夜は1260ウォン前後で推移。

今朝、欧州中央銀行（ＥＣＢ）による債券購入拡大などの報道を好感してか、一時的に１ドル＝1250ウォン程度に買い戻されたものの、再び１ドル＝1260ウォンの大台入りし、午前中に一時、１ドル＝1270ウォンの大台を突破しました（午前10時45分時点で1273.25ウォン）。

韓国ウォンが１ドル＝1270ウォンの大台に乗るのは、2009/07/15（水）以来、約11年ぶりのことでもありますが、その後はさらにウォン安が進んでいるようです。

中央日報「ドルの方舟」

それはさておき、今朝の『ウォン安の韓国　なぜ日本とのスワップにこだわるのか』では、韓国がこの期に及んで日本や米国、あるいはＧ２０諸国との通貨スワップを欲しがっている理由に関する考察を紹介したばかりですが、さっそくにその続報が出てきました。

韓国メディア『中央日報』（日本語版）に今朝、ヒトコトで言えば「厚かましい」としか言い様がない記事が掲載されているのです。

【時視各角】「ドルの方舟」に乗ってこそ生きる＝韓国（2020.03.19 08:04付　中央日報日本語版より）

「ドルの方舟」！

なんだかすごい表現ですね。

コラムを執筆したのは「中央日報コラムニスト」の「イ・ジョンジェ」氏です（漢字表記がわからないので、人名については原文どおり表記したいと思います）。

簡単にいえば、「米韓通貨スワップ協定を結べ」、という主張です（細かいことですが、米ＦＲＢが他国の中央銀行と締結している協定は「通貨スワップ」ではなく「為替スワップ」ですが、本稿ではあえて原文の「通貨スワップ」という誤用を修正せずに引用したいと思います）。

「人脈駆使して水面下でスワップ締結を！」

イ・ジョンジェ氏はコラム冒頭で、こう断言します。

「いま急ぐべきことは韓米通貨スワップの復元だ。」

その理由は、次のとおりです（※日本語表現については適宜修正・要約しています）。

• ①おカネは血液であるが、米国は血液であるドルをいかなる通貨とも交換するわけではなく、地域の名手の通貨、同盟の通貨とだけ交換する。通貨スワップは同盟の復元だ
• ②コロナのパンデミックがすべての資産を呑みこむなか、ドルだけがパンデミックの世の中の「ノアの方舟」だ。乗れば生存し、落伍すれば死ぬ
• ③ウォール街の代弁者であり、米政権にも近い米ＷＳＪが先週の社説で米韓通貨スワップの締結を提唱したばかりというタイミングであり、機会が良い

…。

なんだか「自分の国にとってのメリット」しか記載されていませんね。

①については、韓国がこれまで、米韓同盟の義務を果たさず、権利だけ悪用して来たという経緯を踏まえると、こういう非常時にだけ「同盟国」ヅラされても、米国にとってはイラッとくるのではないでしょうか。また、②についても、米国（や日本）にとっては「知ったことではない」話です。

さらに③については、問題のＷＳＪの社説（『ＷＳＪ「ＦＲＢは外国中央銀行と為替スワップ拡張を」』参照）の意図はよくわかりませんが、単なる民間のメディアに過ぎないＷＳＪが米韓為替スワップと主張したからといって、それが「良いタイミングだ」という話にはなりません。

もっとも、イ・ジョンジェ氏は米韓為替スワップの実現にはハードルがあるという事実を認めます。

そのうえで、米韓為替スワップを実現するためには、次のような戦略が必要だと述べるのです。

• （１）オーストラリア、シンガポール、台湾などの他国を引き込む必要がある
• （２）ウォール街の人脈を総動員しなければならない
• （３）水面下で動かなければならない

…。

このうち（２）、（３）については、米国の政界、金融界に対し、正面切って「米韓為替スワップが必要だ」と述べるのではなく、人脈を活用し、水面下でこそこそとロビー活動せよ、という主張ですね。いかにも韓国人らしい思考というべきでしょうか。

考えてみれば、韓国は日本に対しても、この手の「水面下で（あるいは密室で）上に訴えかけてこそこそと動く」という行為を仕掛けて来ますが、同じ手法を米国に対しても適用せよ、と述べているのですから呆れて物も言えません。

現実に米韓スワップは考えられるのか？

ただ、（１）の部分については、それなりに参考になります。

イ・ジョンジェ氏の記事にも言及がありますが、2008年の金融危機当時、米国が韓国など14ヵ国とスワップを締結する一方、「最後まで求めていたインドネシアと香港は拒否した」のだそうです。では、なぜ米国は韓国とのスワップの締結に応じたのか。

イ・ジョンジェ氏は次のように指摘します。

「当時、韓国は自他共に認める親米国家であった」。

つまり、李明博（り・めいはく）政権が（見た目は）「親米」政権だったからこそ、米国が韓国とのスワップ締結に応じた（ついでに日本が韓国とのスワップ増強に応じた）ということですが、この点についてはまさに同氏の指摘どおりでしょう。

韓国の突破口はドサクサに紛れてスワップ同盟に入ること

さて、あえて韓国の立場に立って申し上げましょう。

もし韓国が本気で主要国とのスワップ協定（通貨スワップや為替スワップ）の実現を狙っているならば、Ｇ２０諸国（とくに欧州諸国）を味方につけて、米国を含めた多国間連合（スワップ同盟）を結成し、ドサクサに紛れてそこに紛れ込む以外に戦略はないと思います。

この点、米国にとっては「同盟国」であるオーストラリアやニュージーランド、潜在的な同盟「国」である台湾などとのあいだで通貨スワップ、為替スワップを締結するインセンティブはあります。だからこそ、韓国としては、この米国との「スワップ同盟」に入るのが基本でしょう。

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もっとも、現在、米ＦＲＢが為替スワップを締結している相手は、日本、カナダ、英国、スイスの４ヵ国の中央銀行と欧州中央銀行（ＥＣＢ）、合計５つの中央銀行であり、これらの為替スワップは期間、金額ともに無制限です（また、このほかにも米国はメキシコとの間で通貨スワップを締結しています）。

そして、米国とスワップを締結していない諸国については、たとえば

• シンガポールは日本との間で通貨スワップ（30億ドル）と為替スワップ（1.1兆円）を保持している
• オーストラリアは日本との間で為替スワップ（1.6兆円）を保持している
• デンマークやラトビア、ポーランド、スウェーデンなどは、ＥＣＢとの間で通貨スワップを保持している

といったかたちで、「日米英欧瑞加６ヵ国同盟」にぶら下がる形で何らかのスワップ網を保持していますし、アジアには多国間通貨スワップ協定である「チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定（ＣＭＩＭ）」が存在しています。

そのうえで、これらのスワップで足りなければ国際通貨基金（ＩＭＦ）が救済・支援に乗り出す、という枠組みで十分でしょう。したがって、韓国が多国間スワップ網に入るという必然性はありません。

少々厳しい言い方ですが、現在の韓国の苦境は、韓国が自身で招いた状況ですので、韓国がスワップ網に入れなくてもあまり同情はできません。

余談ですが、日本としては少なくとも自称元徴用工問題や慰安婦財団解散事件、慰安婦像問題など、韓国自身が作り出した日本に対する敵対的・非合理な行動に基づくさまざまな問題をキレイに解決するまでは、日韓通貨スワップ協定を締結すべきではないことは指摘するまでもないでしょう。