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流行語大賞と「表現の自由」と「批判の自由」

先月の『相変わらず恣意的な流行語大賞の正しい楽しみ方とは?』の「続編」です。今年の『ユーキャン流行語大賞』が昨夜発表されたようですが、相変わらず「なぜこれが流行語なの?」と思ってしまうような言葉が散見されるのが実情です。ただ、日本には表現の自由がある以上、これを「やるな」とはいえませんし、むしろ当ウェブサイトとしては「積極的にこれからも意味不明な流行語を流してください」としか言いようがありません。なぜなら、「表現の自由」の裏には「批判する自由」があるからです。

流行語大賞「移民を受け入れざるを得ない」

流行語は、ときとして現代の世相を鋭くえぐり取るだけでなく、あとから振り返ったら「時代の空気」を知ることができるものでもあります。

ただ、先月の『相変わらず恣意的な流行語大賞の正しい楽しみ方とは?』でも取り上げたとおり、『現代用語の基礎知識』が選ぶ『ユーキャン新語・流行語大賞』が、今年も相変わらず、「本当に流行っていたの?」と疑問に感じざるを得ない用語が登場するようです。

すでにいくつかのサイトなどで話題になっていますが、今年の「年間大賞」には「ONE TEAM」で、ラグビー日本代表チームが受賞しました。これについて、流行語大賞のホームページには、該当する用語の説明欄の最後が、次のような文章で締められています。

ONE TEAMは、世界に広がりつつある排外的な空気に対する明確なカウンターメッセージであるとともに、近い将来、移民を受け入れざるを得ない日本の在り方を示唆するものとなった。それは安倍総理にもしっかりと伝わったと信じたい。

???

ラグビー日本代表の快進撃はすなおに嬉しいと思った国民が多かったと思いますが、なぜ唐突に「移民を受け入れざるを得ない」という表現が出てくるのでしょうか?流行語なら流行語ですなおに「ラグビー日本代表の快進撃おめでとう」で良いと思うのですが…。

ほかの受賞作品にも「?」が散見

「ONE TEAM」以外に「トップテン」に入ったほかの9つの「受賞作品」と、「選考委員特別賞」は、次のとおりです(カッコ内は受賞者)。

トップテン
  • 計画運休(国土交通省)
  • 軽減税率(有限会社 アキダイ 代表取締役社長)
  • スマイリングシンデレラ/しぶこ(プロゴルファー・渋野日向子さん)
  • タピる(たぴりすと。の華恋さんと奈緒さん)
  • #KuToo(アクティビストの石川優実さん)
  • ◯◯ペイ(PayPay株式会社)
  • 免許返納(免許を返納した全ての人)
  • 闇営業(FRIDAY編集部)
  • 令和(坂本八幡宮 宮司・御田良知さん)
選考委員特別賞
  • 後悔などあろうはずがありません(鈴木一朗さん)

「計画運休」は10月に襲来した台風19号に備えたものだと思いますが、森裕子参議院議員(国民民主党)が「質問通告遅れ」で霞ヶ関の職員を深夜まで足止めにしたという事実に言及がない点には不思議というほかありません。

また、「軽減税率」については、「なぜ生活必需品が軽減税率の対象外で、日刊新聞という怪文書が軽減税率の対象なのか」といった点に言及がなされていませんし、それでも消費税に関連した用語を流行語に挙げるなら、むしろ「イートイン脱税」の方がしっくりくる気がします。

一次が万事、この調子。さすが2016年にはガソリンプリカ虚偽記載問題と不倫問題で知られる「あのお方」が受賞されただけのことはあります

※ちなみに2016年の「流行語大賞」の受賞作のひとつが「ゲス不倫」(受賞者は週刊文春編集部)ですが、山尾志桜里先生ご自身がこの「ゲスな不倫」で受賞したわけではありませんので、ご注意ください。

やっぱりこれじゃないですか?

以前、『相変わらず恣意的な流行語大賞の正しい楽しみ方とは?』で「勝手流行語大賞候補」を提示したところ、コメント欄やツイッターなどでさまざまなご提案を頂きました。これらについて改めて五十音順に並べると、次のようなものがあります(ちょうど30個準備しました)。

  • アートという名のヘイト
  • イートイン脱税
  • NHKをぶっ壊す
  • 岡本社長
  • 科学を振りかざすな
  • 京アニ
  • 国民の敵
  • GSOMIA
  • 実名報道
  • 事務的説明会
  • 上級国民
  • 女系天皇
  • セクシー大臣
  • セルフ経済制裁
  • タマネギ男
  • チュサッパ
  • 質問通告遅れ
  • 丁寧な無視
  • ノドグロ
  • 8秒間の握手
  • フッ化水素
  • 文在寅
  • 募集工
  • ホワイト国
  • 野合
  • 闇営業
  • 八ッ場ダム
  • リスカブス
  • り地域
  • 令和おじさん

「岡本社長」とは反社会的勢力との濃厚なつながりが指摘される吉本興業の経営者のことだと思いますが、吉本興業は在阪民放各社が株主となっているためでしょうか、結局「吉本興業と反社会的組織の関係」については、オールドメディアがいっせいに無視した格好となっています。

また、「京アニ」「実名報道」は、7月の京アニスタジオ放火事件で被害者の実名をオールドメディアが強引に報道した事件ですが、その直後には、朝日新聞社が自社の記者の不祥事を(なぜか)実名ではなく匿名で報じるというオチまで付きました(『なぜ自社の不祥事は実名報道しないのですか?』参照)。

ただ、これらの用語を抑え、当ウェブサイトとして「ダントツの1位」を差し上げたいのは、やはり、

NHKをぶっ壊す!

ではないでしょうか。なにせ、子供のマンガにも出てきたほどですから(笑)

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、いうまでもなく、日本には表現自由があります。したがって、本稿では『ユーキャン流行語大賞』を批判してしまいましたが、だからといって、「こんな下らないもの、やめてしまえ!」などと申し上げるつもりはありません。いや、むしろ「どうぞ好きに毎年やって下さい」と言いたい気持ちでいっぱいです。

ただし、「表現の自由」の本当の意味は、「何を表現しても良い」、ということだけではありません。

「自分が表現したことに対し、批判されることを甘受しなければならない」、という意味でもあります。

『ユーキャン流行語大賞』が発表された直後、ツイッター上ではこの「流行語大賞」にノミネートすらされていない「#上級国民」というキーワードが「トレンド」に上がったようですが、これはおそらく多くのツイッターユーザーが独自にアンケート調査を実施し、この単語が多数、ツイートされた結果でしょう。

その意味で、すでにインターネット上では「流行語大賞をおちょくって遊ぶ」というカルチャーが出来上がっているようです。

新宿会計士:

View Comments (23)

  • 流行語大賞は「今年マスコミが必死で流行させようとした言葉一覧」
    レコード大賞は「来年マスコミがプッシュする歌手お披露目会」

    そう考えるのが最も自然だと思っております。
    要は「今年も俺たち情報操作頑張ったな!」という自己満足会ですねw

  • わたしが流行語大賞キメれるなら、
    独断と偏見ですが… キッパリ…

    ヒカン三原則

    非韓三原則

    悲韓三原則

    です〜。

  • 「~をぶっ壊す!」が一時的な流行で廃れてしまうことを心配しています。

    なにげに目立たないところでN国党の支持率が落ちてるんですよね。やはり、節操無しの立候補が印象を悪くした面は否定できません。

    流行語については、おかしな説明欄以外にも、何故それが流行語として扱われるの? という違和感があるものが多数あります。「今年の一押しキーワード」ぐらいの表現で、主観ですよ、と分かり易くした方がよさそうです。

  • NHKをぶっ壊す! が「ダントツの一位」ですか・・・

    N国党ウォッチャーとして一言申し上げるなら、
    今頃それをあげるの、ダントツでセンスがないですよ。

  • 個人的一位はリスカブスですね。普遍性としてはぶっちぎりでしょう。
    あと上級国民は流行っていますが、本質を覆い隠す意図が感じられるので好きじゃないですね。あれは特権階級と言った方が国民の敵にダイレクトに届くのでそちらの方が軸がぶれません。この表現の方が困る連中も多そうですし。

    • えくえすさま
      わたしも、リスカブスに一票。
      あれほど簡単に、韓国を象徴する一言は、無かった。

    • 特権階級と上級国民、確かに似ているように思いますが
      特権階級というと、ピラミッドの頂上付近の一握りというイメージがありますが、
      上級国民というとそれよりも多くの上層階級という印象がありますね。「貴族」ではなく「国民」である部分もポイントかと思います。
      これが意味するところは、対比的に自らがもっと低い、
      要は低級な存在であると言う自覚あるいは自虐みたいなものが、この言葉を積極的に使う人の根底にあるのではないかと。日本の中層階級の貧困化等も要因としてあるのではないかと思っております。

      至極勝手な偏見による分析ですが…

    • 自分もリスカブスに一票
      岩井志麻子さんでしたっけ、作家の力を感じる魔法の言葉でした。

  • > なぜ唐突に「移民を受け入れざるを得ない」という表現が出てくるのでしょうか?

    それはATM等が、移民大量受入れという結論を大前提に、そこからの逆算で全ての記事を書いているからではないかと思われます。

    他にも、「移民に選ばれる日本になろう。」とかいった様な事も書いてます。

    しかし、ATM等は、SGDsも同時に主張している、矛盾すると思うんですけどねぇ。

    近い将来、現在の中進国が発展して、移民が必要になった時、日本等の先進国が「移民に選ばれる国」になっていて、移民争奪戦に勝利し、中進国に移民が流れない様、嫌がらせするのが狙いなんでしょうか?

    日本等の先進国が今すべき事は、将来の移民争奪戦に勝利べく準備する事ではなく、移民無しで描ける成長戦略を整備する事でしょう。具体的には、高齢者・障碍者・女性・モラトリアム学生等の未活用労働力の活用と、生産性向上努力でしょう。「移民に選ばれない日本」になる事こそ、今すべき事です。

    > イートイン脱税

    この対策として、A社が「食品を販売する」、B社が「テーブル・椅子と場所を提供する」といった分離があります。他社の行動で、自社が徴収すべき税額が変わる様では困りますから。元々、「軽減税率」というのが無理筋だったのでしょう。公明党関係の御偉方は、キャビアとか1粒1万円の高級果実等が御好きなのカモ知れません。麻原彰晃もメロン好きでしたので、カルト宗教関係で偉くなった人の共通的性格なのだろうか? 本当に低額所得者対策なら、確定申告による給付付き税額控除(または還付)でしょ。高額所得者の超高級食材購入や、生活保護だけどベンツ乗り回している様な輩まで、税を軽くしてやる必要は全く無い。

    •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

      墺を見倣え様へ
      >それはATM等が、移民大量受入れという結論を大前提に、そこからの逆算で全ての記事を書いているからではないかと思われます。

       ATMは、その移民がATMの愛読者になることを、当然視しているのでは、
      ないでしょうか。

       駄文にて失礼しました。

  • 読売の社説にありました、あれは名古屋のナントカ展についてですが。
    曰く、「表現」と「主張」の履き違えだとか。
    流行語大賞についても、新宿会計士様は表現と捉えられてるようですが、私的にはこれも一種の政治的な主張に見えますね

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     そもそもユーキャン流行語大賞は、ユーキャン村内部で流行した言葉や
    流行語大賞にしたくない言葉を排除して、(無意識かもしれませんが)流
    行語大賞候補を絞り込んで、その中から選んでいるのでは、ないでしょう
    か。つまり、ユーキャン村の外で流行っている言葉は、最初から排除され
    ているのです。

     蛇足ですが、現代社会では、ユーキャン村だけでなく、それぞれ特定の
    人の集まりや地域別ごとに、それぞれ流行語があるのではないでしょうか。
    だから、現代社会の流行語を一つにまとめること自体、無理があるのでは
    ないでしょうか。

     駄文にて失礼しました。

  • 私が推すとすれば

    輸出規制(メディアの質を計るよい目安となりました)でしょうか。

    あと、メディアついでにオールドメディアですかね…

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