現在の日韓関係をヒトコトでいえば、「糸が切れた凧」のような状況です。このような状態になってしまった責任が日本に皆無だとは申し上げませんが、ただ、自分で日韓関係の悪化を招いた以上、事態を収拾する全責任は韓国側にあります。それなのに、感覚がマヒし切ったためでしょうか、韓国側では日本を公然と侮辱する常軌を逸した行動が相次いでおり、先日は市民団体が釜山の日本総領事館前の公道を「抗日通り」と名付けるなどの事件も発生しています。文在寅大統領の母親の死去に際し、安倍総理が弔電を送るなどの紳士的な対応を取る日本とは、じつに対照的です。
「糸が切れた凧」のような日韓関係
現在の日韓関係を巡っては、まさに「糸が切れた凧」、という比喩がピッタリではないかと思います。
韓国人の自称元徴用工やその遺族らが日本企業を相手取った訴訟で、韓国の大法院(※最高裁に相当)がちょうど1年前、日本企業に対して損害賠償を命じる確定判決を下したこと(つまり自称元徴用工判決)を契機に、日韓関係は、それまでとはまったく違う次元に入りました。
自称元徴用工判決以降、日韓関係に具体的にどのような悪影響を与えているか、あるいは日韓両国がどういう行動を取って来たか、などについては、『自称元徴用工判決から1年 破綻に向かう日韓関係』で触れました。
本稿では詳しくは繰り返しませんが、自称元徴用工判決は日韓間の条約や国際法に明確に違反するものであり、仮にこの判決が強制執行されるようなことがあれば、もう日本企業は安心して韓国でビジネスをすることができなくなりますし、日韓関係事態も名実ともに終焉を迎えざるを得ないでしょう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ただし、昨年の自称元徴用工判決という「一線」を越えてしまったあたりからでしょうか、韓国の反日的行動が、それこそ「糸が切れた凧」のように、まったくコントロールできなくなっているように見受けられますし、そのこと自体、痛烈なブーメランとして、韓国の評判自体をいたく傷つけているのです。
より踏み込んで言えば、自称元徴用工判決問題は、韓国が「法治国家」としての国際的評価をかなぐり捨てているという意味において、自傷行為でもあります(※もっとも、韓国が今までも「法治国家」と呼べたのかどうかについては、議論がある点だと思いますが…)。
つまり、韓国の一連の国際法違反行為は、韓国自身が戦後秩序に挑戦している(というよりも戦後秩序を積極的に破壊しようとしている)のと同じ意味であり、日韓関係に留まらず、西側諸国全体から問題視されるべき筋合いのものに変化しつつあるのです。
また、日韓関係以外に目を転じてみると、開城(かいじょう)工業団地・金剛山(こんごうさん)観光事業などのように、韓国が北朝鮮に対して外貨獲得源を提供しようと必死になっていると思しき話題も多く、その意味では韓国は北朝鮮の核武装を幇助する「共犯者」でもあります。
さらに、韓国政府が8月22日に打ち出した日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)の破棄方針は、韓国が戦後の建国以来、築き上げてきた米国との関係を破綻に追い込みかねないものです。つまり、韓国はいま「国として終わろうとしている」のかもしれません。
すでに感覚がマヒしている
ただ、この1年間の韓国メディア、韓国政府などの情報発信を見ていて一番感じたのは、「自分たちが不法行為をやっている」という認識が、まったく見られない、という点です。
ここで少しだけ脱線しますが、韓国に「不法行為」の認識がないことを巡り、その責任の一部は日本にもあります。韓国が理不尽な行為で日韓関係を悪化させた場合、落としどころとしては、基本的に
- ①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することで、日韓関係の破綻を避ける
- ③韓国が国際法を破り続け、日本が原理原則を貫き続けることで、日韓関係が破綻する
という3つのいずれかしか帰結はあり得ません。
しかし、これまでの日韓関係悪化局面ではたいていの場合、日本が譲歩し続けた(つまり②を貫き続けた)ためでしょうか、日韓関係が悪化した局面において、韓国側には「自分たちが悪いことをしている」、「自分たちこそが改めなければならない」という認識を持つことができなかったのではないかと思います。
この点こそが安倍政権以前の日本の歴代政権にとって最大の反省点であり、また、安倍政権が今回の局面において②の選択肢を拒絶し続けていることは、日本外交にとっては非常に良い変化であることは間違いありません(※といっても、安倍政権の外交のすべてを無条件に肯定するつもりはありませんが…)。
本筋に戻りましょう。
ここで最大の問題点は、日本外交が「韓国に安易に譲歩しない」という方向に舵を切ったにも関わらず、韓国側が旧来の姿勢を崩していない点にあります。「日韓関係が悪化した局面では、日本が韓国に対して譲歩してくれていた」という成功体験が鮮烈に韓国側に刷りこまれているためでしょうか。
そうなると、日本が譲歩してくれるまで、日本に対して「ウソツキ外交」「告げ口外交」「瀬戸際外交」を繰り返し、やがて感覚がマヒしてしまうのではないかと思います。
【参考】ウソツキ・告げ口・瀬戸際外交
- 「ウソツキ外交」とは:あることないこと織り交ぜて相手国を揺さぶる外交のこと。
- 「告げ口外交」とは:国際社会に対してウソを交えつつ「相手国の不当性」を強調する外交のこと。
- 「瀬戸際外交」とは:国際協定の破棄、軍事的挑発などの不法行為をチラつかせる外交のこと。
今度は「抗日通り」
韓国の感覚がマヒしているという有力な証拠はたくさんあるのですが、そのひとつが、韓国・釜山の日本総領事館付近の道に、「抗日通り」の看板が設置されたという事件です。
釜山に「抗日通り」の看板が設置されると…日本政府、外交ルートを通じて韓国に抗議(2019.10.31 06:56付 中央日報日本語版より)
韓国メディア『中央日報』(日本語版)の報道によれば、「安倍糾弾釜山市民行動」なる団体が自称元徴用工判決から1周年となる30日、釜山の日本領事館付近の公園で「抗日通りの宣言式」を行い、「抗日通り」の看板を設置したのだそうです。
この団体が「抗日通り」と名付けたのは、日本総領事館前にある慰安婦像から「強制徴用労働者像」までの150メートルの区間だそうですが、この団体側は
「1年前、大法院は日本企業が強制徴用者に賠償しなければならないと判決したが、日本政府は依然として日帝による強制支配が合法だとして謝罪すらしていない/謝罪と賠償を促す意味で抗日通りを宣言する」
などと主張しているのだとか。
もともと韓国は『外交関係に関するウィーン条約』を守らない国として有名ですが、今回の行動もあきらかにウィーン条約(第22条)違反でしょう。
外交関係に関するウィーン条約 第22条
- 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。
- 接受国は、侵入または損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害または公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
- 使節団の公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は、捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される。
外国の公館の尊厳を損ねるような建造物・構築物を次々と設置されて、そんな国とどうやって正常な国交を維持すれば良いというのでしょうか。
ウィーン条約そのものは1961年に開かれた会議で採択されたものですが、もともとは古くから存在している、外交関係全般や外交使節団(外国の大使や公使など)の特権(いわゆる外交特権)に関する国際慣習法を取りまとめたものであり、いわば万国共通の外交プロトコルの塊です。
何より、韓国が日本総領事館の尊厳を守ろうともしないということは、韓国に大使館・領事館を置くほかのすべての国の外交使節団にも見られているという事実を忘れてはなりません。
日本は冷静さを失うな
いずれにせよ、韓国の市民団体らの常軌を逸した反日行動は、もはや糸が切れた凧のように、韓国政府自身にも統制できない状況になってしまっているように思えます。
ただし、韓国が冷静さを欠いているからといって、日本も同じ次元に堕ちてはなりません。とくに、李洛淵(り・らくえん)韓国首相を天皇陛下御即位の式典に招いたように、たとえ韓国が相手といえども、国交が存在する限りは、最低限の礼節は維持しなければならないでしょう。
その典型的な事例が、次の記事に出ています。
安倍首相、文大統領の母の死去に弔電…韓日関係と重なって「注目」(2019.10.31 06:43付 中央日報日本語版より)
先日、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の母親・姜韓玉(きょう・かんぎょく)さんが亡くなったそうですが、中央日報によると、長嶺安政駐韓大使が弔問に訪れたほか、安倍晋三総理大臣は文在寅氏に対し弔電を送ったのだとか。
ごく当たり前の対応です。
ちなみに日本の終戦間際の首相・鈴木貫太郎は、交戦相手国である米国のフランクリン・D・ルーズベルト大統領が1945年4月12日に突然死した際には、それに哀悼の意を表したと伝えられています(次の記事などを参照)。
終戦宰相・鈴木貫太郎 連合国に条件付降伏を呑ませた交渉術(2015.11.23 07:00付 NEWSポストセブンより)
敵対国に対してすら最低限の礼節を欠かさないのが日本ですから、いちおう、形式的には「友好国」である韓国に対し、国家元首の身内の不幸には弔電などの礼節をわきまえるのは当然のことでしょう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それなのに、先ほどの中央日報の記事には、こんなくだりも出て来ます。
「長峰大使は弔問の途中で文大統領に安倍首相の弔電を手渡したことが分かった。これは韓国政府が韓日関係の改善に向けた解決法を模索する時点と重なって注目される。」
他人の不幸を外交交渉にしようとする姿勢の浅薄さもさることながら、何が何でも「日本が韓国に譲歩する形での関係改善に前向き」であるかのごとく、読者に印象付けようとするような姿勢には、いいかげん、辟易します。
もちろん、この手の弔電すら送らなくなる事態が生じれば、それはもう国と国との関係が末期的状態になっているという意味ですが、日本が最低限の礼節を示したことをもって「韓日関係改善を模索する動き」などと軽々に決めつけるのはいかがなものかと思う次第です。
View Comments (18)
反日・侮日原理主義と言うよりも、もはやそれをやらなくては生きられない、依存症。
重い病、ビョーキですわ、この民族。
韓国のこの不感症ぶりは、日本にとってはありがたいことです。
韓国が事あるごとに反日を宣伝してくれるおかげで、もともと全く国際的注目を集めていなかった日韓関係が認知されて来ています。各国がある程度の興味を持って眺めている中で、韓国の憎悪の再生産と日本の礼儀正しさが際立つものというものです。
声と態度の大きい自称被害者に同情することは人格者でも難しいと思います。豊田有恒氏ではないですが、「いい加減にしろ韓国」と各国に思われていることに気がつけばいいのですが、まあ気がつかないんでしょう。
本日プライムニュースで、額賀さん、河村さん韓国の与野党議員1人ずつで、今後の日韓関係改善の道の模索について語り合うらしいですが、何話するんですかね。本記事のような事実も取り上げるんでしょうか、反町さん。
アメリカは、「徴用工」問題について、河野前外務大臣の説明「サンフランシスコ平和条約で形作られた秩序の破壊」で完璧に理解してるはずです。
二国間条約における紛争のレベルからも、ましてや単なる国際法違反なんてごくありふれた生易しい話でもありません。(アメリカ自身国際法違反なんて当たり前ですから)
まあでも現職大統領の母の葬儀が家族葬って全く正常じゃない話ですよね。これをもって大統領が窮地に陥っていないと考える方がおかしい、麻痺してると感じます。
わけわからなくなってしまいました。2パラグラフ目訂正です
二国間条約における紛争のレベルからも大きく逸脱し、ましてや単なる国際法違反なんてごくありふれた生易しい話でもありません。(アメリカ自身国際法違反なんて当たり前ですから)
>自分で日韓関係の悪化を招いた以上、事態を収拾する全責任は韓国側にあります。
そんなこと、半島人である彼らにわかるはずがありません。そもそも、半島人に我々日本人と同じ規範を求めるほうにムリがあります。
慰安婦像(AI?ロボットを作ったそうですよ。爆笑)といい、抗日(我々は日本に負けないぞ)通りといい。自国がどのような状況にあるのかも知らずに反日に興じています。
たまに覚醒した人物がまともなことを言ったとして、それを理解できる民族ではないとする割り切りが必要です。ムダに疲れてしまいますから。
「韓国の自動車労組は毎年スト…トヨタは50年間労使紛糾なし」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191030-00080267-chosun-kr
日本のトヨタやアメリカのGMなどに例をとり、労使の協調なくしては企業の発展はない。といったごく当たり前のことを言っています。が韓国の労組や、雇用する側の財閥には、届かない(理解しない)と存じます。理由?それは、彼らが半島人であり、半島人は自己の利益しか優先しないからです。
また、南北統一を看板政策としている文在寅政権は極端な親北政策で、韓国の国防を危機に晒しています。
文在寅大統領が韓国をどうするつもりかは知りませんが、彼も半島人であることから、国家よりは自己の政治利益を優先するのでしょう。
韓国の人々は反日や反米に興じている場合じゃないと思うのですが(溜息)、まあ、彼らが半島人である限りは、行きつくところに行くのでしょう。建国以来、日米がムダに支えてきた国家が瓦解します。日本としてはこれ以上のムダをすべきではありません。
蛇足ではございますが、
>日本が譲歩し続けたためでしょうか、(中略)韓国側には「自分たちが悪いことをしている」、「自分たちこそが改めなければならない」という認識を持つことができなかったのではないかと思います。
そのような意識を持ち続ける限り、日本は朝鮮半島という重荷を背負い続けることになります。
いかなる経緯、いかなる理由があったとして、独立国家は自ら成長するものです。他国がその成長を助け保護するものではありません。
今の日本人は、抗日という言葉も反日もさほど変わらいような。
よく言われるように、一体何と戦ってるw
粛々と脱半島、韓国に関わらければ、全ての道路が抗日通りになっても、
日本人は、困らない。
でも、国際社会には発信しましょう、全ての道が抗日だと、
道に迷うw、グーグルは無かった?
少女像も抗日通りも、もっともっと増やして、ありきたりな存在に。
あの像は、交通事故の被害者と、しれっと国際社会に。
報復合戦は徳にならない、日本は韓国と揉めていません。
ルールを愚直に守る国、とのイメージを発信するのが吉。
>あの像は、交通事故の被害者と、しれっと国際社会に。
私もそう勘違いしていたのですが、それはデマだそうです。
作者が怪しい商売をしているのは確実なんですが。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%85%B0%E5%AE%89%E5%A9%A6%E5%83%8F#米軍装甲車轢死事件追悼碑の転用説
労働・市民団体で構成された「安倍糾弾釜山市民行動」は、ざっくりと言えば、政権寄りの左派親北団体で、目的は離日工作だと思います。
別ソースですが、「団体の会員150人は同日「不法云々しないで、抗日通りを保障しろ」「積弊の巣窟、自由韓国党の解体こそ正解だ」などのスローガンを叫んで」ということですので、団体の性格は、間違いないと思います。
以前釜山で徴用工像を設置することで、揉めていた連中が、文字の看板設置をしようとしているという事です。
韓国人の感覚がマヒしているのとは、少し違うと思います(マヒは、しているんでしょうけど)。
要求は単純で「早く謝罪と賠償をするニダ」です。
また「不法云々しないで、抗日通りを保障しろ」と言う通り、自分達がやっているのは、違法行為だが、日本はそれを認めろと言う、法治国家であるまじき行為です。
当然譲歩しても、次の不法行為をして来るだけですので、意味が有りませんし、政府が抗議しても変わりません。
私が言う、断交しても問題が解決しないというのは、この手の事案が、断交しても変わらずに起きるという事です。
親北左派は放置しかないような、変わりませんよ。
彼の地での出来事は、脱半島で関わらない。
問題解決をしようとすると、関与することですから。
彼らは変わらないし変われない
たんな様のコメントにあるように
仮に断交しても同じ事でしょう
全く同意見です
遠回りですが、彼らがいかに異常か
世界を味方にしていく外交を続ける
関わらず、教えず、救わず、を
続ける
そして憲法改正、スパイ防止法成立
国内の反日勢力を潰していく
次の総選挙は天下分け目の戦い
彼らが何をしようが揺るがない国を
作るしかないように考えます
すでに一線を越えた彼らが日本に
二線(軍事的な行動、偶発を装うかも)
を越える前に準備が必要です