本日の記事は、しばらくGSOMIAに関するものが続くと思います。今朝の『日韓GSOMIA破棄と「日本の覚悟」』では、韓国が日韓GSOMIA破棄を決定したことを受けて、「GSOMIAの本質」「今後想定される韓国からの攻撃」、「日本国民としての覚悟」について議論しました。こうしたなか、多くのメディアからさまざまな反応が出ていますが、本稿ではこれらのメディアの反応をいくつか拾っておきたいと思います。
毎日新聞「GSOMIA破棄の責任の一端は安倍政権にもある」
韓国政府が昨日夕方6時20分ごろ、日韓間の包括的軍事情報保護協定(GSOMIA)を破棄すると発表したことの衝撃が続いています。
現在見たところ、朝日新聞は今朝の社説で本件について無視したようですが、毎日新聞の社説については予想どおり、「こうした事態を招いた責任の一端は、安倍政権にもある」として、日本に責任をなすりつける姿勢を示しています。
韓国が情報協定破棄 対立の高次元化を憂える(2019年8月23日付 毎日新聞東京朝刊より)
毎日社説では韓国側が自称元徴用工問題や慰安婦問題などで「不誠実な対応を続けていることは事実」としながらも、安倍政権については「外交問題と経済政策を絡めたことは不適切」などと決めつけたうえで、「深刻な関係悪化を改善に導いていく責任は双方にあること」を自覚せよ、と要求しています。
毎日新聞の社説を読むと、「他人に対して偉そうに高説を垂れる前に、『変態ニュース』を全世界に配信していた事件(下記記事参照)や自社のカメラマンが2003年にヨルダンの空港でクラスター爆弾を炸裂させた事件などについて、日本国民に対し説明することの方が先ではないか」と感じてしまいます。
毎日新聞英語版サイト 「変態ニュース」を世界発信(2008/6/20 20:31付 J-CASTニュースより)
中央日報は「新アチソンライン」
さて、社説という意味では、韓国メディア『中央日報』(日本語版)の反応は意外でした。
いつもなら「こうなったのは日本も悪い」とばかりに逆ギレして来るはずの中央日報が、なぜか今回に関してはほぼ一方的に韓国政府の決定を批判しているからです。
【社説】何のためのGSOMIA破棄なのか懸念される=韓国(2019年08月23日06時48分付 中央日報日本語版より)
先ほどの毎日新聞の「安倍政権にも一定の責任」という主張がなされていると期待して社説を読んでみたら、意外としおらしくて驚いてしまいました。
というのも、中央日報は今回の韓国政府の決定について、「韓日間葛藤を悪化させるだけでなく、韓国の安保の軸である韓日米三角安保協力も揺るがす」、「安保上の国益を考えると誤った判断に間違いない」などと批判しています。
中央日報の社説では、
- 「何よりGSOMIAは安保面で実質的な力になってきた。2016年締結後、両国は合わせて29件の情報を交換してきた。日本は衛星で収集した写真資料などを、韓国は人的情報(ヒューミント)を通じて得た情報を共有し、互いに少なからず寄与してきた。」
- 「昨年末、強制徴用判決で韓日関係が悪くなった後にも7件が交換されたことを見ても両側がGSOMIAをどのように考えているのかが分かる。」
と、GSOMIAが韓国の安全保障に一定の寄与をしてきたと指摘。さらに重要なことに、今回の決定により韓国が米国からの信頼を失いかねないという点に言及しているのです。
さらには、中央日報はこんな指摘をします。
「ただでさえ韓国が日米両国が主導する『インド太平洋戦略』に消極的という指摘が少なくなかった。それでもGSOMIAを廃棄するというのは『新アチソンライン』を自ら引こうとする行為ではないのかという懸念の声も上がっている。」(※下線部は引用者による加工)
「新アチソンライン」!
中央日報にしてはえらく踏み込んだ記述ですね。正直、この単語が韓国メディアから出て来るとは思っていませんでしたので、これにはすなおに驚きました。
韓国は自らの存在意義を否定した!
そのうえで中央日報の社説では、
「今でも廃棄決定を見直す、それとも日本と米国の信頼を失わない画期的な方法を講じる必要がある。」
と主張しています。この「画期的な方法」とやらが何を意味するのかは知りませんが、いまさらいかなる方法を講じたところで、正直、手遅れです。なぜなら、韓国政府が昨日の決定を下したこと自体が、すでに日米両国の韓国に対する信頼を損ねるものだからです。
この点、米国政府はこれにどう反応しているのでしょうか。
次のジャパンタイムズの記事に、短いながらも国防総省(ペンタゴン)関係者のコメントが掲載されています。
South Korea decides to exit intelligence-sharing pact with Japan(2019/08/22付 the Japan Timesより)
ジャパンタイムズによると、ペンタゴンのイーストバーン報道官は「日韓両国には違いを解決して協力してほしい」、「きっとそれができるはずだ」などと述べたそうです。原文は次のとおりです。
“We encourage Japan and Korea to work together to resolve their differences,” Pentagon spokesman Lt. Col. Dave Eastburn told The Japan Times. “I hope they can do this quickly. We are all stronger — and Northeast Asia is safer — when the United States, Japan, and Korea work together in solidarity and friendship. Intel sharing is key to developing our common defense policy and strategy.”
これを読む限りにおいては、ペンタゴンとしては現在のところ、「驚いた」が「とりあえず原則論を伝える」という点に集中しているようにも見えます。
しかしながら、今朝の『日韓GSOMIA破棄と「日本の覚悟」』でも報告したとおり、日韓GSOMIAは軍事同盟の関係にない日韓両国が軍事情報の交換を容易にすることで、結果的に「日米韓3ヵ国連携」をスムーズに機能させるための法的インフラである、という側面が強いといえます。
それをみずから断ち切ったということは、単に日韓軍事協力や日米韓3ヵ国連携の枠組みが、日韓GSOMIAが成立する2016年11月前の状況に戻るだけでなく、それよりも大幅に後退することを意味しています。
最悪の場合、米韓同盟自体が消滅に向けて加速することにつながりかねませんし、米韓同盟の消滅は即、現在の「大韓民国」の消滅を意味します。
なぜなら、韓国という国はそもそも米国が1948年に作った「自由主義陣営のための橋頭堡」のようなものであり、自ら「自由主義陣営のための橋頭堡」としての役割を否定した以上、韓国の国としての存在意義は終わった、ということになりかねないからです。
日本政府はどう受け止めるのか
さて、本件についてはおそらく、これから菅義偉(すが・よしひで)内閣官房長官が記者会見などの場で「北朝鮮の非核化などを巡る日韓協力は重要だ」といった原則論を繰り返すのだと思いますが、日本政府(あるいは安倍晋三総理大臣)の内心は、複雑なのではないでしょうか。
日本政府内では韓国が名実ともに「敵対国」になるという覚悟ができているようには見受けられませんし、また、日本の国防体制の再構築は終了していませんが、だからといって、「韓国がいつまでも日米の友好国であり続けている」という認識では困ります。
否が応でも、韓国を「仮想敵国」と置いたシミュレーションを行わざるを得ませんし、場合によっては出入国管理も強化しなければならないかもしれません。
今から2年前の『日本政府は「訪日客4000万人目標」を撤回せよ!』などで少しだけ述べた論点ですが、正直、「訪日外国人4000万人」という目標だけが独り歩きして、「仮想敵国」からノービザで無制限に入国を許すという状況が、国防上何を意味するかについて、考え直すべきです。
当ウェブサイトではかなり以前から、少なくとも韓国国民に対する観光ビザ、短期商用ビザの免除制度については廃止すべきだと考えて来ましたし、すぐに廃止することができないならば、せめて滞在可能期間を15日に圧縮したうえで、入国回数制限を設けるべきだと考えて来ました。
日本政府は常に日本の国益を考えて動かねばなりません。
是非、この機会に日本政府には「次の措置」を迅速に打ち出していただきたいと思います。
View Comments (29)
完全に敵国の方へいった国ならノービザはありえない
入出国規制でもいいくらい
訳のわからん連中が日本で暴れたらどうすんのよ
ゴミのようなメディアは読むだけ時間の無駄のような気がします。
https://www.defensenews.com/global/asia-pacific/2019/08/22/south-korea-ends-intel-sharing-deal-with-japan/
Jane'sは更新頻度が低いので未だ載らず。
https://www.janes.com/archive
https://thehill.com/policy/defense/458439-pentagon-expresses-concern-and-disappointment-over-axed-south-korea-japan
Pentagon expresses 'concern and disappointment' over axed South Korea-Japan intelligence sharing pact
https://www.usatoday.com/story/news/world/2019/08/22/south-korea-end-intelligence-sharing-deal-japan/2081846001/
South Korea to nix intelligence-sharing deal with Japan, alarming US military officials
まあ、今のところ米国の公式コメントは上の二つに共通するものだけのようですね。
ネットからです
真偽一切確認していません
557 名前:(´・ω・`)(`ハ´ )さん :2019/08/23(金) 09:49:52.18 ID:d+Yh/cyc
至急お願いします
ソース元は聯合ニュース、ツイートは毎日新聞
yonemura koichi
@micungengyi
韓国大統領府関係者が昨日のブリーフで「米国とほぼリアルタイムで
コミュニケーションを取っており、米国は今回の韓国政府の決定を
理解している」と言ったことについて米政府関係者は聯合ニュースに対して
「事実でない」と不快感示す。まあ、そりゃそうだ。
"We are especially unhappy that the South Korean government is
saying it had U.S. understanding. Not true," the source told
Yonhap on condition of anonymity.
https://twitter.com/micungengyi/status/1164697452336648193
まあそうだよね
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文在寅はGSOMIA破棄をそんなに深刻に考えていないと思いますよ。単に、日本との交渉を有利に進めるための材料の一つくらいの気持ちでしょう。
プライドも恥を感じることも合理性もない国ですから、状況を見てヤバそうと思えば、また締結しなおせばいいやくらいのものでしょう。日本もアメリカも破棄はよろしくないと言っているのですから、年末にでも再締結してやると韓国が言い出せば、日米とも拒否はしないでしょう。足もと見られています。
私としてはGSOMIA破棄で何かがガラリと変わるなどということはおおよそ考えられないのではないかと思っています。引き続き韓国は日本に寄生するために難癖をつけ続け、日本はその度に苦労するのでしょう。と思いますが、さてどうなっていきますかね。
日本には韓国の圧力に屈することなく、毅然とした態度を貫いてほしいと思います。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
韓国の文大統領は、日韓GSOMIAが破棄しても、日本から必要な情報は、
渡してもらえると考えているのではないでしょうか。
蛇足ですが、もしGSOMIA破棄による問題が生じて(韓国)国内外から、
文大統領への批判が高まったら、「実は、安倍総理の方から、GSOMIA破棄
を通達してきた」と言い出すのではないかと、妄想してみました。
駄文にて失礼しました。
記事更新誠にありがとうございます。
「り」地域政権としては「克日」、ひいては「克米」を目指しているものと推察しますが、いかんせんオママゴト政権ゆえ、いずれも革命ゴッコ遊びレベルでしかありません。
いくら告げ口外交をしようと、この場合あくまでも日本からの物理的攻撃がない限り、最寄りの「ち」地域からミサイル攻撃を受けようがどうなろうが、安保面での権利・義務を放棄した側の自業自得でしかないのですし。
こちらとしては正に「渡りに船」、外交上致し方なしという場面以外では、本質的に日本は動く必要など現状全くないと思います。
あまみ さま
>いかんせんオママゴト政権ゆえ、いずれも革命ゴッコ遊びレベルでしかありません。
賛同します。そのとおりですね。
文在寅が大統領に就任後、様々なパフォーマンスを見せたと思いますが、何か一つでも実績につながったことがありますでしょうか。口先だけで勇ましいことを言い、フリをしているだけなんですよね。
「張子の虎」ならぬ「張子の寅」です。無制限、無責任、言いたい放題ですから、一々深刻に受け止めていたのでは、こっちの身が持ちません。文在寅としては自分の演技で引っ掻き回し、日本が右往左往すれば、効いた効いたとほくそ笑むのでしょう。
先日許可した数件の輸出について「不買運動の勝利!」なんて言ってるソウル市民がテレビに映ってましたが…
GSOMIA破棄についてもなんか期待持たせちゃったのかな。
それにしても国家レベルでやっちゃうのは実際凄いですよね。
このネタで爆笑できるのが日本国民だけなのかもしれないと思うともったいない。
そういった意味でも草の根運動として世界への広報を強化すべしですね。
中央日報の社説は確かに意外な内容と言えますが、この社説が、ハングルでも公開されているのかどうかが気になります。日本語だけじゃないかという気がします。
今の韓国では「国民の利益」に関するコンセンサスが取れていないように思える。
最も優先されるべき「国民の安全」に関する政府の対応が
感覚的であり、現実的、論理的でない。これでは、国民はついていけない。
韓国政府は日本に対し、「歴史に謙虚に向き合え」と主張するが、
自らが、「事実に謙虚に向き合う」事が求められる。
信念を持つことは立派なことだが、それに合わない事実に目を背けた瞬間に
信念は輝きを失い、暴走を始める。そして国民を不幸にする。
国際政治は学生の遊びではない。信念を絶えず事実で検証しつつ、
その実現の為に現実と向き合う勇気が試される。
今回のGSOMIAの破棄は感覚的であり、韓国民の安全を蔑ろにした点で国民の支持は得られないと思われる。
文政権の民族優先の信念が現実対応力、感覚を鈍らせていることは韓国民にとっての悲劇に繋がりかねない。
政権に現実と向き合う覚悟と勇気が無いのが見ていてもどかしいし悲しい。
私は韓国がもう少し瀬戸際外交がうまいと思ってましたが、そうでもないようですね。
日本の民主党政権時、鳩山菅内閣ではまずいと判断したアメリカは、CIA が動いて野田首相にすげ替えたそうです。
文大統領もそろそろ取り替えられてしまうかもしれませんね。日本ほど簡単に取替が効くのかはわかりませんが。
10¢の鉛玉で済むニダ。
って、韓国伝統の交代方法だと、悲劇の故・文大統領のあとにもっと先鋭的な後任者が出てくる可能性があるんですよねえ。
チキンサラダ さま
>韓国がもう少し瀬戸際外交がうまいと思ってました
最近見ている限り、一本調子のステレオタイプで、頭の中空っぽですよね。韓国の鳩山内閣です。権謀術数のかけらもありません。
文在寅様にあられましては、このまま任期終了まで大統領を務めることを切に願っています。無能が国のトップなんて、これぞ日本の国益ですね。
どうしても韓国の次のナナメ上の手は何か、を期待してしまう自分がいます。
河野外相が「書面での通知は来ていない」との発言が流れていたので、
ひょっとして韓国側は「文書では通知してないが口頭では通知した」の水かけで8/24以降も揺さぶる作戦か、と勘ぐってしまいました。
が、GSOMIAに、「外交上の経路を通じて書面により通告しない限り」、と明記してありました。
残念。
日本の政治家の反応が酷いですね。
「全く受け入れられない表明であり行為」世耕経産相
「見誤った対応、韓国政府に断固抗議」河野外務大臣
「失望を禁じ得ず、極めて遺憾」岩屋防衛相
何を言っとるんですかね(笑)
想定内じゃないですか。
「GSOMIAなんか、こっちからお断りだ」となぜ言えない、腰抜けめ。
あと、我が心のアイドル、某美人政治学者のコメントです。
「面倒な地域にとどまる気分が米国に失せると、日本にも影響がある」
「21世紀は違う世紀なのだ。戦後の常識も、20世紀の常識も通用しない」三浦瑠璃
さすが美人だけあって、予想が外れてもクールです。
でも美人だから許す。
何を言っても美人は正しい気がする。
最後に、昔は、美人だったであろう、某ジャーナリストのコメント。
「韓国でも文在寅がおかしいと思ってる人はいる」
「韓国で反文在寅の声があげられなくなっている」
「反文在寅の声をあげた政治家は、謎の自殺をしている」櫻井よし子
GSOMIA破棄について、ユーチューブで百田尚樹と対話してるのを聞いたのですが、なんか、櫻井よし子さん、言うことがマイルドになってきたんじゃないですか?
これだと、悪いのは文在寅だと言ってることになりますよ。
保守政権だったら、韓国はマトモになると思ってるんですかね。
あと、百田尚樹もそうですよね、もしかして財界から圧力がかかったのかな。
日韓対立なんてプロレスみたいなもの。
あんまり激化すると、お互い本気になって収まりがつかなくなる。
「あんまり煽るな」と、柳井さん、孫さん、三木谷さん、大山さん(アイリス・オオヤマ)、榊原さん(東レ)、あたりから、釘を刺されてたりして(笑)
カニ太郎 さま
>櫻井よし子さん、言うことがマイルドになってきたんじゃないですか?
そうなんですよ。ちょっと寂しいのですが。
お年を召されて、居心地の良い方へと転向されたのかもしれません。