財務省がなりふりかわまぬ増税を強行しようとしています。財政制度等審議会が出してきた「令和時代の財政の在り方に関する建議」という資料が、何ら具体性もなく、事実関係を無視しているだけでなく、もはや「日本経済をぶっ壊してでも増税する」という宗教じみた強い意思すら感じざるを得ないのです。その一方で、先週末に『消費増税はほぼ確定 それでも希望は捨てるな!』のなかでも触れたとおり、いまのところ安倍総理は衆院解散総選挙を否定しているようですが、果たして「衆院解散見送り」は完全に潰えたのでしょうか?
宗教じみた財政建議
少し前からツイッターなどで、榊原定征・財政制度等審議会会長名義で出て来た『令和時代の財政の在り方に関する建議』(※大容量注意!)に「何ら具体性がないどころか、宗教じみている」と話題になっています。
令和時代の財政の在り方に関する建議(令和元年6月19日付 財務省HPより)
該当するPDFファイルは314ページであるにも関わらず、要するに、「日本経済をぶっ壊してでも増税することが重要だ」と主張するものです(榊原定征氏という人名自体、一種のフラグのようなものかもしれませんが…)。
このなかで、非常に興味深い下りはいくつかあるのですが、そのうちの1つが、ここです。
当審議会が昨年行った海外調査の報告においては、オランダの財務大臣室に「セイレーンの誘惑」と題する絵が飾られていることが紹介された。ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」によれば、美しい女性の顔を持つ怪物セイレーンは、その歌声で船乗り達を魅了し、歌声を聞いた船乗りは船を崖に衝突させてしまう。オデュッセウスは、自らを帆柱に縛りつけさせ、誘惑から身を守り、その後数々の困難はあったものの故郷への帰還を果たしたとされる。財政健全化という難しい航海においては、誘惑に負けない強い意思が必要という戒めの意味を込めてこの絵を飾っているというのが、オランダ財務省からのヒアリング結果であった。(同P9)
ここでセイレーンの誘惑とは、「財政健全化を邪魔する消費減税への要求」とでも言いたいのかもしれませんが、これに対してツイッター上では「消費増税による目先の収益こそがセイレーンの誘惑ではないか」といった指摘がありました。
事実を歪曲しないでください、榊原さん!
一方で、この報告書に何ら具体性がないどころか、きちんとした客観的情報を無視しているという点については、怒りすら抱いています。
確かに、公債残高が累増するなか、財政健全化を進めていくことは容易なことではない。しかし、それは、果てしない航海でも、難破が確実な航海でもない。時には荒波を乗り越える必要はあっても、現時点で国内の民間貯蓄超過が政府部門の赤字を上回っているという我が国の強みも踏まえつつ、リスクマネジメントを適切に行っていけば、必ず辿り着く港があろう。(同P9~10)
榊原さん、「公債残高が累増」とは、いったいいつからいつまでの話で、いくら増えたとおっしゃるのですか?
「公的債務残高」の定義にもよりますが、少なくとも国債・財投債・短期国庫証券の合計額(時価ベース)はここ3年ほどほぼ横ばいですし(図表)、地方債も状況は同じようなものです。それなのに、この建議は次のように続きます。
今後とも、ある者は航海の必要はないと説き、ある者は航海は難しくないのだと甘い幻想や根拠なき楽観を振り撒き、ある者は奇策や近道があると囁くかもしれない。誰しも、受け取る便益はできるだけ大きく、被る負担はできるだけ小さくしたいと考えるがゆえに、そうした主張はいつも魅惑的に聞こえるであろう。しかし、現在の世代が航海に乗り出し、確かな航跡を描かなければ、将来世代に残される負担や将来世代が直面するリスクは否応なく増す。現在の世代が「セイレーンの誘惑」に屈したとき、崖に衝突する船に乗っているのは将来世代であるかもしれない。(同P10、下線部は引用者による加工)
逆に言えば、増税派が何ら具体的なことを述べず、このように意味の分からない抽象的な主張に終始していること自体、増税する根拠自体に乏しいということを、榊原氏自身が認めている、ということでもあります。
榊原さん、そんなに増税したいのなら、率先して東レ製品だけ消費税率30%くらいにされたらどうですか?
衆院解散見送りは本当なのか?
さて、先週末に『消費増税はほぼ確定 それでも希望は捨てるな!』のなかでも触れたのですが、先週末、公明党の山口那津男代表は首相官邸で安倍総理と会談し、「安倍総理は衆院解散を見送りると明言した」と述べました。
現在、今年10月からの消費税の増税は、ほぼ9割がた、確定した状態だと考えて良いでしょう。
そして、今回の参議院議員通常選挙は、自民党が快勝した2013年7月の議席の改選に当たるため、何もしなければ前回選挙よりも議席を減らすことはほぼ間違いありません。
しかも、野党の質の劣化が激しいなか、自民党は野党のだらしなさに引きずられる格好で弛緩しきっており、今回の参議院議員総選挙で苦戦し、その結果、現在の質の低い野党が議席を増やすことで、国会議論がさらに停滞することが懸念されます。
こうしたなか、野党は明日、内閣不信任案を出す方針を明確にしました。つまり、安倍総理が「解散を考えていない」と明言した、という報道を受けて、立憲民主党ら野党側も安心して内閣不信任案を出すことに決めた、という格好です(孔明の罠のようなものでしょうか)。
立憲民主党が内閣不信任案提出を明言(2019.6.23 10:15付 産経ニュースより)
立憲、内閣不信任案提出を明言 各野党が同調 25日に共同提出(2019年6月23日 20時59分付 毎日新聞デジタルより)
ここで仮に安倍総理が内閣不信任案を受けて衆院解散を決断すれば、足並みもそろっていない野党が壊滅的な打撃を受けることになります。その意味では、明日が衆参同日選の「最後のチャンス」といえるかもしれません。
もちろん、衆議院解散と消費増税凍結はまったく別の論点ではありますが、もし安倍総理が衆院解散総選挙に踏み切り、衆参同日選で自民党が圧勝すれば、自民党の財務省に対する力関係が大きく変わりますし、消費増税凍結に向けて、わずかながらも希望が出て来るのです。
その意味で、私は安倍総理が公明党との関係を壊してまで衆参同日選を決断するかどうかにも注目したいところです。
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日本経済は呪われているとでもいうのでしょうか、
文在寅も自分がセイレーンに化けられたと勘違いはしているように見えますね。
民度の低い人たちを騙くらかしてセイレーンに化けたつもりでも、岩頭に立つその姿はA4の束を抱えて裸で薄笑いを浮かべながら突っ立つ文在寅なので、諸外国も岩にぶつかることもなく馬鹿馬鹿しくて相手にもしないのでしょう。
ローソクの火の波に飲み込まれる前に、いい加減文在寅も正体バレバレなことに気がつくべきです。
あたしゃ経済音痴でそのスジの理屈はさっぱりなのですが
父「うち借金ていくらあるんだっけ?」
母「1100万くらいかな。どんどん増えてるよ」
父「誰が借りてるの?」
母「あんただよ、とーちゃん」
父「へえ。誰から借りてるの?」
母「わたしからだよ、とーちゃん」
父「え?かーちゃん金持ちじゃん」
母「ちょっと、声が大きいよ」
父「あはは。それって返さなきゃいけないん?」
母「なに言ってんのよ、水くさい」
こんな話であってますのん?
ちょっと、違うかも。
母は、他所の家にも500万ほど貸していて、
お小遣い(利息)を稼いでいるのね。
父「え?かーちゃんヘソクリまであるん?」
母「えっとぉ、あら補聴器の具合が・・・」
パチパチ!! 本当におもしろかったです。良く分かりました。
当方、銀行員は金貸し、証券マンはバクチ打ちと、給料をうらやましがって悪口を言っていた技術屋ですので。
毎々の執筆、ありがとうございます。
あれ?
以前、菅さんが内閣不信任案が出されれば、衆院解散を考えるかも。って
質問に答える形で言ってませんでしたっけ?
もしかして、安倍さん待ってたのかな?
失礼致しました。
どうしても2%増税したい、それで世の中がまーるく収まるとお上が言うならすればいい。もうこうなったら、貧乏庶民にできることは2%分「不買」することぐらいだ。結果どうなるだろう?あら不思議、2%分不買したら、お上が目論んでた増収なんてやってこない。
いや、不思議でもなんでもない。当たり前っちゃ当たり前な話で、風が吹くからこそ桶屋が儲かるのに、風を止ましたら桶屋は棺桶屋になっちまうわな。安倍は下級国民なめんじゃねえぞ。
一度上げた消費税率を後で下げるとか 軽減分野を大幅に拡大するとか可能なのでしょうか?
また 参院選後 2、3ヶ月で衆院解散などは許されない事なのでしょうか?
安倍総理はあえて増税反対の逆風の中で「憲法改正」を参院選の争点にしたいと
考えているのではないかと思います。
ここで憲法改正を最優先に考えている国民がどれだけ居るのか確認したい。
消費増税の中止、延期となれば選挙の争点を増税にされかねない、というより
一部の拝金論客が言っているように大勝かもしれない。
しかし、憲法改正で支持してくれている国民がどれほどいるのか不明のままに
なってしまうでしょう。
憲法改正への長ーい道のり、安倍政権だけで達成できずバトンタッチがあるかも
しれません。
その時にそれを引き継いでもらうためにはここでどれだけの支持が得られるのか
知っておきたいところでしょう。
自民党支持者が憲法改正に賛成するとは限りませんし、いざ憲法改正となれば
安保闘争レベルになるかもしれませんからね。
(手段を択ばす全力で阻止してくるでしょうから)
*景気後退して「消費税による税収」が減ったら財務省の上の方が国会で
説明してくれるでしょう。(退職していても呼び出してもらいましょう)
>> 公債残高が累増
日本国銀行が持っている公債も、ハイエナ外国ファンドが持っている公債も一緒くたにしている時点で
「脳みそ使っていないぁ」って感じです。
パナマ文書で有名になったタックスヘイブン対策とか、amazon、appleなどの多国籍企業への税金とか
「脳みそ使わなくてはいけないところ」では全然仕事せずに
消費税増税とか脳みそ使わないで進めれる仕事は抽象論でごりおし
霞が関は、やっぱり脳みそ使うの苦手なんですね。
社会人になった自伝では、脳みそ疲れるレベルの人間だったと思うんですが、
腐った中にいると人間性までくさるんですね
金持ちの所得税・相続税逃れを暴くのは疲れる。ベテラン職員が大量退職しても自動的に楽に徴税出来る国にしたい。税金で太らせた天下り先はひたすら死守したい。予算配分でええカッコして天下り先を渡り歩けば、俺たち上級国民。邪魔する政権は俺たちが弱体化してやる。俺たち財務官僚には、選挙なんて無いもんね。
「セイレーンの誘惑」はこんな話です。
部下たちが眠りについた後にオデュッセウスは予言者から危機と通り抜ける方法を教わります。
「部下に耳栓をしなさい。セイレーンの声を聞きければ、部下に命じて帆柱に手足を縛らせなさい。そなたが部下に綱を解けと命じたら綱をふやして縛らせるのです」
オデュッセウスは誘惑にあがらうどころか歌を聞きたいという誘惑に負けて、自分も耳栓をするというもっと安全な方法と指揮と責任を放棄しているとしか思えません。まあ、予言に従って無事に通る事は出来たので悲劇にはなりませんでしたが、もし、オデュッセウスが情報を"隠匿"せずに部下に喋っていたら悲劇になったかもしれませんね。
ちなみに財務省のHPにもオランダのこの絵の逸話が出てきます。
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/conference/zaiseia300330.htm
「帆に体を張りつけたオデュッセウスが、その誘惑に負けまいと必死に頑張っている。」と鵜呑みにしていますが、私にはオランダの財務省の感性が分かりません。何かの意味が隠してあるんじゃないかと勘ぐってしまいます。
自己レスです。
オデュッセウスは誘惑に抗ってない。船員は誘惑に気づいてない。実は誰も誘惑に抗ってないのでは。