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「韓国のジレンマ」:ウォン安も地獄、ウォン高も地獄

最近、韓国メディアには「韓国ウォンの為替相場次第で韓国経済が減速する」、といった記事が頻繁に掲載されます。ただ、韓国経済の危機の本質は、自国通貨の国際化を怠り、野放図な消費を繰り返してきたという意味で、「自業自得」ではないかと思うのです。

追記(2018/06/29 8:39)

本文で2箇所、修正しています。

1箇所は中央日報日本語版のリンクが抜けていた点で、これについてはリンクを貼り直しました。

もう1箇所は「後述」と書いておきながら説明が抜けていた点で、これについては直後に簡単にロジックを記載しました。

推敲が甘いためでしょうか、後から読み返すといろいろ抜けている箇所が多々あり、読者の皆様には大変にご迷惑をおかけしました。

「ウォン安で韓国経済が破綻」?

相変わらず支離滅裂な記事

昨日の韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、どうも不思議な記事が掲載されています。

韓経:急落するウォン…「韓国経済の足引っ張る恐れ」(2018年06月28日11時10分付 中央日報日本語版より)

これは、『韓国経済新聞』の配信記事を中央日報が日本語訳して掲載したものであり、記事の内容はタイトルにもあるとおり、「急落するウォンが韓国経済の足を引っ張るかもしれないとの懸念が大きくなっている」という主張です。

通常、ウォン安(つまり自国通貨安)は、韓国経済にとっては非常に歓迎すべき状況です。なぜなら、韓国経済はGDPの輸出依存度が非常に高く、また、韓国は毎年、巨額の貿易黒字を稼いでいる国でもあるからです。

たとえば、韓国国内で1万ウォンで売られている製品があったとすれば、為替相場が1ドル=1000ウォンのときに、この製品は米国で10ドルで販売されます(ただし輸送コスト、関税などは考慮しません)。しかし、1ドル=2000ウォンの「ドル高・ウォン安」となれば、この製品は5ドルに値下がりします。

競合する中国製品や日本製品が10ドルのままで変わらなかったとすれば、為替相場が変動すれば、品質が同じで値段が半分になるわけですから、韓国製品がよく売れるようになるのは当然の話です。

しかし、この韓国経済新聞の記事は、「ウォンが急落すれば、韓国経済の足を引っ張るかもしれない」と主張しているのです。いったいどういうロジックなのでしょうか?

韓国経済新聞の主張はよくわからないが…

非常に申し訳ないのですが、このロジックについては、記事を読んでもよくわかりません。おそらく、そのロジックを説明しているのが次の下りだと思うのですが、正直、今ひとつ、理解できません。

最近の急激なウォン安ドル高は激化する米中貿易対立に触発されたものだけに為替変動にともなう効果は期待しにくい状況だ。むしろ世界の貿易量減少にともなう輸出減少と物価上昇だけあおり内需の冷え込みを招く可能性があると指摘される。

米中貿易戦争に伴う貿易量減少とは、あくまでも米国と中国の話であり、韓国には関係ないはずです。また、「米中両国の貿易量減少の影響で韓国製品が売れなくなる」というロジックは成り立ちますが(後述)、これも「為替相場」とは無関係です。

(※たとえば中国製品の米国への輸出量が減少すると、中国が製品を作るための部品などの輸入量が減少します。このため、たとえば韓国のように、中国に多額の製品・半製品を輸出している国がその影響を受ける、というロジックならば成り立つ可能性がある、ということです。)

こんなことを申し上げるのは非常に申し訳ないのですが、韓国「経済」新聞と名乗っている割に、この記事の記者は、経済についてはあまり得意ではないのかもしれません。

ただ、「韓国経済が為替相場変動に極端に弱い」というのも事実です。そのロジックは次のとおりです。

まず、為替相場がウォン安となれば、輸出企業にとっては有利にはなりますが、外国からの外貨での借金が膨らみ、最悪の場合は通貨危機が発生する可能性もあります。このため、「ウォン安」「IMFによる救済」は、韓国にとっては悪夢なのです。

しかし、それと同時に、為替相場がウォン高となれば輸出企業にとっては競争力がダイレクトに打撃を受けてしまいます。韓国の場合、経済全体に占める輸出の依存度が極めて高いため、常に為替相場をにらみながら経済運営をしなければなりません。

金融政策が難しい国

それだけではありません。

韓国の場合は典型的な「オープン経済」ですから、景気を良くしようとしたら、財政政策では対応できません。円滑な経済運営のためには、金融政策(政策金利や貨幣供給量のコントロール)が欠かせませんが、現在の韓国は金融政策が非常に難しい国です。

まず、景気が過熱しているときや、為替が自国通貨安となっているときには、金利を引き上げるのが定石ですが(いわゆる「金融引き締め」)、金利を引き上げれば、家計債務負担が増えてしまいます。韓国の家計はいわば「借金漬け」の状態にありますが、破綻する家計が増えれば、社会不安に直結します。

一方、社会全体の失業率を下げるためには、大胆に金利を引き下げ、金融市場にマネーを供給することで、人為的にインフレを誘発する必要があります(いわゆる「金融緩和」)。しかし、利下げをすれば自国通貨の価値が下落し、資金流出リスクが高くなります。

私はこれを「韓国のジレンマ」と呼びたいと思います。

自業自得の韓国経済

これまでの韓国は、為替相場についてはその時点で最も自国経済にとって有利なレートを決め、その相場に向けて為替操作を常態化させていたようです。ただ、こうした為替操作を行うためには、安定した外貨準備が必要ですが、どうも韓国は外貨準備などの統計でもウソをついているようなのです。

これについては以前、『【準保存版】韓国の外貨準備統計のウソと通貨スワップ』のなかで詳しく説明したとおり、公式には4000億ドル弱の外貨準備があるとされながらも、使い物になる外貨準備はそのうち多くて2000億ドル弱、下手すると1000億ドルもないかもしれない、という状況にあります。

そのように考えていけば、韓国がしつこく日本に対して通貨スワップ協定の締結を求めてくる理由も、何となくわかります。要するに、韓国経済は非常に脆弱だからです。

ただ、私に言わせれば、韓国経済がそこまで脆弱なものとなったのは、なかば自業自得です。本来であれば、韓国のように貿易依存度が高い国の場合、外貨準備をしっかりと貯めることに加え、国自体の金融市場の健全性を高め、さらに理想をいえば、自国通貨のハード・カレンシー化を図るべきだからです。

韓国はすでにOECD加盟国ですが、韓国の通貨・ウォンは、国外への持ち出しが自由ではなく、通貨としても国際的にほとんど通用しません。このため、韓国企業が海外から半製品を買ってきたり、設備投資をしたりするには、外貨がどうしても必要になってしまうのです。

また、国民が借金をしてまで野放図に浪費するのも韓国の自業自得ですし、中央銀行が外貨準備を変な資産で運用して溶かしてしまったのも自業自得でしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、仮に韓国が日本の友好国で、日本の国益にも資する相手であれば、日本は今すぐ、韓国との間で1000億ドル(11兆円)程度の通貨スワップを締結すべきです。しかし、韓国が日本と価値と利益を共有する友好国、同盟国となる資格があるのかと問われれば、私は素直に肯定することができないのです。

新宿会計士:

View Comments (1)

  • 韓国のウォンは、高すぎても輸出不振、安すぎても原材料の輸入に不利と、「ハビタブルゾーン」が非常に狭いというのが韓国ヲチャーの常識ですが、懐かしいKIKOオプションの話題なんかを上げてくださる新宿会計士様には釈迦に説法ですよね。
    生活必需品の多くも輸入に頼っているので、ウォン安では庶民が悲鳴を上げ、ウォン高では企業が悲鳴を上げ、

    本当に韓国は地獄(ヘル)だぜウェーハッハッハ

    というやつですな。