6月12日に予定されている米朝首脳会談を巡る観測記事が、連日、次から次へと出てきます。本日は、このうち韓国大統領のシンガポール押しかけ疑惑と日朝首脳会談について取り上げてみたいと思います。
韓国大統領がシンガポールに押しかけ?
ハンギョレ新聞は、まるで北朝鮮メディア
6月12日に「予定」されている(?)米朝首脳会談をめぐって、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領もこの日、シンガポールで南北首脳会談を実施するのではないかという観測報道が、いくつかのメディアから出ています。
わが国では昨日、NHKが報じていますが、それ以前に、韓国メディア『ハンギョレ新聞』日本語版が、そのような内容の観測記事を掲載しています。
[ニュース分析]シンガポールで南北米会談も開かれるか(2018-05-28 08:59付 ハンギョレ新聞日本語版より)
(※NHKの場合はリンク記事が消えるのが異常に早く、ニューズ・メディアとしての信頼性に足りませんので、当ウェブサイトとしては極力、NHKの記事を引用することは控えています。あしからず、ご了承ください。)
ハンギョレ新聞の記事は、「この新聞は北朝鮮のメディアなのか」と思うくらい、北朝鮮の立場を代弁していて、思わず呆れてしまいます。というのも、先週末の南北首脳会談を過大評価していて、「『年内終戦宣言』および『平和体制構築議論』が加速するだろう」などと能天気なことを論じているからです。
それはさておき、ハンギョレ新聞は、6月12日の「朝米首脳会談」(原文ママ、「米朝首脳会談」のこと)に文在寅(ぶん・ざいいん)大統領が加わる可能性が「議論されている」と述べています。これについて踏み込んで記載しているのは、次の下りです。
「大統領府は条件さえできれば、朝米会談の直後に文大統領がシンガポールを訪問し、南-北-米首脳会談に参加する方案についても可能性を開けておき準備中だという。ある大統領府関係者は「決定されてはいないが、すべての可能性は開けている」と述べた。」
ここでは「大統領府関係者の話」と記載されていますが、現在の韓国の政権と最も近いと噂されるハンギョレ新聞だけあって、この報道もかなり確度が高いものと考えて良さそうです。つまり、韓国政府は現在、本気で文大統領のシンガポール行きを検討しているようなのです。
米国から怒られたばかりなのに…
しかし、最近になって、ハンギョレ新聞とはまったく異なる報道姿勢を示し始めている『朝鮮日報』(日本語版)によれば、これと真逆のニュースが掲載されています。それが、昨日も『米朝首脳会談めぐる北朝鮮のホンネを探る』の末尾で紹介した、次の記事です。
米国が韓国に要請「非核化問題に深入りするな」(2018/05/29 10:08付 朝鮮日報日本語版より)
朝鮮日報は、韓国の李洛淵(り・らくえん)首相が欧州歴訪中の現地時間27日、ロンドンで特派員および記者団と昼食会を開き、
「米国が、非核化問題に関して韓国はあまり深く入り込まないでほしいという要請を行った」
と明らかにしたのだそうです。早い話が、北朝鮮の非核化問題を引っ掻き回す韓国に対し、米国が不快感を示した、ということでしょう。もし6月12日の米朝首脳会談が実現したとして、その場に韓国の大統領が姿を現せば、ドナルド・トランプ米大統領は、今度こそ本気で文在寅氏を無視するでしょう。
もっとも、トランプ政権がなぜいままで、これほどまでに韓国に「騙されてきた」のか、私には今ひとつ、理解できない部分ではありますが…。
そもそも開かれるのか?
ハンギョレ新聞の記事に戻りましょう。ハンギョレ新聞は冒頭で、
「文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の電撃的な2回目の首脳会談で、一時は“座礁の危機”にあった朝米首脳会談が正常軌道に戻った」
と主張していますが、そもそもこの認識は正しいのでしょうか?
私は、そうは思いません。北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)が逃げる可能性は、むしろ極めて高いと見ています。
昨日の議論の繰り返しですが、北朝鮮の「ホンネ」とは、「とにかく時間稼ぎがしたい」、ということではないでしょうか。すなわち、米朝首脳会談が開かれるまでの間は、北朝鮮が米国から攻撃されることはない(と金正恩が勝手に思っている)からです。
考えてみれば、今年1月以降、北朝鮮は徹底的な時間稼ぎに成功して来ました。これには韓国が平昌冬季五輪にかまけて米国に合同軍事演習の延期を要請したという要因もありますが、それだけではありません。冬季五輪後に南北朝鮮で対話ムードが高まった、という要因も大きいでしょう。
このように考えていくならば、金正恩としては米国との対話をとにかく先延ばしにし、軍事攻撃のリスクを最小化することが最大の狙いなのだと思います。
ただし、仮にシンガポール会談に参加したとしても、核兵器などのCVID ((CVIDとは、「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(“Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement”)のこと。)) に応じなかったとしたら、軍事攻撃を受けるか、経済制裁が強化されるかを選ぶ必要があります。おそらく、現在の金正恩は、会談を6月12日ではなく、さらに7月、8月などと先延ばしにすることを希望しているのではないでしょうか?
日朝首脳会談報道
一方で、毎日新聞は昨日、日本政府が北朝鮮による拉致問題の打開に向け、「日朝外相会談を8月初旬にも開く検討に入った」と報じています。
日朝外相会談を検討 8月、シンガポールで(2018年5月30日 05時33分付 毎日新聞デジタル日本語版より)
誤報だらけの毎日新聞の報道ですし、今のところ、主要メディアで報じているのは毎日新聞だけのようですから、この記事自体は深刻に受け止める必要はないと思います。ただ、それと同時に、わが国のメディアが、あたかも「北朝鮮の工作機関」であるかのごとく、日朝首脳会談を煽り始めています。
たとえば、日経新聞が今週月曜日に『日朝首脳会談「すべき」68%』なる世論調査記事を掲載していますが、北朝鮮側としては、拉致問題を手掛かりに、日本からの支援を引き出すための首脳会談をやりたがる、というストーリーは成り立ちます。
しかし、私は現時点の日朝首脳会談には慎重であるべきと考えています。憲法改正が実現し、自力で自衛隊を北朝鮮に侵攻させ、金正恩ら北朝鮮政府幹部の身柄を拘束して日本に連行するくらいでなければ、拉致事件の全容解明は不可能だからです。
それよりも、拉致事件の解決を政治利用され、巨額の経済支援を約束させられる可能性の方が、はるかに警戒すべきです。安倍総理がそこまで下手を打つ人物だとは思いませんが、軍事力の行使が難しい現在の日本が、朝鮮半島核問題や拉致問題で、あえて前面に立つ理由はありません。
いずれにせよ、こうした報道についても真否を見守りたいところです。
View Comments (4)
< 更新ありがとうございます。
< 『北のシンパ』『北の工作員』である毎日新聞の報道なら、無視で良いと思います。今、日本がヘタに北に近寄り米朝後に『日朝会談再開』などしたら、途方もない要求をされます。北朝鮮は無垢な民間人を拉致しながら金を出せ、統治時の賠償、誠意を見せろと声高々に言って来る。実際のところ朴正煕に北の分もとっくの昔に渡してますがね。
< 文がシンガポールに行くなど笑止です。トランプ大統領は徹底的に無視するでしょう。怒り出すかも。でも根が愚民根性なので、『運転手気取り』の文は、周りの制止も聞かず、行くかも。また独りメシや(笑)。
< 韓国が絡むと話がややこしくなる。米国と北の話し合いなら余人は不要です。でも、私も金正恩は会談には出て来ないとみる。会えば安倍首相が強硬に押すCVIDは避けられない。トランプ大統領が『会談は6月12日かそれ以降』という発言をよりどころに、またずらすのではないでしょうか。早よクタバレ!北朝鮮!
< 失礼します。
論評ありがとうございます。
金正恩の時間稼ぎに関しては全く別の何かで既視感があったのですが、日本において確定死刑囚が再審請求しているのとよく似ています。
「再審請求中の死刑執行は無い」というのを根拠に死刑執行までの時間稼ぎ、あるいは執行回避を目的としていると見る向きもあります。
これと同じで、米朝首脳会談が行われる前であれば米国による北への攻撃は無いという思い込みで金正恩は動いているのは間違い無いでしょう。
しかし日本の死刑囚の場合、再審請求中に死刑が執行されたケースが複数あります。
日本では、死刑執行当日の朝に刑場への移動のため独房の扉を刑務官が開けることで死刑囚に自身の死刑執行が伝わると言われています。死刑囚には何か主張する時間はほとんどありません。
そもそも再審請求中の死刑執行は無い、などというルールはありません。再審請求による死刑執行回避手段はありもしないルールをあてにしているわけです。
金正恩もそれと同じで、米朝首脳会談前であれば攻撃は無いというトランプ大統領の辞書にあるかどうかもわからないルールをあてにしているようです。仮にそのようなルールが辞書にあったとしてもトランプ大統領にはそのルールを改定することに躊躇いは無いでしょう。
「その時」が来たとしても日本の死刑囚とは違って「執行」が直前であっても伝えられることが無いのはもちろんのこと、「執行」を察知する時間すら金正恩には無いかもしれません。窓の外に何かものが見えたと思ったコンマ数秒後には「執行完了」になるでしょう。
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信有り難うございます。
韓国はこの核兵器の廃棄交渉を通じて自国で北朝鮮製核兵器を持ちたいのでしょう。
きっとトランプはお見通し。
アメリカが韓国を制裁するのに国連敵国条項使われるかもしれません。
韓国はその時初めて自国は敗戦国の側にいることを知るのでしょう(笑)。
知らぬが仏(笑)
6月12日、シンガポールの首脳会談会議場
重々しいドアを開けたトランプの目に飛び込んできたのは
上気した顔にちょっと困惑の表情を浮かべた金正恩と
その横でヘラヘラ笑って拍手する上機嫌の文在寅だった
などというシュールな展開を希望する私はひとりである
梅雨間近の6月上旬、私の耳にさやけくささやくさわやかな風
「ムンガポール、ムンガポール」と何処からか聴こえるのだ
「親しい友人なら迷惑をかけてもかまわない」が
「迷惑をかけてもかまわないくらい親しい友人」に変格し
「親しい友人になるためにこそ迷惑をかける」と三段活用する
カレラの幸福指向唯我独尊思考回路を舐めてはいけない
訪韓し在韓米軍基地に直行したトランプを待ち受けていたのは
マイクを握ってヘラヘラ笑う文在寅だった(聞いてないよ)
晩餐会で出された変なエビに目を白黒時に青くするトランプに
抱き付いてきたのはエビではなく年サバ読んだ元娼婦(聞いてねえ)
なんせ遊びに行った先の友人宅では
勝手に冷蔵庫開けて中のものを断りなく食うし
ひとの歯ブラシを勝手に使う
服はまだしもパンツ靴下の類まで持って行く
貸した金なら返ってこない
貸した弾なら迷惑だったという(後で)
カレラにとっては迷惑面倒をかけてこそ友情の証なのである
だが断る、私にそんな証は必要ない
https://www.youtube.com/watch?v=rADU8Sb5qf8