当ウェブサイトの大人気シリーズといえば、「朝鮮半島を巡る6つのシナリオ」です。これは、私が独立系政治経済評論家という立場から、いわば「ライフワーク」のように取り組んでいるテーマの1つであり、最近だと、ほぼ毎月のようにアップデートを行っています。先月掲載した『中朝首脳会談の思惑と「6つのシナリオ」』からほぼ1ヵ月が経過したことに加え、昨日、南北首脳会談が行われたという事情もあるため、シナリオを現時点でアップデートしておきたいと思います。
目次
シナリオ再確認
期待させておいて申し訳ございません。結論から先に申し上げておきますと、本稿において「朝鮮半島の6つのシナリオ」を見直すことはありません。ただ、それを議論する前に、まずは前提となるシナリオを確認しておきましょう(図表1、図表2)。
図表1 朝鮮半島の将来・6つのシナリオ
シナリオ名 | シナリオ概要 | 前回の実現可能性 |
---|---|---|
①赤化統一 | 韓国(南朝鮮)が北朝鮮により赤化統一されてしまう | 30% |
②韓国だけの中華属国化 | 韓国が中国の属国となるほかは、現状がほぼ維持される | 20% |
③クロス承認 | 韓国が中国の属国となり、北朝鮮を日米などが国家承認する | 20% |
④半島全体の中華属国化 | 南北朝鮮が統一され、そろって中国の属国となる | 10% |
⑤北朝鮮分割 | 北朝鮮をロシアと中国が分割占領し、韓国は中国の属国となる | 10% |
⑥現状維持 | 南北朝鮮は、とりあえずはそのまま存続する | 10% |
(【出所】著者作成)
図表2 朝鮮半島の将来をめぐる「サブ・シナリオ」
サブ・シナリオ | 概要 | 当座の結論 |
---|---|---|
Ⅰ ろうそく革命 | 朴槿恵(ぼく・きんけい)氏を引き摺り下ろしたときと同じようなデモが発生し、文在寅氏が大統領を引き摺り下ろされる | ろうそく革命自体、親北系の団体が主導したと思われるため、親北系の文在寅氏に対するろうそく革命は考え辛い |
Ⅱ 軍事クーデター | 軍部による軍事クーデターが発生し、憲法を停止し、文在寅氏の身柄を拘束する | 現在の韓国軍に国民世論を敵に回してまでそのようなリスクを取る気概があるか不明 |
Ⅲ 文在寅暗殺 | 「何者か」が文在寅氏を暗殺し、文在寅政権を物理的に崩壊させる | 可能性はゼロではないにしろ、シナリオに織り込むだけの確度はない |
(【出所】著者作成)
図表1、図表2に示したのは、私自身が考える、朝鮮半島どうなるかという可能性のシナリオ群です。
「①赤化統一」は韓国が事実上、北朝鮮の属領となってしまうシナリオですが、②~⑤については韓国、北朝鮮、あるいは朝鮮半島全体が中国の版図に入るというシナリオ、⑥が現状維持シナリオです。また、Ⅰ~Ⅲは何らかの理由により文在寅(ぶん・ざいいん)政権が倒れるという「サブ・シナリオ」です。
とくに、昨日の「板門店宣言」(詳細は『【速報】南北首脳会談、拉致もCVIDも「ゼロ回答」』参照)により、韓国は事実上、北朝鮮に対して「降伏」した格好となってしまいました。これに韓国軍の心ある人たちが立ち上がり、軍事クーデターで敢然と文在寅政権を排除する動きにでる可能性は、ゼロtではありません。
私は現時点でこのⅠ~Ⅲについては「可能性が低い」(あるいは「シナリオとして織り込むには確度が弱すぎる」)と考え、「メイン・シナリオ」には置いていません。ただし、これらが実現した場合には、シナリオ①~⑥の可能性がひっくり返る可能性もあるので、注意が必要でしょう。
赤化統一は文在寅政権の「悲願」?
文在寅政権の成立
ところで、これらのシナリオのうち、「①赤化統一」シナリオは、当ウェブサイトではかなり以前から予想していたものです。とくに、罷免された朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領に代わり、昨年5月の韓国大統領選で文在寅氏が当選したことを受け、この赤化統一シナリオの可能性が高まったと考えています。
私は昨年5月の時点で、この文在寅という人物については、その言動から考えて、かなりの「親北派」であると見ていましたが、予想に違わず、親北路線を打ち出してきました。
たとえば、同氏が韓国大統領に選任された昨年5月頃といえば、米中首脳会談の直後のことです。ドナルド・トランプ米大統領は2017年4月、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席との首脳会談で、北朝鮮核問題解決にあたって「100日の猶予」を与えたと伝えられています。
米国としては、北朝鮮核問題の解決をいったん中国に委ねた格好となったのですが、日本、米国が一致団結して中朝関係の進展を見守っている最中であるにもかかわらず、早速、韓国は日米韓3ヵ国連携を乱す行為に出ます。
最初の南北会談呼びかけ
驚くことに、文在寅政権は2017年7月、北朝鮮に対して軍事会談と赤十字会談を提案しました。日米両国が北朝鮮に対する圧力を最大化することで合意していたにも関わらず、です(『予想通り本性を現した韓国』参照)。
ただし、このときは北朝鮮側がこの呼びかけに応じず、軍事会談、赤十字会談ともに実現しませんでした。北朝鮮が韓国の呼びかけを無視した理由は、おそらくこの時点で北朝鮮側は、まだ余裕を感じていたからでしょう。
しかし、北朝鮮はその後、核実験や複数のミサイル発射実験を強行。これを受けて、2017年9月11日と11月29日には国連安保理が北朝鮮に対する制裁を可決しています(図表3)。
図表3 北朝鮮に対する制裁
時点 | 制裁の概要 | 備考 |
---|---|---|
2017年9月11日 | ●北朝鮮への原油輸出は現行輸出量を上限とする ●北朝鮮への石油精製品輸出は年間200万バレルを上限とする ●北朝鮮へのコンデンセートと天然ガス液の輸出を禁止する ●北朝鮮からの石炭、鉛、海産物などの輸出を禁止する | 国連安保理決議としての北朝鮮制裁はこれで9回目。また、これに先立つ8月の国連の経済制裁では、北朝鮮の輸出の約3分の1にあたる約10億ドル分の禁輸が決議されている |
2017年12月22日 | ●北朝鮮への石油精製品輸出を年間50万バレルに制限する ●北朝鮮の海外出稼ぎ労働者の24ヵ月以内の本国送還 | 年間50万バレルという制限により、北朝鮮への輸出量は約90%削減されることになる |
(【出所】2017年9月12日 08:02付 ロイター通信、2017年12月23日 05:07付 ロイター通信などを参考に著者作成)
2回目の南北会談呼びかけ
こうしたなか、文在寅政権は2回目の南北協議を呼び掛けます。
これは、2018年2月の平昌冬季五輪開催を控え、「五輪を通じた南北協力」という名分で、北朝鮮に対して対話を呼びかけたものであり、驚くことに、文在寅政権は五輪期間中の米韓合同軍事演習の延期を米国に呑ませるなど、徹底的に北朝鮮に譲歩を行ったのです。
その結果、1月9日には南北高官級協議が実現。平昌五輪で北朝鮮は、2月9日の開会式には金正恩の妹である金与正(きん・よしょう)らを、2月25日の閉会式には金英哲(きん・えいてつ)を送り込んできました。
余談ですが、開会式で安倍晋三総理大臣とペンス米副大統領が仏頂面で北朝鮮当局者らと同席しているシーンが全世界に流されましたが、安倍総理がこの絵のために訪韓したのだとすれば、実に強運の持ち主です。
それはさておき、平昌五輪直後の3月に入り、今度は韓国政府の高官らが平壌(へいじょう)を訪問。これにより、北朝鮮は韓国当局者を通じて口頭で米朝首脳会談を提案。トランプ米大統領がこの提案に応じたことで、異例の米朝首脳会談が実現するかもしれないとされています。
ただ、私は北朝鮮側がこの韓国側の提案に乗った理由は、やはり国連安保理制裁などがかなり効いているためではないかと見ています。昨年7月時点で北朝鮮が韓国の提案を無視したこととあわせて考えるならば、なおさらそう思うのです。
韓国の立場も苦しかった
以上、客観的な事実と状況証拠を積み上げていけば、まず文在寅政権が発足直後から北朝鮮に対して宥和的な姿勢を示し続けていたこと、北朝鮮側も国連安保理制裁に困窮し、韓国を突破口にしようとしたことが確認できたと思います。
ただ、もう1つ疑問点があります。なぜ韓国は北朝鮮に手を差し伸べたのでしょうか?
それは、「文在寅氏本人が北朝鮮のシンパである」、と説明されることが多いのですが、それだけではありません。これはあくまでも私の理解ですが、韓国も随分と苦慮していたのです。
まず、米国との関係では前任の朴槿恵政権時代から、高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備を巡り、長年、対立を続けて来ました。米国としては米韓同盟を維持する前提条件がTHAADの配備だったわけですが、韓国は中国を刺激することを恐れ、THAADに及び腰だったのです。
結局、2015年12月の日韓慰安婦合意にを契機に日米韓3ヵ国軍事協力が唐突に進み始めるのですが、中国側は「THAAD制裁」を発動。中国人観光客の急減、在中の韓国企業に対する営業妨害などに苦しみます。
つまり、米国の顔を立てれば中国との関係が悪化し、中国の顔を立てれば米国との関係が悪化するというジレンマに陥ったのです。この苦境は文在寅政権になってからも続き、文在寅氏は昨年12月に中国を「国賓訪問」した際に、「ひとりメシ」を余儀なくされるなど、中国からは徹底的に冷遇されました。
しかも、文在寅氏は2015年12月の「日韓慰安婦合意」についても破談にしようと画策、これにより、日本との関係も悪化させました。要するに、文在寅、朴槿恵の両政権は、日本、中国、米国という、韓国にとって最も重要な3ヵ国との関係を悪化させたのです。
「共依存」の南北朝鮮と「韓国への経済制裁」の可能性
北朝鮮は国連安保理制裁により、韓国は朴槿恵・文在寅両政権の失政により、それぞれ、外交的には非常に厳しい立場に立たされていました。いわば、南北朝鮮はお互いがお互いを必要としていたわけであり、今回の南北首脳会談も、お互いがそれをうまく利用した、というのが実情に近いでしょう。
今回、金正恩は自ら歩いて軍事境界線を越えるという「パフォーマンス」(私に言わせれば「茶番」)を演じました。これに対し文在寅大統領も「三軍儀仗」で応じ、金正恩を会談場所まで案内するという、同様の茶番に付き合った格好です。
これによって南北の恒久平和が確定すると素直に考えるのは、発想としてはあまりにも甘すぎます。むしろ私が想像しているのは、今回の首脳会談を契機に「核のCVID」(※)があいまいになってしまい、結果的に韓国が日米から強い不信感を持たれてしまう、という展開です。
(※)CVIDとは「完全、検証可能、不可逆的な方法による廃棄(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)」の略。
南北首脳会談に先立ち、日本の菅義偉(すが・よしひで)官房長官は南北首脳会談に至るまでの「韓国政府の努力を称賛する」としつつも、「拉致・核・ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けた前向きな議論を期待している」と述べました。
<南北首脳会談>日本政府「韓国の努力を称賛…拉致・核・ミサイルについて前向きな議論を期待」(2018年04月27日10時46分付 中央日報日本語版より)
要するに、拉致・核・ミサイルの包括的な解決ができないのなら、南北首脳会談など意味がない、という主張です。日本政府の立場はこれに尽きます。
しかし、『【速報】南北首脳会談、拉致もCVIDも「ゼロ回答」』で触れたとおり、実際の「板門店宣言」は拉致問題、CVIDの両者について「ゼロ回答」に終わりました。
これは非常に深刻です。なぜなら、核問題をめぐっては、韓国が完全に北朝鮮の主導下に入る、と宣言したことと同じだからです。こうなって来ると、日米など国際社会は、北朝鮮の核のCVIDを実現するためには、北朝鮮に対する制裁では足りないことになります。
もっといえば、状況次第では、北朝鮮だけでなく韓国をも「制裁対象」にする必要が出て来たといえるでしょう。
読めない「2つのファクター」
ロシアの不気味な沈黙
ところで、韓国が北朝鮮との赤化統一路線を突っ走っていることは、いまさら否定する話ではないかもしれません。ただ、それと同時に腑に落ちないのは、周辺国がこれをどう考えているのか、今ひとつ見えてこない、という点です。
そもそも朝鮮半島問題を議論するときには、韓国と北朝鮮の思惑だけを考えても意味がありません。北朝鮮を作った国はソ連であり、韓国を作った国は米国であり、北朝鮮に経済支援を与えているのは中国であり、韓国に経済支援を与えているのは日本です。
ということは、朝鮮半島問題を論じる場合には、日米中露(とくにロシア)の存在を無視することはできないはずです。たとえば、米国と日本は以前から韓国、北朝鮮の双方と深くかかわっており、米朝首脳会談が6月に行われる(※)ほか、日朝首脳会談についても開催される可能性があるとされています。
(※ただし私は、米国が核兵器のCVIDに、北朝鮮が核兵器の段階的放棄に固執する限り、結局は米朝首脳会談が開かれず、現状のにらみ合いが続く可能性もあると見ています。)
それだけではありません。「犬猿の仲」だった習近平・中国国家主席と金正恩は先月、突如として首脳会談を行いました。中国側が北朝鮮を招いたのか、北朝鮮側から中国に訪問を申し入れたのかはわかりませんが、事実として金正恩が3月下旬に訪中しているのです。
ところが、こうした朝鮮半島の非核化という議論のなかで、ロシアの動きがほとんど見えないのです。
確かに、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は昨年9月のウラジオストクでの「東方経済フォーラム」では、安倍総理からの「北朝鮮に対する国際社会全体での最大限の圧力」という方針に賛同せず、この限りでは北朝鮮の味方をしているようにも見えます。
しかし、それと同時に昨年9月、12月の国連安保理決議では、北朝鮮制裁を巡り棄権せず賛成しており、この限りでは北朝鮮の味方をしていないようにも見受けられます。いったいロシアの立場は、北朝鮮の核開発を支援しているのか、していないのか、そのどちらなのでしょうか?
深く関わったり、関わらなかったりする
実は、古今東西、外交の世界では、何か国際問題が発生した時に、大国はみずから積極的に首を突っ込む場合と、あえて様子見を決め込む場合があります。おそらく、今回のロシアの行動も、「自国の国益を最大化するために、カードはできるだけ温存しておく」、という考え方ではないでしょうか?
ロシアは、2014年3月に、当時はウクライナ領だったクリミア半島やセヴァストポリ市を自国領土に編入しました。もともと、これらの地域にはロシア人が多数居住していたという事情もあり、住民投票で9割の賛同を得たとされているものの、国際社会側はこれに反発。
ドイツを中心とする欧州連合(EU)がロシア批判の急先鋒となり、これに米国が乗っかる形で、西側諸国のロシア包囲網が形成されています。
これに加え、今年3月14日には、ロシアが英国に住むロシアの元スパイの殺人未遂事件に関与したとして、英国政府は駐英ロシア外交官23人を国外追放にすると発表。これにはおもに西側諸国の多くの国が追随しました(『【緊急速報】西側諸国がロシア外交官追放:日本に漁夫の利?』参照)。
さらに、米国は以前からシリアのアサド政権をロシアが強力にバックアップしていると批判しています。米英仏3ヵ国はアサド政権が化学兵器を自国民に対して使用したとして、4月13日にはシリアに対する限定攻撃を実施していますが、これも西側諸国とロシアの「代理戦争」のようなものかもしれません。
このように考えていくと、ロシアとしては下手に北朝鮮問題で動かない方が得策だと判断している、ということかもしれません。北朝鮮の核放棄交渉において、米中両国では「手詰まり」状態になった場合、ロシアが仲介に乗り出し、米中両国に「恩を売る」という形を狙っている、という発想です。
当然、ロシアの目的は、ウクライナ問題に伴う西側諸国からの経済制裁の解除にあります。こうした外交交渉のため、ロシアは「北朝鮮カード」を切らず、手札として温存しているのだと考えると、すっきりと説明が付くのです。
日本の本来の立場は対等
さて、日本国内のマス・メディアや自称有識者たちは、北朝鮮核問題をめぐり「日本の存在感がない」と批判します。おそらくこれは安倍政権に対する「ためにする批判」であって、実態を見ずにとにかく「安倍を叩け」という代物であり、まともに傾聴する価値はありません。
実は、今回の北朝鮮危機において、安倍総理の果たしている役割は絶大です。トランプ米大統領にダイレクトに「入れ知恵」していることは明らかですし、また、G7、G20、国連などの場で強い発言力を有していて、北朝鮮制裁は日本がグイグイと引っ張った格好となっています。
先ほども昨年12月の国連安保理制裁のなかで「北朝鮮の労働者の追放」という項目があることを確認しましたが、これはもともと日本の河野太郎外相が言い出したことです(たとえば訪問先のカタール(9月9日)やクウェート(9月10日)などで北朝鮮労働者の問題に言及しています)。
このように、安倍晋三政権は従来の日本政府の事なかれ主義外交から決別し、日本の国益のために、非常によくやっていると私は高く評価しています。ただ、それと同時に、やはり日本は米国と離れて単独で動くことはできません。
なぜでしょうか?
答えは簡単。憲法第9条第2項という制約があるからです。日本は北朝鮮による拉致犯罪の被害国でもありますから、普通の国であれば、軍隊と警察を北朝鮮に送り込み、北朝鮮の独裁者らの身柄を拘束したうえで、強制捜査を行うはずです。
しかし、日本は憲法第9条第2項が存在するため、北朝鮮(や中国、韓国)は「日本を相手に犯罪行為を働いても、絶対に反撃して来ない」とタカを括っているのです。「6ヵ国協議」においても、日本が交渉の当事者というよりも、「カネだけ出すスポンサー」と成り果てていたことは記憶に新しい点です。
これは非常に悔しい話です。本来の日本は、ロシア、中国、米国と対等に、この問題を巡って口を出す権利がありますし、責務もあります。それなのに、韓国、北朝鮮ごときと対等に扱われてしまうのは、ひとえに日本国憲法第9条第2項という制約にあるのです。
ここまで申し上げれば話は早いと思います。
「朝鮮半島の将来のシナリオ」を議論するうえで、「読めない2つのファクター」のうち、1つはロシアであるということについてはご理解いただけると思います。しかし、「もう1つのファクター」とは、実は、私たちの国・日本なのです。
憲法改正と憲法第9条第2項の無力化に成功すれば、日本は中国、ロシアと対等にこの問題で交渉するプレイヤーとなることは間違いありません。「もりかけ・セクハラ・日報問題」による6野党による国会での審議拒否は、まさに日本の足を引っ張るために、野党とマス・メディアが仕掛けた「報道テロ」です。
6野党とマス・メディアの後ろで糸を引いているのは中国共産党か、金正恩か、はたまた韓国政府なのか。いずれにせよ、6野党とマス・メディアが日本の敵であることは間違いないと見て良いでしょう。
結語
文在寅政権発足以来、韓国が急激に赤化統一路線に舵を切っているのではないかと疑われるような事態が、続々と生じていることについては、いまさら指摘するまでもありません。ただ、昨日の南北首脳会談によって、赤化統一の可能性はどの程度高まったのでしょうか?改めて、私見を述べておきます。
図表4 朝鮮半島の6シナリオ・2018年4月版
シナリオ名 | シナリオ概要 | 前回の実現可能性 |
---|---|---|
①赤化統一 | 韓国(南朝鮮)が北朝鮮により赤化統一されてしまう | 30%→据え置き |
②韓国だけの中華属国化 | 韓国が中国の属国となるほかは、現状がほぼ維持される | 20%→据え置き |
③クロス承認 | 韓国が中国の属国となり、北朝鮮を日米などが国家承認する | 20%→据え置き |
④半島全体の中華属国化 | 南北朝鮮が統一され、そろって中国の属国となる | 10%→据え置き |
⑤北朝鮮分割 | 北朝鮮をロシアと中国が分割占領し、韓国は中国の属国となる | 10%→据え置き |
⑥現状維持 | 南北朝鮮は、とりあえずはそのまま存続する | 10%→据え置き |
(【出所】著者作成)
正直、私は昨日の南北首脳会談について、私自身の予想から外れる内容を見出すことができませんでした。このため、結論としては、この「6つのシナリオ」については2018年3月版から据え置くことにしたいと思います。
実は、「韓国が北朝鮮を統一する最後のチャンス」だったという言い方ができます。というのも、金正恩は文在寅氏のことを信頼し切っていましたから、文在寅氏が突然変節し、金正恩の身柄を拘束しようと思えばそうできたからです。
くどいようですが、上記シナリオの①を除いて、南北朝鮮自身が南北朝鮮の将来を決めるというパターンは考えられません。朝鮮半島の将来を議論するには、中国ファクター、米国ファクター、ロシアファクター、そして日本ファクターなどを勘案することが必要です。
米国は北朝鮮がCVIDの意思を明確に示さない限り、米朝首脳会談に応じないでしょう。
そして、現状で北朝鮮はCVIDに応じることはないでしょう。金正恩は自身の身の安全とカネ儲けのために核放棄に応じることはありませんし、仮に北朝鮮にCVIDを強要したければ、中国・ロシアの支援が必須です。
しかし、中国・ロシアが何の見返りもなしに、CVIDを斡旋するとも思えませんし、トランプ政権がそれに向けて動いている節もありません。
よって、「6月の米朝首脳会談自体、開かれない可能性も非常に高い」という観測についても、維持したいと思っています。
さらに、昨日の「板門店宣言」において、南北朝鮮両国はロシアを激怒させた可能性があります。ロシアが北朝鮮を見放す可能性が出てきた、ということであり、あとは中国の了解さえあれば、北朝鮮に対する軍事侵攻という可能性もあります。
ただし、このあたりについてはロシアや中国の出方を見る必要がありますので、本稿ではシナリオの修正については見送りたいと思います。
View Comments (6)
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信有り難うございます。
管理人様の見解に対しては概ね賛同するのですが、一つだけ異論を述べさせてください。
>日本は米国と離れて単独で動くことはできません。
なぜでしょうか?
答えは簡単。憲法第9条第2項という制約があるからです。
この制約もそうですが、俗に言われる国連憲章の敵国条項と言うモノを文言から削除させる方が先です。
敵国条項を名目とした軍事行動は国連と言うユルい軍事同盟の介入を拒む事が出来るからです。
蛇足ながら国連は軍事同盟である事を認識すれば、長年の集団安全保障の議論の結論は明確です(笑)。
まあ、憲法は日本人の都合で何とでもなりますが、国連憲章はそうでないです。
朝鮮半島核問題がある今が国連憲章を変えて国際環境を変えるチャンスです。
安倍首相と河野外相の時期を得た行動を期待したいです。(この件には野党とカスゴミが本当に邪魔!(笑))
その上で当方は管理人様と読者の皆様に一つ提案が有ります。
一旦コメントを改めます。
当方が提案したいのは
条件付き改憲のススメ
です。
憲法9条を時限的かつ地域的に適用を除外する文言をつけるのが良いのでは無いかと思います。
例:
3項 憲法前文の意志に則り1及び2の条文は××年×月×日から3年間朝鮮半島に関する事案に限り適用を除外する。
4項 3及び4の条文は3の条文発効後3年後効力を喪い、自動的に3及び4の条文が削除される。
こんな感じで改憲論議を進めれば改憲はイヤだが朝鮮半島の問題も不安と思う層も改憲側に取り込めると思います。
再度改訂しなければ自動的に元に戻る条件にして改憲を行う。
今の憲法は硬直的過ぎますので、その改善にもつながります。
皆様、一度ご考慮を。
以上です。
長文失礼しました。
テレビのニュースで流れていましたが、国連軍(イギリスとオーストラリア)の哨戒機が沖縄に展開するようです。
朝鮮半島では何が有っても不思議でありません。
それにしても野党の状況認識能力の欠落はなんとかならないですかね。
こんなときは小異を棄てて国に協力。
民主主義の基本的ルールの筈です。
今後米中を交えて終戦宣言を目指すようですが・・・
終戦宣言、そして体制保障ということは、相手を国として認めるということ。
本人たちは連邦制を目指すのでそれで良いのでしょうが、これは大きな方針転換。
日本を含め、韓国に配慮して北朝鮮と国交を結んでこなかった国に対して十分な説明はあったのだろうか。
南北問題で日本パッシングは構わないが、方針転換の説明をパッシングなら、日本も韓国の意向など配慮せず、
独自の東アジア対策を作っていくべき。このタイミングが韓国から離れる最大のチャンス。
それに終戦宣言は良いのですが、そうなると当然国連軍は日本・韓国から撤退。
米軍は韓国のために日本の基地を利用することができなくなります。
米韓同盟を理由に基地の継続を望んでも、日本基地の後方支援なしに米軍がどこまで対応できるのか。
すごく無計画。韓国が困るのは構いませんが、日本にとばっちりがきそうで気が気ではありません。
このタイミングで安倍首相が交代するようなことになると、この難局を乗り越えられそうな首相候補が
見当たらず、日本の将来が心配になります。
< 更新ありがとうございます。
< やはり日米の要求する問題解決の最低ラインに対して、「ゼロ回答」どころか「マイナス回答」でしたね。韓国は一番国家にとってしてはいけない選択をしました(正直無くなろうが構わぬが)。日本への悪影響だけは困ります。
< 『板門店宣言』なるもの、具体的な方策には何ら言及していない。秋に文が訪朝する、だけが決定事項です。結局核開発は『非核化』の言葉が一人歩き、実態無し。百年かけてやるつもりか?当面秋まで猶予があるのだから、如何に貧弱な研究開発機関とはいえ、核小型化とICBMは完成の域に達する。CVIDなど全く頭にありません。また拉致被害者解放帰国についても、言及がない。ふざけんなよ!朝鮮!
< 新宿会計士様から後ほど、NBOの鈴置氏の今回の「茶番劇」に関するコメントがあろうかと思いますので、内容は割愛しますが、鈴置氏もどうやら南北の行動について、具体的な内容無し、米朝会談は無くなるかも、と言われてます。
< 私は宣言の中で、「和平について南北と米国、もしくは米中の4か国」という表現が入ってましたが、当事者の中国、そしてロシアにとって、メンツを潰され激怒しているのではないでしょうか。中国には『別に会談に入ってもよいぞ』という言い方。ロシアには『口出し無用』とばかり、外している。中国に『もしくは』とは宗主国に対して強く出たものです。きっとしっぺ返しを受ける。多分、韓国にね。また観光客減るぞ!(笑)。ロシアは、何をしでかすか不明。
< 日本は安倍首相中心に断固「板門店宣言」の具体的な行動を注視し、動きが無ければ米豪カナダ中国等と、圧力を南北にかける。もちろん経済封鎖は韓国にまで拡大対象とする。瀬渡しも拿捕する。一つ心配なのは海外の韓国大使館領事館の存在です。北の諜報活動に『悪用』される、偽造韓国人パスポートの発行などカンタン。康長官の指示で韓国外交官舎で北朝鮮人にいくらでも発行し、手助けする。私は、最終、米国のピンポイント攻撃は実行されるとみます。構わない、朝鮮人が撒いた種ですから。
< この期に及んでまでも、改憲反対、反日思想の野党、マスゴミは南北会談に酷い曲解をしている。昨日の報道など、南北会談に異常な期待感を持たせてましたし、本日も「終戦」という言葉も見られる。とんでもない、韓国は代表者じゃない。連合国米国である。また、野党の有田芳生氏など「日本だけがカヤの外、首相は路線転向すべきだ」と妄言。NHKのソウル在記者連中もピントハズレのコメント。日本は今から、更に強くなるんだよ!立憲民主党、日本共産党、民進党、社民党、希望の党、総選挙でズタボロになれっ。
< 失礼します。
過激なシナリオを一つ。北による赤化統一が成就し、人民解放軍の進駐を阻止するため、米国は韓国を再占領し、軍政下に置く。これで韓国はまともな国に戻ります。
当然、中露の反発を招くでしょうが、米国はロシアのクリミヤ占領を正当な処置と認め、制裁を解除し、国交回復を行う。どうでしょうか。