自民党が衆院で3分の2を超える圧倒的な議席を制しているなかで、一部メディアなどは「数の力で野党を押し切る」かの姿勢に批判的な論調を取っているようです。しかし、現在の衆院の勢力は、小選挙区比例代表並立制という制度を前提に、政党も有権者も行動した結果であり、選挙自体は合法的で民主的に行われていますので、ここにケチをつけるのはやはりおかしな話です。そして、やはり最大野党の中道改革連合にとっては、差し当たっての最大の問題点が党財政運営なのかもしれません。
目次
実力ベースで22倍
先月の衆院選は、高市早苗総理大臣率いる自民党の歴史的な圧勝という結果に終わりました。
ただ、これについては以前の『衆院選の実態は自民大躍進というより立民への退場勧告』などを含め、何度か取り上げて来たとおり、「自民党が圧勝した」という側面のみならず、野党、とりわけ「最大野党」が惨敗したという点において、日本の政治史に残る大きな大転換だったと見るのが妥当ではないでしょうか。
数値的なことでいえば、自民党が獲得した議席は(無所属や追加公認も含めると)316ないし317議席(※選管の公式ベースだと315議席)であり、これに対し最大野党である中道改革連合の獲得議席は49議席で、両者にはおよそ6倍以上の差がついています。
(※316議席と317議席は、無所属の世耕弘成氏を自民党当選者に含めるかどうかの違いです。)
与野党の議席差が6倍以上、というのも、これまでの常識からすれば「異常事態」かもしれませんが、それだけではありません。自民党は各地のブロック比例での候補者不足により、本来得られていたであろう合計14議席を他党に譲ったのです。中道改革連合はこのうち6議席をゲットしました。
ということは、実力ベースで見ると「本来の議席」は自民党が330ないし331議席であり、中道改革連合が43議席で、議席差は約7.7倍に膨れ上がります。
さらに、中道改革連合は立憲民主党と公明党の両党を母体としており、比例上位占有で28議席を確保した公明党出身者を除外すると、立憲民主党系の候補が確保した議席は21議席であり、「自民おこぼれ」でゲットした6議席を除外した「実力ベース」では、わずか15議席です。
330議席対15議席。
割り算すると、ちょうど22倍の差が生まれた格好であり、これこそが現時点における民意だったと考えるのが妥当でしょう。
小選挙区を前提に動いたのだから仕方がない
もちろん、得票差で22倍の差がついていたわけではありません。
仮に日本の選挙制度が比例代表オンリーだったとすれば、自維連立で過半数は確保できていたにせよ、さすがにここまで極端な差はついていなかったはずです。
だからこそ、今回の選挙結果を「民意ではない」とでも言いたいのか、「仮に今回の選挙が完全比例だったら高市総理は退陣していた(かも)」、といった主張も出てきているのが実情でしょう(『完全比例代表でも政権交代は生じなかった可能性が高い』等参照)。
| 今日はひな祭りということもあり、選挙に関する話題を取り上げたいと思います。毎日新聞が2日の『東京夕刊』で、『選挙制度 勝手に変えてみた』などと題し、完全比例代表制なら「自民大敗、高市退陣?」、などとする記事を配信したようです。ただ、現在の小選挙区・比例代表並立制を前提とした得票数で完全比例代表制を論じているのだとしたら、やはり違和感を覚えます。選挙制度が変われば行動が変わるからです。政党も、有権者も。完全比例代表なら政権交代は起きたのか?「選挙制度、勝手に変えてみた」=毎日本日は3月3日、待... 完全比例代表でも政権交代は生じなかった可能性が高い - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかし、現実の選挙は完全比例代表制などではなく、小選挙区比例代表並立制であり、結果的に自民党と中道改革連合に極めて大きな数の力の差が生じたことは間違いありません。
ただ、「ちょっとした得票差で圧倒的な議席差が生じる」というのは、1994年の政治改革の時点ですでにわかっていた話であり、そうであるならば、各政党、とくに最大野党は、この選挙制度を前提に、圧倒的な民意を集めるべく努力すべきだった、という話に過ぎません。
「数の力で押し切る」との批判について
こうしたなかで、予算委員会などの審議時間が有意義に活用されているのかどうか、などを巡っては、『「予算審議が足りない」は本当か』などでも取り上げている通り、正直、なんだかよくわからないというのが実情に近い気がします。
| 高市早苗総理大臣は現在、予算案の年度内成立を目指しているとされますが、そのためには国会の審議時間が少なくなるという問題が一部メディアなどから提起されています。ただ、大変申し訳ないのですが、現実の衆院予算委員会の審議状況を見ていると、予算とそこまで関連性が高くなさそうな質問も散見され、その意味では「審議時間を減らすな」という主張に妥当性があるのかは個人的には疑問です。予算成立の遅れ:審議時間短縮に批判も!今年は高市早苗総理大臣が1月21日召集の国会で冒頭解散したことで2月8日に衆院選が行われまし... 「予算審議が足りない」は本当か - 新宿会計士の政治経済評論 |
これに加えて違和感があるとしたら、こんな話題かもしれません。
「数の力で野党を押し切る」。
もちろん、強権的な政治は望ましくありませんが、民主的・合法的に実施された選挙で自民党が圧勝したわけですから、いまさら「数の力で押し切るな」、などと言われても、困惑するしかありません。
そういえば、Xで一部ユーザーがまじめな表情で唱えている「自民がやると数の横暴、野党がやると民主主義」式のダブル・スタンダードにも、個人的には違和感を覚える次第です。
昨年参院選ですでに「4番手」だった立憲民主党
いずれにせよ、立憲民主党ないし中道改革連合は現在の選挙制度を前提に大敗を喫したのであり、その事実をちゃんと認める必要があります。
そして、その大敗が立憲民主党自身の行動によりもたらされたものである可能性が高い点に加え、今回の大敗も、「不思議の負け」とは必ずしも言い難い、という点には注目する価値がありそうです。
立憲民主党は石破茂・前首相の時代に、厚生年金の積立金を国民年金加入者にさらに流用することを可能とする法案の成立に協力したり、出そうと思えば出せた内閣不信任決議案を提出しなかったり、と、いわゆる「勝負どころ」をことごとく外したのです。
また、この際指摘しておきますが、「中道改革連合」、あるいは実質的には立憲民主党が今回の衆院選で大敗北したことについては、その兆候は昨年の参院選の時点ですでに出ていたのです。
参院選、とくに全国比例に関しては、得票数と議席数が比較的リンクすることで知られていますが、昨年参院比例では立憲民主党の得票は自民、国民民主党、参政党のそれよりも少なく、すでに「4番手」に沈んでいたのです。
2025年参院選・比例得票・議席
- 自民…12,808,307票(21.64%)・12議席(24.00%)
- 国民…*7,620,493票(12.88%)・*7議席(14.00%)
- 参政…*7,425,054票(12.55%)・*7議席(14.00%)
- 立民…*7,397,457票(12.50%)・*7議席(14.00%)
- 公明…*5,210,569票(*8.80%)・*4議席(*8.00%)
- 維新…*4,375,928票(*7.39%)・*4議席(*8.00%)
- れ新…*3,879,914票(*6.56%)・*3議席(*6.00%)
- 保守…*2,982,093票(*5.04%)・*2議席(*4.00%)
- 共産…*2,864,738票(*4.84%)・*2議席(*4.00%)
- 未来…*1,517,890票(*2.56%)・*1議席(*2.00%)
- 社民…*1,217,823票(*2.06%)・*1議席(*2.00%)
(【出所】総務省『参議院議員通常選挙 速報結果』データをもとに作成)
しかも、今回の衆院選では、立憲民主党と公明党が合体したベースで、比例代表の得票数は2024年衆院選と比べて700万票以上落ち込んでおり、このことから、次の2028年参院選では、立憲民主党の得票がさらに減る可能性がわりと高いといえます。
党の財政運営からクラファンへ
これに加えて指摘しておくべき論点は、党の財政運営です。
『中道改革連合等を待つ「政党交付金の減少」という課題』でも触れましたが、著者自身が所持している過去の選挙データ等を参考に、政党交付金をざっくり試算してみると、中道改革連合が約26.3億円、立憲民主党が約19.9億円、公明党が約11.1億円で、合計約57.2億円です。
| 自民党はいまや衆院側で、最大野党・中道改革連合の6.6倍という圧倒的な議席を持っています。金曜日の高市早苗総理大臣の施政方針演説、ヤジがなくて非常に聞きやすかったという報告がSNSで多数見られている状況です。こうしたなか、日経新聞は社説で「中道は政策から立て直せ」と提言したのですが、正直、勝負はもうついているのかもしれません。そして、もっと切実な事情が、政党交付金の大幅な減少かもしれません。施政方針演説が行われた高市早苗総理大臣は昨日、国会で施政方針演説を行いました。第221回国会における高市内... 中道改革連合等を待つ「政党交付金の減少」という課題 - 新宿会計士の政治経済評論 |
解散総選挙前の時点で試算すると、立憲民主党が約71.2億円、公明党が約21.2億円で、両党合計だと約92.4億円が交付されていた計算なのですが、この時点ですでに約35.2億円、政党交付金が減少する―――という計算なのです。
もちろん、この試算はあまり正確なものではありませんが、中道改革連合、立憲民主党、公明党の3党の財政状況を考える上では非常に重要です。
そもそも中道改革連合(衆院)、立憲民主党(参院・地方)、公明党(参院・地方)の3党はまったくの別組織であり、自然に考えたら参院立憲民主党・参院公明党が衆院中道改革連合を資金的に支援するというのも不自然な話です。
今回、衆院・立憲民主党では大量の落選者を出し、支部の運営等にも財源が厳しいと推察されるのですが、こうしたなかで出てきたのが、こんな話題です。
中道、落選者支援でクラファン実施へ 返礼品は小川代表らが感謝伝える動画や直筆色紙など
―――2026/03/04 11:35付 産経ニュースより
中道、クラウドファンディングで1億円調達目指す 落選者支援に活用
―――2026年3月3日 21:26付 日本経済新聞電子版より
日経や産経などいくつかのメディア、あるいは中道改革連合の関係者らのSNS発信などによると、中道改革連合は衆院選落選者を支援するためのクラウドファンディング(CF)を実施する方針を決めたのだそうです。
次回参院選が「同日選」となったらどうなるか
この点、日経の記事によれば、本件CFは「寄付型」とし、会計処理や政治資金収支報告書への記載は政党への寄付と同様に扱うのだそうですが、立憲民主党が企業・団体献金、政治資金パーティー等の規制を積極的に提唱してきたことを思い出すと、やはり違和感は拭えません。
立憲民主党が自民党の「政治とカネ」問題を追及して来たという経緯を踏まえると、立憲民主党の事実上の後継政党である中道改革連合がクラウドファンディングを実施するという点に、引っ掛かりを覚える人もいるでしょう。
さらには、Xなどでは「自民がやれば裏金問題、野党がやれば記載漏れ」、といわんばかりのユーザーも散見されるのですが、その手のユーザーに限って、「自民がやれば悪いカネ、野党がやるのはキレイなカネ」式のエクストリーム擁護を展開しているようです(敢えて名指しはしませんが)。
ただ、それ以上に、中道改革連合にとって、「兵糧攻め」リスクが現実のものとなっている点は見過ごせません。
自民党にとっては少なくとも衆院で3分の2を制したわけですから、急いでもう1回総選挙をやるというインセンティブなどまったくありませんし、参院には解散総選挙の制度がありませんので、2028年7月までの間、大型国政選挙が行われる可能性は非常に低いです。
場合によっては、「高市自民」が圧倒的な支持率を背景に、2028年7月の参院選に衆院選をぶつける衆参同日選を仕掛ける可能性もありますが、そうなると、中道改革連合は資金的に全国の小選挙区で候補を立てるのが難しく、勢力をさらに後退させる、といったシナリオも現実味を帯びてきます。
いずれにせよ、著者個人としては高市内閣/高市総理の掲げる政策のすべてに賛同しているわけではありませんが、中道改革連合/立憲民主党/公明党がさらに勢力を後退させ、早ければ2028年に衆参で最大野党の交代劇が生じる、といった展開も予想してしまう次第です。
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1 2 次へ »「民意に応える」が正しい表現だと思うんですけどね。
落選者支援にクラウドファンディングですか。
何の義理があって、有権者が落武者を囲わなければならないんでしょうかね。
寄付型のクラファンだと、寄付者のKYCが徹底されていないものが多いそうです。クラファンはそもそもそう言う手軽さがウリでしょうし。
5万円以下の記載不要な小口に分割することもやりやすいでしょう。
外国人や外国法人からの寄付を見分けることもできないでしょう。
マネロンすらできてしまうかもしれない。
政治資金規正法の主旨から逸脱するんじゃないですかね。
なんでこんなことを真顔で言い出せるのか政治家としての姿勢を疑います(今さら)。
逆に、マイナンバーと連携したKYCバッチリで法令チェックも可能な政治資金用途のクラファンプラットフォームを作るんなら、逆に筋のいい話になるかもしれませんが。まあ、そこまで考えてるとは思えませんけどね。
おカネの増やし方
昔:中国(ちゅうこく)ファンド。
今:中国(ちゅうごく)ファンド。
・・。m(_ _)m
昔(陸○会)も今も変わりませんね~
中鬼国災不安怒ですね。
2028年7月の次回参院選はまだ2年強先になります。その間にもマスコミ・メディアが無党派層に与える影響力は衰える一方でしょう。なので中革連は無党派層に期待する事は叶わず、残るは最後の砦の岩盤左派と創価学会。しかしこの両者の相性は良くないと思います。今回は中道なるワードで融合を図りましたが岩盤左派は反発したのでしょう。であればマーケットニーズに迎合して中革連は分離、岩盤左派には立憲共産党、創価学会には公明党にリストラクチャすべきで、その各々に分離したのであれば支持する岩盤有権者からの浄財を得やすいように推察します。
高市政権の強みの一つが数の力ではなく常軌を逸したスピード感。時間をかける必要がある重要な論点は何か? それを明確して焦点にできなければ、多少強引であってもさすが高市政権と評価される可能性が高い。
一方で野党側の非難は言い分がお役所仕事的だと受け取られる気がする。いわゆるタイパが悪い、と。熟議の政治という言葉の受けが悪いのは、いままで散々中身のない国会答弁を続けてきた特定野党が原因。
また、財政が苦しいことの本質は支持が得られないことだとすれば、支持の回復をまず考えないと先がない。当面の資金をどうにかできても解決できない問題が残る。そっちが本来向き合うべき問題だと思うが、まあわかっていての現状なんだろう。
「ちうごくさん今度の口座はこっちです!」てか?
いよいよ隠さなくなってきたナぁて知らんけど
ソレはソウと落選中や初当選前のヒトの政治資金管理でどーなっとんかしら?
そもそも代議士というのは我々有権者の代わりに議会に行っているのであって、電話する「権利」や色紙などが返礼になり得ると思っている時点で思い上がりも甚だしいです。
衆院選での大敗で少しは気づくべきですが、予算審議の振る舞いから見るに彼らには難しいのかもしれません。
他人には難癖をつけるレベルで指弾してくる一方、自らは平然と己の発言に矛盾する行為を行う(そして指摘されると逆ギレかヘラヘラ笑って誤魔化すのが常)…今の若い世代が嫌う昭和(最早平成の方かな?)の体育会系上司そのまんまの態度ですね。当然支持が増えるはずもなく。
中革連はクラファンじゃなくスパチャにしときゃよかったのに。
スパチャなら「これはパー券販売みたいなものなので外人規正には引っかかりません!」て言えただろうに。
冗談抜きに参政党とかチームみらいならスパチャ始めるかも知れませんね。中革連は支持者が高齢過ぎて無理でしょうが。
野党ネタということで。
河野太郎氏によると、野党が衆院外務委員会の開催に応じていないそうです。
国際情勢激動の中、これをバラされれば野党批判につながると思い至らないのが、さすが中革クオリティ。状況理解力が並じゃないです。
政治家は勝手になれるもんじゃない。
この人を政治家にと、応援してくれる沢山の人がいないと。
応援と言っても清き1票だけではありません。
活動資金を寄付してくれる人がいないと。
しかも、議員でなくなった一般人になっても次の選挙で復活して欲しいと応援してくれる人がいないと。
自分はそこまでする人の気持ちはわかりませんが、そんな人が沢山いるとは思えません。
多分落選議員さんのまわりに、いなかったのでしょう。
だからこそ広範囲の応援を集めるためのクラファンですが、
“こんな低支持率の中核連の落選議員”を助けたい人がいるのかどうか?
しかも、クラファンなら成果物とかありそうですが、落選議員応援クラファンの成果物てなに?
少ない審議時間でカタログギフトの話しかしない議員さんて欲しい?
いや、欲しいと言う人がいないわけではないですが、少ないからこその落選議員。
そこから集まるクラファンに期待出来るのかどうか。
そんなのに期待するのなら、政治家を諦めた方が確実だと。