中国人訪日客が前年同月比で60%落ち込んだものの、訪日客全体の落ち込みは5%に留まった―――。これを、どう見るべきでしょうか。じつは、すでに訪日客全体に占める中国・香港からの入国者の割合は、コロナ前と比べ、大きく減っていました。見た目のインパクトと比べ、中国のノージャパンが日本経済にもたらす影響は軽微だったのです。ただ、今回の件も踏まえつつ、日本は国全体として脱中国をさらに進めなければならないことは間違いありません。
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最新データ:訪日客は5%の減少に留まる
日本政府観光局(JNTO)は18日、定例の『訪日外客統計』の最新データを公表しました。
今回公表されたのは2026年1月分の訪日外国人のデータ(速報値)ですが、これによると訪日外国人総数は3,597,500人で、中国からの訪日者数が前年同月比約60%落ち込んだものの、中国以外の国からの訪日者が増えるなどした結果、訪日者数全体の落ち込みは約5%に留まりました(図表1)。
図表1 訪日外国人の国・地域別内訳(2026年1月、上位10ヵ国・地域)
| 国 | 人数 | 構成割合 | 前年同月比 |
| 1位:韓国 | 1,176,000 | 32.69% | +208,900(+21.60%) |
| 2位:台湾 | 694,500 | 19.31% | +101,069(+17.03%) |
| 3位:中国 | 385,300 | 10.71% | ▲595,220(▲60.70%) |
| 4位:米国 | 207,800 | 5.78% | +25,244(+13.83%) |
| 5位:香港 | 200,000 | 5.56% | ▲43,687(▲17.93%) |
| 6位:豪州 | 160,700 | 4.47% | +20,515(+14.63%) |
| 7位:タイ | 115,100 | 3.20% | +18,289(+18.89%) |
| 8位:フィリピン | 79,200 | 2.20% | +7,015(+9.72%) |
| 9位:インドネシア | 74,000 | 2.06% | +10,770(+17.03%) |
| 10位:マレーシア | 72,500 | 2.02% | ▲2,503(▲3.34%) |
| その他 | 432,400 | 12.02% | +65,479(+17.85%) |
| 総数 | 3,597,500 | 100.00% | ▲184,129(▲4.87%) |
(【出所】日本政府観光局『訪日外客統計』データをもとに作成)
中国人の激減にもかかわらず、それ以外の国が増えている
「3,597,500人」、とキリが良いのは、この数値が速報値だからであると考えられます(なお、以下のグラフ等では百万人単位未満が四捨五入され「360万人」と表示されることがあります)。
ただ、「前年同月比5%の落ち込み」というと、なかなか深刻なのではないか、などと思う人もいるかもしれませんが、一概にそうとも言い切れません。そもそも2025年のインバウンド需要がそれまでと比べて極めて旺盛であり、2025年1月の378万人と比べ、18万人ほど減っているにすぎないからです(図表2)。
図表2 日本を訪問した外国人合計
この点、日本を訪問した中国人を見てみると(図表3)、1月の数値としては2024年なみに留まっていることがわかりますが、そもそもコロナ後の中国人訪日客が本格的に戻り始めたのは2025年10月までに限定された動きであったともいえます。
図表3 日本を訪問した中国人
中国人客激減で打撃を受けているケースもあるが…
ただ、中国人観光客が激減していることで、中国に依存したビジネスを営んでいる人たちにとっては、かなり困った状況に追い込まれている可能性があることは、注目に値します。
こうしたなかで目に付くのが、こんな話題かもしれません。
「壊滅的。売り上げも数千万単位でマイナス」 春節始まるも日中関係悪化でホテルは閑散 中国に依存しない体制づくりを模索 山梨
―――2026/02/18 20:50付 Yahoo!ニュースより【UTYテレビ山梨配信】
テレビ山梨が18日に配信した動画記事によれば、中国の大型連休「春節」の時期を迎えたにも関わらず、中国からの団体客の受入に特化して来た山梨県内のホテルが閑散としている、というのです(ホテルの実名等は記事でご確認ください)。
記事によるとこのホテルは9割くらいが中国人客で占められており、昨年10月まで「ロビーはお客様が歩く場所がないくらいいて、スタッフ間の声がかき消されるくらい」に混んでいたものの、予約がことごとくキャンセルされるなどし、12月から2月にかけては「壊滅的な状態」(ホテル運営責任者)だそうです。
そもそも中国人の割合は高いのか?
ただ、エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏のこの記事に対するコメントが秀逸です。
門倉氏は個別事例で見て中国需要に依存していた施設などで短期的な打撃が生じるのは当然だとしつつも、それが中・長期的に悪い影響だけをもたらすとは限らないと指摘するのです。
具体的には、▼1人あたり消費額が中国よりずっと大きい米、英、豪などからの観光客が増加を続けており、中国人観光客減少によるマイナス影響は軽微なものに留まる、▼中国人訪日需要減少による宿泊料金低下・渋滞混雑緩和で国内旅行需要が喚起される―――などの効果もある、としています。
そのうえで、門倉氏は次の通り、インバウンドの中国依存について、こう指摘するのです。
「中長期的には、インバウンドで中国依存度が高いと、中国が経済的威圧をかけてきたときに大きなダメージを受けるので、日本の観光業界はインバウンドの脱中国を急ぐべきだ」。
正直、ここまで同意できる文章も珍しいかもしれません。
ただ、ニューズ・メディアは「中国人観光客激減で困っている施設」などの取材に力を入れているフシもあるのですが、ここでちょっと興味深いデータを紹介したいと思います。じつは、訪日客全体に占める中国・香港出身者の割合が高まったのは、2015年頃からの現象なのです(図表4)。
図表4 中港からの訪日客が全体に占める割合
(【出所】日本政府観光局『訪日外客統計』データをもとに作成)
安倍晋三政権下で進められたインバウンド振興政策の効果でしょうか、コロナ禍の一時期を除くと、中国(や香港)からの訪日者がインバウンド全体に占める割合は(季節変動はあれ)おおむね30~40%で推移するようになり、そして韓国の「ノージャパン」が深刻化した2019年には最大で47.26%を記録しました。
脱中国をさらに加速化させるべき
ただ、コロナ期を挟み、日本政府が観光客の受入を正常化した2022年10月以降で見ると、中国人の訪日者数はしばらく低調だったためか、割合は大きく回復するに至らず、最大でも2025年8月に36.31%を記録したにとどまっています。
要するに、日本は国を挙げてインバウンドの多角化にすでに踏み切っていたのであり、その結果が中国のノージャパンの無効化です。
いずれにせよ、個人的には中国が日本に対し、ノージャパンなどを仕掛けてきたことが、長い目で見て本当に日本経済に打撃を与えるものだったのかについては疑問です。
実際のところ、日経報道によれば、2025年12月のカード決済額は中国人の減少を中国人以外の増加がカバーしたとする話題もありますので(『中国人客が減った結果⇒決済額はむしろ前年同月比増加』参照)、中国政府の旅行制限措置にどこまでの効果があるのかは疑問です。
| 以前、テレビ記者が小泉防衛相に対し、「衆院選で自民党が圧勝したことを受けた安全保障上の懸念点を教えてほしい」と言い放った件を取り上げましたが、この手の「日本が強くなれば中国を刺激することになり望ましくない」などとする言説は新聞、テレビ、左派政党などが好きなロジックでもあります。ただ、彼らにとって不都合な事実があるとしたら、中国の対日制裁措置はほとんど日本経済に影響を及ぼしていない、という点でしょう。その一例が、日経新聞が報じた、三井住友カードの決済額データです。「自民党が勝ったら安全保障に懸... 中国人客が減った結果⇒決済額はむしろ前年同月比増加 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、門倉氏の言を敷衍(ふえん)すれば、日本経済全体として見て、中国の影響を低下させる努力が必要、ということです。とりわけ、中国に依存している重要な戦略物資(レアアースや医薬品など)の脱中国は、国家的課題であるという点に関しては間違いないでしょう。
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アパホテルのように、中国人が寄り付かないことにより、それが利点になってかえって業績が伸びている例もあります。今後どうなるか見守りましょう。
アパはいいですよね。特亜がいない。
とりあえず全国の主要空港で中国系が押さえてるがアクティブでない発着枠は更新せず他の航空会社に回すべきやないかな、知らんけど
もはや中国はどの角度から見てもリスクの塊。それに依存したビジネスがうまくいかなくなったとして、自らの判断以外に要因を求めるのは他責思考過ぎる。
見方によっては幸運にも中国依存によるリスク評価をコロナ禍と今回と二度のストレステストを経ることで業界の共通認識として将来投資に生かせる、とも言える。
為替について、明るくはないのですが、中国が本格的に不良債権の処理を開始した場合、為替は相当安くなると思います。中国元が安くなれば、中国の方々は、日本旅行など夢のまた夢という感じになり、6割減が定常状態になるのではと思います。
顧客企業の所在する街で中国人向けのレストランがあり、日本人お断りというオペレーションだった店が業態転換の工事をしていました。企業経営の観点からは、顧客のポートフォリオの分散が重要なのかもしれません。