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    Categories: 外交

児童性的虐待疑惑浮上…入国ビザ免除の適正化措置必要

ちょっと信じられない事件が発生しました。報道等によると、51歳の男がタイ人少女を性的サービスに従事させていたというのです。事実だとしたらこの経営者に加え、徹底した捜査で利用者らを特定し、逮捕したうえで実刑を付けていただきたいところですが、問題はそれに留まりません。これは明らかに官庁の責任です。日本政府は事実関係の確認が取れるまで、今すぐタイに対するビザ免除措置の運用を一時停止するなど、ビザ免除の適正化を急ぐべきではないでしょうか。

観光立国論に関する5年前の拙稿

著者は以前からしばしば月刊オピニオン誌に「新宿会計士」名義で寄稿させていただいており、そのひとつが今から5年前の『【宣伝】正論2020年5月号に論考が掲載されました』でも報告した「インバウンド目標を撤回すべきだ」とする主張です。

その概要を繰り返しておくと、こんな具合です。

  • 観光立国の推進は、さまざまな点で国益にかなっていることは事実だ。外国人観光客が日本にやってくれば、経済効果に加え、海外に日本ファンを作る効果も期待できるため、長い目で見れば安全保障にも資するためだ
  • ただし、観光立国を推進する意義は、「外国人がさまざまな国から旅行者として日本を訪れ、おカネを落としてくれたうえで日本のファンになってくれる」などの目的が達成されているかどうかで判断すべき筋合いのものであり、「入国者4000万人」などの「数値目標」とは必ずしもリンクしない
  • それに、日本の近隣には経済を政治利用する国もあるし、観光客の数値目標が独り歩きすれば、それにより2017年に韓国が中国から「THAAD制裁」を食らったのと同様、日本も外国から不当な制裁を食らう可能性がある
  • インバウンドは地域経済振興、日本のイメージ向上という両面からたしかに有益かもしれないが、数値目標が独り歩きするのは大変危険であり、「外国観光客を維持するために日本政府は譲歩すべき」、などと本末転倒した主張すら出てくる可能性がある

…。

うなぎ登りに増える訪日外国人

そのうえで、次のように結論付けたのです。

地域振興とセットにした良質な観光資源の掘り起こしと開発、ひとりたり旅行支出の最大化、特定国に偏ったインバウンド需要の掘り起こし、そして何より外国人旅行客を『お客様』としておもてなしし、満足度を高めることなどを政策目標に据えるべき」。

このときの懸念が、ある意味では悪い形で実現しつつあります。

日本はコロナ禍でいったん外国人の入国を制限したのですが、2022年10月に外国人の入国が許可され、その後はまさにうなぎ登りに外国人入国者が増えていて、直近の2025年9月の入国者は327万人に達しています(図表)。

図表 日本を訪問した外国人合計

(【出所】日本政府観光局『訪日外客統計』データをもとに作成)

今年は外国人入国者数が9月末までの間ですでに3165万人に達しており、このペースで進めば、年間を通じて史上初めて4000万人という目標を達成する可能性も高いと考えられます(ちなみに2024年通期の訪日客数は3687万人)。

インバウンドの経済効果は疑問

ただ、外国人観光客の経済効果は、個人的には思ったほど大きくないようです。

国土交通省の『訪日外国人の消費動向 2024年年次報告書』によると、2024年の訪日外国人旅行消費額は総額で8兆1257億円と推計されています。つまり、単純計算で外国人1人あたり20万円強を消費してくれている計算ではあります。

しかし、経常収支統計上、わが国は「第一次所得収支黒字」が年間40兆円ほど発生していること、製造業の輸出高が数十兆円というレベルに達していることなどを思うと、労働集約産業でもある観光業をことさらに振興することが正しいのか、個人的には疑問でもあります。

それだけではありません。

最近だと外国人が事実上の労働者として日本に入国しているといった話題はよく耳にしますし、Xなどでは外国人の解体業者が法令に反し、非常に危険な工事を展開しているとする告発も頻繁に目にします。

このように考えると、入国管理の適正化は必要です。

タイ人少女が性的サービスに従事させられていた!?

ましてや、現在の日本は「インバウンド振興ありき」で、ともすればビザの取り扱いが杜撰になっていたりしないでしょうか。

こうしたなかで、少し気になるのが、ビザ免除の扱いです。

日本は現時点で、74ヵ国・地域に対し、観光や商用などの短期滞在に際してビザを免除しているのですが、東アジアでは次の9ヵ国・地域がその対象です。

ビザ免除国・地域(東アジア)
  • 15日…インドネシア、タイ
  • 30日…ブルネイ
  • 90日…シンガポール、マレーシア、韓国、台湾、香港、マカオ

(【出所】外務省『査証免除国・地域(短期滞在)』)

こうしたなかで、ちょっと本稿では敢えて、極めて許せない犯罪に関する話題を取り上げておきたいと思います。

<独自>「学校に通いたい」12歳タイ人少女働かせた疑いでマッサージ店摘発 人身取引か

―――2025/11/6 05:00付 産経ニュースより

報道によると51歳の経営者の男が外国人の未成年の女の子(しかも12歳!)を「性的サービス」に従事させていた疑いがあるのだそうです。

産経の報道から判断するに、逮捕容疑はおそらく「15歳未満の児童を労働者として使用した疑い」だと思われますが、もしも報道が事実なら、容疑を児童に対する性的虐待に切り替えるべきではないでしょうか。

ビザ免除の運用を停止すべきでは?

しかも、被害者の少女は(おそらくは日本語もよくわからないであろう)タイ人で、今年6月に母親に連れられて来日して以来この店で勤務していたとのことであり、その母親は少女を店に残して去り(おそらくはタイに帰国済み)、9月に本人が東京出入国在留管理局に助けを求めて出頭したことで発覚したそうです。

これ、記事のタイトルを「12歳少女が働いていた」ではなく、「51歳の男が未成年者を性的搾取していた疑い」、などとするのが正しいのではないかと思えますし、同じ年頃のお子さんがいらっしゃる方は、多くの場合、強い怒りの気持ちを抱くのではないでしょうか。

(あくまでも報道が事実なら、ですが、)少なくともこの経営者らには実刑を付けるべきでしょうし、店を利用していた客も可能な限り捜査して逮捕すべきではないかと思えてなりませんが、それだけではありません。

これは明らかに官庁の失態であり、少なくともタイ(あるいは不法就労者が多い疑いがあるその他の国々)については、ビザ免除プログラムの運用を一時停止し、少なくとも事実関係の確認が取れるまでの間はそれを継続すべきレベルの事案ではないでしょうか。

日本政府が「自由で開かれたインド太平洋」を掲げ、「自由、民主主義、法の支配、人権」を大切にする国家であると宣言している以上は、こうした人権侵害事案については絶対に許してはならず、これに加えて違法就労の疑いがある国からのビザ免除については、疑念が払拭されるまでは停止すべきです。

いずれにせよ、捜査当局による徹底捜査が行われることは当然ですが、ここらで入国管理政策についても徹底的な適正化につなげていかなければならないことについては間違いないといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (7)

  • 結局緩すぎる出入国管理は、訪日外国人自身にとっても害悪ということが証明されましたね。まあ左界隈はいつもの如くダンマリと論点ずらしで平壌運転なんでしょうけど。

  • 少女の母親は毒親を通り越して非道外道の権化ですね。「こいつ」もタイ当局により厳罰に処せられるべき。

  • 安田峰俊氏の『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』追加取材分の追補がある新書版はナカナカ読み易かったデスぜ
    本屋の広告から左巻きにdisられよった在日クルド人ルポ本(書名失念)と合わせていろいろinterestやったス

    • 石神賢介氏の『おどろきの「クルド人問題」』でしたワ

  • 自民党の移民利権の結果では。ICTAI投資で生産性を上げることも、少子化対策も行わず、何十年も。ただ、野放図に外国人を入れたために、こんな事件も起きるということでしょう。外国人にパーティー券を購入して欲しいがために、何処ぞの海外勢力に自民党が積極的に協力しているのでは。中国人しか出入りしないビルとか、中国人しか入れないレストランとか。ヤバイ状況かも。

    • 入国税を課して、ICTAI投資に大規模な投資減税。目先のインバウンド需要で忙しく、生産性向上に力を割けない状況。これでは駄目でしょう。