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もし自民惨敗でも石破氏を総裁に選んだ議員の自業自得

本稿は、選挙期間中に執筆した、一種の「予定稿」です。選挙期間中の時点で自民党はかなりの苦戦が報じられており、著者自身は選挙期間中の時点で、自民党の獲得議席は28~44議席程度と予想しています。もしこの最低レンジだとしたら、公明党と合わせて50議席超という自民党の目標は達せられません。参院選は一般に政権選択選挙ではありませんが、少なくとも石破茂政権に対する有権者の審判という意味では、これで完全に答えが出たといえるでしょう。

お断り:本稿は「予想ベースの予定稿」です

最初にお断りしておきますが、本稿は「予定稿」であり、事前に執筆しておいて公表予定日時を「2025年7月20日20時00分」に合わせただけのものであり、実際の執筆日は14日(月)から19日(土)の間だ、と申し上げておきます。

このため、おそらくはこれから報じられるであろう現実の開票速報などのデータと本稿の内容が矛盾している可能性があるかもしれない、という点については付記しておきたいと思います。

そのうえで、今回の選挙をひとことでまとめれば、それは「石破政権に対する不信任」だと考えています。

おそらく今回は、自民党と公明党が合わせて改選後で過半数を維持するのに必要な議席(50議席)を割り込んでいる可能性が非常に高く、かといって有権者は最大野党である立憲民主党を信任したわけでもなく、国民民主党や参政党などを含めた「有象無象」が議席を増やす、というものではないでしょうか。

敢えて議席を予想すると…!?

さて、選挙期間入りする直前、当ウェブサイトでは『現実問題「自民ズッコケ」なら立民躍進の可能性濃厚か』において、直前に実施された東京都議選の得票状況などのデータも参考にしつつ、6月25日時点の予想として、こんなことを述べました。

  • 自民党は合計36~42議席程度を獲得する可能性があり、公明党の10議席前後と合わせれば、辛うじて参院側でも過半数を制する可能性がある
  • ただし、この「合計36~42議席」は都議選の結果を参院選に無理やり当てはめた場合の数値であり、しかも都議選における都民ファーストの存在を無視した議論である
  • このことから、「自民が25%程度得票を減らしつつも36~42議席は確保する」という予想自体、かなり楽観的なシナリオである可能性が高い
  • そして、自民党がズッコケた場合、勝敗を左右する一人区などで漁夫の利を得て大きく議席を増やす可能性が最も高いのは、国民民主党でも参政党でもなく、立憲民主党である

…。

果たしてこの予想は合っているのでしょうか?

その後の選挙情勢報道などをもとに、あくまでも著者自身の主観なども交えつつ、今回の議席数を大雑把に予想しておくと、こんな具合です(実際には個人的予想には幅もあり、とりわけ自民党の一人区の状況が読めないため、自民党にとってはやや厳しめの数値です)。

図表 当ウェブサイトによる参院選議席予想(レンジの中央値)
会派 改選数 今回議席中心値 増減
自民 52 36 ▲16
立民 22 24 +2
公明 14 11 ▲3
維新 6 5 ▲1
国民 5 18 +13
参政 0 12 +12
共産 7 5 ▲2
れ新 2 3 +1
沖縄 1 1 ±0
社民 1 0 ▲1
保守 0 2 +2
NHK 1 1 ±0
無所 6 6 ±0
欠員 7 0 ▲7
合計 124 124 ±0

(【出所】総務省『参議院議員通常選挙 速報結果』による過年度の選挙結果、参議院ウェブサイト『会派別所属議員数一覧』および各社世論調査等を参考に作成)

自民党の獲得議席数は、後述の通り、現時点では「28~44議席」と予想していますが、上記図表ではそのほぼ中間である36議席と記載しています。

もちろん、これは当ウェブサイトが実際に世論調査を行って出した数値ではなく、あくまでも前回と前々回の参院選のデータなどをもとに、各社世論調査などを参考にして予想したものであり、盛大に外す可能性もありますが、それでも投票が終わった現時点であれば、これを公表してもまったく問題ないでしょう。

一人区は32議席だが…全体の帰趨を決める可能性も!

この予測に関し、以下ではその一部分として、とくに自民党の獲得議席予想の根拠を説明したいと思いますが、その前に、参議院議員通常選挙の仕組みをざっと振り返っておきましょう。

各政党の比例代表に「ドント式」で配分される「全国比例」(50議席)。

全国で32ある、改選議席数が1議席の「一人区」(32議席)。

全国で15ある、改選議席数が2~6議席の「複数区」(42議席)。

この3つのタイプ、それぞれ特徴があります。

とくに全国比例に関していえば少数政党にも有利な仕組みで、だいたい100万票前後を獲得できれば1人以上の当選者を出すことができます。また、複数区は当選者数が6人(※今回だけ7人)の東京都選挙区を筆頭に、「中選挙区」のように、ある程度の得票があれば当選できるといえます。

しかし、一人区に関していえば、こうはいきません。得票数と獲得議席がきれいに比例するとは限らないからです。いや、むしろ、「保守票」を自民党とその他の政党(今回の場合は参政党でしょうか?)が奪い合うことになれば、漁夫の利を立憲民主党などが得ることになるかもしれないからです。

一人区とは、「その選挙区で当選できる候補者は1人だけ」という選挙区ですので、必然的に、大政党(具体的にはとくに自民党と立憲民主党)に有利に働きます。

したがって、新興政党などが一人区のすべてで候補を立てるなどすれば、自民・立憲民主両党のうち、その新興政党から票を奪われた側が落選の憂き目にあう可能性が非常に高いと考えられます。そして、この一人区の動向が、全体の帰趨を決定することもあるのです。

この点、今回の選挙では参政党がすべての一人区で候補を立てたとされており、また、先月の都議選の結果などからも、参政党はおもに自民党の「保守層(?)」の得票を奪う効果があると考えられることから、自民党が一人区の多くで議席を落とすという展開が考えられます。

前回の一人区の状況はどうだったのか

これについて参考になるのが、2019年と2022年の参院選における一人区の状況です。

このうち2019年に関していえば、自民党は22議席を制する一方、10議席が野党などの手に渡りました(うち無所属8議席、立憲民主1議席、国民民主1議席)。

一方で2022年は野党協力がうまくいかなかった影響もあってか、32区のうち自民党が28区を制し、残り4区を立憲民主(2議席)、国民民主(1議席)、無所属(1議席)で分け合いました。

つまり、一人区で野党が何議席を獲得するか(=自民党が何議席を落とすか)については、野党共闘がどこまでうまくいっているかというファクターが非常に大きいといえます。

今回についてはどうでしょうか。

じつは、今回の参院選は、候補者の状況だけでいえば2022年よりも2019年に似ています。読売新聞の7月3日付の下記記事によると、一人区の半数で自民と野党の「一騎打ち」となっているというのです。

選挙全体の勝敗のカギ、「1人区」の半数で自民候補と野党系候補が事実上一騎打ちへ

―――2025/07/03 12:45付 読売新聞オンラインより

一人区で猛烈な逆風なら自民党30議席割れも!?

そして、これに加えてもうひとつ大きなファクターが、自民党に吹く「順風」と「逆風」です。

2019年のケースでいえば、自民党が制した22選挙区のうち、じつに10選挙区が、2位との得票差が10万票以下に迫られていました。もしも自民党候補が5万票ほど失い、それらがそのまま野党系候補に流れれば、この10区では当選結果が逆転していた計算です。

さらにそのうちの5区では、得票差が5万票以下でしたので、これらに関しては自民票を5万票ほど奪う「第三政党」が出現すれば、やはり自民党が議席を失う計算であり、簡便に考えて自民党が一人区で、12~17議席、いや、下手をするとそれ以下の獲得に留まる可能性がある、というわけです。

これに対し、比例代表や複数区は政党支持率などから比較的容易に議席予想が導けますが、選挙戦に入る前やその後のメディアによる支持率調査等が正しければ、複数区獲得議席は8~13議席程度、比例獲得議席は8~14議席程度で、合算すれば28~44議席です。

  • 一人区…12~17議席
  • 複数区…8~13議席
  • 比例区…8~14議席
  • 合計数…28~44議席

この予想シナリオだと、下手すると自民の獲得議席は30議席すら割り込む28議席程度であり、これは2007年の37議席を割り込み、史上最悪レベルの惨敗です。公明党の議席次第ではありますが、非改選の74議席(自民61、公明13、ただし議長除く)と合わせて102議席と過半数(125議席)に及びません。

自立公財連立を阻止するか?

もちろん、巷間では衆参で過半数を失った自民党が政権を維持するためにどこかの政党と連立を組むとの観測は根強く、とりわけ石破首相としては、考え方が最も近い政治家のひとりである野田佳彦・立憲民主党代表に近づいているとの噂話はよく耳にします。

しかし、参院選は一般に政権選択選挙ではないとされるため、基本的には石破茂首相が居座ろうと思えば居座れなくもありませんが、さすがにここまでの惨敗を喫してしまえば、(参院選で勝ち残ったメンツにもよりますが)参院選直後に石破総裁の解任が発議されそうな気もします。

つまり「自立公財連立政権」発足の直前に、それに自民党の党内から待ったがかけられ、石破氏が解任されてしまう、という可能性です。

ちなみに自民党の党則第6条第4項の規定によると、自民党国会議員と都道府県支部連合会代表の総数の過半数が要求すれば、自民党総裁の任期満了前であっても、総裁選挙を行うことができるという規定が設けられています。

自由民主党党則第6条第4項

総裁の任期満了前に、党所属の国会議員及び都道府県支部連合会代表各一名の総数の過半数の要求があったときは、総裁が任期中に欠けた場合の総裁を公選する選挙の例により、総裁の選挙を行う。

おそらく解任はこの条項を使用するのではないでしょうか。

自民党は石破茂総裁を選んだことを真摯に反省せよ

いずれにせよ、仮に本稿で示す予想が正しかったとすれば、自公で過半数割れの可能性が濃厚です。

そうなると、さすがに国政選挙で2回(6月の都議選を含めると3回)も惨敗し、衆参ともに過半数割れという状況を招いた石破茂首相がこのまま居直るようであれば、しばらく選挙がない以上、所属国会議員としても石破総裁の解任に向けて動きやすいのではないでしょう。

もちろん、石破首相自身が(巷間で噂される)「自立公3党連立」(あるいは「自立公財4『党』連立」)で居座りを図るという可能性はあります(『自立公財「4党」大連立構想と付随するリスクシナリオ』等参照)。

しかし、安倍晋三総理大臣が再登板するきっかけとなった2012年12月の衆院選を含め、9回連続して勝利してきた自民党に惨敗をもたらした石破茂氏という人物が続投することを、果たして自民党議員は許すでしょうか。

いずれにせよ、本稿の見立てどおり、自民党が(公明党と合わせて)参院側でも過半数割れを喫したのだとすれば、自民党がこれからやらなければならないのは、本来、石破総裁の解任だけではありません。

なぜ、昨年9月の総裁選で、党員票でトップだった高市早苗氏ではなく、土壇場で石破氏を総裁に選んでしまったのか、誰がどういう力学でどう決定したのか、なぜ石破総裁の下で2度も国政選挙で惨敗を喫したのか、これを徹底して反省すること以外にありません。

森山裕幹事長による「消費税を守り抜く」発言もそうですし、また、立憲民主党と組んで厚年積立金を国民年金に流用するなどの法案を通したこと、宮沢洋一税調会長が主体となり、日本維新の会と組んで所得税・住民税の基礎控除の一律75万円引き上げを潰したことなどは、勤労層を激怒させたのではないでしょうか。

安倍総理の時代に自民党が強かったのは、なんといってもアベノミクスと「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を掲げ、内政、外交両面から日本を強く復活させようと努力したからであり、石破首相の10ヵ月がこのアベノミクスとFOIPに照らして正しいものだったのかを、自民党は検証すべきではないでしょうか。

そして、本稿に示す「自公過半数割れ」シナリオが実現したとしたら、仮に石破政権が続投するにせよ、「次の政権」が発足するにせよ、自公連立政権にとってはこれからなかなか苦しい政権運営が待っていそうですが、さて。

新宿会計士:

View Comments (24)

  • 今も速報見てましたが、予想通り自民は惨敗のようですね。
    ただそれでも石破と言う男は総理の椅子にしがみつくような気がしてなりません。そうであってほしくはありませんが。

    そうなったら、私の中では「これ以上私の顔を見たくないなら、この法案を通して下さい」と言ったあ奴をを確実に超える最低の男となります。今までは奴やルーピーに匹敵すると思ってましたが。

    国民民主党が伸びたのは幸いでしたが、会計士様の言う通り、立件が漁夫の利を得たのがいささか釈然とせず、参政党がここまで議席を伸ばしそうなのは意外でした。

    • 開票前の自民党会見によると、石破氏は続投のもよう。「それでも、続けてヤレー!!」とあちらから指示が飛んでるんでしょうね。数日前に、石破希望の声明出してたようですから……。

      我が家の年寄りは、「ふざけんじゃねぇ!明日、反対デモがあれば…!!」と叫び続けています。

      https://news.yahoo.co.jp/pickup/6546236

      • ご返信、ありがとうございます。
        FNNの速報でもそのように言ってますね・・・
        いやはや、あの三白眼は日本をとり返しのつかない所まで陥れる積りなんでしょうか。

        しかし、それに付けてもあの男を総裁にしてしまった岸田の罪は重いです。
        ちょっと前もフィクサー気取りで選挙後の政権構想など賢しらに語っていましたが、その前に腹切って国民に詫びを入れるのが先だろうと思うのですが。

    • > 今までは奴やルーピーに匹敵すると思ってましたが

      「なめられてたまるか」
      この発言で「トラストミー」と言ったルーピー鳩山を超えました。

  • 石破を選んだ自民党議員の自業自得。

    そらそうやなとしか、思えません。

    選んだ議員さんにも事情はあったのでしょう。
    ただ、もしこの様な未来になるとわかったとして それでも石破を選んだというのなら、大好きな石破と一緒に地獄へ落ちるのも本望というもの。
    そうでないなら、こんな簡単な未来も予測できなかったおのれの不能を呪うがいいと思います。

  • これで石破政権を自民党が継続するようなら、出て行く議員が出て来ると思います。

  • 石破辞任、高市新総裁、総理で即解散総選挙と考えてたけど今回の負けっぷりから高市さんでも負けそう。連立に維新入れるとかありそう。

  •  富山で自民が落とすようであれば、かなり下振れの方で予測が実現することになるでしょう。結果論ですが石破氏ではなく、女性党首を選んでいたら(個人的に意中な方は上川さんでしたが、高市さんでも石破氏よりマシでしょう)全く違った結果になったかもしれませんが、ピンチな状況でチャンスをつかめなかった組織としての自民党の自業自得でしょう。
     参院選は惜敗でも微差でも復活当選がないので、現職を無職にする厳しい現実がたくさん見られそうです。ナーム。
     

  • 自民党惨敗しても、この卑怯者は続投する気、満々のようですね。
    それを許すかどうかで自民党の行くすえが判ると思いますけれども。
    さてさて、明日を楽しみに就寝します。

  • 石破氏、見苦しくもしがみつきたい様子ですね、22時現在。
    引き摺り下ろしたら自民党も支持回復するのに。
    自民党は自滅したいのでしょうか。

  • *敗戦の弁(予測)

    然るべき”窮敗”も石破氏曰く、「神に与えられた試練!」なんですよね。
    例外なく悪あがきの根っこは、「神にも縋りし、未練!」なんだけどね。
    ・・。

  • 「石破君、続投すべきだよ」
    「森山さん、誰かそれを言ってくれるの待ってたんだ」

    • 自分も石破続投に賛成です。

      この際、石破総理にはとことん自民党をぶっ壊して貰い この左翼路線は絶対に進んだらあかんと理解してでしか 復活の道は無いのでは。

  • 今夜の石破氏の会見
    選挙の敗北は国民からあんたへのNO
    進めようとしてきた政策へのNO
    何も成し遂げていないことへのNO
    外交失敗へのNO
    応援演説で票を減らしたことへのNO
    これだけ国民からのNOを突き付けられているにも関わらず
    相も変わらず同じ事ばかり言ってるよ
    情けない

    • 「伝わらなかった」
      (=私は悪くない)

      を無限にリピート再生する機械みたいな会見でしたねえ。

      シュート数は相手の2倍。
      でもスコアは、0-5で負けたサッカーの試合でダラダラ言い訳する監督みたいな。

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