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急騰する都心中古マンション価格

東京都心部を中心に、中古マンション価格がさらに上がったようです。東日本レインズが10日までに公表したデータによると、都心3区の中古マンションの平米単価は240.93万円で、単純に面積を乗じると50平米で1億2047万円と「億ション」になってしまいます。また、新宿、渋谷などの城西地区も平米単価は158.51万円であり、こっちらは70平米を乗じたら1億1096万円で、やはり「億ション」状態です。日本人の可処分所得が伸びないなかで都心部などの不動産価格が上昇するのは困りものです。

東京都内のマンション価格は過去最高

東京都内の中古マンション価格が上昇を続けているようです。

最近、当ウェブサイトでは公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表している中古マンション成約状況に関するデータを参考にすることが増えています。中古マンションに関する価格指標について、まとまって把握することができ、便利だからです。

その東日本レインズが10日、2025年5月までの中古マンション価格データを公表したのですが(東日本レインズ『レインズデータライブラリー』参照)、驚いたことに、東京都内のマンションの平米単価は、一気に過去最高を更新したようです。

まずは首都圏全体と一都三県に関する成約価格と平米単価のデータをグラフ化してみました(図表1)。

図表1-1 中古マンション成約状況(首都圏)

図表1-2 中古マンション成約状況(東京都)

図表1-3 中古マンション成約状況(埼玉県)

図表1-4 中古マンション成約状況(千葉県)

図表1-5 中古マンション成約状況(神奈川県)

(【出所】東日本レインズ公表『レインズデータライブラリー』データをもとに作成)

首都圏全体で見ると平米単価は84.06万円/㎡で、前月比で3.64%、前年同月比で10.17%も値上がりしているのですが、東京都内だけで見ると平米単価は116.04万円/㎡で、前月比3.01%、前年同月比13.11%の上昇です。

ただ、埼玉県は42.10万円/㎡で前月比0.59%、前年同月比で2.46%の下落、神奈川県は57.01万円/㎡で前月比0.89%、前年同月比3.37%の下落であり、また、千葉県は39.95万円/㎡で前月比4.39%、前年同月比2.17%の上昇ではあるにせよ、グラフの形状は東京都とは大きく異なります。

キーワードは都心集中

このように考えていくと、やはり首都圏の不動産市場は「東京集中」という現象が続いているとみるべきですが、なかでも興味深いのが、東京都心部の不動産価格の急騰です。図表2は、東京都内の6地区(都心3区、城東、城南、城西、城北、多摩)の価格推移を示したものです。

図表2-1 中古マンション成約状況(東京都 都心3区(千代田区、中央区、港区))

図表2-2 中古マンション成約状況(東京都 城東地区 (台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区))

図表2-3 中古マンション成約状況(東京都 城南地区(品川区、大田区、目黒区、世田谷区))

図表2-4 中古マンション成約状況(東京都 城西地区 (新宿区、渋谷区、杉並区、中野区))

図表2-5 中古マンション成約状況(東京都 城北地区 (文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区))

図表2-6 中古マンション成約状況(東京都 多摩地区(都区部・島嶼部以外))

(【出所】東日本レインズ公表『レインズデータライブラリー』データをもとに作成)

このことから、キーワードがひとつあるとしたら、「都心集中」、ではないでしょうか。

都心3区、城西地区がとくに高い

たとえば都心3区は平米単価が240.93万円/㎡と前月比で7.45%も伸び、前年同月比だと上昇率はなんと31.96%(!)です。

ただし、同じ東京都内でもそれ以外の地域だと、状況はさまざまです。

たとえば都内でも城西地区(たとえば新宿、渋谷など都心部に近い地域も含まれます)は、平米単価が158.51万円/㎡と都心3区ほどではないにせよ高水準で、前月比11.03%、前年同月比15.72%のそれぞれ上昇となるなど、価格上昇傾向が続いています。

しかし、城東地区だと平米単価は94.97万円/㎡で、上昇率こそ前月比4.02%、前年同月比11.55%ですが、価格水準自体は都心3区に比べて半分以下であり、また、上昇傾向が続いているにせよ都心3区ほどの極端さはありません。

また、城北地区に関しては平米単価97.25万円/㎡、グラフの形状的にも上昇トレンドは続いているにせよ、上昇率は前月比で3.23%、前年同月比で3.10%と、都心3区や城西地区などと比べて上昇ペースは緩やかです。

さらに、城南地区は平米単価108.61万円/㎡で、前月比マイナス12.65%、前年同月比でもマイナス1.49%とマイナスに転じていたりもします(もっとも、グラフの形状から判断して、上昇トレンドが続いている可能性はありそうですが…)。

なお、多摩地区に関しては同じ東京都内でも、どちらかといえば埼玉、千葉、神奈川といった東京と周辺部と似たような価格動向が成り立っており、平米単価は53.93万円/㎡と都心部と比べかなり下がります(ただし増減率は前月比で5.95%、前年同月比で1.56%と微妙に上昇しています)。

東京都内でマンションを買えばいくらになるのか?

いずれにせよ、この金額になってくると、東京都心部でマンションを購入して子育てをする、というのも、なかなかに厳しい情勢と言えるかもしれません。

東日本レインズのデータをもとに、単純にマンション価格が「平米単価×平米数」で決まると仮定すると、地域ごとの住宅価格のイメージは、図表3のとおりです。

図表3-1 平米単価と広さ別の価格めやす(2025年5月分)①
地区 平米単価 20平米 40平米
首都圏 84.06万円 1681万円 3362万円
東京都 116.04万円 2321万円 4642万円
東京都 都心3区(千代田区、中央区、港区) 240.93万円 4819万円 9637万円
東京都 城東地区 (台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区) 94.97万円 1899万円 3799万円
東京都 城南地区(品川区、大田区、目黒区、世田谷区) 108.61万円 2172万円 4344万円
東京都 城西地区 (新宿区、渋谷区、杉並区、中野区) 158.51万円 3170万円 6340万円
東京都 城北地区 (文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区) 97.25万円 1945万円 3890万円
東京都 多摩地区(都区部・島嶼部以外) 53.93万円 1079万円 2157万円
埼玉県 42.1万円 842万円 1684万円
千葉県 39.95万円 799万円 1598万円
神奈川県 57.01万円 1140万円 2280万円
図表3-2 平米単価と広さ別の価格めやす(2025年5月分)②
地区 50平米 60平米 70平米
首都圏 4203万円 5044万円 5884万円
東京都 5802万円 6962万円 8123万円
東京都 都心3区(千代田区、中央区、港区) 12047万円 14456万円 16865万円
東京都 城東地区 (台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区) 4749万円 5698万円 6648万円
東京都 城南地区(品川区、大田区、目黒区、世田谷区) 5431万円 6517万円 7603万円
東京都 城西地区 (新宿区、渋谷区、杉並区、中野区) 7926万円 9511万円 11096万円
東京都 城北地区 (文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区) 4863万円 5835万円 6808万円
東京都 多摩地区(都区部・島嶼部以外) 2697万円 3236万円 3775万円
埼玉県 2105万円 2526万円 2947万円
千葉県 1998万円 2397万円 2797万円
神奈川県 2851万円 3421万円 3991万円

(【出所】東日本レインズ公表『レインズデータライブラリー』データをもとに作成。ただし価格は任意の平米数にレインズデータの平米単価を単純に乗じて求めているため、現実に成立した価格を示すとは限らない)

こうなってくると、首都圏での暮らしは、なかなかに大変です。

とりわけ「東京で子育てをする」などの事例を考えると(そもそも東京都区内に子育てに適した物件の供給が十分にあるのかどうか、という問題もありますが)、都心3区だと50平米以上で1億円を突破しますし、城西地区(新宿、渋谷、杉並、中野)でも70平米で1億円に乗せます。

むかしから1億円を超える物件のことを(「マンション」ではなく)「億ション」などと呼ぶこともありますが、現在の東京都心部の中古マンションは、一般的なサラリーマン世帯が住宅ローンを組んで購入できるほどにお手頃なものではなくなりつつあることは間違いないといえるでしょう。

賃料もジワリ上昇…可処分所得と比べ高すぎないか

これに加えて『首都圏マンション賃料上昇始まる』でも報告したとおり、東京都内などではマンションの賃料水準についても上昇傾向にあります(図表4)。

図表4 賃貸物件(東京23区・マンション)

(【出所】東日本レインズ『マーケットデータ』の『首都圏賃貸取引動向』データをもとに作成)

東日本レインズの賃貸市場に関するデータは3ヵ月に1回しか出てこないのですが、現時点で手に入る最新版、つまり2025年1-3月期のデータによると、平米単価は東京23区で月額3,626円/㎡で、前年同期比で+216円(+6.33%)の上昇です。

このように考えていくと、東京都心部などはリッチな外国人が暮らし、日本人は安い価格帯の地域に追いやられていく、といった未来も懸念されるところです。

いずれにせよ著者自身は、日本人が税社保で政府により搾取され、可処分所得が増えない状況が続く中での不動産価格の上昇を、深く警戒すべきだ、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (3)

  • 都心中古マンション価格高騰は、バブルである可能性は、ないのでしょうか。もっとも、バブルは弾けるまではバブルではない、とも言いますが。

  • 都心区の場合、マンション価格などはとにかく景気の影響を受けやすいと思っています。
    都心3区に話を絞ると、完全な住宅地と呼べるような場所はむしろ少なく、オフィスビルにも、ホテルにもマンションにもできる、という様な場所が多いのではないでしょうか。では、何にすると最も儲かるか、という話になったとき、聞いた話だと、最も儲かるのが、上の三つではありませんが、1.商業ビル、で、ただしこれが可能な立地はかなり限られます。続いて、2.オフィスビル、3.ホテル、4.マンションの順だそうです。但し、この順は、事業として成功したならば、という場合で、リスク、という事から言うと、この逆の順序になります。つまり、マンションは、一番確実に儲かるけれども利益は少ない、という事になります。
    昔を思い出した時、90年代のバブルが崩壊した後、当時神田地区にオフィスがあったのですが、古いオフィスビルを取り壊しているな、と思ったら、後にできたのはことごとくワンルームマンションで、これが続いたら、そのうち神田は住宅地になるのではないかと思ったほどです。その後、景気が回復してきた後、2010年台の頃だと思いますが、港区で、最初マンションが建つはずだったところがいつの間にかオフィスビルの計画に変わっていたのも見たことがあります。
    現状は、というと、インバウンドがかなりの勢いで増えてきていますので、マンションにするよりはホテルにした方がよっぽど儲かる、ということではないでしょうか。そして、あえてマンションにするのであれば、相当高額にしても十分に売り切れる、という見通しで行われているはずです。そして、新築マンションの値段がとんでもない勢いで上がっていますので、それに引きずられて中古マンションの値段も上がっている、という事なのでしょう。

  • 不動産のMAという建付けですと、ゴーイングコンサーンということで、マンションの建替え費用もvaluationのなかに入るのですが、自分のマンション購入となると、建替え費用をvaluationに入れている人は、ほとんどいない印象です。所謂、価値を保蔵出来そうな不動産は、土地だけと思いますので、マンションを買いたい気持ちを抑えて、冷静になる必要があるかもしれません。