首都圏マンション賃料上昇始まる
なかなかに、厳しい状況にあります。東日本レインズが公表した首都圏の賃貸マンション価格動向で見ると、とりわけ東京23区内では平米単価がこの1年で6.33%も上昇しているのです。ただ、中古マンション価格が引き続き上昇し続けているなかで、資材や人件費などの高騰も踏まえると、マンション賃貸価格もやはりしばらく上昇基調が続きそうです。
目次
自宅は買った方が良いか、借りた方が良いか
自宅は買った方が良いか、借りた方が良いか―――。
こうした問いかけについては、明確な答えがあるわけではありませんが、著者自身の偏見も交えつつ、あくまでも一般論で述べるならば、日本人の間では一種の「持家信仰」のようなものが強いような気がします。
とりわけ大都市圏以外の地域であったり、あるいは大都市圏であっても郊外のベッドタウンであったり、といった地域の場合は、一戸建てを建てて一人前、といった風潮があるように思えます(そういえば「一国一城の主」、といった慣用句が、マイホームを建てた人を指す用語として転用されているようです)。
ただ、これも著者自身の勝手な主観ですが、一戸建ての場合だとどうしても、個別性が強くなりすぎ、結果的に売却などが非常に困難となることもあります。
最近になり、メディアなどでもよく「実家じまい」などの用語が報じられるようになりつつあるようですが、じつは、この「実家じまい」は現代社会において、密かに大きな問題となりつつあるテーマでもあります。
年老いた親が生まれ育った場所に暮らし続け、都会などで離れて暮らす子や孫が実家の様子を気に掛ける、といった話題もさることながら、いざ親が亡くなったときに、残された住宅をどう処分するかが大きな問題でもあるからです。
都区内だと住むのはマンションにせざるを得ない
一方、首都圏、とりわけ東京都内の場合だと、特に都心部でよく見かける3階建ての建売住宅などを別とすれば、供給されている物件の多くはマンションであり、最近だとタワーマンション(タワマン)などもよく見かけるようになりました。
やはり、特に東京都内などの場合、人々は競って便利な場所を目指すという傾向がありますし、また、便利な場所の物件というものは供給が限られているため、「親や実家が地主である」などの例外を除けば、多くの人にとって「手が届く物件」は集合住宅(マンションやアパートなど)とならざるを得ません。
このため、首都圏・都区内などの場合では、買うにしても借りるにしても、マンションというケースが多いのではないでしょうか。
著者自身の考え方で申し上げるなら、やはり日本全体が人口減少社会に突入していく中で、交通が不便な場所などに介助なしでの生活が難しい高齢者がいつまでも暮らし続けることは困難であり、必然的に、人口は人口集積地に集中せざるを得ません。
そうなると、たとえマンション暮らしであっても、それがそこそこ便利な場所にあり、築古でも中・低層で管理が行き届いている物件であれば、かつての「一国一城の主」以上の価値があるのかもしれない、などと思う次第です。
ついにマンション賃料も上昇を始めた!
もっとも、先日の『マンション価格高騰に負けるな!ライフスタイル居住術』でもお伝えしたとおり、首都圏、とりわけ東京都内のマンション価格は高騰が続いており、庶民にはなかなか手が届きづらくなってきたこともまた事実です。
そして、ここに来てマンションなどの賃料水準についても上昇し始めたようです。
先日も取り上げた公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の公表データの中には、中古マンションの成約状況等に関するデータ(※毎月公表)だけではなく、『首都圏賃貸取引動向』というデータもあります(ただし、こちらの賃料データに関しては、公表の頻度は四半期に1回です)。
東日本レインズは2025年1~3月期のデータを4月18日付で公表しており、これらの過去のデータなどをもとに賃貸物件価格を眺めてみると、地域によってはジワリと賃料水準が上昇に転じているケースが確認できました。
東京23区、東京都その他、埼玉県、千葉県、横浜・川崎のそれぞれについて推移を確認すると、図表1のとおりです。
図表1-1 賃貸物件(東京23区・マンション)
図表1-2 賃貸物件(東京都他・マンション)
図表1-3 賃貸物件(埼玉県・マンション)
図表1-4 賃貸物件(千葉県・マンション)
図表1-5 賃貸物件(横浜・川崎・マンション)
どの地域も平米単価はジワリと上昇傾向にあることがわかります。
といっても、昨年の『賃料が上がらない東京のマンション価格はバブルなのか』でも「予言」したとおり、首都圏ではマンション価格が上昇し始めているため、賃料もいずれ上昇せざるを得ないのは、ある意味でも当然のことかもしれません。
東京23区は平米単価上昇率が6.33%に!
ちなみに値上がり率でみると、やはり値上がりが激しいのは東京23区です(図表2)。
図表2-1 東京23区・賃貸マンション
比較項目 | 2025年3月 | 2024年3月 | 変化 |
件数 | 25,872件 | 26,536件 | ▲664件(▲2.50%) |
賃料 | 11.3万円 | 10.4万円 | +0.9万円(+8.65%) |
建物面積 | 31.22㎡ | 30.55㎡ | +0.7㎡(+2.19%) |
平米単価 | 3,626円/㎡ | 3,410円/㎡ | +216円(+6.33%) |
図表2-2 東京都他・賃貸マンション
比較項目 | 2025年3月 | 2024年3月 | 変化 |
件数 | 4,019件 | 4,084件 | ▲65件(▲1.59%) |
賃料 | 7.6万円 | 7.3万円 | +0.3万円(+4.11%) |
建物面積 | 32.79㎡ | 32.29㎡ | +0.5㎡(+1.55%) |
平米単価 | 2,329円/㎡ | 2,267円/㎡ | +62円(+2.73%) |
図表2-3 埼玉県・賃貸マンション
比較項目 | 2025年3月 | 2024年3月 | 変化 |
件数 | 3,434件 | 3,393件 | +41件(+1.21%) |
賃料 | 7.8万円 | 7.2万円 | +0.6万円(+8.33%) |
建物面積 | 38.31㎡ | 36.96㎡ | +1.4㎡(+3.65%) |
平米単価 | 2,047円/㎡ | 1,953円/㎡ | +94円(+4.81%) |
図表2-4 千葉県・賃貸マンション
比較項目 | 2025年3月 | 2024年3月 | 変化 |
件数 | 3,318件 | 3,399件 | ▲81件(▲2.38%) |
賃料 | 7.7万円 | 7.4万円 | +0.3万円(+4.05%) |
建物面積 | 35.35㎡ | 34.54㎡ | +0.8㎡(+2.35%) |
平米単価 | 2,180円/㎡ | 2,144円/㎡ | +36円(+1.68%) |
図表2-5 横浜・川崎・賃貸マンション
比較項目 | 2025年3月 | 2024年3月 | 変化 |
件数 | 5,499件 | 5,283件 | +216件(+4.09%) |
賃料 | 8.8万円 | 8.2万円 | +0.6万円(+7.32%) |
建物面積 | 33.30㎡ | 31.64㎡ | +1.7㎡(+5.25%) |
平米単価 | 2,652円/㎡ | 2,585円/㎡ | +67円(+2.59%) |
(【出所】東日本レインズ『レインズデータライブラリー』データをもとに作成)
これで見ると、どの地区も総じて平米単価がこの1年で上昇しており、とくに東京23区と埼玉県で上昇が激しいことがわかります。
家賃は岩盤物価水準の代表格だったわけですが、自宅を賃貸している人にとっては、家賃が上昇してしまうと固定費支出が増えてしまう、ということを意味していますので、これはなかなかに生活が苦しくなってしまいそうです。
不動産価格と賃料は表裏一体
いずれにせよ、著者自身としては、不動産価格と賃料は表裏一体の関係だと考えており、不動産価格が上昇しているのに賃料が上昇しないというのはあり得ず、また、賃料が上昇しないのに不動産価格の上昇が続くのもまたあり得ないと考えています。
今後は上昇しすぎた不動産価格が下落するのか、それとも上昇した不動産価格を追いかけて賃料上昇が続くのか、のどちらかだと思われます。しかし、資材、物価、人件費などの高騰を踏まえると、やはり賃料水準の上昇ははしばらく続く可能性は高そうです。
そう考えると、物件を探す側としては、「譲れない条件」「譲れる条件」を明確にすることが必要でしょう。
お風呂とトイレは別が良いか。
築浅が良いか、築古でも良いか。
日当たりはどうか。
物件の広さは?
駅からの近さは?
ペットを飼っているか?
ちなみに著者自身の若いころの場合だと、「住む場所だけは絶対に譲れない」という前提を置いたうえで、広さや日当たりなどについては完全に妥協したりしましたが、現在だと同じ物件に同じ値段で住めるのかどうかはよくわかりません。
また、政策面で見るならば、政府が取り過ぎている税・社保をどう返していくか(あるいは返すつもりはないのか)、といった点についても、注目に値する論点であるといえるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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ここ最近、米・野菜に代表される生鮮食品の物価上昇もひどいですが、そうですか、、、賃料も上昇ですか。。。
こういう急激な物価上昇に、何の手当もできない政府には本当に腹立たしい限りです。財務省が怖くて財政出動や減税など何もできないんでしょうね。
自民党が無能というより、原因は岸田、森山、石破にあると思います。
自民党はこの3人を要職から除く必要があると思います。
自宅は買った方が良いか、借りた方が良いか―――。
年金暮らし世代になると、借りることが難しくなっちゃうんですよね。家賃を払うくらいのカネはあるよ!と主張しても、大家さんは高齢者には貸さないのです。でも大家さんを責めることはできません。なぜなら、もし自分が大家さんだったら、やはり高齢者(とくに独居)には貸さないでしょうから。高齢者に特化した公営住宅がそれなりに供給されればいいんですけどね。
公営ではないですが社会福祉法での規定のある安い老人ホームがあります。
軽費老人ホーム(ケアハウス)です。都道府県の補助が入っているのですが、最低で7万円ぐらいから入れます。収入150万円以下の方がこの値段です。
3食付いています。各部屋の電気代、水道代は自己負担ですけどね。
次に安いのが、サービス付き高齢者住宅(サ高住)は12万円から上ですかね。
北関東は東京の生活保護の方がかなり入っているようです。
この二つの施設はこの他に介護費用や医療費がかかりますね。
認知症向けのグループホームも12万ぐらいからですがこちらは介護度によってかなり違います。
施設なので孤独死はほぼないですね。救急搬送されて戻れないことで、介護施設へ移って行くようになります。
サ高住以外は数が少ないのでなかなか入れないと思います。
いつも楽しみに拝読しております。
昭和のバブル期には、物件価格だけが高騰して家賃はそれほど上がりませんでした。定かではありませんが、当時の不動産の投資利回りは1%くらいだったと記憶しています。で、結局バブル崩壊で物件価格は家賃にサヤ寄せして下がってしまいました。
昨年10月に公表された日本不動産研究所の「第46回不動産投資家調査 」によると、東京のマンション投資の期待利回りは4%くらいのようです。家賃からは、毎月管理費と不動産業者の手数料、年間で固定資産税を払う(場合によってはさらに借入金返済)ので、手取りで4%のリターンを得るにはざっくり計算で表面利回り6%程度が必要と思われます。東証HPでプライム市場の株式の平均配当利回りは単純平均で2.31%となっています。不動産投資の株式との換金性の違いを考えると、不動産の6%は十分あり得る水準かなと思います。
ですのでブログ主様が書かれているように、昭和のバブル期とは逆に家賃が物件価格の上昇にサヤ寄せする形で上がる可能性は高いと思っています。
家賃は上がらないかもしれません。
コロナ前に築30年から35年の物件の手取り利回りが8%ぐらいがそこそこありました。
コロナ開ける前から中古ワンルームの「売ってくれ」の電話やDMが来てますが少しづつ高くなってきて購入金額の倍の金額提示が多いですね。
その場合の手取り利回りは4%弱になると思います。
そこまでは売買価格を上げても良いとの見立てなんでしょう?
しかし4%では、10年から15年で交換するエアコンや給湯器の積み立てもできないですよね。エアコンは工事含めて10数万で済みますが、給湯器は工事込みで30万前後ですからね。
不動産投資の観点から出言うと今は物件価格が高すぎると言えますね。
家賃が少々上がってもらえるとしのげるとは思いますがまだ全体的には上がってきていないようです。