「仕事納めの感じがしない」。財務官僚からそんな発言が出てきたのでしょうか。国民が要求する「所得の壁引上げ」という仕事を納めてもいないくせに、なにが仕事納めだ、といったツッコミどころもさることながら、やはり印象的なのは、財務官僚という役人ごときが首相に対し、「これ以上は財源がない限りできません」などと言い放った、という報道ではないでしょうか。
今年は社会のネット化によるターニング・ポイント
『「税の取られ過ぎ」に気付いた国民がSNSを手にした』などを含め、以前からしばしば指摘している通り、今年・2024年はネットの社会的影響力がオールドメディア・官僚の連合軍を凌駕し始めたという意味で、後世に深く記憶される年となるでしょう。
2024年が社会のターニング・ポイントといえる理由
- ①国民は税や社会保険を取られ過ぎていると気付いてしまった
- ②国民は官僚とメディアの腐敗と癒着構造に気付いてしまった
- ③国民は不満を訴える手段としてSNSを手に入れてしまった
- ④SNSの社会影響力がオールドメディアを上回ってしまった
…。
虚偽グラフ垂れ流す財務省
これについてはネットがここまで社会的影響力を獲得する以前を思い出していただければわかりますが、「ネット以前」といえば、私たち一般国民が政治、経済など社会の動きを知るための最も中心的な手段は、新聞、テレビなどのオールドメディアでした。
そして、オールドメディアは記者クラブ、新聞の再販価格維持制度、テレビ局の電波利権など、さまざまな優遇措置・特権などをもち、官僚機構からの情報を一手に得ていたわけであり、裏を返せば官僚機構はオールドメディアを飼いならし、自分たちにとって都合が良い情報を垂れ流すことで世論を従わせていたのです。
この構図を最も使いこなしていた官庁のひとつが、財務省です。
財務省はこれまでも、「日本は借金がたくさんあって危機的状況にある」だの、「このままだと財政破綻する」だのといったウソを国民に対して垂れ流してきており、たとえば下の図表のように、「歳出」と「税収」を比較した虚偽のグラフを作成するなどしてきました。
図表 『どのくらい借金に依存してきたのか』
(【出所】財務省『これからの日本のために財政を考える』P8)
当たり前の話ですが、本来、「歳出」と比べるべき相手は「税収」ではなく「歳入」であり、また、「税収」と比べるべき相手は「国債費を控除した歳出」です。なぜなら、「歳出」には国債の元利金支払いが含まれているのに対し、「税収」には国債の発行による収入が含まれていないからです。
それなのに、この財務省の『どのくらい借金に依存してきたのか』では、歳出と税収という、本来は比べてはならないものを同一のグラフで比較することで、「日本が財政危機にある」といった虚偽の印象を広めようとしている、というわけです。
悪質というほかありません。
「共犯者」のオールドメディア
そして、「悪質」という意味では、オールドメディアも同じです。
というのも、こうした財務省が作るウソのグラフに代表される虚偽の説明を、新聞、テレビなどのオールドメディアはほぼ無批判に報じてたフシがあるからです。その意味では、オールドメディアはまさに財務省など官僚機構の「共犯者」でしょう。
ただ少なくない国民がこうした「国の借金論」に騙され、「日本は財政再建しなければならない」だの、「国の借金を減らさなければならない」だのといった、財務省にとって都合が良いウソを信じ込まされてきたのです。
(※余談ですが、著者自身は財務省、あるいはNHK、主要民放、主要新聞を筆頭とするオールドメディアについては組織の解体や廃局・廃刊などのかたちで社会的な責任を取らせなければならないと考えている人間のひとりではありますが、この点については別稿でもじっくりと議論したいと思います。)
こうした時代が転換点を迎えているというのが、昨今です。
財務省などの官僚機構がマスコミ(オールドメディア)を使って世論操作することは、年々難しくなっています。
たとえば頼みの綱の新聞は毎年順調に部数を減らしていますし(『新聞部数さらに減少…「3千万部台割れ」辛うじて回避』等参照)、テレビだって視聴者層が高齢者に極端に偏っていることが、総務省の委託調査などからも明らかとなっています(『ネットが好調、新聞・テレビは苦戦=メディア利用時間』等参照)。
SNSが変える社会
その代わり、社会的影響力を増しているのが、SNSなどに代表されるネットメディアでしょう。
兵庫県知事選ではオールドメディアから「劣勢」が報じられていた斎藤元彦氏が知事に再選されましたし、斎藤氏を批判するオールドメディアの報道自体も、いくつかはSNS上などで「根拠がない」などとして厳しく批判されているのが現状です。
また、10月の衆院選では、オールドメディアが推した立憲民主党が議席数だけで見たら躍進しましたが、自民党が得票を減らしたら自動的に立憲民主党が躍進するというのは小選挙区を主体とする衆院選の特徴に照らして当然のことですし、むしろ減税を掲げる国民民主党が大躍進したのは特筆すべき事象です。
そして、SNS利用層ほど国民民主党を支持しており(『国民民主支持最高…立民と維新「若い女性支持ゼロ」も』等参照)、最近だといくつかのメディアの調査で、国民民主党が支持率で立憲民主党を抜く現象も生じています(『少なくとも5つの支持調査で国民民主が立憲民主上回る』等参照)。
これなど、表面的には単なる支持政党の栄枯盛衰にも見えるのですが、その実態は、国民が「官僚機構・メディアの連合軍」に反旗を翻し、彼らの垂れ流す「作られた世論」に乗っからなくなってきた証拠である、とするのが著者自身の現時点の仮説です。
SNSが社会に対する影響力を増すことが良いか悪いか、別の問題でもありますが、それでもひとつの事実として、オールドメディア(とその裏側にいる官僚機構)の社会的影響力が低下して行くことに関しては、おそらくは間違いないといえるでしょう。
ツッコミどころ満載の新聞記事
こうした視点で、本稿でもうひとつ取り上げておきたいのが、財務官僚の「まさかの被害者ポジション」と不思議な思い上がりです。
税・予算は新年も調整継続 「仕事納めの感じがしない」
―――2024年12月25日 5:00付 日本経済新聞電子版より
有料読者限定記事ですが、記事表題と無料で閲覧できる部分だけでも、ツッコミどころは満載です。
財務省に対しては現在、国民からはSNSなどを通じ、「税収の壁を何とかしろ」とする趣旨が殺到しているはずですが、現在の財務省が行っているのは相変わらず虚偽のグラフをウェブサイトに掲載し、「日本の借金を何とかしなければならない」などとするウソをつき続けていることでしょう。
「仕事納めの感じがしない」もなにも、財務省、「仕事を納めていない」です。
また、記事本文でも、こんな趣旨の記述が出てきます。
「自公国の3党協議が混迷に陥っていた21日午後、財相と財務次官らは首相に『これ以上は財源がない限りできません』と訴えた」。
この記述が事実かどうかはわかりませんが、もしそうだとしたら、これもとんでもない話です。
加藤勝信財相は私たち国民が選んだ政治家ですが、財務次官は私たち国民が選んだ政治家ではなく、「たかが役人」です。その「たかが役人」の分際で、首相に対し「これ以上は財源がない限りできない」として、年収の壁引上げを阻止するように要求するというのも、なんとも思い上がった話です。
ただ、こうした思い上がりを見ていると、財務官僚という者たちの、あたかも「国民に選ばれた政治家よりも、国民に選ばれていない自分たち官僚の方が偉い」とでも言いたげな狂った価値観には、ただひたすら驚く限りです。
財務官僚こそ問題だ
いずれにせよ、官僚が新聞・テレビを、新聞・テレビが世論を、それぞれ支配する、という構造は、いまこの瞬間も、音をたてながら崩壊中です。官僚も、オールドメディアも、そのことに気付いていない(あるいは気付かぬふりをしている)のかもしれませんが、この流れは止められません。
こうしたなかで、『国民の批判殺到の財務省「まさかの被害者ポジション」』などでも取り上げましたが、財務官僚が最近、「SNSで誹謗中傷を受けている」、などとする言説を見かけることが増えてきました。
もちろん、当たり前の話ですが、財務官僚らに対し物理的な危害を加える、といった行為が絶対に許されないことについてはいうまでもありません。
ただ、彼ら自身が実質的権力者であるという実態を踏まえるならば、権力者に準じ、言論を通じて彼らの職務執行の在り方、組織の在り方、彼らの行為などについて、事実に基づいて証拠付きで厳しく指弾することに関してはまったくの自由であり、何ら制限を受けるものではありません。
なにせ、私たち国民はこの国の主権者であり、財務官僚を含めたすべての公務員は公僕であり、私たち国民すべてに対する奉仕者だからです。本来、公務員を選定し、罷免することは、国民固有の権利でもあるのです(日本国憲法第15条)。
いずれにせよ選挙で選ばれたわけでもないくせに私たち国民が選挙で選んだ議員をも上回るほどの異常に巨大な権力を握り、虚偽のグラフをばら撒くなどウソをついて自分たちの利権拡大にいそしむような者たち。
そんな財務省・財務官僚に対し、SNS上で自然発生的に「国民の敵」といった表現が生まれているのも、自然な話なのかもしれません。
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財務官僚の主観では、「自分達はネットでいじめられている」被害者なのでしょう。
●官僚に東大卒を極力採用しない(採用枠を決める。)
●5年に一度、大幅な省移動を行う※数十名から百名規模などのスケールで。(財務省⇒農水省など)
●公務員の職務が適正に行われているかどうか第三者機関が検証する
●本当に国を豊かにするような政策を提案できた官僚はそれなりに好待遇(お金含め)
を受ける
これで良いと思います。
スケープゴートをたてて、安全なところから操れていた時代は終わりました。官僚が、名指しで国民に晒されることもある(事実しか指摘されてなけれれば誹謗中傷でも名誉毀損ではない)彼らにとっては地獄のような時代が始まりました。諸手を挙げて歓迎いたします。
ん?
“事実の発信”でも「名誉毀損が成立」してませんでしたっけ??
国の借金て、例えば他国から外貨を借り入れているとか、国債を他国通貨で売るとかそういう、他国の存在が前提になるんですよね。
国の政府と国民の間で行う金の貸借は、国の借金では、ないですよね。
ではこれを前提条件とした場合、日本の国の借金はどれ程あるんですかね。ほとんどないですよね。
というような見方をできるように学習させていただいたこのサイトには感謝しております。
そうは言っても日本の中では「高学歴集団」ですからその力を侮るなかれ。ですね
ポチ(新聞TV、国会議員、地方首長)を使い潰しにかかっているでしょう
いまのところ功をなしてはいませんが玉木んが「おふざけ」をすれば一気に叩きに来ます
玉木代表には心してお過ごしください
記事にありますように今回の事はSNSにアップされることが誰でも見ることができることが
一番でしょう。
NHKでも頻繁に出てきますが「ネットは嘘が多い」「ネットは一気にバズル」「偏向サレル」
他の新聞TVも同様です
こちらの方が非常に危険です。ネット規制をしたいのでしょう
来夏の選挙が待ち遠しいですがネット規制についても注意が必要かと思います
彼らは国民の声が一番怖いはずなので
財務次官『これ以上は財源がない限りできません』
つまり、「これまではやってきたけど」。やってたんじゃん。財源なしに。(笑)
仮に足りないっていうなら、これまでやってきたモノの中から削ればいい。それを考えるのはそれをやってきた与党と財務省でしょう。
意味の薄い10万円給付金やら天下り先へのバラマキとか、たくさんあるでしょうよ。それは情報を持たない外部から指摘するのは困難。
そもそも、税収が増えることにつながるならつなぎ資金だけでいいんじゃないのという話ですし。
ついでに。
「財源がー」といまだに言い続けている割に、3党協議では財源の議論はしていないっぽいのですね。
財務省、なんなのよ。それを垂れ流すマスコミも。
予算は歳入と歳出でできる。自民党の政治家は歳出に関しては自分の選挙区にカネ引っ張てこようと目の色変えるが歳入側の議論は役人任せなのだろうか。
今は廃止されている「復活折衝」「大臣折衝」この話みんな歳出側。
来年度予算案が115兆円だそうです。107兆円にすれば、103万円の壁は解決しますね。
そもそも「これ以上は財源がない限りできません」という状態なのに、財源もなく115兆円の予算が組めるのでしょうかね。