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「前原維新」は国民民主党とうまく連携していけるのか

日本維新の会は2日、前原誠司氏を共同代表に選びました。前原氏らが昨年、後ろ足で砂をかけるかのごとく、国民民主党を去って行ったことを思い出しておくと、これで国民民主党と日本維新の会の両党の協力は難しくなってしまったのかもしれません。ただ、冷静に考えて前原氏、政治家としてのキャリアでどんな実績を残していらっしゃるのでしょうか?なんだかよくわかりません。

前原氏を共同代表に選んだ維新

衆議院で3番目の勢力を持つ日本維新の会は2日、共同代表に前原誠司氏を選びました。

日本維新の会 共同代表に前原誠司氏を選出

―――2024/12/03 05:53付 テレ朝newsより

維新は日曜日の代表選で吉村洋文・大阪府知事が新代表に選ばれたのですが、維新の規約上、代表が国会議員ではない場合、両院議員総会で「国会議員団代表」を選び、その議員代表が自動的に党の共同代表を兼務するのだそうです。

前原氏を共同代表に選びたいというのは吉村氏の意向だと報じられていますが、現実には(おそらく)維新所属の国会議員が(吉村氏の意向に従いつつも)前原氏を両院議員総会で共同代表に選んだ、という体裁が取られているのでしょう。

このあたり、あくまでも個人的には、国会議員ではない人物が代表に就任できる日本維新の会という政党の仕組みはいかがなものかという気はしますが、べつに「国政政党の代表者は国会議員でなければならない」という法律はないわけですから、これそのものは違法ではありません。

日本維新の会の規約に従い、適切に選ばれている以上は、私たち部外者が何か文句をつけるべき話でもないのです。

吉村氏は「その経験と実績を買った」

ではなぜ、吉村氏は前原氏を共同代表に「指名(?)」したのでしょうか。

これについて吉村氏は2日、大阪の朝日放送(ABC)テレビの番組に出演し、国交大臣時代の関西空港と大阪(伊丹)空港を民営化するためのプロセスが「凄いな」と思ったことなど、その「経験と実績」を買ったと明らかにしています。

【吉村洋文氏が生出演】共同代表に前原誠司氏を選んだ決め手は?大阪都構想は完全に諦めた?維新の立て直しにはどう取り組む? 視聴者や出演者から質問をぶつけてみました

―――2024/12/02 18:47付 Yahoo!ニュースより【ABCニュース配信】

この点、当ウェブサイトでも普段、政治家には「志(こころざし)の高さ」だけでなく、「実務能力」も必要だ、と申し上げているつもりですが、もし吉村氏が前原氏に「実務能力がある」と判断して同氏を「指名」したならば、それはそれでひとつの見識だとは思います。

ただ、残念ながら、(吉村氏に喧嘩を売るつもりはありませんが)正直、ちょっと人を見る目がなさすぎないか、と心配になります。著者自身には、前原氏に実務能力があるとは思えないからです。経歴を振り返るとわかりますが、前原氏が政治家として30余年、いったい何を成し遂げて来たのか、よくわからないからです。

日本新党皮切りに…まるで「政界渡り鳥」?

無礼を承知で申し上げるなら、前原氏はまるで「政界渡り鳥」のような具合で、さまざまな政党を渡ってきた人物でもあります。

前原誠司氏といえば、1962年生まれで京都大学を卒業後、松下政経塾、京都府議会議員などを経て、1993年、若干31歳のときに当時の日本新党から衆議院議員総選挙に出馬して当選したという経歴の持ち主です。

当時、日本新党といえば、代表の細川護熙氏が首班となる「非自民・非共産連立政権」が発足したばかりでしたが、ただ、この細川連立政権も8ヵ月の短命政権となり、日本新党に見切りをつけ、その後は民主党の結党に参加。

2005年には、なんと40代前半にして民主党の代表に就任し、当時の某新聞からは「日本のブレア(※)を目指せ」などと絶賛されるなどしました(※「ブレア」とは、当時のトニー・ブレア英首相のことだそうです)が、2006年2月に発生した、いわゆる「永田メール事件」によって代表辞任に追い込まれています。

その前原氏も、2009年に民主党が衆院選で圧勝したことを受けて発足した鳩山由紀夫内閣で国土交通大臣に就任し、地方公共団体との協議を経ず、いきなり八ッ場ダムの建設中止を表明するなどし、続いて菅直人内閣で外相に就任したときは「尖閣漁船衝突事件」が発生。

民主党が2012年の総選挙で政権を失うと、その後継政党である民進党の代表に、村田蓮舫氏に代わって就任したのですが、2017年の総選挙では衆院選で候補をいっさい公認しないと宣言し、民進党が希望の党(のちに国民民主党)と立憲民主党に分裂するきっかけを作るなどしたのです。

教育無償化の会は維新に合流

こう申し上げては失礼ですが、著者自身、前原氏といえば、永田メール事件にせよ、八ッ場ダム騒動にせよ、尖閣漁船事件にせよ、民進党瓦解にせよ、「結局、いったい何がやりたかった人なのか」、という反応を示してしまうのです。

31歳で衆議院議員に当選したは良いのですが、そこから30年以上経過し、今年62歳になる前原氏がいったい政治家として何を成し遂げて来たのか、よくわかりません。

何でそんなことをわざわざ述べるのかといえば、当ウェブサイトが前原氏を取り上げたのは、1度や2度ではないからです。

直近だとたとえば昨年の『キャリアで振り返る「前原誠司」』などでも取り上げたとおり、前原氏は当時所得していた国民民主党から4人の国会議員を引き連れて離党し、「教育無償化を実現する会」を発足させているのです。

前原氏が発足させた「新党」(敬称略)
  • 名称…「教育無償化を実現する会」
  • 代表…前原誠司
  • 幹部…嘉田由紀子(副代表)、徳永久志(幹事長)、斎藤アレックス(政調会長)、鈴木敦(国対委員長)
  • 主張…非自民・非共産の野党協力/教育無償化の実現

(【出所】各種報道等を参考に作成)

メンバーのうち参議院議員の嘉田由紀子氏を除くと、残り3人は全員、「比例当選組」であり、国民民主党側はこれらの議員に対し議員辞職を勧告していたようです。

また、これに関する国民民主党の榛葉賀津也幹事長の苦言がまた強烈です。

榛葉氏によると、来客中に前原氏らが離党届を持ってきたので追い返したところ、なんと離党届を「投函した」、などと明らかにしていますが、この榛葉氏の説明が事実なら、何とも非常識な話です。

結局、前原氏らはその後、この「教育無償化を実現する会」から揃って日本維新の会へ移籍(ただし選挙区調整がつかなかったとして、鈴木敦氏は不参加)。

衆院選では徳永久志氏については滋賀2区で落選し、比例復活も実現しませんでしたが、前原氏は京都2区で当選したほか、斎藤アレックス氏は滋賀1区で当選するなど、まずまずの「戦果」をあげたようです(ちなみに維新に合流しなかった鈴木氏は参政党で比例ブロック当選)。

政治家は実務能力が大事

この点、選挙で当選したこと自体は凄いかもしれませんが、ただ、著者自身はやはり、政治家としての筋を通さない人物を信頼して良いのか、という点については、常に疑問を覚えています。

とりわけ前原氏にこれといった実績がないばかりか、民進党を事実上瓦解させたこと、国民民主党に後ろ足で砂をかけるかのように離党したことなどを思い出しておくと、前原氏が果たして第3政党である日本維新の会の事実上の代表としての役割を果たしていけるのか、疑問でもあります。

なにより、現在、国民民主党は自公両党が少数与党という状況にあって、かなりの存在感を発揮し得る立場に立っています。第3政党である維新をすっ飛ばし、第4政党に過ぎない国民民主党が、自公両党を相手に「年収の壁上限引き上げ」を飲ませているわけですから、これだけを見れば、大したものです。

政党支持率でも、かつて維新は立憲民主党を抜いて2位になっていたこともありましたが、最近だとかつての維新的なポジションを、国民民主党が担うようになってしまっているのです。

こうしたなかで、日本維新の会にとっても、立憲民主党とともに野党の中で存在感を発揮できずに埋もれていくのか、それとも国民民主党などと連携して与党に対し、うまく要求をのませていけるのか、その交渉力が問われているところです。

もっといえば、維新は現在、国民民主党を議席で上回っているわけですから、本来ならば国民民主党を押しのけて、直接、自公と政策協議を行っても良いはずです(ただし、内容次第では維新が有権者からの深い失望を招くかもしれませんが…)。

こうした動き方が前原氏にできるものでしょうか。

著者自身は政治家を見る際に、その人の志の高さだけでなく、実務能力、もっといえば「その人が積み上げてきた実績」が大きなカギとなると考えています(高市早苗氏ではなく石破茂氏を総裁に選んだ自民党議員の皆さまも、「実績」という観点からそれが正しかったのか、改めて熟考していただきたいところです)。

いずれにせよ、前原氏を共同代表に選んだことが何を意味するか、その答えも、案外遠くない未来に判明するのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (17)

  • 代表選で負けたから駄々をこねるように離党した点はたいへん見苦しいです。
    選考が終わればノーサイドで進めるのが礼儀というものではないのでしょうか?

    また一番腹が立つのが比例議員の持ち去りです。
    現在の制度が悪いので改正するべきと考えていますが、
    誰の信任も得ていない議員が誕生しています。
    私が投票したのは国民民主党です、よくもわからぬ党のために投票したのではありません。
    離島するのであれば比例議員は議員辞職し筋を通すべきです。

    ただ国民民主党側からポジティブに考えると、厄介な議員をパージできたとも取れます。
    なまじ権力を持っている人間が党内に居ると政策を進められないでしょう。

    逆に維新に関して人材不足甚だしいのだと、感じます。
    仲が良いから議員として拾うところまでは理解しますが、
    共同代表に選ぶというのは正直マイナスイメージが強すぎます。

  • 記者会見で前原さんについて聞かれた時の玉木さんの態度を見ると快く思っていない事は明白。
    「昨日の敵は今日の友」とか言ってますが、何をしれっと映画のジャイアンムーブしようとしてるんですかね?

  • 外野席の野次馬の目線ですが、維新は急いで大きくしすぎましたね。

    頭数を揃える為に、拙速でアホをたくさん仲間に入れてしまって、質が低下。

    その結果が先の総選挙で自民党よりも議席数の減少率が大きいという大敗北。

    追い風の勢いを無駄にしたくない!という気持ちは解るのですよね。
    先の総選挙での国民民主党みたいに、ここ何年かは候補者が追い付かないくらいに票が集まってきた訳ですから。

    「第二自民党」とはとても言い得て妙な維新のキャッチフレーズですが、極左ではない保守で自民党「以外」を選択したい層にはまさに、維新以外に選択肢が無かったから、ウハウハでしたよね。

    自民党がダメダメだ!とは維新が自分からPRしなくても立憲民主党が騒いでくれるから、要するに黙って立ってるだけで濡れ手に粟。

    アホばかりでも黙ってたらバレませんからね。

    今は、少しわざと意図的に組織&活動をシュリンクさせて、戦略的に質の改善をするべきでしょうね。
    吉村と石丸との対談を見てたら、そんな素朴な方針が感じられました。

    ポイントは、お膝元に近い兵庫県知事選ですかね。
    あそこでアホを切り捨てて党としてホワイトナイトになれたなら、一皮むけるのになあ。

    • >アホばかりでも黙ってたらバレませんからね。

      ぐっときたぜよ。じゃなくて、グサッときました。笑

       私、馬鹿なので選挙権は諦めますけど、減税してくれる議員さんなら誰でも良いです。

       馬鹿でゴメンナサイ。m(_ _)m

  • 雑談板で人材不足という指摘があったのですが、前原氏ならば何か喋って食いつくマスコミもいるでしょうから、顔と名が知られた議員が少ない党としては人材の有効活用の面もあるのかもですね。
    そういう意味じゃ代表は既に顔と名の知れた吉村氏じゃなく、無名の実力者を選んで新プレイヤーを発掘した方がよかったんでしょうかね。馬場氏も幹事長になる前は全然知らなかったし。

    ネットで情報を集めて政策主体で政党を見ている有権者のウケはどうなんだろう。あまり良くない気がします。
    前原カラーを出さないのが吉かもですね。でも山っ気ある人なんでねぇ。

  • 実務能力はその通りで、寧ろ、一にも二にも実務能力でしょう。

    民主党政権時の出来事で、尖閣漁船事件は顛末が強烈でした。たしか、当時の民主党幹事長が事件のもみ消しに走ったように記憶しています。当時の幹事長は社民党から民主党に鞍替えした仙谷氏でしたが、sengoku38氏がもみ消しを明らかにしてしまった。
    仙谷氏は自衛隊を暴力装置であるとの認識を持っておりましたが、現社民党の認識も同様に
    暴力装置であるようです。

    維新ですが、吉村代表だけで良かったように思えます。この先、恐らくは吉村派と前原派の
    派閥が出来上がるのではないかと思いますが、分裂に至るのではないでしょうか。
    維新は渡り鳥を入れてしまったことに後悔をすることになるかもしれません。
    また、吉村代表は自公政権に対峙していくとしていますが、維新内部の統率に苦慮することが多くなるようにも思えます。

    • 国民民主党の玉木さんは、維新から国民民主党と協力する気はありませんという意思表示をされたように感じるのではないでしょうか?
      維新は、主義主張がよく分からない前原さんに振り回されることになるような気がします。
      果たして、吉村さんは前原さんと一緒にやって行けるのでしょうか?

      • >維新から国民民主党と協力する気はありませんという意思表示

        これは報道を見ていて同じことを感じました。
        主観ですが、維新なりのやり方を貫くことにした、ということなのかもしれません。
        印象にすぎませんが、吉村氏と前原氏は意見がぶつかることが多くなるような気がします。

      • 僕が玉木なら、今のままの維新とは仲良くしたくないですけどね。

        アホが多すぎる。

        国民民主党もアホは居てますが、とりま手綱を絞って玉木の統制が効いてる(ようにみえる)。

        維新はアホが好き放題に放言してて収拾ついてない。
        党議拘束かけてもダメかもしらん。

        そもそもWEBで人気が出たのは、
        「言ったことをやる」
        からなので、白紙信任だと思い込んで言ってもないのに維新と妥協した手打ちするなら、一気に失望売りが始まるかも。

        維新と組むなら、妥協する内容を公開して、選挙などの審査合格を経てから、でしようね。

        ゆっくり進めればよいと思いますよ。
        密室協議せず、オープンに動画を公開しながら。

        そういうプロセスに前原は耐えられるのかなあ。
        無理目な気がしますよ。

    • 暴力装置という単語をなにかネガティブに捉えておられるニュアンスですが、学術用語ですよ。

      例)国家は暴力を独占する。
      (ここでいう暴力=警察や共生代執行などの実力行使や、司法などのジャッジメント)

      産科の学生が教科書を読んでたら、エロ本を読んでると思い込むような勘違いに見えます。

      単語は単語。
      論旨の本質が大事なのであって、そんなもん、どうでもよいかと。

  • (1)国民民主党を離反した議員を安易に取り込んだこと、
    (2)吉村知事を党首に選んだことから、
    当分は、国政で何を目指しているのかよくわからない、単なる地域政党に甘んじる気がする。

  • まあ、「維新の会」 自体が、過去には石原慎太郎の 「たちあがれ日本」 とくっついて右に寄ったり、江田憲司 (現・立憲民主党) の 「結いの党」 とくっついて左に寄ったりしていますからね。

    特に 「結いの党」 とくっついてできた 「維新の党」 はほぼ左翼政党で、地方選で共産党と相乗りしたりするから、元々 「維新の会」 にいた保守系の議員が耐えかねて、離党して新たに 「維新の会」 を立ち上げ直したほど。(「維新の党」 は 「民進党」 に合流。)

    なので、「維新の党」 前の 「維新の会」 と、「維新の党」 後の 「維新の会」 は、法的なつながりのない別団体だったります。

    ファイル:2010年代の第三極.png - Wikipedia
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:2010%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E3%81%AE%E7%AC%AC%E4%B8%89%E6%A5%B5.png

  • まー前原氏に“実績(+)”が有るかと問われると“?”ですが、現時点の日本維新の会の国会議員に「3桁人数の烏合の衆の代表経験」に比する経験値或いはソレを凌駕しうる人間的ポテンシャルのある駒は居らんのでせう
    イワクツキを据えんならん位なし、当面はあんま期待でけへんちゃうかな国政維新は
    云うて「大阪維新の会」は地域政党で現時点の「日本維新の会」はソノ地域政党の国政に於ける梃子に過ぎまセンから
    国会議員の頭数ボチボチでも中身はまだまだ
    吉村大阪府知事にしたところで「迂闊なポピュリスト」の域から出られそうに無いデスし
    まー“迂闊さ”が“頑張ってる感”演出に転んで奏効しよるげにもなきにしもあらず、感もアリマスがいつまでもいつまでもソレで通用するモンでもなかでせう
    大阪で維新が(いまのところ)強いのも「他と比べてマシ」要素がかなり上がってきよると思いますし、平場の地方議員もそがいな自覚をもっとるやうです
    (アリテイニ云へば大阪自民は半端なくヒドイザマっちゅうことやねんけどマジで)
    「日本維新の会」は全国組織を後ろ楯にしている国民民主党とは成り立ちが違い過ぎマスわ
    ソノ辺り踏まえた動き方の見直しもあるンちゃいますかね~
    知らんけど

  • 政党間を放浪したり、外相時に「外国人献金」を指摘されたり・・。
    自民党のアイ・アイを足して2で割ったような人物なんですよね。

    「窮すれば場を去る」ことしかできない人です。
    アイ・アイは、おサル(去る)さんだもの・・。