自民党、公明党、国民民主党の3党の政調会長会談で、国民民主党が主張する「年収103万円の壁引上げ」を巡って、総合経済対策に明記することで合意に至ったようです。ただし、その具体的な「上げ幅」については未定であるほか、(報道記事を見る限りにおいては)消費税など、国民民主党の主張がすべて盛り込まれているようには見えません。これをもって、「国民民主党には失望しました」、と表明すべきなのでしょうか?
提唱したのは国民民主党だが…
今朝の『国民民主が開いたパンドラの箱…国民対財務省の戦い?』では、所得税法上の「年収103万円の壁」問題を巡って、国民民主党が主張する案に沿って減税がなされた場合の各所得階層における手取りの増加に関するシミュレーションを実施。
あわせて、この問題に関しては、最初に提唱したのが国民民主党であるという意味で、国民民主党には大きな功績があるとしつつも、同党が中途半端なところでこの問題を巡って妥結しようものなら、有権者の怒りが同党に向かいかねないと指摘しました。
所得の壁見直しを掲げる国民民主党にとっては、さっそくに正念場がやってきたようです。19日に続き20日も、自民、公明両党との政調会長会談などが開かれるからです。ただ、この問題のパンドラの箱を開けたのは国民民主党かもしれませんが、もはや問題は国民民主党の手を離れつつあります。国民の関心が極めて高いからです。あるいは「自公vs国民民主党」ではなく、「国民vs財務省」の代理戦争、とでもいえば良いでしょうか?2024/11/20 10:50追記記事カテゴリーが誤っていましたので修正しております。所得の壁引き上げの影響当ウ... 国民民主が開いたパンドラの箱…国民対財務省の戦い? - 新宿会計士の政治経済評論 |
じつは、この考え方こそが、この問題を巡って、著者自身が現時点において最も伝えておきたい内容です。
国民民主党にはなかば期待しているものの、それはたまたま同党の主張内容のうち、「103万円の壁」問題などに対して支持できるからに過ぎず、同党にそれを実現させる能力があるのかどうかについては確証を得ているわけではありませんし、外交、安全保障などに関する見解など、わからないところも多々あるからです。
国民民主党が自公側と明記で合意したが…
つまり、著者自身は現時点で国民民主党を100%無条件に支持する、というスタンスではなく、同党の提唱する政策の中で支持できる部分を支持している、というものですが、(想像するに)これはべつに著者だけでなく、多くの有権者にも共通するスタンスではないでしょうか。
もしその理解が正しければ、逆に言えば、その「多くの有権者が期待しているであろう部分」で国民民主党が有権者を失望させるような行動を取れば、それは次回選挙で同党の惨敗につながりかねないものでもある、ということを意味するのです。
ただし、このような理解に立つならば、私たち有権者の側にも「是々非々」のスタンスが必要です。
そして、この「是々非々」のスタンスが求められる事例が早速出て来ました。例の「103万円の壁」を巡って、一部メディアが「大筋合意」と報じたようなのです。取り急ぎ、ここではFNNプライムオンラインの配信記事を紹介しましょう。
【速報】「103万円の壁引き上げ」を明記 経済対策で自民・公明・国民が合意…引き上げ金額には異論もあり年末の税調協議で調整へ 補正予算案の早期成立も確認
―――2024/11/20 14:40付 Yahoo!ニュースより【FNNプライムオンライン配信】
FNNによれば20日、自公国3党の政調会長は国会内で会談し、国民民主党が求めて来たいわゆる「年収103万円の壁」を引き上げる方針などを盛り込んだ総合経済対策の内容に「合意した」のだそうです。
といっても、(記事を読む限りは)国民民主党の案が丸呑みされたわけではなさそうです。FNNプライムの記事では、こう報じているからです。
「経済対策の中で、『いわゆる103万円の壁については令和7年度税制改正の中で議論し引き上げる』との文言が盛り込まれた」。
事実上の継続協議…「国民民主党に失望」?
たしか、国民民主党側の当初の案だと、給与所得控除と基礎控除の合計額を、現行の103万円から178万円へと引き上げる、というものだったはずですが、これについてはこのように記載されています。
「103万円の壁見直しについては、12月の与党税制大綱のとりまとめに向けた税制改正協議の中で、基礎控除の引き上げ金額について与党と国民民主党の間で議論が行われる」。
要するに、事実上の継続協議のようなものでしょうか。
これに加えて国民民主党が求めているその他の項目については、ガソリン減税は「(いわゆる暫定税率の廃止を含む)については自動車関連・自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る。これらに伴う諸課題に関しては今後検討を進め、その解決策について結論を得る」との文言を明示。
しかし、消費税の5%への引き下げに関しては、少なくともFNNの記事からは確認できませんでした。
FNNによると国民民主党の浜口政調会長はこう述べたそうです。
「103万円の壁について与党の方から引き上げると明言いただいたことは大変評価したい」。
これについてどう考えるべきか。
国民民主党に失望した、と見るべきなのでしょうか?
同党のスタンスは現実的:継続して応援しつつ見守るのが正解では?
著者自身の現時点の実務感覚からすれば、国民民主党としてのグランドデザイン(103万円の壁撤廃、消費税率の時限的な引き下げなど)があるなかで、いきなり100%を実現させるよりも、自公に対し、一歩ずつ飲ませていくというスタンスの方が現実的であると考えます。
もっともその「スピード感」を巡っては、何らかの不満が出てくる可能性はあるでしょう。とくに今回に関しても、正直、(あくまでも予想ベースですが)「国民民主党はなんら具体的な情報を引き出せなかったではないか」、といった反応が出て来そうに思えてなりません。
国民民主党としては「いばらの道」を歩むことを自ら選んだ以上、その一挙手一投足が注目されるのは当然のことでもあるからです。
しかし、著者自身はとりあえず、今回の「合意」については同党が現実的に一歩ずつ着実に政策実現に向けて動いている証拠と見て、現時点では前向きに捉えておきたいと思います。
なにより、本件を巡っては国民民主党のみならず、たとえば日本維新の会であったり、あるいは自民党内からも賛同意見が出て来ることを期待したいと思いますし、国民が選んでいない官僚ではなく、国民が選んだ政治家がそれを実現していくという前例になれば、これは日本にとって大変良いことだと評価したいと思う次第です。
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以前、私はここに、「ふるさと納税には反対である。業者に払う手数料がある、ふるさと納税で如何に多くの寄付を貰うかを検討する人件費がかかる、などから考えて、それまでの住民税が取られ過ぎだったと推測されるから」と投稿させていただいたことがあります。
最近、様々な自治体の首長が「これだけ減収になる」などの発言をされておられますが、それってふるさと納税でぶんどられても同じでしょ、との感想しか持てないのですね。
財政破綻した夕張は、辺境の集落を中心部に集めて、辺境への行政サービスを止める様な政策までやりましたが、無いなら無いなりに工夫するってのが、行政、政治家の役割だろうと。
自治体首長が財務省と総務省に阿って発信しているだけではないでしょうか?
とっとと乗っかって踊っている政治屋さんは「工夫できない能足りんです」と自己紹介しているのかもしれないですね。
返信ありがとうございます。
因みに、年収103万の壁を撤廃すると高所得者への還元が大きいとの批判がありますが、住民税を沢山収めている世帯はふるさと納税の恩恵が大きいのですが、マスゴミをはじめ誰も批判しないのは、何かおかしいと誰も感じないのでしょうかね?
現行のふるさと納税のシステム自体に賛意を持っていませんが、「納税に対するオマケ」が返礼品なら、高額納税者ほどオマケが多いのは別に疑問は無いかと思います。
実際たとえば「103万円の壁」で四苦八苦している層であればそもそも納税額以上の行政サービスを享受していますし。
何事もそうですが、世の中って一足飛びでは変わらないです。
福島原発の処理水放出でも、丁寧に何度も繰り返し説明が必要でした。
焦れったいとか無駄とか思う人達の気持ちも分からなくはないですが。
然るべき手続きを踏んだり、検証を重ねたりすると、どうしてもこうなるのは仕方ないと思います。
いきなり大きな壁を越えよう。ゴールに行こうというのは、大抵失敗します。
1か0かで考えるのではなく、少しずつステップを積み重ねていくのが、現実的な計画だと思います。
自民党は「取ってばら撒く」が基本です。
明記したといっても、この立ち位置は今も崩してはいないでしょうし、書いたに過ぎない。
議論を継続するといっても密室で事が運ばれてしまうのがオチのような気がします。
国会で議論しようにも如何でも良い、例えば週刊誌片手に延々と罵倒を繰り返すだけの議員が
いますが、マスコミが便乗するでしょうから結局のところは財務省の思惑通りの展開になる。
このような議員が当選するというのも不思議ですが、これがこの国の政治の有様でもある。
国民の成長、或は国家経済の成長の議論よりも、下衆の与太話に関心を集中させるのが常ですから国家感を持った政治家が活動するのは容易ではありません。
国家感についての議論すらも出来ておりません。
先日、自民党食堂の記事がありましたが、今の自民党政権には腕の良い料理人はいないように
思えます。あくまでも主観です。
やはり行き着くところは総辞職しかないのではないかと考えています。
>自民党は「取ってばら撒く」が基本です。
>明記したといっても、この立ち位置は今も崩してはいないでしょうし、書いたに過ぎない。
そうでしょうね。
>議論を継続するといっても密室で事が運ばれてしまうのがオチのような気がします。
今回も「フルオープン」ではなかったので「密室」といえばそうですね。
ただ、「補正予算」は >書いたに過ぎない。 で通したとしても、「本予算」どうでしょう?
来年には参院選もあるので、国民民主も3タコは食らわない気がします。
結果として
>やはり行き着くところは総辞職しかないのではないかと考えています。
引替えで本予算を通せるのか? あたりが濃いかもしれません。
今日の合意後に3党共同声明を出していますね。
共同記者会見のノーカット映像が流れていました。
11月20日 自民党・公明党との政調会長会談後 共同記者会見
https://youtu.be/Ugg_czgMFWs
まあ、3党とも詳細な議論と政府へのはたらきかけはこれからと言ってますわね。「途中経過」と理解しています。
公明が「他の野党にも今までも声をかけているしこれからも声をかける」と言ってましたね。その他の野党は声がけはされているのに応じていない、そういうことです。(笑)
元々議論のスケジュール感は国民民主側はアナウンスしていまして、時期的なケツが決まっている(11/22閣議決定)総合経済対策に向けた議論と、その後の税制改正での詳細議論と分けていました。
103万円の壁の引き上げどうなる?3党協議の進捗をお伝えします 玉木雄一郎
https://youtu.be/vzBYqviOHus
議論によって互いの利害をすり合わせる。
なんて有意義なプロセスだろうか(いや、これが普通なんだけど)。
日本維新の会はこのタイミングで代表選をしており、現執行部は退任予定であるのでカウンターパートが居ない!
と国民民主党榛葉幹事長とキャスター反町氏に日本維新の会藤田幹事長を交えてBSfujiTVshowにて歓談中。
ただ、維新としては旧文通費の件で自民党に対する信用は無いのでそこを置いたまま他の協議はしない!向きだそうです。
各党いろいろ経緯や言い分はあると思います。
敢えて言うと「他の野党」はこの記事の最後に出ている党をイメージしていました。党名は・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241120/k10014643811000.html
立憲民主党の大西税制調査会長は、党の税制調査会の会合で「『年収の壁』の見直しや『トリガー条項』の発動などは私たちも求めているので結構なことだと思うが、本来、一部の野党とだけコソコソ話すことではなく、われわれ野党第1党にも内容を説明し、正面から協力を求めて協議をしていくのが筋ではないか。
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ま、これを質すとしたら「公明党は呼びかけてるって言ってましたけど」と問うところからですかね。
憶測ですが、103万の壁引き上げ等、方向性を明言したのは
先日の兵庫知事選の結果が影響しているような気がします。
政・官・マスコミが一丸になってプロパガンダを仕掛けても負けたので。
こっちの件でも、政・官・マスコミが一丸になってプロパガンダを仕掛けてますが、
ネット上で欺瞞を暴かれてるのを目の当たりにして、妥協せざるを得なかったんじゃないかな、と。
一方で、今後、メディアはそのうち「ネット規制」を言い出すのでは?どころではなく
政・官・マスコミが一丸になってネット規制を言い出し、
言論統制vs言論の自由の戦いになるんじゃ・・・という気もしなくないです。
今日の合意は一歩として評価したいと思います。
ただ、国民民主は以前トリガー条項の件で自民公明に騙されているので、また同じ轍を踏むのではないかと心配です。
国民民主党も、選挙前までは、野党として、国民受けのする「バラマキ」を述べていればよかったのですが(れいわ党は消費税全廃を主張しております)、選挙後は、国政の責任を一部分け合うのですから、「財源は与党で考えろ」とか無責任なことを言っている訳にもいきません。また地方の税収減をどうするのかも、考えないといけません。
自民党は、辛坊強く、国民民主党を見守り、育てていきましょう。公明党が退潮ムードのなか、今後ともパートナーとなりうる存在だと思います。今回も、国民民主党の「顔が立つ」決着をお願いします。自民党は大人の政党なのですから。
今回の課税最低限度額の引き上げについて、自民党の総裁選で高市さんに投票した議員はどのように考えているのでしょうかね?
この件は我関せずで高みの見物を決め込むのでしょうか?
財務省の言いなりにならない議員もいると思います。
自民党各議員の意見を聞いてみたいですね。
自民党の対応によっては、来年の参議院選挙も面白い事になりそうです。