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兵庫県知事選を巡る神戸経済ニュースの本質突いた指摘

兵庫県知事選の本質は、不当な手段で県政を動かそうとした県議らや、それに加担したように見えたマスコミに対する不信感が、逆サイドである斎藤氏への信頼感に転換したものだった―――。そんな指摘が、ネットメディアから出てきました。その指摘を踏まえたうえで、あらためて「SNSで真偽不明の情報が拡散した」などと主張する新聞社の社説を読むと、新聞業界の認識の酷さに唖然とします。

地方選で相次ぐマスコミの影響力低下

当ウェブサイトで地方選の話題を取り上げることはあまり多くなかったのですが、今年に入ってからは、たとえば6月の沖縄県議選、7月の東京都知事選のように地方選挙を話題に取り上げることが多い気がします。

こうしたなか、『前職勝利の兵庫県知事選…裏のテーマは民意対マスコミ』では、斎藤元彦氏の失職に伴い17日に投開票が行われた兵庫県知事選で、その斎藤氏が再選を決めたことを巡って、新聞、テレビなどがいっせいに反発しているようだ、とする話題を取り上げました。

昨日行われた兵庫県知事選挙では、兵庫県議会から全会一致で不信任を突き付けられた前職の斎藤元彦氏が当選しました。一部メディアの調査によると、若年層から圧倒的な指示を受けたとの情報もあります。6月の沖縄県議会選、7月の東京都知事選に続き、オールドメディアの社会的影響力が急低下している証拠といえるのかもしれません。沖縄県議選や東京都知事選の事例当ウェブサイトでは、「政治経済評論」などと名乗りながらも、これまで、地方選挙に関する話題についてはあまり積極的に取り上げてきませんでした。その理由はいくつか...
前職勝利の兵庫県知事選…裏のテーマは民意対マスコミ - 新宿会計士の政治経済評論

当ウェブサイトで連続して地方選を話題に取り上げるのは異例ではありますが、それにはちゃんとした理由があります。これらの地方選には、新聞、テレビの誘導が有権者に効かなくなりつつある、という共通した特徴がある(と著者自身が考えている)からです。

神戸経済ニュースの大事な指摘

こうしたなかで、今回の兵庫県知事選に限定して言えば、非常に優れたまとめ記事があったことを指摘しておきたいと思います。

神戸経済ニュース』というウェブサイトに掲載された、こんな記事です。

(解説)兵庫知事選 斎藤前知事が再選、「隠した真実」相次ぐ発覚から信頼感に

―――2024/11/18 10:44付 神戸経済ニュースより

正直、全文をそのまま転載したいほどに良くまとまっている記事ですが、無料で読めるようですので、興味があればぜひ、神戸経済ニュースのサイトにて直接、全文を読んでください。

記事冒頭段落には、記事執筆者のこんな分析が記載されています。

不当な手段で県政を動かそうとした県議らや、それに加担したように見えたマスコミに対する不信感が、逆サイドである斎藤氏への信頼感に転換した」。

なぜ、そんなことがいえるのでしょうか。

有権者のマスコミ不信を根拠付きで指摘する同サイト

これについて、新聞、テレビで報道されている内容を信頼するならば、斎藤氏は「パワハラ体質」だったし、「兵庫県の元局長だった職員が自殺した原因は、斎藤氏だ」、といった印象を抱きます。

しかし、同サイトによると、そもそもこの職員が「倫理的に不適切な内容」を公用PC内部に保存していたという点を、10月25日に開催された兵庫県議会の「百条委員会」で片山安孝前副知事が説明しようとした際、百条委の奥谷謙一委員長が片山氏の証言を止めたと指摘。

また、片山氏がマスコミ取材に応じた際に、新聞記者らが片山氏に詰め寄り、「倫理的に不適切な内容」を撤回させたという神戸経済ニュースの報道が、週刊誌ウェブサイトを通じて広まったこと、片山氏を記者らが取り囲んで詰問する様子が音声データで明らかになったことが、そのマスコミ不信を決定づけたというのです。

そして、この記事は神戸経済ニュースの山本学編集長が執筆した記事したものですが、内容は非常に精緻です。というのも、サイトの関連記事を手繰っていけば、記事を裏付ける証拠が、これでもかというほどに出て来るからです。

もちろん、記事の中には関係者しか知り得ないはずの県議会の秘密会に関する情報も出てくるのですが、それらについては最終的にどこが出所か、という点が明示されており、それらの出所などもいちいち確認できるのです。

これなど、当ウェブサイトで普段から重要性を指摘している、「客観的事実をもとに主観的意見・分析を組み立てる過程」そのものでしょう。

読売社説「真偽不詳の情報が拡散」

そして、この神戸経済ニュースの記事を読んだうえで、読売新聞が19日に掲載した、こんな「社説」を読んでみましょう。

兵庫県知事選 真偽不明の情報が拡散した

―――2024/11/19 05:00付 読売新聞オンラインより

冒頭の記述からして、これです。

民主主義の根幹である選挙で示された民意は尊重されねばならない。/だが、その民意の形成過程で、真偽不明の情報がSNS上で拡散し、公正であるべき選挙が歪められたとすれば、ゆゆしきことだ」。

この文章が、新聞から出て来たという点に、個人的には大きな衝撃を受けます。

1993年の「椿事件」しかり、2009年の「政権交代選挙」しかり、「公正であるべき選挙」を歪めて来たのは、そもそも新聞、テレビを中心とするマスメディアの方ではなかったのでしょうか?

あるいは、不正確・非科学的な情報を拡散したという意味では、読売新聞さんはSNSを批判するよりも前に、たとえば福島原発処理水の海洋放出などを巡り、「科学を振りかざすな」だ、「科学を隠れ蓑にするな」だのと煽った同業他社を批判なさるべきではないでしょうか?

さらには、いわゆる子宮頸癌ワクチンの接種を巡って、新聞、テレビが風評被害をばら撒いたことの責任(『子宮頸癌ワクチン巡りNHKがSNSに責任押し付ける』等参照)を、読売新聞社は追及して来たとでもいうのでしょうか?

まったくもって理解できません。

このあたり、著者自身も長らくウェブ評論の世界に身を置いているなかで、ネット上にはいい加減な情報、デマ、誤りなどが多々含まれていることについては、十分に承知しているつもりです。

しかし、新聞やテレビが「ネットと違って、我々の情報は信頼できる」と自称していることも事実ですが、そのわりに彼らが流す情報が正しいのかどうか、という点については、また議論が必要でしょう。

端的にいえば、新聞、テレビが流す情報には、客観的事実だけでなく、その情報を流しているメディアとしての見解が強く出過ぎているという現象が、頻繁に観察されるからです。

ネットで検証できる時代

ちなみに当ウェブサイトではこれまで、新聞、テレビなどのオールドメディア側が、そのうち「ネット規制」を大々的に提唱するのではないか、と予言しているのですが(『メディアはそのうち「ネット規制」を言い出すのでは?』等参照)、情報の信頼性を吟味しなければならないという意味では、ネットもオールドメディアも同じです。

そして、先ほどの神戸経済ニュースの記事では、兵庫県知事を巡り、県議やマスコミが「隠した真実」が「明らかになった経路は、いずれもネットだった」と指摘します。

これなど、ネットの威力そのものでしょう。

新聞、テレビが報じている内容であっても、政府(官僚)や偉い学者さんの言い分であっても、その気になれば、我々一般人がその信憑性について調べ上げることができるわけですから、本当に面白い時代になったものだと思う次第です。

もちろん、ネットを使って情報の検証をするということは、最低限、自分で何が正しいのかを、理論などに照らして判断できるということが前提です。

たとえば、意味不明で支離滅裂なコメントを頻繁に残していく、どこかのわけのわからない「ロシア応援団」のような残念な事例もありますので、やはり、最低限の義務教育に加え、その人なりの何らかの専門性は必要ではないかとは思います。

ただ、こうした前提を踏まえることは必要としても、そろそろ新聞・テレビを中心とするオールドメディア陣営の情報支配力が、ネットに逆転され始めていることに関しては、間違いないといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (42)

  • 変化があった時、その変化の渦中にある者は、その変化を認識することを拒否する、ということでしょうか。

  • 神戸経済ニュースを取り上げるとはサイト主どのさすがです。6文章6段落からなるこの解説記事は本当によく書けています。
    「民意は尊重されねばならない。だが」と書いて見せたのは読売だけでなく、NHK もそうです。読者に説教するとは、新聞記者は頭が高過ぎるのではないか。
    そんな声なき声は今後高まって行く一方で、日経はいつものオレっち関係ね逃亡を決め込んだようです、やれやれ。

  • 〉真偽不明の情報がSNS上で拡散し、公正であるべき選挙が歪められたとすれば

    所謂JISマーク、PSEマークなど、世間には第三者機関が対象物の品質を担保する仕組みがあります。
    一方で、マスコミメディアの生産物には品質を担保する仕組みがないだけでなく、PL法の概念すらありません。
    己れらの生産物には品質があると自称するのが精々であり、その実績もないので説得力も無い。
    そんな温室同様の環境にいるくせに黙っていることもできない。せめて自重してればいいのに自分ら自身で終末を早めているように感じます。

  • とりあえず、各新聞社には定期的に自社が過去に書いた記事を一切の改変もなく1面にそのまま再掲させることを法律で義務付けるべきではないでしょうか。その方が面白い(笑)ですし、購読者も増えるのではないかと…

    • 法的なククリはどげすだぁ?と思ひますたが、当面即だとイイのが在りましたワ
      再掲しない新聞については『消費税軽減税率対象外』にすればヨイヨイ、デスわ
      ※新聞の軽減税率適用に賛成している訳ではアリマセン

  • そうそう、そこがポイント。

    社会的な情報伝達でこれまではマスメディアが「卸問屋」として、産地(情報源)から消費者(有権者)までをつないできましたが、

    ・産地がわからない。
    ・原材料がわからない。
    ・それらの表示義務がない。
    ・検証機関がない。
    ・責任者がいない。
    ・罰則規定も再発防止の仕組みもない。

    そりゃ、消費者としては産地で直接に買い付け方式に流れますよね。
    海千山千だけど、口コミ(双方向の書込みやコミュニティノート)が機能してますから。

    このあたりの構図が、石丸伸二や玉木や立花の一連の流れに見えるのですが、認めたくない人たちには見えない流れみたいですね。

    いひひ。
    そういうオールドメディア大好きな人たちは、お好きなだけそのまま寝てろ!と思いましたよ。

    検証と淘汰。
    これが無ければ組織や業界は必ず腐ります。
    日本共産党とか日本学術会議なんか、典型例かと。

    •  上手い喩えですね。
       自分好みのものばかり卸して、時には(というか頻繁に)毒と知りつつ儲けのために流して、でも「我は一流専門家にござい、客どもは従って黙って買え。」とばかりの姿勢。口コミが発達すると「あんなの信用できない!嘘ばっかり!こっちが正しいから規制しろ!」と喚くだけで一切省みない。悪質業者と癒着までしていて、そちらの商品ばかり取り上げて良いものを作っている業者を締め出す……か。
       いやぁこうして並べるとスゴイ。嫌われない理由がまるで無い。

  • >その民意の形成過程で、真偽不明の情報がSNS上で拡散し、公正であるべき選挙が歪められたとすれば、ゆゆしきことだ

    これはそのまま言い換えることが出来ますね。

    その民意の形成過程で、真偽不明の情報を執拗にTV、新聞で報道し、公正であるべき選挙が
    歪められたとすれば、ゆゆしきことだ

    いつも見るマスコミの姿そのものです。マスコミこそが「見たいものだけを見る」
    「言いたいことだけを言う」、これをバイアスというのでしたか。
    思惑が彼らマスコミの頭の中に物語の筋書きを作りますが、明らかになったものが
    筋書きに含まれていない場合は無視を決め込む。こんなところでしょうか。
    しかも、彼らは自分達が正しいと考えているから目も当てられない。
    間違っていても一切訂正なし。謝罪もしない。同じことの繰り返し。
    こういうのを世間では、「ばか」と言いましたね。

  • >ネット上にはいい加減な情報、デマ、誤りなどが多々含まれている

    そもそも、ネット上のそんな情報を鵜呑みにして騙される方々は、これまで新聞社やテレビ放送局の情報を何の疑問も感じずに受け入れてきた方々なんじゃないかな。
    そんな新聞社やテレビ局の情報に疑問を感じて、自らネットで調べる様な方々は、偽情報に騙されにくいんじゃないかなぁ、と。
    故に、新聞社やテレビ放送局がネットを危惧するのが痛いほど良く分かります。自分達のお客様が騙されているのですから・・・

    • 今のマスゴミのヒステリーには自己投影の面がある。
      なるほどです。

  • マスコミが公表する事実が全て正しく
    それ以外が公表する事は真偽不明な事なのです。
    この事をよ~く噛みしめないといけないのです。
    よって
    中共の場合、日本のマスコミが政府になり、それ以外が
    公表する事は外国勢力が流した反政府活動になります。
    南国の場合、それ以外は親日行為となります。

  • 「パワハラ、おねだり知事が辞めさせられる」
    よしっ、このストーリーで行こう。
    それに反する情報はただ邪魔でしかない。メディアの対応はこんなところ。

    今その知事が再選されて嘆き節。SNSにケチつけてる。

  • 令和6年版高校生向け情報リテラシー学習要綱
     1.「うそのしんぶん」と検索入力
     2.新聞記者陣と県副知事を巡る流出音声とその文字起こしをインターネットから検索
    得た結果をそれぞれ吟味し、情報の正しい掴み方についてグループ討論する

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