日経・テレ東の世論調査によると、39歳以下の層で国民民主党の支持率が全政党で最多となったようです。冷静に考えたら、立憲民主党を筆頭とする野党各党が国民民主党の減税案に賛成しないのは不思議ですし、残念でもありますが、それ以上に現在生じているのは、まさに官僚支配、マスメディア支配の終焉という現象ではないでしょうか。
目次
自由・民主社会にそぐわない「国民が選んでいない権力者」
私たち日本国民が暮らすこの日本という国は、自由・民主主義を標榜する社会です。
そして、一般に自由・民主主義国家においては、税制など、人々の生活に大きな影響を与える方針などを決定するのは、国会など私たち国民の代表者であるべきであり、私たちが国民が選んでいない者たち(たとえば官僚やマスコミ関係者など)であってはなりません。
ただ、非常に残念なことに、現在の日本では、「国民が選んでいない者たち」が事実上の大きな権力を持っている、という構図があります。
たとえば財務省は国家のサイフの入口(国税庁)と出口(主計局)を事実上支配しており、結果的に財務官僚は並の国会議員を大きく上回る実質的な権力を得ていて、財務官僚が国会議員の事務所を回り、予算配分と国税調査権を盾に言い分を呑ませる、といったことが横行しています。
また、地方行政や電波利権を管轄し、地方自治体やテレビ業界に影響力を与え得る総務省、私学の許認可権を握り、私学振興予算で教育界に影響力を与え得る文部科学省、社会保険予算を握る厚生労働省のような例もあります。
利権の拡大は官僚の習性
いずれにせよ、予算や権限は官僚の権力の源泉でもあり、また、官僚というものは自身の権力を拡大しようとするものでもあるため、官僚機構が自分たちの権力・権限を拡大すべく動くのは習性のようなものであり、ある意味では当然の摂理のようなものでもあります。
(※余談ですが、だからこそ本来なら政治家がその利権拡大をしっかり止めなければならないのですが…。)
そして、この官僚機構から「記者クラブ制度」、税制優遇(新聞に対する消費税の軽減税率)、許認可権(テレビ局に対する電波利権)などで飼いならされているのが新聞、テレビ、通信社といったマスメディア各社であり、これらマスメディアは自民党の批判はしても、官僚機構の批判はほとんどしません。
そして、マスメディアは報道という「事実上の権力」を持っており、時として有権者に対し、結果的に特定政党への投票を働きかけるなどの不適切な報道を繰り返して来ました(『椿事件から玉川事件へと連綿と続くテレビ業界の問題点』等参照)。
とある参議院議員が1993年に発生した「椿事件」を「テレビ局に対する政治介入を許した痛恨事」、などと述べたそうですが、この「玉川事件」は歪んだ事実関係が大々的に報じられたという意味で、椿事件と本質的にはまったく同じです。「椿事件」と比べると、今回の「玉川事件」、正直、大したインパクトがあるとも思えませんが、この問題が連日のように炎上しているという事実は、インターネットとテレビ業界の力関係が完全に逆転しつつあるという状況を示すものでもあるのです。玉川事件と放送法玉川事件のインパクト:テレ朝の処分に... 椿事件から玉川事件へと連綿と続くテレビ業界の問題点 - 新宿会計士の政治経済評論 |
余談ですが、立憲民主党が最大野党の地位に押し上げられている理由は、そのマスコミ業界が「報道しない自由」の力を使って、自民党の不祥事は針小棒大に報じるのに、同じような不祥事が立憲民主党に生じても報じないで守るからではないか、とするのが著者自身の仮説でもあります。
いずれにせよ、日本国憲法下における自由・民主主義社会という立て付けを歪めているのが、財務官僚を中心とする官僚機構であり、新聞、テレビを中心としたマスコミ業界である―――、といった点については、改めて強調しておく必要があるのではないかと思う次第です。
SNSで財務官僚が炎上
ただ、こうした「官僚・メディア」支配にも、最近、大変大きな亀裂が入りつつあるようです。
SNSや動画サイトなどを含め、人々がインターネット上で情報を得るようになったからです。
そのなかで、やはり最大の焦点といえば、SNSで「炎上」することが増えた、財務官僚でしょう。
財務官僚はこれまでうまく存在感を隠しながら、マスコミや御用学者などを使い、「このままだと国の借金は大変なことになる」だの、「日本は財政破綻する」だのといった虚偽の情報を振りまき続けてきました。
しかし、SNSの社会的影響力が急激に高まるなかで、先の衆院選で「手取りを増やす」を公約に掲げた国民民主党が議席を4倍に増やすなど大躍進したことで、「年収の壁」引き上げに対する最大の抵抗勢力が財務省であることが、多くの人にバレてしまったのです。
その最たるものは、「国民民主党の所得減税案を飲んだら7~8兆円の減収となる」、とする主張です。
これについては(おそらくは)そもそも論として乗数効果などの存在を無視した不適切な試算であり、ネット上で各種専門家からいっせいにツッコミを浴びていることは、『総務省が試算の「税収減」は乗数効果を無視していた!』でも指摘したとおりですが、それだけではありません。
『財務省の抵抗にも関わらず「年収壁撤廃」に世論の支持』でも指摘しましたが、各種世論調査によれば、国民の多くは国民民主党が提唱した「年収の壁」撤廃に賛同しているようなのです。
日経調査だと若年層で国民民主党の支持率が最多
そして、これに関連し、日経新聞が18日に報じた日経・テレ東の合同世論調査の結果が興味深いのです。
国民民主党の支持率、過去最高11% 39歳以下でトップ
―――2024年11月18日 2:00付 日本経済新聞電子版より
これによると国民民主党の政党支持率は、「18〜39歳の若い世代」に限ると全政党のなかで最も多くの支持を得たのだそうです。
この点、『「年収の壁問題」は国民民主党の「専売特許」にあらず』でも述べたとおり、そもそも「年収の壁」というワード自体、本来ならば国民民主党の専売特許ではなく、立憲民主党を含めたどの政党でも、この「年収の壁引上げ」に相乗りすることができるはず。
それなのに、立憲民主党やれいわ新選組、あるいは日本共産党などを含めた野党側からは、「国民民主党と一緒になって年収の壁を引き上げよう」という動きが出てこないのは、本当に不思議ですし、本当に残念なところでもあります(どうでも良い話ですが、れ新や共産党は減税を唱えていませんでしたっけ?)。
他党にとっても本来、これはチャンスなはずなのだが…
いずれにせよ、「年収の壁」問題は、もはや国民民主党の手を離れつつあります。
もし国民民主党がこの壁の撤去に成功すれば、有権者は国民民主党を大きく評価するでしょうし、来夏の参議院議員通常選挙では国民民主党は、さらなる躍進が見込めるかもしれません。そうなると、消費税率の引き下げを含め、国民民主党の政策実現力がさらに高まるかもしれません。
しかし、国民民主党がこの問題で、自民党側との中途半端な妥協に走れば、有権者の失望が一気に高まり、国民民主党は次の選挙で再び泡沫政党に転落する可能性だってあります(有権者に対し精緻な経済学の試算に基づき大胆な減税を提案する政党が出現すれば、その政党が議席を大きく伸ばすでしょう)。
いずれにせよ、マスコミ支配、官僚支配の時代は、終わりを迎えようとしています。
立憲民主党は今回の衆院選で、「自民党がズッコケてくれたおかげで」議席を拡大したのですが、その立憲民主党が支持率を拡大している形跡はありません(『立憲民主党はじつは小選挙区で大幅に票を減らしていた』等参照)。
おそらくあと数年以内に行われる衆議院議員総選挙では、もし自民党が普通に戦えば、立憲民主党は今度こそ惨敗するでしょうし、その前に新聞はさらに部数を減らし、テレビはますます見る人がいなくなるのではないか―――。
そう思う次第です。
View Comments (16)
やっと庶民や労働者目線に政党が力をもったなと言うのが感想です。
労働者のための政党を謳っている政党が尽く労働者の利益を代弁していなかったからです。
国民が求める経済施策より
リベラルなイデオロギー施策が最重要と。
野党一丸となって減税を迫れば野党の価値を見いだせたのでしょうが
なにかと理由をつけて反対していることを見るとやはり当てにならないなと。
急激に議員を増やすと質が低い議員が紛れ込みます
国民民主党にはしっかり教育する事を望みます。
現状の方針を維持すれば参議院選挙でも議席の躍進が出来るでしょう。
候補者選びだけは入念にやって欲しい。
維新が、バキっと方針を変えて斉藤知事にすり寄ってるところが、ナイス。
石丸伸二や国民民主党のノリと勢いに、斉藤&立花が相乗効果で悪のりし、そこに維新の吉村がグイグイ割り込んできたかのように、野次馬の目には見えます。
まず、動画が面白い。
何時間でも見てて飽きない。
なぜ面白いかというと日本語として意味がわかるから。
従来の権威とされる新聞やテレビや議会の説明は、言語明瞭意味不明。
なので飽きる。
あとから行動を検証したら、言ってた事と違うことをやってる。
それを下手な言い訳する。
頭にくる。
なので見なくなる。
難しいことを抜きにして、主観的にはものすごく単純なのです。
それをポピュリズムとかいってる人は、サービス業のなんたるかを理解してませんよ。
技術の○産とか言ってあぐらかいて倒産しかけてるより、死ぬ気で顧客満足度を改善して上を目指すのが、正しい生き残り戦略かと。
いわんとすることは理解してるつもりですが,石丸と国民民主が
そこで並んで書かれてるのに違和感あります。
確かに石丸と国民民主は無関係ですよね。
というか、どちらもノリと勢いはあるかもしれませんが、その奥に国民は主張の根拠を持っている感があり、石丸には何も無い。そういう面で並べるのに違和感があったのです。
「・・・・」
こういうのは匿名ばかりですね。
やっぱり、匿名はレスせんときますね。
する必要もないか。
つついたりイヂりたい衝動は湧きましたが。
(新宿会計士注:このコメントは個人情報、名誉毀損、低俗、公序良俗違反その他の事情に相当すると判断したため、削除しました。)
そもそもオールドメディアと官僚達がSNS規制やるにしても、もう遅いですね
ニューメディアの運営会社なんて今やX、facebook、インスタなど様々でyoutubeやニコニコ動画もある
イーロンマスクなんか一斉に世界に日本の既得権益のネガキャンやり始めるでしょうし、オワコンのマスコミや官僚達じゃどうしようもないです
仮にですが、これらを全て規制したところで「マスコミや官僚は信用できない」という国民の意識はもう変えられないでしょう
「また、既得権益側がほざいてる」と思われて終わりです
日本人はもう目覚めちゃいましたから
>日本人はもう目覚めちゃいましたから
大昔、まだ2chが全盛期だったころから、街頭インタビューなんかはスクショ付きでエキストラを仕込んでるってバレてますからね。(同じ人が複数の番組に出ている。)世論調査も調査方法がアレなのもバレてますし、ネットが世に出始めたころから既得権益側の終わりは始まってたと思います。ネットを見ない人口が年齢により減少しここ数年で顕著になったのでしょう。じゃあ中国みたいに公務員動員して全ネット監視網引くんですか?ってことになりますし、当の中国人が監視網掻い潜ってるわけなのでね。ムリムリ。
すし職人養成学校での取材の実態が4コマ漫画になっています。
ディレクターの作り話を語らせられているだけなのが実態のようですね。
https://50dai-rurou.blog.jp/archives/16660827.html
>他党にとっても本来、これはチャンスなはずなのだが…
これ、自民もイヤイヤやってると単なる抵抗勢力に見えてしまって、減税の手柄が全部国民民主になっちゃうんですよね。自民政調はそれなりに誠意を示して交渉してるようですけど、どこぞの総務相のように惚けたこと言ってると。
「自民も今まで考えあってやってきましたが、国民案もいいと思ったので喜んで取り入れます!」みたいに。
野党にしても足引っ張るんじゃなくて援護射撃でもやってれば、それはそれで見てる人は見てるわけで。
というところにこんな速報が。
時事:【速報】与党は国民民主党に対し「年収103万円の壁」見直しとガソリン減税について、総合経済対策に方向性を盛り込むとの見通しを示した
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024111900758
に対する玉木氏の反応。
https://x.com/tamakiyuichiro/status/1858781257154654619
まあ、詳しい中身を見なきゃなんとも言えないですわね。一年限りの時限措置だったり変わりの実質増税が仕込まれてたり。
今の協議での論点は「総合経済対策」「税制改正」の2点だそうで、速報は前者の話のようですね。
ちなみに私、国民民主支持者ではないです。政治家や政党への期待値も基本的に低め。
時代が変わって新たなゲームルールができる場面に興味津々なだけです。
自民政調はそれなりに誠意を示して交渉してるようですけど・・・本当ですかね?
こんなニュースが有りました。
〝サラリーマン増税〟ドサクサ復活か 石破政権、退職金課税強化が再燃「103万円の壁」議論の隙に…増税・負担増の路線が再始動。
「サラリーマン増税」と大炎上し、岸田前首相らが打ち消しに走った経緯がある。いったん葬られたはずの増税案が、税調メンバーが代わり、石破茂政権誕生を受け、ゾンビのように蘇ってきた。
https://www.zakzak.co.jp/article/20241119-L6LNOZ24BMZZE4O2IY7CRKBWY/3/
一応私の書いた言葉の意図を補足しておきますと、「誠意を示して交渉する」ってのは別に相手の意見を丸呑みすると言うことではなくて、マジメに話し合いに応じるって程度のことです。それ以上でもそれ以下でもないです。
サラリーマンとして会社間の交渉などを経験した身としては、単にその「場」を維持することの重要さに目が行ってしまうのです。
現在の党間の交渉は政調会長が小野寺ー浜口ですが(公明は忘れた)、少なくともこのカウンターパートの間ではウソつかないとか互いに信頼関係を維持する、そんな話。
それで、ご提示の記事はリンクが切れていて読めませんのでなんともですが、交渉開始後に自民の政調会が交渉相手を裏切るようなことをやっていればアレでしょうけど、ちょっとなんともですね。
リンク切れ失礼しました。産経のzakzakです。本当かどうかはわかりませんが 今の政治とマスコミには不信感が募るばかりです。
国民意識として、「政治なんて誰がやっても同じ」というものが多数にありました。日本の国力、先人の努力に胡座をかけられた、実に贅沢な諦観だったように思えます。
しかしまず2009年に「ああいう連中にだけはやらせてはダメだ」を多くの国民が学びました。学んだというかトラウマというか。結果としてその後の与党自民党はこれにかなり助けられたことでしょう。「自民党がいくらダメであってもあいつらでは代わりができない。」と。
さすがに最近ではその自民党もいくらなんでも、と見做されるようになってしまった。そこに今度は「あの政党なら良い方向に変革してくれるかも」という意識が出てきた。誰がやっても同じでなどはないし、消去法ではなく積極的に政党を選べるという、重大な経験をする機会が見えてきたのではないか、という面で期待をしています。
片や政治家側にも「何やったって国民の反応なんて同じ」という意識がこれまではあったんじゃないかなと思います。ある程度の失政があっても国家は破綻せず、逆に成果を挙げてもさほど称賛をされることもなく。野党は悪質なものばかりになり与党も堕落する下地。
こちらもまた、「政局ではなく政策によって支持を得る、国民の反応と評価が得られる」という経験になるのではないでしょうか。
両者にとって革新的な事件になってくれればなと切に願います。単純に103万円の壁の撤廃は推進されてほしいですが。
まぁ安倍総理の時にすでに変化してほしかったところではありますけども。存命中に正当な評価を受けられず(妨害され)ずるずると現状まで来てしまった。そういった意味では、やはりマスコミの罪にどうしても繋がってしまいます。その影響力が落ちたのだな、とも。
漠然とした話なので主語クソデカですがご容赦あれ。
新宿会計士様が常々仰っていた「不味くて高い料理を出す料理屋」の他には、「他店の悪口しか書いていない」「毒物を料理として出す」店しかなかったところに「ちゃんとメニューに料理が載っている」(味の評価はこれから)店が出てきたのは有権者として素直に喜ばしいですね。