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韓国紙が「コップの水」理論で日本企業に追加出資要求

自称元徴用工問題で「コップの水を半分満たせ」とする主張が出てきました。金額的に見て「半分」どころではない騒ぎですが、こうしたふざけた主張が出てくる背景には、自称元徴用工らに第三者弁済を行う財団の資金不足が深刻化していることがあるようです。まったくもって予想通りです。日本も次の首相はくれぐれも韓国に安易な妥協をしないでいただきたいと思う次第です。

鈴置氏の「韓国消滅」論

先日の『韓国観察者・鈴置高史氏の『韓国消滅』を読むべき理由』では、日韓関係のこれまでの流れに加え、韓国観察者である鈴置高史氏が執筆した『韓国消滅』という書籍を、ごく簡単に取り上げました。

日本には韓国観察者がいるが、韓国に日本観察者はいない韓国観察者である鈴置高史氏の新刊『韓国消滅』が手に入りました。2018年の『米韓同盟消滅』と2022年の『韓国民主政治の自壊』と並び、正直、日本国民必読の書ではないかと思います。そこで本稿では、日韓関係を巡る状況を大雑把に振り返り、今回の鈴置氏の論考を「チラ見せ」するとともに、日本人が鈴置論考を読むことの意義を改めて考えておきたいと思います。「日韓関係は特殊だ」…その実例とは?著者自身にとって、ここ10年あまりで最も衝撃的な表現があるとしたら、そのひと...
韓国観察者・鈴置高史氏の『韓国消滅』を読むべき理由 - 新宿会計士の政治経済評論

くどいようですが、この書籍は2018年10月の『米韓同盟消滅』、2022年6月の『韓国民主政治の自壊』と並んで、たんに日韓関係問題に関心がある人に限らず、日本人全員が読むべきレベルの書籍です。

その理由は、鈴置氏が「韓国観察者」と名乗っていながら、私たち日本人にとっては「日本論」が浮かび上がるからです。すなわち、鈴置氏の論考をなぞることで、実質的には韓国という鏡に映った日本を読み取ることができるのです。

鈴置氏「特殊なのは『日韓関係』ではなく、『韓国』だ」

そんな鈴置氏のこれまでの仕事で、とりわけ重要なのは、「韓国の特殊性」という概念を提唱したことでしょう。

かつて日本では、よく、「日韓関係がうまくいかないのは、日韓関係が特殊だからだ」、といった主張がなされていました。しかし、鈴置氏はこの「日韓関係特殊論」を否定し、「特殊なのは日韓関係ではなく、韓国」と指摘したのです。

言い得て妙です。

どれだけ国と国との約束を取り交わしても、韓国は必ず破る―――。

日本も海洋国家ですので、世界中のさまざまな国と友誼(ゆうぎ)を結んでいるのですが、韓国のように「国レベル」で頻繁に約束を破る国は、珍しいところです。

これを日本人は従来、こうした約束を破る韓国に対し、「いやぁ、日韓関係は特殊だからねぇ…」などと述べ、(納得しないなりにも)納得したふりをして強引に誤魔化していたフシがあるのですが、これは決して良いことではありません。

何より、この手の「日韓関係特殊論者」に対しては、鈴置氏の「特殊なのは日韓関係ではなく、韓国」という指摘は、脳天を直撃するかのごときインパクトがあるはずです。あるいは、「いいかげん、こうした誤魔化しはやめなさい」というメッセージというべきでしょうか。

日本はなぜ、韓国を「価値共有の相手国」とみなさないのか

さて、韓国がなぜ、こんな「特殊な」国なのか、という原因分析については、著者自身の力量の範囲外ですので、言及を控えたいと思います。詳しく知りたい方は、前出の鈴置論考3部作などをご参照いただければ良いのではないかと思う次第です。

ただ、本稿で考えておきたいのは、日本政府が韓国を「基本的価値を共有する国」とみなしていない、という事実です。前出鈴置氏著書の第2章『価値観を共有せず』にある、こんな一節(P63~64)を引用しておきましょう。。

勘の鈍い日本でさえ、韓国を『価値観を共有する国』とは見なさなくなった。1998年10月に小渕恵三首相と金大中大統領が『日韓パートナーシップ宣言』を謳って以降、日本政府は韓国を『自由と民主主義など基本的な価値を共有する重要な隣国』と定義してきた」。

だが、2015年に『価値を共有』部分を削除し、単なる『重要な隣国』に格下げした。<中略>日本との関係改善が表面的には進んだ後も、外務省の外交青書の韓国の項には『重要な隣国』とあるだけだ」。

2024年版では『パートナーとして協力していくべき』が『重要な隣国』の形容詞としてついたが、韓国政府が強く望む『基本的な価値を共有する』は復活しなかった」。

これについては、著者自身も大変によく覚えています。

たしかに安倍晋三総理大臣(故人)は朴槿恵(ぼく・きんけい/プー・チンフエイ)政権時代に、韓国についての評価を「格下げ」し、そこから文在寅(ぶん・ざいいん)、尹錫悦(いん・しゃくえつ)各氏に政権は変わりましたが、日本政府は現在に至るまで、韓国を「基本的価値を共有する国」とはみなしていないのです。

日本政府は徐々に韓国の重要性を「格下げ」してきたという姿勢の背後にあるのは、自称元徴用工問題や自称元慰安婦問題など、韓国の度重なる歴史捏造と約束破りではないでしょうか。

これらの問題、どちらも「韓国側(あるいはその日本側の協力者)がないことないこと捏造し」、「その捏造に基づき日本に対し法的に権利がないことを要求している」、という意味において、まさに「二重の不法行為」であるといえます。

たとえば自称元徴用工問題に関しても、「被害者」を自称する者は、「戦時中、日帝により強制徴用された」などと「自称」しているだけのことであり、圧倒的多くの場合、確たる証拠は提示されていません。おそらくはかなりの角度で、これらの主張は虚偽と考えて良いでしょう。

それに、日韓間のありとあらゆる請求権の問題は、1965年の日韓請求権協定により、「完全かつ最終的に」決着がついています。

もしも戦時中の「(ありもしない)強制徴用」とやらを原因に、日本に対して損害賠償を請求することができるならば、日本も朝鮮半島に残してきた、現在価値になおせば何兆円にもなるといわれる莫大な資産に対し、その対価を請求する権利があることになります。

韓国の言い分は、さまざまな意味において、まったくもってメチャクチャなのです。

第三者弁済方式で財源は大幅に不足

ちなみにこのうち自称元徴用工問題に関しては、2023年3月、韓国政府がいわゆる「財団方式」の賠償を打ち出し、岸田文雄首相がその方式を「日韓関係を正常に関係に戻そうとするものと評価する」などと述べ、そこから日韓関係が急速に「改善(?)」したという経緯があります。

この「財団方式」とは、韓国の財団が韓国企業などから寄付金を募り、その寄附金をもって自称元徴用工らに損害を賠償しようとするもの(いわゆる第三者弁済方式)ですが、正直、この方式は問題の根本解決にはなっていません。

韓国大法院(最高裁に相当)による、そもそもの違法な判決を否定していないからです。

また、財団が第三者弁済を行った場合は、韓国民法上は求償権―――財団から日本企業に対する金銭債権―――が発生しますが、財団がその求償権を日本企業に行使しないという保証もありません。

なにより、財団の資金は、すでに枯渇しています。自称元徴用工問題の被害企業は続々と増えており、少なくとも大法院における確定判決は、現時点までに12件に達しているからです(図表)。

図表 自称元徴用工訴訟の違法な大法院判決の被害企業一覧
時点 被害企業 訴訟件数
2018年10月30日 日本製鉄 1件
2018年11月29日 三菱重工業 2件
2023年12月21日 日本製鉄 1件
2023年12月21日 三菱重工業 1件
2023年12月28日 三菱重工業 2件
2023年12月28日 日立造船 1件
2024年1月11日 日本製鉄 1件
2024年1月25日 不二越 3件
合計 12件

(【出所】報道等。なお、2018年10月30日の被害企業については、当時の社名は「新日鐵住金」)

このうち日立造船に関しては、韓国の裁判所への供託金をすでに没収されており、日本企業には不当な損害が発生してしまっています。また、報道等によると、下級審でもいくつもの訴訟が係属中であることから、賠償するための財源が大幅に不足していることも明らかです。

すなわち、日韓関係を巡っては、少なくとも尹錫悦政権が終わってしまえば(あるいは下手すればそれを待たずに)、再び(韓国側から)諸懸案が再度、大噴火を起こすことはあきらかであるといえるでしょう。

コップの水を半分寄越せ!

こうしたなかで、この状況を韓国側から見たものが、韓国紙『中央日報』(日本語版)が24日に配信した、こんな記事かもしれません。

【コラム】日本の不安と韓国の不満

―――2024/09/24 13:33付 Yahoo!ニュースより【中央日報日本語版配信】

執筆したのは同紙の「外交安保部長」という方です。

日本は不安で、韓国は不満だ」。

これは読んで字のごとく、韓国政府・尹錫悦政権がが昨年3月に打ち出した「日帝強制徴用被害補償問題」(※「自称元徴用工問題」の誤り)の「解決策」を巡る、日韓双方の外交関係者から「頻繁に聞こえる声」なのだそうです。

日本が不安になるのは、こういう事情です。

韓国の決定がいつまた変わるか分からないという点にある。韓国の政権が交代するたびに国内政治的状況によって韓日関係が浮き沈みするのを経験したからだ。慰安婦合意毀損、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄の動きなどがあったため不安感を理解できないわけではない」。

この点については、なかなかよくわかっていらっしゃると思います(欲を言えば、ここに「韓国の特殊性」という表現を使っていただきたかったところです)。韓国はいつも約束を破りますので、この点に対し、日本が韓国への「不安」を感じている、というわけです。

というよりも、日本の外交当局者も「韓国の特殊性」を理解していれば、もとより自称元徴用工問題に関する2023年3月の合意を安易に「評価」したりはしなかったはずですが、このあたりも日本の外交当局者の限界、といったところなのかもしれません。

ただ、この論考でびっくりするのは、こんな記述です。

しかし不安だからといってその後ろに隠れて何もしないのは卑怯だ。『我々が先にコップに水を入れれば、日本が残りの半分を満たす』(朴振元外交部長官)という期待は外れ、依然としてコップには水が半分だけ入った状況だ。これが第三者弁済案が岐路に立つことになった最初の理由だ」。

そもそもこの言い分自体がメチャクチャです。

コップに水を入れても、その水を飲むのは韓国側であって、日本側ではありませんし、法的には日本にその「コップの水」とやらを注ぐいわれはありません。公式には、「コップを用意してそこに水を入れる」と約束したのは韓国の側ですから、自分で勝手にコップに水を注いで自分で勝手に飲んでくれ、という話です。

(※というよりも、財源と自称元徴用工らの人数で考えたら、韓国がコップに満たした水は「コップの半分」どころか「ほんのちょびっと」ですので、「我々がコップに半分水を満たした」と主著すること自体、大変に厚かましい話ですが…。)

コラム自体が日本企業に対する侮辱

余談ですが、この記事では、日本の被害企業について、こう述べています。

日本戦犯企業が動かず実際に賠償が行われないため、被害者が実質的な賠償を受けられるように用意された。その代わり韓国でも日本でも希望する企業は財団に寄付できるよう扉を開いておいた」。

「日本戦犯企業」という言い方そのものが、日本企業と日本社会に対する侮辱です。

よって、もしも韓国社会が日本との関係を損ねたくないのであれば、中央日報は今すぐこの記事を撤回し、日本企業を「戦犯企業」などと侮辱したことを、真摯に謝罪すべきでしょう。

ただ、記事を読んで救いがあるとしたら、それはこんなくだりではないでしょうか。

韓国の『不満』は、ここまでしても呼応しない日本の態度によるものだ。現在まで日本企業の基金出捐は一度もなく、財団の資金はほとんど枯渇した。財団によると、第1次弁済履行以降、追加で勝訴判決を受けた被害者52人の大半が第三者弁済による賠償金の受領を望むが、資金がなく支払いが中断した状態だ」。

いまのところ、日本企業は財団に1銭も供出していない、ということです。

すでに日立造船が供託金を没収されるという実害が日本企業社会に生じていますので、日本企業がまったく1銭たりとも韓国の自称元徴用工にカネを払っていないわけではない、という点についてはそのとおりなのですが、少なくとも自発的にカネを出したケースは皆無だというのです。

「韓国との関係を円滑にするために、日本が折れて、とりあえずカネを払っておこう」。

日本が政府、企業を挙げて、こういう姿勢から脱却しつつあることは、いくばくかの救いと言えるのかもしれません。

いずれにせよ、岸田政権は、おそらく遅くとも来月早々には内閣総辞職します。

新しい首相が誰になるのかはわかりませんが、次の政権において、少なくとも韓国に妙な妥協をするということがあってはならないことだけは間違いないといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • 自民党総裁選で、日韓関係をどう考えているのか、尋ねてみたいものです。

    • (彼らのなかの空気が変われば)朝日新聞も高齢運動家も「韓国からの要求をハッキリ拒否しない自民党政権はけしからん」と言い出すのではないでしょうか。

  • あまりにも自己中心的な言い分に反吐が出ます。
    韓国の新聞はこのような物を出したら韓国への感情に悪影響が出ると考えないのでしょうか?
    それとも良識的日本人ならホイホイお金をくれると思うのでしょうか?

    自民党の対韓国外交は全く評価しません。
    ですがリベラル野党は土下座をしにいくなどより酷い外交です
    明確に韓国にノーと言うことはそれ程までに難しいのでしょうか?

  • 楽韓さん曰く
    「そのコップに半分入ってる水というのは日韓請求権協定で日本が渡した水ですよね?」
    なるほど、徹底している。

  • 韓国をここまで増長させたのはやはりアメリカでしょうね。
    韓国は、東アジアの重要拠点である韓国をアメリカが見捨てるわけがないと高を括ってるのでしょう。
    日本もアメリカにとっては韓国以上に東アジアの重要拠点なのですが、日本は常にアメリカの顔色を窺っています。
    韓国と日本の対米姿勢の違いはどこから来るのでしょうか?
    多分、韓国はアメリカの対中国、対北朝鮮対ロシアの最前線であり見捨てるわけが無いと思っているのでしょう。
    しかしアメリカの対中国の最前線は台湾、南シナ海に移っています。
    次の日本の首相は、アメリカの韓国に対する本音を是非確認してもらいたいですね。
    韓国の要求をアメリカの意向でこれ以上日本が飲まされるなら、日米関係は中国が喜ぶ方向に変化しかねないと思います。

  •  そのコップは、底に穴が開いているので永遠に半分まで注げないんですよね、いつものやり口ですね、分かります。
     もうね、詐欺師に簡単に騙される岸田は居なくなるんですから、そのやり口は諦めてどうぞ。

    • しかし日本の問題は対韓決断においてその岸田氏を下回る者がいないというわけではないのだ…
      対韓政治のスタンスをあらかじめ表明する人いないからどう転ぶかわからないんですよね…
      日本への影響度低い韓国なんぞに言及する政治家も程度が低そうでそれはそれで嫌だけど…

  • >「韓国との関係を円滑にするために、日本が折れて、とりあえずカネを払っておこう」。

    確か、石破茂候補がこの考え方でしたよね?

    韓国が納得するまで謝罪を〜とか、まるでルーピー鳩山みたいな戯言を述べていたような。

    • >もしも戦時中の「(ありもしない)強制徴用」とやらを原因に、日本に対して損害賠償を請求することができるならば、日本も朝鮮半島に残してきた、現在価値になおせば何兆円にもなるといわれる莫大な資産に対し、その対価を請求する権利があることになります。

      ついでに、韓国政府が棄民し、世話を日本に押し付けた在日コリアンに関する諸費用も請求しないとですね。

      終戦後の朝鮮半島の混乱から逃れる為に日本へ密航して来たケースもあるし。

      来日した際の合法的な正規の記録を提出出来ない者は不法滞在者とその子孫って事で、日本国内の財産も差し押さえて諸費用の補填に回さないとですね。

    • クロワッサンさま
       石破氏は、慰安婦問題をめぐる平成27年の日韓合意に関し、東亜日報の「納得を得るまで謝罪するしかない」と述べたとするインタビュー記事(2017.5.23)について、翌日の産経新聞の取材に対し、「『謝罪』という言葉は一切使っていない。『お互いが納得するまで努力を続けるべきだ』と話した」と述べ、記事の内容を否定しております。
       ただ、同社に抗議はしていないことから、一部の保守層からは強く非難されております。
      注:私は、別段、石破候補を支持しておりません(強いて言えばコバホークかな)

      • ありがとうございます。

        『お互いが納得するまで』ですか。

        誰が何をどう納得するまで、ってのが曖昧になってて、韓国政府なのか韓国民なのか、韓国が主張するいわゆる慰安婦問題についてなのか交渉そのものについてなのか、とかが分からない“弁明”ですね。。。

  • 1965年にコップどころかバケツを満杯にして韓国に渡したのですけどね。
    テーブルごとひっくり返して「お代わりが欲しい」とは噴飯ものです。

    >>もしも戦時中の「(ありもしない)強制徴用」とやらを原因に、日本に対して損害賠償を請求することができるならば、

    韓国が求めているものは違います。
    2018年10月30日付の韓国大法院判決には「日本の不法な植民地支配に対する慰謝料」と書いてあります。
    この先も継続して「不法な植民地支配に対する慰謝料」を求めてくるのでしょうね。
    1965年に「完全かつ最終的に解決」したのだと、何回繰り返しても聞く耳を持ちません。
    いい加減に相手をするのも面倒なのですけど。

  • コップ理論の応用形です。
    「両国友好のため竹島について日本が先に国際司法裁判所へ提訴したのだから、韓国はそれに応じるべきだ。応じないのはけしからん!!」

  • 安易な妥協?
    石破なら進んでホイホイやっちゃうな。
    と、思えて仕方がありませんね。