科学の否定。感情に訴える。専門分野に関する記事なのに専門家がコメントしていない。そんな記事を見ると、警戒が必要かもしれません。著者自身は現代のようにインターネットが出現したこの世の中を、グーテンベルクが活版印刷術を発明した直後になぞらえるのが良いのではないかと考えているのですが、新聞、テレビなどのオールドメディアを眺めていると、この手の記事が大変多いように思えてなりません。
目次
宗教改革直後になぞらえる現代社会
日曜日の『宗教改革にも匹敵し得る現代の「インターネット革命」』では、中世西欧社会を大きく変えた、マルティン・ルターによる『九十五箇条の論題』(1517年)を皮切りとする宗教改革について取り上げました。
カトリック教会が「免罪符」(または「贖宥状」=しょくゆうじょう)なるものを売りつけて稼ぐ、科学を否定する、といった具合に、腐敗が極まっていたところ、発明されたばかりの活版印刷でルターの問題提起があっという間にドイツ中に広まった、とするものです。
これ、現代社会でもそっくりなことが発生しているのではないか、と思えてなりません。
中世西欧社会のカトリック教会に相当するものは、さしずめ、現代日本社会でいうところの、新聞、テレビを中心とするオールドメディアのようなものだからです。とりわけ「事実上の権力を握っている」、「科学を否定する」、「腐敗している」、といった点に関してはソックリです。
この点、カトリックが事実上の国教のようなものになっている国は現在でもたくさん残っていますが(南欧やフランスに加えてラテンアメリカなどがそうです)、カトリック教会は現時点で政治的な権力を持っているとも言い難いのが実情でしょう。
これと同じ理屈で、新聞、テレビといったオールドメディアが今後も生き延びていくことが仮にできたとしても、現在と比べ、その権力の源泉である社会的な影響力を保持していけるのかはよくわからないところです(希望的観測からすれば、有害なコンテンツを垂れ流すメディアには社会的影響力を持ってほしくありませんが…)。
福島原発の処理水の問題
それはともかくとして、オールドメディアが科学を苦手としているらしい、といった証拠はいくつもあるのですが、これを敢えて3つほど挙げるならば、福島第一原発の処理水の海洋放出、憲法問題、そして「悪い円安」論があります。
一見脈絡がないこの3つの論点、じつは、「非科学的でカルト宗教じみている」、という点においては、共通しています。
たとえば福島処理水の海洋放出については、科学的には安全性にまったく影響がなく、また、国際社会との適切なコンセンサスを作りながら実施しているものでもあるため、正直、科学的な立場からは処理水問題は完全に決着がついているものと考えて良いでしょう。
実際、海洋放出が開始されて1年が経過しましたが、現在までのところ、処理水が原因とみられる健康被害はいっさい報告されていません。
しかし、これが気に入らないのが、とりわけ一部のメディアです。
これらのメディアは海洋溶出に先立ち、「科学を振りかざすな」だの、「科学を隠れ蓑にするな」だのと主張したのですが、これもいわば、科学的に安全性が認められていたとしても、「人々が納得しないなら(処理水の)海洋放出はすべきでない」、などとする立場を取っているようなものでしょう。
いや、正確に言えば、「人々は」、ではなく、「我々メディアは」、でしょうか?
一部のメディアは、福島第一原発処理水のことを、「放射能汚染水」、「処理済み汚染水」などと呼称していましたが(現在でも韓国や中国のメディアなどはこれを「汚染水」などと呼んでいるようです)、こうした報道姿勢からも、処理水は「放射能汚染され人体に危険な物」だという「教義」が存在する証拠かもしれません。
これなど、カトリック教会により天動説が正しいとされていた時代に、観測結果と考察に基づく科学的な結論として地動説を提唱する人たちが出て来た際、カトリック教会が地動説を弾圧したような行為と、じつによく似ています。
ケンポーキュージョー教
続いて憲法の問題とは、「憲法第9条(とくに同第2項)を守っていれば、わが国は戦争に巻き込まれない」、などとする発想です。当ウェブサイトでは「ケンポーキュージョー教」と呼ぶこともあります。
こちらはウクライナ戦争の影響もあり、「こちらに侵略する意図がなくても、あちらから侵略されることがあり得る」、といった現実が、一般の人々に強く認識された格好ですが、それでもケンポーキュージョー教の信者の皆さまは、こうした現実が目に見えていないのでしょう。
たとえば、とある女優の方は24日、ラジオの深夜番組で、「改憲しようという動きがあったりするけど、再び戦争に進んでしまう可能性が高まるじゃないですか」、などと述べたそうです。
また、鹿児島県では、こんな報道がありました。
近くに原発、基地整備続く馬毛島…「優先的に攻撃対象」「生活航路が不安」住民の懸念深く 県は否定するが、専門家は沖縄を例に「米軍は日本との約束を守らない」
―――2024/08/24 06:46付 Yahoo!ニュースより【南日本新聞配信】
これは、同県の塩田康一知事が23日、有事に自衛隊などの利用を想定する「特定利用空港・港湾」を巡り、県内8カ所の指定受け入れを表明したことを受けて、南日本新聞が配信したもので、「有識者」が「米軍の利用についても懸念を示した」、などとするものです。
民間空港も制圧されているんですが…?
これらはいずれも、大変におかしな話です。
「改憲したら戦争になる」、「自衛隊が利用できる空港や港湾を増やしたら攻撃される」、「基地を作ったら戦争になる」、というのは、「ケンポーキュージョー教」の教義でよく出てくるものです。
しかし、現実にウクライナ戦争のときには、ウクライナの側にロシアと戦争する意思がなかったにも関わらず、ロシアによる侵略(ロシア語でいう「特殊軍事作戦」)のために戦争に巻き込まれましたし、キーウ近郊にある民間空港であるアントノウ(ホストーメリ)空港が攻撃されました。
こうした事実を見るまでもなく、戦略論の考え方からすれば、「そこに軍隊があるから攻撃される」のではなく、「相手国から見て攻撃する軍事的な必要性があるから攻撃される」のであって、すでにある港湾・空港などの施設を自衛隊が使用するようになるからそこが攻撃される、というものではありません。
ちなみに南日本新聞の記事で傑作なのは、こんなくだりです。
「名古屋学院大学の●●●●教授(憲法学)は『ロシアのウクライナ侵攻をみても空港は真っ先に攻撃される。軍事と一体化した民生利用は危険だ。国際法上、軍が利用する空港や港湾は、攻撃対象となっても文句は言えない』と強調(した)」。
この教授、「憲法学」が専門なのかもしれませんが、軍事には疎いということが、この発言だけでもよくわかります。
これだとまるで南日本新聞が、「まともな軍事関係の専門家からは本件について意に沿うコメントが得られず、仕方なしに憲法学の教授にコメントを取りに行った」かにも見えてしまいますが、いかがでしょうか?
「屈辱感」で円安を論じるメディア
こうした「非科学」という観点から、さらに最近、よく見かけるのが、「悪い円安」論です。
これは、「円安になれば日本経済が悪くなる」、あるいは「円安は日本経済が弱くなった証拠」、などとするもので、一種の「円安悪玉論」のようなものでしょう。
ただ、先月末の日銀利上げ後に円高に振れ、株価が乱高下するなどの事態が生じたことで、最近だと「悪い円高」論を一部のメディアが唱え始めている(『円安時には「悪い円安」論→円高時には「悪い円高」論』等参照)フシもあります。
そうなってくると、今度は「お気持ち表明」のような記事が増えて来るようです。
こうしたなかで興味深いのが、これかもしれません。
日本がオーバーツーリズムを嘆くのは訪日観光客がうらやましいから 「安い」と言われる屈辱感
―――2024/08/25 10:30付 Yahoo!ニュースより【クーリエ・ジャポン配信】
記事タイトルでだいたい内容は読めるかもしれませんが、英フィナンシャル・タイムズ(FT)の指摘などとして、冒頭でこう述べるものです。
「訪日観光客が戻ってくるのを待ち望んでいたはずなのに、インバウンド消費が回復しつつあるいまの日本では、オーバーツーリズムを嘆く声が目立つ。この背景には、コロナ前とは異なる経済事情を経験している日本人の複雑な心境がある」。
いろいろとミスリーディングです。
現在の日本では、オーバーツーリズムを「嘆」いているのではなく、どちらかといえばオーバーツーリズムの弊害を指摘する声が出ている、という方が実態に近いのではないでしょうか。
不肖、当ウェブサイトでも、『観光産業もコスパの問題…外国人観光客入国税の創設を』などで、外国人観光客が日本にたくさんやってくること自体は悪い話ではないものの、観光地を中心とする一部地域で受入可能な限度を超えた観光客が押し寄せている問題点を指摘させていただいています。
要するに、コスパの問題です。インバウンド観光客などn訪日外国人が5ヵ月連続して300万人の大台に乗せ、とりわけ2024年7月は329万人と、2ヵ月連続で過去最多を更新しました。ちなみに旅行収支も過去最大規模であるなど、一見すると外国人観光客の急増は素晴らしいことです。ただ、「富士山コンビニ問題」を含め、オーバーツーリズム(観光公害)も問題化しているなか、旅行収支の黒字額が第一次所得収支の黒字額と比べ8分の1に過ぎない点なども踏まえる必要があります。訪日外国人300万人時代前月に続き過去最多を更新=訪日外国... 観光産業もコスパの問題…外国人観光客入国税の創設を - 新宿会計士の政治経済評論 |
訪日観光客の急増は(その副作用はともかくとして)直接的には「日本にやって来て、日本にカネを落とす外国人観光客が増えている」ことを意味しているため、日本経済にとっては間違いなくプラスであり、「円安の良い効果」といえます(※ただし、訪日客急増が円安だけの効果とも言い難いようですが…)。
しかし、円安のプラス効果については「屈辱」だの、「悔しい」だのといった、なんだかよくわからない主観的な感情を持ち出すのも、「悪い円安」論の特徴といえるのかもしれません。
ネットをうまく使って賢く情報収集を!
いずれにせよ、個人的には、次のような記事を見たら警戒しなければならないと考えています。
- 専門家ではない人がコメントをしている記事
- 科学よりも人々のお気持ち・感情を重視すべきだと主張する記事
- 現実の数値をほとんど出さない記事
正直、どれも慣れれば何となくわかって来るものかもしれません。
そして、せっかくインターネットという便利なツールが出現したわけですから、私たち一般人としても、これをうまく活用していくことが求められることはいうまでもないでしょう。
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エビデンスはある。
エビデンスは我々マスコミがそう言ってるからだ!
毎度、ばかばかしいお話しを。
専門家:「我々は、感情にあう結論に道びくのが専門である」
もしかして、先輩、師匠の意見とあうようにするのが専門なのかも。
蛇足ですが、マスゴミは、自分と意見のあう人を、専門家として紹介しているのかも。
マスコミやリベラル野党を見ていると
何か日本を貶める事だけに注力しているようにしか見えません。
彼等は腐りきっているのです。
2ちゃんねる時代すらソース出せよ
と言われていたのに今でさえお気持ち表明です。
この膿を取り出さないと日本は良くならないでしょう。
おっしゃるとおりです。
指摘されると、
まるで天下の高級紙(笑)朝日新聞さま
紙面なのだからと高飛車に構え嘯いて、
指摘する「朝日とかの報道、変じゃない?」との
国民の声には
「それは少数のネットの ねとうよ(?)の意見」
とのレッテルを貼って切り捨てる。
さらには、
正しい(?)多数の(?)市民(?)の意見は
Huffpostがtwitterトレンド上位であることが示している(ドヤ!)
などと朝日さんたちは賢明に頑張っていました。
けれど
イーロンマスクさんのおかげで偏向工作していた
頼みのキュレーションチームやらが叩き出されると
Huffpsotは当たり前にトレンドから消え失せました。(笑)
実は、Huffpostは日本では
朝日新聞さん出資の会社だったのですから
そのネタバレ知った後では、
それってなんだか劇場型なんとかみたいなものだったのかなあ(笑)
との印象をすら感じます。
個人的には、さらに何らかのイデオロギーを背負っていたり、発言者の利害に関係するものは、割り引いて捉えるようにしております。
新型コロナウイルスのワクチンなんかの時は特に酷かったですね。自分はワクチン接種はノーリスクではもちろんないけど、打たないことによるリスクのほうがはるかに多いという結論に達しましたが、あれだけ情報があふれても困りますね。ただ発言者の利害や、イデオロギー分割り引けば極論や陰謀論は避けられのではないでしょうか。
あれは極端な例と思いたいところですが、つい最近も、カリウムサプリが危ないというというプロパガンダに騙されて、健康回復の機会を失うところでしたので油断はできません。正しくは適切な量を取らないと危ないなのですが、お手軽に健康回復されたら困る方々か、カリウムサプリそのものが危ないものかのように印象操作しています。書いてあることが間違ってない(だからといってただしいわけでもない)のが困りもので、サプリを水に置き換えると、水を1日に3リットル飲むと死ぬことがあるとか、一度に2リットルのむと水中毒で死ぬことがあるとか、腎臓の機能が衰えている人が水を飲みすぎると危ないとか、極端な例を出して、水そのものが危ないと思わせるような書き方をしております。健康な人がどのくらい水やカリウムを必要とされているか、自分にどれだけ不足しているか調べてみて、もういちどカリウムサプリ危ないの文章をよんでみて、発言者の立場を調べてみると、検索に危ない話しかでてこない現状のおそろしさがわかってもらえるかもです。
今回のNHK国際放送の問題で明らかになったが、
原発処理水と護憲についてはマスコミの中に中国のヒューミントがいるね。
その女優、いま思えば、
「まっ赤な女の子」
って唄ってましたね、昔から。
赤くなるのは本人の自由ですが「改憲=戦争」というデマは止めてほしい。
結論に挙げられた3つの変化形のようなものですが
・体験談・経験則に基づく議論
社会全体の総合的な視点がない場合がほとんど
医師、弁護士、XXアナリストなど、一見専門家に見える人が登場する場合がある
・ないことの証明を求める議論(いわゆる悪魔の証明)、微小なリスクを針小棒大に扱う議論
なんかも注意が必要かと。
一昔前ではありますが、紛争で攻撃側が優先で押さえる(或いは破壊する)施設は、発電所やダムなどのエネルギーインフラ、空港・港湾・駅・橋といった交通インフラ、そして"放送局"だ、と聞きました。
「近くに原発や米軍基地があると狙われる、怖い!」というのも一理あると言えるでしょう。なのでそれらを廃止せよ、というのであれば、上記に照らし合わせて、放送局も廃止しなければなりませんね。近所にTV局があると危険だ!
ウクライナに於いて上記の各インフラが攻撃を受けたのは、記事本文やこれまでの報道の通り。……あれ、放送局についてはあまり聞かないな。あぁ上述は"一昔前"の重要インフラですね。当時は防御側のプロパガンダを防ぎ攻撃側のプロパガンダに転用するためだったかと思いますが、現在だともはや局なんて無くても出来るから、別にどーでも良い存在に成り下がったのかもしれませんね(死体蹴り)。
それは敵国側の放送局の事です。
おそらく日本の放送局はほとんどが最後まで攻撃されないでしょう。
ですよねー
すでに敵地たる日本マスコミを制圧なんて労力の無駄(笑)
わたしとしてはごく常識的、真っ当なことを言ってるつもりですが、昨今のマスコミ、言論界の傾向を見れば、日和見主義、さらにはとんでもない反動と攻撃されてしまうかも知れないコメントです。
>専門家ではない人がコメントをしている記事
>科学よりも人々のお気持ち・感情を重視すべきだと主張する記事
>現実の数値をほとんど出さない記事
これが、マンマ当てはまりそうな対立案件が、「性自認は身体的属性に優越するのか?」というヤツではないでしょうか。
あえて「科学」なんて持ち出さなくとも、あるべきモノをぶら下げてるのが男性、そんな禍々しいものは持たないのが女性。その2つの属性をもった人の集団が成り立たたせているのが、この「社会」。何の異論を差し挟む余地があるんでしょうかね?
「科学」で言うなら、男性器をもちながら女性型の脳が発達するメカニズム、逆に一次性徴が女性でありながら、男性に発達することが多い脳の領域の活動が活発な女性が生まれ、育つ理由については、脳科学や発達心理学の分野で、おおよその説明が付いています。しかし、こうした分野の専門家が、戸籍上の「性」を変更しなければ、そうした人にはこれこれの不具合が生じるなんて論を展開しているのは聞いたことがありません。
自分の身体的「性」に、幼少時から違和感、嫌悪感を抱くケースは、圧倒的に男性に多いようです。そしてその理由も明らか。当人の心がけなんか何の関係もない、純生物学的なメカニズムが働いた結果です。そうした「個性」に対する社会の偏見は、富国強兵を唱えていた時分と違って、今ではずいぶん薄まってきていると思います。自分の個性を堂々と表に出して活躍する著名人、タレントさんが大勢活躍する時代ですから。
そうした人達は、「オンナ」みたいな男である自分の「個性に」自信を持っておられるはずですが、中には、自分の身体的「性」に嫌悪感を抱き、あるべきモノの切除を選択する人も少数ながらいるようです。そこまで行くほどに性自認との乖離が深刻なのであれば、これは戸籍の変更を認めるべきでしょう。そうしなければ、まさに「人権侵害」に繋がりますし、実際そうした法的救済措置が執られています。
「同性愛」「同性婚」は、その延長上の問題とも受け取れますが、完全にオーバーラップしているとも言えないはなしだと思っています。タブー視することなく、そうした領域の研究が行われれば、もっと新しい「科学的」常識が生まれてくるかも知れませんが、少なくとも今の日本で、これを不道徳と決めつける風潮はおそらく消滅に近い状態にあり、カップルが真っ当な社会人として生活している限り、周囲の目を避けてひっそりと暮らさなければならないというような状況にはならないのではないでしょうか。
そうした社会の意識が進んだ今になって、こうしたデリケートな問題を殊更に摘出して、差別だ、人権侵害だと、騒ぎ立てる風潮をどう考えれば良いのでしょうか。わたしには、今の社会に怨念を抱き、とにもかくにもケチを付けたいという歪んだ心性をもつ一握りの、しかしそうした感情を巧みな言葉で社会的重大問題と言い変えるだけの狡猾さを備えた人間が、煽り立てているに過ぎないように思えます。そうした人材に事欠かないマスコミはともかく、科学に立脚した「性」の問題にまともな知識も持たない裁判官が、本当に法的根拠があるのか極めて怪しい「人権侵害」を、あたかも事実として認定してみせる。そんな昨今の司法のあり方についても、こんなこと許していて大丈夫なのかという危惧を覚えてしまいます。
平安期に「源氏物語」の少し後、世に現われた「とりかへばや物語」というのがあります。あらすじは、と言うと、
ある上級貴族の家に生まれた腹違いの兄妹、どちらも大層な器量良しなのだが、困ったことに男君の方は極端に内気で、御簾の奥に隠れて人前に顔を出さない。一方の女君は快活活発、男性貴族のいる場にも物怖じすることなく顔を出す。それで周囲は、男と女を聞き違えたのだろうと勝手に思い込み、親もこれが逆であってくれれば(とりかへばや)と普段から思っていたものだから、敢えて正そうとしないうちに、男君も女君も年頃にまで育ってしまった。それで女君は青年貴族として宮廷に出仕し、男君は皇女の乳母としてお側に侍ることになるのだが、女君は友人だったプレイボーイ貴族に正体を見破られ、貞操を奪われた上、子まで産む羽目になってしまう。男君の方はと言うと、次第に性に目覚め、あろうことか仕える皇女を身ごもらせることに。結局は男君、女君とも、これまでの己の生き方が世の道理に合わぬことを悟り、互いに髪型を変え、入れ替わりで辻褄を合わせて、その後の人生を全うすることに、とまあ、そんなところ。
腹違いの兄妹でありながら、髪型を変えただけでそっくりに見えるとか、性的な関わりを持った者以外、この入れ替わりで悪影響を蒙る者はいなかったとか、作り話とは言え、ずいぶん安直とも思えるのですが、「オトコ」っぽい女性、「オンナ」っぽい男性なんて、古今を問わず、世の中には掃いて捨てるほどいたはず。それを殊更にあげつらったりせず、そのときそのときで本人が一番と思う生き方を許容しておけば、ことは落ち着くべきところに落ち着く。それが「世間智」というもの。この物語の作者が語るのは、そうしたことのように思えます。
世の「オトコ」っぽい女性、「オンナ」っぽい男性の皆さんは、それぞれなりの生き方で、周囲との折り合いを付けているんで、妙に政治的色合いの付いた主張のタネになんかに利用されるのは迷惑と思ってるんじゃないでしょうかね。もっともこれは「現実の数値」という統計的裏付けを持たぬ、全くのわたしの個人的な憶測に過ぎないのですが、たとえそうではあれ、戦闘的ジェンダー平等論者、マスコミ界に巣くう同調者の皆様方の主張と、いい加減さの程度と言ったら五十歩百歩なんじゃないでしょうか。
・専門家ではない人がコメントをしている記事
・科学よりも人々のお気持ち・感情を重視すべきだと主張する記事
・現実の数値をほとんど出さない記事
「こういう記事は警戒した方が良い」とは全面的に同意なのですが、同時に
「気持ちいいウソ」の需要はなくならないだろうなあ、とも感じています。
”汚染水”にしても、憲法9条教にしても、「円は安くても高くても日本はおしまい」にしても、
どれもこれも「そう信じたい」から「気持ちいいウソ」を求めてしまう人々が居る訳で……
資本主義だとどうしても貧富の差が出てしまう様に(かと言って共産主義は
全員貧乏になるだけですが)、民主主義ではどうしても尊敬できない政治家が
生まれてしまう様に(かと言って他の政治体制ではもっと酷くなるリスクがありますが)、
言論の自由が保証されているとどうしても「気持ちいいウソ」が
欲しがられてしまうのかも知れません。
野党の人は汚染水を言い出さなかったら、もう少し支持率あったかも
〉どれもこれも「そう信じたい」から「気持ちいいウソ」を求めてしまう人々が居る訳で……
おっしゃってること、ほぼ同意しますが、不思議なのが日本を貶める内容をもとめてるヒトってどんな人種(国籍でなく、年齢性別嗜好等が・・)なんですかね??
オールドメディアが曲がりなりにも資本主義で(落ち目とはいえ)生き残ってることを考えると、結構な数の、日本を良く思わないヒトが居ることになると思うんです。
特定アジアにルーツをお持ちなヒト以外に、そんな日本人ってどんな方なんですかね。。
(例えば、氷河期世代とか世間に絶望してる人とかですかね・・?)