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    Categories: 外交

拘束事案等受け台湾が中国への渡航警戒レベル引き上げ

台湾が中国本土、香港、マカオへの渡航警戒レベルを引き上げたとする報道がありました。台湾メディア『中央通訊』によると、「訪中した多くの人々が不当に身柄を拘束されたり、取り調べられたりしている」からだそうです。日本の外務省はほとんど対策を講じていませんが、日本にとっても他人事ではありません。もっとも、中国の現在の姿勢が続けば、長い目で見て日中関係はどうなっていくのかについては興味深いところです。

勇気ある中国人女性が亡くなる:ご冥福をお祈りしたい

先日の『中国人が靖国や日本人に加害:日中関係はどうなるのか』では、中国・蘇州で24日、在留日本人母子が暴漢に襲われ、母子が軽傷を負ったほか、かばったガイド役の中国人女性が重傷を負った―――、などとする話題を取り上げたばかりですが、これに関連し、非常に残念な続報が入ってきました。

【速報】中国・蘇州スクールバス襲撃事件で刺された中国人女性が死亡 中国メディア

―――2024/06/28 09:24付 Yahoo!ニュースより【テレビ朝日系(ANN)配信】

テレ朝newsなどの報道によると、蘇州市当局はこの女性が亡くなったことを明らかにしたのだそうです。

職務とはいえ身の危険を顧みず暴漢を阻止しようとした勇気ある行動は賞賛されるべきで、最悪の結果になったことについては、心から哀悼の意を表するとともに、ご冥福をお祈り申し上げたいと思います。

中国が国を挙げて日本に対して反日的な行動を繰り返していることは事実ですが、それと同時にすべての中国人が日本に対して悪意を持っているわけではなく、それどころか、このように勇気ある素晴らしい方もいらっしゃるわけです。

余談ですが、当ウェブサイトでは「民族ヘイト」的なコメントについては許容していませんが、その理由は、民族単位でその存在を否定するような考え方を、当ウェブサイトとしては否定しているからです。

外務省は何をやっているのでしょうか?

ただ、民族ヘイトは論外ですが、やはり冷静な目で見て、現在の中国が日本人にとって、渡航して安全な国なのかどうかについては検証しておくことが必要です。いや、「日本人にとって」というよりも、「すべての外国人にとって」、まったく安心して渡航することができる国なのかどうかが問題といえるでしょう。

昨年の『反スパイ法摘発相次ぐ…脱中国は日本の重要課題に浮上』などでも指摘したとおり、中国では最近、外国人などがスパイ容疑などで摘発される事例が相次いでおり、昨年はスパイ容疑で拘束された日本人が懲役12年の実刑判決を受けるなどの事例も発生しています。

それら以外にも、日系企業を含め、企業関係者の拘束事案も相次いでいるほか、おそらくは失業率などの上昇もあって、社会不安が蔓延しているフシがあります。冒頭に挙げた日本人母子が襲われる事件も、こうした中国の社会背景と無縁とは限りません。

こうしたなかで、外務省の『海外安全ホームページ』で中国を調べてみたところ、少なくとも現時点においては「新疆ウイグル自治区」と「チベット自治区」に「危険レベル1」、すなわち「十分注意してください」が指定されているのみで、それ以外の勧告は見当たりません。

また、「スポット情報」として、福島第一原発のALPS処理水放出に関連し、外務省は昨年8月27日付で『中国:ALPS処理水の海洋放出開始に伴う注意喚起』なる注意喚起を公表していますが、逆にいえばそれくらいしか出ていない、ということです。

外務省が仕事をしない(あるいは無駄な仕事ばかりする)役所だ、という点は有名ですが、ちょっとお粗末です。

台湾は警戒レベルを引き上げ

しかし、そんな日本の外務省にも見習ってほしい相手がいるとしたら、それは台湾政府かもしれません。

中国・香港・マカオへの渡航警戒レベル引き上げ 不要不急の旅行中止求める/台湾

―――2024/06/27 18:20付 中央通訊日本語版より

台湾メディア『中央通訊』(日本語版)の27日付の報道によれば、台湾で対中政策を担う大陸委員会が同日、中国、香港、マカオへの渡航警戒レベルを「4段階で上から2番目のオレンジ」に引き上げ、不要不急の旅行をやめるよう呼びかけ始めたそうです。

その理由について中央通訊は、大陸委の梁文傑(りょう・ぶんけつ)報道官が定例会見で、次のように述べたと報じています。

中国などでは近年、国家の安全に関する法令が制定、改正され続けていると指摘。訪中した多くの人々が不当に身柄を拘束されたり、取り調べられたりしている」。

台湾が中国への警戒レベルを引き上げた理由としてはほかにも、中国が21日、台湾独立派による国家分裂行為などを処罰する指針を発表したことなどが挙げられていますが、ここで思い出しておかねばならないことは、台湾独立に関しては日本も他人事ではない、ということです。

以前の『中国大使の「問題発言」が今後の日中関係に与える影響』でも取り上げましたが、中国の呉江浩(ご・こうこう)駐日大使は5月、「日本が『台湾独立』や『中国分裂』に加担すれば民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言しているからです。

この駐日大使に「ペルソナ・ノン・グラータ」を発動して国外退去処分にしない外務省の弱腰にも驚きますが、ただ、中国が現在、台湾や日本のみならず、西側諸国全体に対しても友好的ではなくなりつつあることもまた間違いありません。

中国の姿勢が続けば日中関係は?

この点、経済的関係でいえば、中国は日本にとって最大の貿易相手国でもありますが、金融機関の対中与信の日本の対外与信全体に占める割合は多くなく、また、一説によると、日本人の訪中にはビザ取得が義務付けられていることもあり、日本人の中国旅行者数が激減しているとの報道もあります。

訪中日本人の正確な人数に関しては統計がないため、、正直、よくわかりません。

ですが、中国における日本人の安全を阻害するような要因が増えて来るならば、いずれ日中関係も冷え込まざるを得ないでしょうし、おりからの円安で日本国内の製造拠点としての魅力が高まるなか、円安が長期化すれば、製造拠点としての中国の魅力が、相対的に下がっていくのも避けられない話ではないでしょうか。

いずれにせよ、「現在のところ」、日本にとって中国との経済的な関係は重要かもしれませんが、それはあくまでも「現在のところは」、であって、こうした関係が未来にも継続するかどうかは中国次第ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 台湾を助ける日本人が憎いというセンチメントが高まっているそうです。

  • 国家と個人は分けて考えるというのは、大人の議論の姿勢としては当然でしょうね。誰だって、善人ばかりがいる国もなければ悪人ばかりいる国なんてものもない、知っている前提で議論をしているはずです。

    個人と国家を切り離して考えるのも結構大変ですが。
    例えば個人的には、タイでいいひとばかりと知り合いました。タイで嫌な目にあったことがありません。
    私だけではないと思いますが、タイの街を歩くだけでも、よくできる点が沢山気がついて、タイ人の善性と併せてビジネスチャンスがたくさんある国じゃん、とか思ったりします 。
    がしかし、日本人が期待するスピードで経済発展してくれる国だとは思っていません。10年前そう予測していましたが、案の定大して経済発展しているように見えない 。
    中小企業の海外進出を助ける専門家の人がタイを評価していたりしますが、ある程度の分野の話であって、国家としてどう見るかとは別の話しです。いい人が沢山いるとしりながら、目覚しい経済発展してくれるとはどう考えても思えない次第です 。

    台湾事情を解説しているアーティクルで、タイの話なんてしてしましたが、台湾とタイは別の国だとxはんとわかっています、念の為。

    SNSの発達した現在、どこの国の人とも簡単に仲良くできる時代になりましたが、何故か台湾人の友達って出来ないんですよね 。香港人の友達を作る方が遥かに楽。その個人的経験から、台湾人って日本人が期待するような親日には感じません。
    あるひとが言って言っていましたが、「普通の日本人は特にアメリカが嫌いな人ってそんなにいないでしょう?みな、なんとなくアメリカが好きと答えるはず。台湾での親日ってそういうようなもんですよ」と。

    • タイに限らず
      良い人が多いけど、ガムシャラに働く人は少なかったりして
      結果として経済発展しないし、単体の商売相手としても「納期を守らない」とか問題が多いので優良相手ではない
      という事は多々ありそう

  • こういう事態があると、国(外務省)の警告の発し方が遅いとか、外務省は当てにならないという話が出て来る。
    いつも、役所のことを批判している、極端に言えば当てにならないというようなことを言っているのに、こういう事態になると、役所の警告を当てにしているかのようなことを言う。

    情報源が役所しかない時代なら、役所を責めるのも仕方がないかもしれないが、今は、ネットを通して、様々な情報が入って来るので、時代の流れや変化を自分で判断できる。
    つまり、情報を自分なりに解釈して、自分なりの対策・対応・対処するには、充分な情報量があると思える。

    某国への企業進出にしても、某国に赴任することを従業員が全員拒否すれば、企業の某国事業が成立しない。
    すると、いや、それでは、家族を養えない、などと温室育ちみたいな考えを正当化することを言う甘ちゃんが必ずいる。
    今の時代、国内で勤めていたって、いつ、企業が倒産するか分からないし、リストラもあるかもしれない。今の時代は、終身雇用や年功序列を当てにしないで、何時でも転職したり起業したりできるような「備え」が必要だ。

    某国赴任の辞令が出たら、辞表を出す位の準備をしておかなければ・・・・。辞令には辞表。

    今は、これが一番、人生のリスクヘッジとして必要なことかもしれない。

    それから、役所の警告は、事態が本当にクリティカルになってから出るもの、つまり、一番遅いもの、という認識でいることが必要だ。
    外交関係があるから、先んじて出すことは難しい。

    尚、某国赴任の辞令が出る程の能力があるビジネスマンであれば、転職だっていつでも自由にできる程の能力があるはず。

    • 第⼆節 外務省の任務及び所掌事務
      (任務)
      第三条 外務省は、平和で安全な国際社会の維持に寄与するとともに主体的かつ積
      極的な取組を通じて良好な国際環境の整備を図ること並びに調和ある対外関係を
      維持し発展させつつ、国際社会における⽇本国及び⽇本国⺠の利益の増進を図る
      ことを任務とする。

      に照らしてどうかでしょう。

      >辞令には辞表。
      の”正当性を担保するために”
      外務省は”国際社会における⽇本国及び⽇本国⺠の利益の増進を図る”視点から見てどうすべきか。

      >外交関係があるから、先んじて出すことは難しい。
      は”主体的かつ積極的な取組”という視点から見て妥当か?

      • 個人の対応という点からの意見です。自分をどう守るか、という。
        外務省の問題は、別の問題です。

        • >こういう事態があると、国(外務省)の警告の発し方が遅いとか、外務省は当てにならないという話が出て来る。

          最初のコメは外務省批判を批判する主旨。
          外務省批判に妥当性があるとの反論なのだから、あなたの反論はズレてる。

  •  反日教育が今回の犯罪に全く影響がない、と断言できるんでしょうか。