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「新聞部数は底を打った」…新聞業界の認識は大丈夫?

ここ数年、新聞部数は毎年300万部というペースで減少し続けています。このペース自体、今後、多少の変化もあるかもしれないにせよ、新聞部数が着実に減り続けるという予想を覆すだけの材料は見当たりません。ただ、新聞業界関係者は、そうは考えていない可能性が出てきました。『北海道リアルエコノミー』というサイトが配信した記事によると、北海道新聞関係者は「部数は80万部で底を打った」との見方を持っていたのだそうです。もしこれが事実なら、見通しはあまりにも甘すぎます。

減り続ける新聞部数:消滅ペースは加速

年初の『「新聞がなくなったら社会に莫大な利益」とする考え方』などを含め、これまでにずいぶんと指摘してきたとおり、新聞の発行部数は今後、減ることはあっても増えることはなさそうです。これには実際のグラフを見ていただくのが早いでしょう(図表1)。

図表1 新聞の合計部数の増減

(【出所】一般社団法人日本新聞協会『新聞の発行部数と世帯数の推移』および『日本新聞年鑑』データをもとに作成。ただし、セット部数を朝刊1部・夕刊1部とカウントし直している)

これによると新聞部数のピークは1997年の7241万部だったのだそうですが、直近の2023年時点では3305万部にまで減少してしまっており、しかも部数の落ち込む速度は近年、ますます加速していることがわかります。

直近5年では年間318万部も減少:購読層も高齢者に偏る

1993年以降、5年刻みで見て、98年以降は減少に転落。03年までの5年で207万部、08年までの5年で313万部減り、この減少ペースは13年までの5年で781万部に加速。18年までの5年だと1047万部、そして直近の23年までの5年間では1588万部も減っているのです(図表2)。

図表2 新聞の消滅は加速している
年間 5年間の増減 1年換算
1993年→98年 +37万部 +7万部
1998年→03年 ▲207万部 ▲41万部
2003年→08年 ▲313万部 ▲63万部
2008年→13年 ▲781万部 ▲156万部
2013年→18年 ▲1047万部 ▲209万部
2018年→23年 ▲1588万部 ▲318万部

(【出所】一般社団法人日本新聞協会『新聞の発行部数と世帯数の推移』および『日本新聞年鑑』データをもとに作成。ただし、セット部数を朝刊1部・夕刊1部とカウントし直している)

また、新聞部数の減少が止まらないであろうと想定される理由は、これまでのトレンドだけにあるのではありません。メディアの利用時間に関する調査でも明らかだからです(図表3)。

図表3-1 2013年における年代別・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)

図表3-2 2022年における年代別・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)

(【出所】総務省『情報通信白書』データをもとに作成)

低迷しているときに値上げする業界

過年度の情報通信白書に収録されているデータなどで見ると、新聞の購読時間は高齢層ほど長くなる一方、若年層ほど短くなっており、しかもこの傾向は年々強まっています。

高齢層もいつまでも新聞を取り続けるとは限らないなかで、若年層を中心に新聞離れが急速に進んでいるため、少なくとも現在の部数も維持するのが難しいことは間違いなく、そればかりか、下手をすると部数の消滅ペースはさらに加速する可能性すらあります。

しかも驚くことに、新聞業界では昨年を通じて値上げラッシュが生じ、読売など一部を除く主要紙が軒並み購読料を引き上げています(『今月も新聞値上げ相次ぐ…ビジネスモデルはすでに破綻』等参照)。正直、新聞業界自体が猛烈に「干上がっている」なかでの値上げは、業界全体としての「自殺行為」としか思えません。

いずれにせよ、「トレンド・ウォッチャー」的な視点からすれば、新聞の寿命はあと5年から10年、といったところでしょう。

北海道新聞「80万部割れ」→むしろ驚くのは…

ただ、こうした「外部からの視点」は、新聞業界の「中の人たち」には、あまり届いていないようです。

そんな証拠となり得る記事を、ひとつ発見しました。『北海道リアルエコノミー』というウェブサイトに3月27日付で掲載された次の記事がそれです。

「北海道新聞」発行部数80万部割れ、ピーク時の3割減

―――2024/03/27 07:30付 北海道リアルエコノミーより

同記事によれば、ピーク時に110万部台だった北海道新聞の発行部数が今年3月時点で793,944部と「80万部台」を割り込んだのだそうです。

北海道新聞といえば、昨年の各紙の「値上げラッシュ」時に、主要紙(全国紙5つ+ブロック紙4つ)のなかで、初めて夕刊の廃止に踏み切ったことで、メディアウォッチャー界隈に話題を提供した(『事実なら主要紙で初:北海道新聞が夕刊から完全撤退か』等参照)新聞でもあります。

同記事によると北海道新聞は2020年10月、26年ぶりに朝・夕刊セット料金を値上げ(月額4,037円→4,400円)したものの、その後の新聞用紙代の大幅な値上げや「読者のライフスタイルの変化」により、期待された財務体質の改善に失敗。

昨年9月の夕刊廃止でコスト削減を図ったものの、こうしたなかでの80万部割れは「道新関係者に衝撃を与えている」のだそうです。

夕刊発行は経営の重しだった?

しかも驚くのは、北海道新聞関係者が述べたとされる、こんな記述です。

2020年の値上げにより部数減少は避けられなかったが、80数万部で底を打ったという見方が大半だった。今年に入ってからの80万部割れは、底ではなかったという意味で極めて深刻な状況だ」。

正直、記事を読んで個人的に最も驚いたのがこの部分です。

これが本当に北海道新聞関係者の発言なのだとしたら、「部数減少は80万部台で底を打った」という認識、ちょっと甘すぎます。業界全体としてまだまだ部数減少は続く可能性が高いことを踏まえると、ピーク時から30%減少しているという状況で終わるとも考え辛いところです。

(というよりも、個人的には「まだ80万部台だったのか」、といった点に、むしろ新鮮な衝撃を受けています。)

これに加えて同記事には、北海道新聞は夕刊廃止で2024年3月期に見込んでいた8億38百万円の「営業損失」(!)を圧縮し、来期以降の収支改善につなげる意向だ、などとする記述もあるのですが、このくだりにも驚きます。そもそも暗に「夕刊事業が赤字だった」と吐露しているからです。

産経新聞のように、今世紀初めに首都圏で夕刊事業から全面撤退したメディアもあることを踏まえると、新聞各紙が夕刊発行を維持しているのは不思議です。このインターネット時代に「誰も読まない」(※私見です)夕刊を採算度外視で発行し続けること自体、経営という観点からは謎が多い行動でもあります。

メンツの問題でしょうか?

ちなみに同記事によると、具体的な部数は2023年12月が806,514部、2024年3月が793,944部で、3ヵ月で12,570部も減った計算であり、これは年率で6.23%に相当する減少率です(※しかも、これでも他紙の減少率と比べればまだマシな方かもしれません)。

情報の中間業者が勝手に色と味を付けるのは止めてほしい

ただ、北海道新聞に限らず、新聞各紙の経営見通しは非常に甘く、あまり危機意識も伝わってきませんし、一部のメディアは相変わらず偏向報道を続けたい放題続けている様子です。

しかも、『「新聞を読む人ほど偽情報に騙されない傾向」…本当?』などでも指摘したとおり、そもそも新聞やテレビなどの媒体(マスメディア)は、それ自体の思想・信条を世間に振りまいているフシがあります。本来ならば新聞もテレビも、単なる「情報の中間業者」に過ぎないにもかかわらず、です。

このあたり、日本の新聞記者は世界各国の新聞記者と比べて「客観的事実をありのまま伝える」のが苦手だ、といった調査結果もあります(『「事実を正確に伝える力」、日本の新聞に決定的に欠如』等参照)が、これも新聞が日本国民から呆れられ、見放される原因となり得るものでしょう。

日本の新聞の部数が急激に減っており、業界全体としても10年前後で紙媒体の新聞の多くは廃刊に追い込まれると考えられます。ただ、日本の新聞業界の苦境の原因は、日本の新聞に「批判精神が欠如している」ことである、などと主張するツイートがありました。正直、この見解には賛同できません。日本の新聞に決定的に欠如しているのは「批判精神」などではなく、「事実を正確に伝える能力」だからです。新聞部数の凋落新聞の「寿命」「新聞部数の凋落が止まらない」――。こんな話を、当ウェブサイトではずいぶんと繰り返してきました。一...
「事実を正確に伝える力」、日本の新聞に決定的に欠如 - 新宿会計士の政治経済評論

本来、新聞が取り扱うべき商品は「正確な情報」であり、新聞社が読者に流すべきは「新聞社が勝手に色や味を付けた情報」ではありません。ちょうど、水道局が流すべき水が「無色透明な水」であって、「色や味がついた水」ではないのと同様です。

しかし、現実に新聞社が流している情報の多くは、正確ではありません。経済に関していえば、「悪い円安」「悪い株高」「悪い賃上げ」「悪い景気回復」論などを好んで流すのが新聞社であったりします(『悪い円安、悪い株高、悪い賃上げ…今度は悪い景気回復』等参照)。

このインターネット時代に、「新聞を読んでいたら騙されなくなる」といった主張で読者を騙そうとするのにも無理があると言わざるを得ませんし、新聞が真実を伝えていると信じている人も、このインターネット社会では、さほど遠くない未来に少数派に転落することは間違いないでしょう(すでにそうなっている可能性もありますが…)。

こうした事情を踏まえると、新聞の消滅ペースは今後、多少変化もあるかもしれないにせよ、新聞部数が着実に減り続けるという予想を覆すだけの材料は見当たらない、というのが実情なのではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (15)

  • 北海道新聞は、80万部で底をうつことを前提に動いていて、その前提で下請け(?)に無理を強いてきた、ということでしょうか。

    • 北海道新聞の押し紙は、どの程度だったのでしょうか。また、新聞社社長は、押し紙をどうの程度と見積もっていたのでしょうか。

  • ちょっと被りますけど

    >80数万部で底を打ったという見方が大半だった

    「80数万部で底を打たねばならない」だったんでしょう。(K式)
    副業の稼ぎ先がない新聞社には「底を打ったからコスト削ってV字回復だ~!」という経営再建策くらいしか立てられないのじゃないでしょうか。
    廃業は今の社長が引退した後の経営者がやってくれればいいでしょうし。

  • >80万部が底
    推測ですが、データ分析してなさそうですよねw
    そもそも新聞業界で純粋な新規契約がどれほどあるのか?
    老齢者の引っ越しとかサービス目当ての短期契約なのかとか長期契約に繋がりそうな若年層なのか
    等々の増分のデータ分析・減分のデータ分析(こっちは老年層の死亡や経済状況などかな)をおこなったら、購読年齢層が経年で上昇する新聞業界に「底」といえる岩盤層は無いと思うのが通常の感覚だと思いますけどねw

  • 現在の我が国の人口動態を見るに、平均年齢を考えれば今後5年から10年ほどで第一次ベビーブーマー達の退出(文字通り人生からの)が確実に始まります。

    そしてそのベビーブーマー層こそ、既成の新聞やテレビ等のいわゆるオールドメディアと呼ばれている業界を支え続けてきた世代でもあります。その意味でオールドメディアはその岩盤勢力を着実に喪っていくのは、避けられない現実といえるでしょう。

    それらを考慮すれば、購読数の減少は底を打ったのではなく、むしろこれから本格的に始まるものという気がしてなりません。

    お楽しみはこれからだ!ですかね。

  • 自社の経営分析と将来予測がしっかりといできず甘い期待に逃げ込む新聞社(*)が報じる経済記事って、いかがなものでしょうか

    *北海道新聞ではありません

  • 新聞記者の職務動機づけが虚栄心に基づくものである可能性は大である。
    そんなはずがとは言わせない。どんな企業もそんな病毒に掛かったとき破滅が待っているのですが。

  • 将来を担う、大学生の購読率を知りたいですね。どっかにデータないかなあ。ちなみに、我が家の子供は大学2年ですが、1人暮らしをしている友達で、新聞を購読している人はゼロだと。時代はすっかり変わっています。

  • 80万部で底打ち?大本営発表にしか聞こえないと思ったら、案の定……

    まあ、新聞業界側としては「お先真っ暗です、今までの対策は全て効果なしでした、
    今後も経費削減とリストラで寿命を少しでも伸ばすしかありません」なんて
    正直に言う訳にはいかないんでしょうけど。

  • まあ、
    北海道新聞さんに限らずのことなのですが、
    ISにしても歴史上どこの軍隊もテロリストも
    敗ける前にはそうとは云わずに悪あがきをするもの
    なんだなあと感じます。

  • 普及率の曲線と似たような感じがするから、今が半分くらいだから減り方は減速しそうに思いますが。

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