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企業業績上昇と株高に続き春闘満額回答相次ぐ日本企業

マスコミさんはきっと次に「悪い賃上げ」と言い出す

「悪い円安」、「悪い株高」に続いて、きっと近い将来出て来るであろう主張があるとしたら、それは「悪い賃上げ」論ではないでしょうか。春闘で満額回答の企業が相次いでいますが、こうしたなかで、「マスコミウォッチャー」として「次のマスコミ論調」を予想するならば、「賃上げは大企業や製造業に限られている」、といった主張が出てきそうな気がします。もしかするとその理由は、マスコミ業界に関しては賃上げが難しいからではないでしょうか。

株高・不動産高は「バブル」なのか?それとも…

当ウェブサイトではこれまで、「名目GDP600兆円、東証時価総額1000兆円、日経平均4万円」がひとつの目安ではないか、と申し上げてきた次第ですが、このうち日経平均4万円はすでに一度、達成されました(※ただし、13日前場では株価は一時、38,672円27銭にまで下落していますが…)。

このあたり、株高局面は日銀の政策決定会合(18~19日)を睨んで、ちょっと小休止、という状況かもしれません。日銀が金融緩和政策――とりわけ「マイナス金利」――を修正するのではないか、といった観測が、市場参加者の警戒を招いているフシがあるからです。

この点、当ウェブサイトとして、「株価は絶対にXX円になる!」などと断定するようなことを述べるつもりはありませんが、ただ、現在の企業業績などから逆算して、株価にはさらに上昇余地があると考えていることもまた事実です。

あまり断定的なことは申し上げられませんが、日銀会合などの話題が一巡したあたりで、株価や不動産価格などについては、現在よりもさらに上昇していく、という展開もあり得ると考えています。

(※もっとも、『賃料が上がらない東京のマンション価格はバブルなのか』などでも述べたとおり、不動産価格については賃料水準と比べてやや高すぎるという言い方ができます。したがって、「賃料水準が上がる」か、「不動産価格が下がる」か、という調整が、近い将来に発生するのではないか、というのが個人的な予想です。)

「悪い株高」論

さて、ここ数日の株式市場はやや調整局面にある、ということかもしれませんが、トレンドとして史上最高値水準にあることは間違いありません。

ただ、株高となると出てくるのが、現在の株高を批判する論調です。たとえば先日の『「悪い株高」論の正体は新聞業界の「自己投影」では?』などでも取り上げたとおり、新聞各社は現在、「株高の恩恵が一般市民には行きわたっていない」、などとする主張を繰り広げています。

いわば、「悪い株高」論、とでもいえば良いのでしょうか。

何度も繰り返しで恐縮ですが、現在のような「景気回復局面」においては、(名目値で見た)経済成長やインフレが先行し、賃上げは遅行するのが一般的です。

ちなみに経済には「先行指数」、「一致指数」、「遅行指数」というものがあるのは、経済を議論するうえでの基本知識であるはずですが、こうした「悪い株高」論を唱えているメディアの多くが、こうした前提を(知ってか知らずか)無視しているフシがあるのです。

もし「経済拡張期には実質賃金が減ることが多い」という点を知っていて、敢えてその論点に触れないのだとしたら悪質ですし、知らずに「悪い株高」論を唱えているのだとしたら、勉強不足極まりない話です。どちらにせよ、そのメディアに経済を論じる資格はありません。

株高には企業業績向上が伴っている

ついでに「我々庶民は株高の恩恵を受けることができない」とする意見に対しても、簡単にツッコミを入れておきましょう。

まず、「私は株式投資をしていないから、株高の恩恵を受けていない」と文句をつけている人たちに言いたいのは、「文句を言うくらいなら株式投資をすればよいのではないか」、です(※もちろん、「自己責任で」、ですが)。

株式市場について勉強していただければわかると思いますが、昨今は低い投資単位で気軽に投資することができる手段は多く、(手数料の高さという問題はあるかもしれませんが)株式投資信託やETFなどに投資しても良いかもしれません(※投信とETFの違いについては、当ウェブサイトでは割愛します)。

ただ、「株式を持っていないから株高の恩恵を受けていない」とする主張も、さまざまな意味で間違っています。

そもそも私たち国民が加入している国民年金、厚生年金などの年金基金は株式でも運用していますし、当然、それらの運用益は、間接的に私たち受給者の利益につながります。

GPIF、10―12月期運用益は5.7兆円 欧米利上げ打ち止めで株価上昇

―――2024年2月2日16:05 GMT+9付 ロイターより

それに通常、株価が上昇している局面においては、企業は増益を続けており、多くの場合は企業も増配します。株式投資家にとっては値上がり益(キャピタルゲイン)だけでなく、こうした配当所得(インカムゲイン)も期待できます。

実際、法人企業統計などで見ても、企業の経常利益水準は伸び続けています(図表)。

図表 経常利益(全規模、四半期)

(【出所】法人企業統計調査『全産業(金融業、保険業を含む)(原数値)』時系列データをもとに作成)

さらに、企業収益が伸びていけば、その分、企業には新規設備投資などを行う余力も出てきますし、雇用も拡大する余力も出てきます。さらには、賃上げ余力も出て来るでしょう。

やっぱり出て来た!満額回答企業が続々

こうしたなかで、やっぱり続々と出てきたのが、こんな話題です。

UAゼンセン、5.15%賃上げ 満額回答の組合昨年上回る

―――2024年3月7日 12:45 GMT+9付 ロイターより

川崎重工、春季交渉で2年連続満額回答 1.8万円賃上げ

―――2024年3月13日 9:19付 日本経済新聞電子版より

日鉄、要求超え回答へ 主要企業、満額続出―春闘、13日に集中回答

―――2024年03月13日07時03分付 時事通信より

トヨタ、4年連続の満額回答 最高水準=報道

―――2024年3月13日 10:18 GMT+9付 ロイターより

スズキ10%以上賃上げ、過去最高水準 一時金は満額回答 2024年春闘

―――2024/03/09 07:31付 Yahoo!ニュースより【あなたの静岡新聞配信】

複数の報道によると、春闘では主要企業で「満額回答」が相次いでいるのだそうです。

「賃上げ」「満額回答」など報じられているのは、製造業かつ大企業などが中心ではありますが、それでも企業業績が押し上げられているからこそ、こうした満額回答が可能なのでしょう。

次の展開はきっと「悪い賃上げ」論!

もっとも、「円安」「株高」ときて、今度は「賃上げ」が相次いできました。

「マスコミウォッチャー」として次の展開を予想すると、今度はきっと「悪い賃上げ」論が出て来るのではないでしょうか?

いわく、「現在の賃上げは製造業や大企業などに限られる」。

いわく、「中小企業や年金生活者は、賃上げの恩恵を受けることができない」。

いわく、「好景気の実感が得られない」。

とりわけ、この好景気にも関わらず、部数を減らし続けている主要新聞、視聴者を減らし続けている主要テレビ局あたりは、「好景気の実感が得られない」という感覚を共有しているのではないでしょうか。

実際、世の中全体は増収・増益の流れが続いているなかで、新聞、テレビを中心とするマスコミ業界の先行きは、非常に厳しいものがあります。新聞部数やテレビ視聴時間の減少もさることながら、賃上げするだけの余力がない可能性が濃厚でしょう。

いずれにせよ、「そのうちマスコミが『悪い賃上げ』論を言い出す」という予測が正しいかどうかについては、さほど遠くない未来に判明するのではないか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (34)

  • 日本の経済新聞社は日本がよくなることを嫌っています。新聞記者は許せないのです。ですからけなしにかかるに違いありません。

  • 株価や企業業績の好調は円安で実体より押し上げられているバブルにすぎない。
    一方で賃上げの恩恵を受けられない庶民は円安による物価高に苦しめられている。
    よって円安是正のためにも日銀は一刻も早く利上げをすすめるべきだ。

    マスコミは景気が上向いたらなんか困るんですかね、、、?

    • >株価や企業業績の好調は円安で実体より押し上げられているバブルにすぎない。
      一方で賃上げの恩恵を受けられない庶民は円安による物価高に苦しめられている。

      全くこの通りです。何故、株が上がるか、大企業の賃上げの原資はどこから生まれているか、今何故大企業は賃上げするのか、などを見ないで、現象ばかりで大騒ぎしている。

  •  最終進化形態は「悪い好景気」「悪い実感」ですかね。
     無理やり悪い賃上げを語ろうとするのならば、「確かに賃上げは多くの業種で見られるが、あまりにも遅すぎた」だの(能登地震対応で実証済み)、単純に事業に失敗したところを取材して「悪い好景気で浮かれてはいけない、好景気からこぼれた不幸な人も中には居るのだ」などといったあたりでしょうか。どこからともなく「半額になった高級和牛しか買えないほど食費を切り詰めている貧困家庭」を召喚する異能を持つ某公共放送にはお手の物。

  • 保険業界のように人々に不安を煽ることが、自社の収益貢献に繋がる業種というのが存在します。
    報道業界もその一つ。当然、人々の分断、不満、不安を煽る動きをすることでしょう。

    • 本質的にエントロピーが高い状態を好む。持ち込もうとする。これが報道業界でしょう。
      彼氏が韓国社会と親和性が高いのもそれが一因でしょう。

      • 100円をもらったことによるプラスの感情と100円を落としたことによるマイナスの感情は、同額であってもマイナスの方が3倍ほど大きいそうです。
        必然的に、マイナスのニュースの方が人の注意を3倍引く、と言えるわけで、
        視聴率や売り上げを目指すならマイナスの単語を並べることが有効だと言えます。これは人間の生理的な反応に基づくもので、報道にかかわる人間の人間性が相対的に悪い、というわけではありません。

  • 思い出されるのは、安倍晋三内閣の時に、
    「ミニマム2%以上の賃上げ」
    を政府から経団連に直接に頼みに行った事。

    野党も連合もなんにも言えずに、口パクパクさせてました。
    賃上げ要求することが存在意義の組織なのに、政権与党が率先して最大の活動と成果をあげてしまったんだから、もう辞表か切腹しか選択肢はなかったエピソードでした。

    そもそも満額回答って、組合からすれば屈辱なはずちゃうのかね?
    (会社側はギリギリじゃなくて、言えばもっと出したのに!とか)

    皮肉まじりですが、
    「日本は世界で唯一の成功した社会主義国家だ」
    とか言われる訳ですよね。

  • 組合要求額より会社回答額の方が高い(日鉄のケース)というのは要するに組合不要ということじゃないの?

    • 労働組合結成の目的は、賃金上げだけじゃないですから。一度、勉強して見てください。

      • 出ました!お勉強~ (^^);
        たしかに、
        まじめに働く労働者のための組合活動のなかで
        最重要だけど賃上げはその手段の一つのものです。
        一方で、
        まじめに働く労働者のためにならない
        宿便のようなイデオロギー活動みたいなものは
        おべんきょうどころか、この際、便秘薬でも飲んで
        サラッとトイレに流してしまいましょう。
                  (^^)/

        • 組合側要求額以上の回答ということについてテレビのアナウンサーが専門家に「どうなんでしょうね~?」と振ったところ、「働く人には励みになりますね」だって。
          30000円要求35000円回答。何のために組合費払って専従者の給与をだしているのか。もしも40000円要求していれば一次回答35000円、38000円で妥結になったかもしれない。差額3000円。組合費を払うかいがある。

          • sqsqさまご指摘のように
            年々高額になる組合費は無駄どころか
            むしろ賃上げ抑制になりかねない
            労組の言葉で言うところの
            「労働者を搾取する資本家の犬」?
            のような存在にも映ってしまいますなあ。(^^);

            労働組合の多くが、反日本社会の特定野党と
            つるんでしまっている今の現状を目にすれば
            「労働組合が労働者の役に立つ」という神話自体が
            疑念を持たれるのは当然の成り行きなのでしょう。

            遊び人の友人が言ってましたが、
            ピンク街で満足に遊ぶためには
            「かわいい子いまっせ(?)」とか
            言葉巧みなポン引きに引っかかって
            散財不満足にならないことが大事だ
            とか言ってました。(笑)
            「賃上げと労働者の生活向上」を目指すなら
            なんか口先で虚ろなこと言ってる
            労組専従でおまんまさんたちの誘いには
            ピンク街のポン引きさんを思い出し
            同じようなものだと相手にしないことも
            必要なのかも知れません。

        • 労働組合の目的は、いろいろあります。これは、中学レベルで「勉強」することです。
          本来、イデオロギーは必要ないんだが、何故か、これを絡ませて来るから、組織率が低下する一方になるんですね。
          誰が、社共立民の選挙応援なんかしたいものか?

          • >労働組合の目的は、いろいろあります

            労働組合が話題になるのは賃上げのシーズンとメーデーの時くらい。
            メーデーはお祭りだから、彼らが存在感を示せるのは今しかない。
            毎年ホワイトボードに金額を書き込む場面をテレビでみるけど、連合というのは単に集計をしているだけなのか。たぶん多くの人はそう思っているのでは。

          • 労働組合は、労働三法で規定されていて、労働者としての権利を守るための一つの形態です。
            何も政治化しなければならないものではない。
            労働組合の権利は、法律によって規定されているもので、野党という政治勢力によって権利が保障されているわけではない。

            そこを理解するために勉強してみてください。

            ただ、どういう訳か、労総組合は政治化したがるのが不思議ですね。

          • 私は匿名さんを誤解してたようで
            匿名さんのおっしゃる主旨はもっともだと
            同感します。すいませんでした。

            いまの専従でおまんまさんたちの
            なんでも政治化という名のもとに
            イデオロギーに捻じ曲げるのは
            本来の労働者のためにあるべき組合活動に
            巣食ったがん細胞のようなものです。

            労働貴族特権安住狙う専従でおまんまさんや
            それにつけこむ韓流汚染みたいなものを排除して
            本来の労働者のための組合のあり方を
            再構築すべきときだと考えます。

          • だから、勉強して見てください、と。
            基本も押さえず、何かを言っても、マスゴミさんと同じ輪の中で、堂々巡りの貶しあいになるだけです。
            まあ、勉強しないで思い付きを言うのは、マスゴミの特権だと思っている輩です。

  • バブル期は賃金が爆上りしていましたが、物価、特に住宅価格の値上がりに酷いものがありました。
    で、当時のマスコミは「本当の豊かさは何か?」みたいな特集をよく組んでいたような・・・。当時、賃金、所得水準が日本のはるか下である一方で物価や不動産がとてもリーズナブル(日本人からみて)だった英国なんかを絶賛する論調があふれかえっていたものです。

    今はちょうどその当時と比べて日本と英国はじめとする諸外国の立場が逆転していて、日本はまさに「本当の豊かさ」を達成しているわけで、マスコミはそのことを祝福してもよさげな気がするんですけどね・・・。

  • 人づてに聞いて知ったのですが、徳島新聞社で労使紛争が発生しているそうですね。
    新聞読者はどう感じるのだろうか、とても心配だ。

    • 労組側発の情報しかないので割引で読む必要があるでしょうが、朝日の記事だけ目を通してみましたが、

      徳島新聞労組がストライキ通告 経営側に編集部門分社化の撤回求める
      https://www.asahi.com/articles/ASS3D5V3JS3DPTLC01G.html
      >取材や記事の執筆などを担う編集部門を4月に分社化し、新規採用社員の給与水準を現在の65%に抑える計画を労働組合に提案した
      >現在の一般社団法人とは別に新会社「株式会社徳島新聞社」を設立する計画を労組に提示した。2025年以降の新入社員の採用は新会社で行い、給与水準は現在の65%と大幅に抑える一方、現在雇用されている従業員の待遇は変わらないと説明したという。

      新聞のコアコンピタンスたる取材・編集の賃金抑制だそうで末期とも読めますが、新聞業界の先行き見据えた事業を畳む準備と読めなくもなく。ただ、最後の尻拭きを任される給料2/3若手社員はやっとれんでしょうから、いっそ、パート採用でいいんじゃないのとも思います。
      新聞労連は大騒ぎのようですな。

      徳島新聞本体は今後は、阿波踊り興業に名を変えるのでしょうかね。

      • >2025年以降の新入社員の採用は新会社で行い、給与水準は現在の65%と大幅に抑える一方、現在雇用されている従業員の待遇は変わらないと説明したという。

        古い頭の人間の賃金が、年功賃金制の故に、成果に見合っていないということですね。ある意味、粗大ゴミということですね。その粗大ゴミが、組織の新陳代謝を阻害しているのだが。

    • 「新聞は取材と編集では食えない」
      なんつうか、マスコミがさんざん使い倒した「バブル崩壊」の「克服」後の賃上げ報道ラッシュの中で、随分対照的なニュースでした。

      • >「新聞は取材と編集では食えない」

        つまり、知的産業ではなく、輪転機と宅配体制に支えられた装置産業だということで、装置に頼っていれば、中身はどうでもいいと、ロクな取材も編集もしなかったと、ゲロっているんですね。

    • Youtube をいらってたらこんなんが表示なりました。
       『ショスタコーヴィチ 交響曲第5番「革命」第4楽章』
      NHK 交響楽団演奏だそうです。ときどきお勧めに出てきました。今の心を透視されているかのごとく不気味を感じます。

  • こんな日経記事が出ていますね。
     『王将フードサービス、月給3万9000円引き上げ 過去最高』
    街角景況感へのインパクト高そうです。斜陽報道産業()は差がついてしまってはいけないので、離職阻止のため昇給を急がないと。原資はきっと輪転機停止でしょう。

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