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サッカー選手が損害賠償求め女性に2億円の賠償要求へ

サッカー選手が昨年6月、女性らを酔わせて性的加害を行ったとされる疑惑が浮上している件では、「推定無罪」という観点から、日本サッカー協会(JFA)とフランス1部リーグのチームの対応の違いが際立っているといえます。こうしたなか、くだんのサッカー選手が女性らに対し、総額2億円の損害賠償を求めて訴えたとの話題が入ってきました。

サッカー選手の性的加害疑惑

当ウェブサイトで取り上げようかどうか、少し悩んだ話題があります。

デイリー新潮が1月31日付で報じた、『週刊新潮2024年2月8日号』に掲載されたという、サッカー日本代表の選手の「性加害疑惑」です。これについてはデイリー新潮のウェブサイトにて読むことができるほか、その後もいくつかの続報が出ています。

これらによると、この選手は2023年6月21日未明、Aさんら2人の女性を酒に酔わせたうえで、この選手が宿泊していた大阪のホテルに連れ込み、性的な加害を行ったとして、Aさんらがこの選手を刑事告発していたことがわかった、というものです。

正直、これに関してはどちらの言い分が正しいのかはわかりません。

この点、この選手が本当にそのような行為に及んだのであれば、厳しく糾弾されるべき事案ですが、それと同時にもしこれが誣告(ぶこく)だったとしたら、これはこれでとんでもない話でもあります。単なる名誉棄損では済まない問題に発展しかねないからです。

仏チームは推定無罪貫く…JFAの「推定有罪」対応に問題はないのか

実際のところ、2月17日付のダイヤモンドオンラインの記事によれば、Aさんが選手の刑事告発に踏み切ったのは1月18日のことで、日本サッカー協会(JFA)は曲折のすえ、この選手を日本代表から離脱させることを決定しました。

しかも、当初JFAは2月1日時点で、「報道されている事実関係の内容について当事者の主張が異なっていると理解している」、「慎重な対応が求められる」としつつ、「選手本人の心身のコンディションを考慮した結果、本日付でチームを離れることを決定」したと発表。

しかし、選手らの反発もあり、JFA側はいったん離脱を保留扱いにし、最終的にはJFA幹部や弁護士ら外部有識者を加えたオンライン会議の結果、選手の離脱が正式に決まるというドタバタぶりをしめしました。

これについてJFAの田嶋幸三会長は、「最終的にはすべてを総合的に判断しました」、などとしたうえで、こう述べたそうです。

選手たちがサッカーに集中できる環境をJFAとして作っていく必要があるなかで、お騒がせしていることや●●選手の心身のコンディションも含めて、離脱させるのが望ましいという判断に至りました」。

正直、意味がわかりません。「お騒がせしているから離脱させる」のではなく、「騒がれている状態で選手を守る」のがJFAの役割だからです。

ただ、この選手は仏チーム・1部リーグのスタッド・ランスに所属しており、そのスタッド・ランスは「推定無罪」の原則を盾に、この選手を一貫して試合に出場させています。

近代法の原理からすれば、「犯罪の容疑が持たれている」という状況のなかで、あたかもその容疑者を「犯罪者」だと決めつけるかのような報道の在り方自体がおかしいのであり、その意味で、JFAの決定には、日本のメディア独自の「推定有罪」という風潮が影響した可能性がないか、疑ってみる必要があります。

選手側、女性2人に2億円賠償請求

こうしたなか、ちょっと注目しておきたいのが、こんな話題です(記事タイトルにある実名は伏字にしています)。

●●●●選手、性被害訴えた女性2人に2億円損賠請求 大阪地裁に提訴「増額の可能性も」

―――2024/2/19 12:15付 産経ニュースより

産経ニュースによると、この選手は19日、Aさんら2人を相手取って、「虚偽の告発をされた」として女性2人に対し、約2億円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしたのだそうです。

この約2億円はスポンサーの契約解除といった損害に基づいて算出されたもので、今後の増額も視野に入れており、選手側は「まったくの虚偽」の主張を「アジア・カップ」という大事な試合中に行ったという意味で「極めて悪質」、などと主張しているのだとか。

このあたり、当ウェブサイトとして、この両者のうち、どちらの主張が正しいのかを判断する材料を持っていませんので、「どちらが悪い」という判断をすることは控えたいと思います。

しかし、「虚偽の刑事告発や報道に基づいて相手に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負う」というのは、近代法治国家としては当然の原理です。

メディアの責任は?

ただし、もしも今回の「告発」が虚偽のものだったとしても、訴えるべき相手はその「加害者(?)」であるAさんや、せいぜいこれを報じたメディアどまりでしょう。スポンサーとしては、あくまでも「報道されたことによる風評被害」を受ける立場からです。

また、こうした事例を見ていくと、たとえば先月発生した、著名芸能人が女性に対して性的加害を行っていたとする報道とも重なる気がします。

日本のように「推定無罪」の原則が軽視されている国においては、報道された段階でその「容疑者」が叩かれるのは明らかに行き過ぎですし、ましてや代表から外すなどすれば、それによって実害が生じるわけですから、これもとんでもない話でしょう。

今回の事例に関して、少なくともデイリー新潮の一部記事を読む限り、報道姿勢自体はあくまでも伝聞形に努めているフシがありますが、メディアによってはまるで「推定有罪」であるかのような報じ方をしている事例もあります。

報じ方によってはメディアも加害の共犯者となる可能性は十分にあるでしょう。

いずれにせよ、当ウェブサイトとしては、本件についての現時点での深入りは避けたいと思いますが、それと同時に今後の進展には注目する価値もあるのではないか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • 写真週刊誌が「ビートたけし事件」で没落していったのと同じ轍を踏むのでは。

    週刊誌は「そのように聞いたから信用して報道した」と言い張るだろう。
    当事者への損害賠償請求が一番効くかもしれない。

  • 良くわからんけど、サッカー選手にしろ、女性にしろ、メディアにせよ脇が甘いなぁって感じがします。有名になって守るものが増えたらリスク管理は必要だろうし、この女性ってのも一般人とは思えんのだが、酔っていたとしてもホイホイとホテルの部屋までついてくかって思います。メディアも売れればいいみたいなゲスな報道ばかりしてたら信頼失うよってもんだが…。まあ良くわからんけど。

  • これに関しては、マスメディアがどうこう言うよりも
    シンプルに「推定無罪」という考え方が日本人の伝統的な
    価値観に合わないのではないのかな?

  • 事実無根の報道をしても、利益が損害を上回っているなら、そりゃやり放題になるでしょう。

    • 同意します。
      そのため週刊誌などのメディアへの制裁として、虚偽情報の掲載で得られた売上金の全額+慰謝料を科して、絶対に利益を獲得させてはいけないと思います。

  • 当事者の問題に関して、かつ、簡単にどっちの責任か、という点が明確にできない(いずれも証明が難しい)において、男性側、女性側、週刊誌の3者の中で、現時点で唯一「明確に」winなのは週刊誌なだけです。
    報道の自由の名のもとにどちらかの立場に立つのであれば、返り血を浴びる場合において週刊誌側にもそれなりのペナルティが「男性、女性でもない第三者としての相応のペナルティ」が必要でしょうね。

  • 件のサッカー選手が有罪か無罪かはまだまだハッキリしませんが、
    日本サッカー協会はこういう時全然頼りにならない印象が強いです。

    代表から離脱させる事自体はメンタルコンディションを考えて妥当だとは思いますが、
    その後何のフォローもしていない様に見えるのはねえ……何かしたんだろうか?

  • 日本では、噂のないところに煙は立たないなどと、悪評を立てられたほうが一方的に不利益を被るという悪弊があります。
    これが日本人を委縮させている原因の一つかもしれませんね。
    私としては、日本サッカー協会はこのサッカー選手を守らなければならない立場であると思います。
    サッカー協会幹部は毅然として選手を守って頂きたいと思います。

    • ×噂のないところに煙は立たない
      〇火のないところに煙は立たない
      でした。

  • 告訴が何故メディアでなく女性2人に対してなのかについて、メディアは正しく取材活動をして記事にしたならば、事実と異なった報道と後から分かった場合であっても法的な責任を問いにくいという世間一般の倫理観からかけ離れた法解釈があるからだと思います。
    どのような業界でも不良品を売れば、リコールをせねばならない他に(メディア主導による)社会的バッシングを受けて事業の存続さえ危うくなりかねないのに、メディア自身が不良品を売ってもお咎めを受けないダブルスタンダードによってメディアは守られています。

    何故マスメディアにはリコールがないのだろう。一度発信した情報は取り返しようがないとか言い訳していないで、紙媒体ならば全て回収すべきであるし、ウェブ記事ならばサイトを閉鎖させる制度があって然るべきと思います。

    • 世間一般の倫理観からかけ離れた法解釈・・・こんな法解釈って一体誰がしているのでしょうか。製造物責任法の報道版などを整備しないとますます問題が大きくなる。そうのうちAIが記事を書いたので 知らないという事態が多発しそう。メーカーでロボットの誤動作と言って責任逃れはできないのに。

  • 週刊新潮が「とんでもない地雷案件」を踏み抜いた疑惑が浮上、先方が提出した告訴状の女性の住所が偽物……という情報も。

    • 新潮さが足りなかった出版社との誹りあり。新聞社 TV 局についで出版社も瓦解なのか。

  • マスゴミやヤフーとかで言いだしたけど、安倍さんのモリカケ見てきた身としては笑っちゃうんだけど。これ安倍さんの時に出なきゃいけない話なんだけどね。まあモリカケで言論のタガが外れた感あるから、あの時安倍さんを証拠なしの疑惑でたたいてたやつらが巻き込まれるのは自業自得だと言っておく。

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