昨日の議論の続きで、本稿では日本にとって重要な貿易相手国である中国、米国、豪州、台湾、韓国の5ヵ国に関し、その貿易額の概況品内訳を確認していきたいと思います。端的にいえば、日本にとって中国、台湾、韓国は日本の川上産業からこれらの諸国の川下産業に向けた「モノを作るためのモノ」の輸出が多い一方、近年、台湾が日本との産業面での結びつきを強めている様子が、貿易統計からは浮かび上がってきます。また、豪州が日本にとっての貿易相手国上位に浮上しているのは、資源高の影響でしょう。
目次
日本にとっての輸出入・貿易額ランキング
昨日の『輸出は百兆大台…統計から見る「川上製造国ニッポン」』では、財務省税関が30日に公表した普通貿易統計を参考に、日本の輸出構造について、①相手国別、②概況品目別に分解し、その概要を確認してみました。
改めて、貿易額、輸出額、輸入額のランキングを確認しておきましょう(図表1)。
図表1-1 貿易相手国(2023年1月~12月累計、輸出)
相手国 | 金額 | 割合 |
1位:米国 | 20兆2643億円 | 20.09% |
2位:中国 | 17兆7624億円 | 17.61% |
3位:韓国 | 6兆5850億円 | 6.53% |
4位:台湾 | 6兆0162億円 | 5.96% |
5位:香港 | 4兆5784億円 | 4.54% |
6位:タイ | 4兆1170億円 | 4.08% |
7位:ドイツ | 2兆7168億円 | 2.69% |
8位:シンガポール | 2兆6319億円 | 2.61% |
9位:ベトナム | 2兆4172億円 | 2.40% |
10位:豪州 | 2兆3559億円 | 2.34% |
その他 | 31兆4367億円 | 31.16% |
合計 | 100兆8817億円 | 100.00% |
(【出所】財務省税関)
図表1-2 貿易相手国(2023年1月~12月累計、輸入)
相手国 | 金額 | 割合 |
1位:中国 | 24兆4177億円 | 22.16% |
2位:米国 | 11兆5336億円 | 10.47% |
3位:豪州 | 9兆1304億円 | 8.29% |
4位:UAE | 5兆1833億円 | 4.70% |
5位:台湾 | 4兆9882億円 | 4.53% |
6位:サウジアラビア | 4兆8367億円 | 4.39% |
7位:韓国 | 4兆3597億円 | 3.96% |
8位:ベトナム | 3兆6226億円 | 3.29% |
9位:タイ | 3兆6107億円 | 3.28% |
10位:インドネシア | 3兆4095億円 | 3.09% |
その他 | 35兆0787億円 | 31.84% |
合計 | 110兆1711億円 | 100.00% |
(【出所】財務省税関)
図表1-3 貿易相手国(2023年1月~12月累計、輸出+輸入)
相手国 | 金額 | 割合 |
1位:中国 | 42兆1801億円 | 20.01% |
2位:米国 | 31兆7979億円 | 15.08% |
3位:豪州 | 11兆4864億円 | 5.45% |
4位:台湾 | 11兆0044億円 | 5.22% |
5位:韓国 | 10兆9447億円 | 5.19% |
6位:タイ | 7兆7277億円 | 3.67% |
7位:UAE | 6兆6495億円 | 3.15% |
8位:ベトナム | 6兆0398億円 | 2.87% |
9位:ドイツ | 5兆8792億円 | 2.79% |
10位:サウジアラビア | 5兆7292億円 | 2.72% |
その他 | 71兆3629億円 | 33.85% |
合計 | 210兆8016億円 | 100.00% |
(【出所】財務省税関)
貿易構造の各論
日本の貿易構造とは?
これによると、貿易相手国としてのトップは中国であり、これに続いて米国、豪州、台湾、韓国などが続きます。
この相手国から推察するに、日本の貿易構造は次の通りだ、とする仮説が成り立ちます。
- 日本はいわゆる「川上産業」が強い国である
- しかし、いわゆる「川下産業」については、中国、台湾、韓国などにお株を奪われてしまっている
- 日本は現在、中国、台湾、韓国といった「川下産業」国に製造装置、中間素材など「モノを作るためのモノ」を輸出し、最終製品を輸入するという、近隣国との水平分業が成り立っている
- 日本は豪州、サウジ、UAEなどから石油、ガスなどの資源を輸入している
こうした仮説が正しいかどうかについては、結局、個別国の品目別分解をするしかありません。
そこで、本稿では日本にとっての貿易高上位5ヵ国(中国、米国、豪州、台湾、韓国)について、品目別分解を行ってみます(なお、図表の出所は断りがない限り、すべて普通貿易統計です)。
日中貿易
まずは、日本にとって最大の貿易相手国である中国です(図表2)。
図表2-1 対中貿易(輸出、2023年1月~12月、0.5兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 17兆7624億円 | 100.00% |
1位:機械類及び輸送用機器 | 9兆3697億円 | 52.75% |
うち半導体等製造装置 | 1兆5307億円 | 8.62% |
うち半導体等電子部品 | 1兆2798億円 | 7.21% |
うち自動車 | 9433億円 | 5.31% |
うち電気回路等の機器 | 5817億円 | 3.27% |
2位:化学製品 | 3兆1552億円 | 17.76% |
うち有機化合物 | 6558億円 | 3.69% |
3位:原料別製品 | 2兆0293億円 | 11.42% |
4位:雑製品 | 1兆1541億円 | 6.50% |
うち科学光学機器 | 5860億円 | 3.30% |
5位:特殊取扱品 | 1兆1266億円 | 6.34% |
6位:原材料 | 5343億円 | 3.01% |
図表2-2 対中貿易(輸入、2023年1月~12月、0.5兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 24兆4177億円 | 100.00% |
1位:機械類及び輸送用機器 | 12兆5313億円 | 51.32% |
うち通信機 | 2兆8679億円 | 11.75% |
うち事務用機器 | 2兆2109億円 | 9.05% |
うち音響・映像機器(含部品) | 9889億円 | 4.05% |
うち重電機器 | 6035億円 | 2.47% |
うち家庭用電気機器 | 5971億円 | 2.45% |
うち半導体等電子部品 | 5559億円 | 2.28% |
うち自動車の部分品 | 5330億円 | 2.18% |
2位:雑製品 | 5兆2004億円 | 21.30% |
うちメリヤス編み及びクロセ編み衣類 | 9285億円 | 3.80% |
うち衣類 | 6741億円 | 2.76% |
うちがん具及び遊戯用具 | 6706億円 | 2.75% |
3位:原料別製品 | 2兆8374億円 | 11.62% |
4位:化学製品 | 1兆9239億円 | 7.88% |
うち無機化合物 | 5528億円 | 2.26% |
うち有機化合物 | 5333億円 | 2.18% |
5位:食料品及び動物 | 1兆1450億円 | 4.69% |
非常にわかりやすい結果が出てきました。
日中貿易において、日本から中国への輸出品は、自動車などを除けば上位を占めるのは「完成品」「最終製品」ではなく、基本的には製造装置や中間素材が中心です。これに対し、中国から日本への輸入品は、通信機(スマホ類)、事務用機器(PCなど)、白物家電や衣類など、消費財が中心です。
いわば、製品の組立工場が中国に取られ続け、そのことで日本のデフレが加速させられた、といった側面が、この貿易統計の内訳からも垣間見えるのではないでしょうか。
ちなみに日中貿易は、日本から中国への輸出が17兆7624億円、反対に中国から日本への輸入が24兆4177億円であり、6兆6553億円もの貿易赤字を計上しています。
ただ、円安が長引けば、アイリスオーヤマのように、いわゆる川下産業を中国から日本に移すというインセンティブが成り立ちますので、もしかしたら製造業などが徐々に日本に戻ってくる動きが、今後2~3年のうちに観測されるかもしれません。
日米貿易
続いて米国についても見ていきましょう(図表3)。
図表3-1 対米貿易(輸出、2023年1月~12月、0.5兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 20兆2643億円 | 100.00% |
1位:機械類及び輸送用機器 | 14兆7430億円 | 72.75% |
うち自動車 | 5兆8439億円 | 28.84% |
うち原動機 | 1兆0815億円 | 5.34% |
うち自動車の部分品 | 1兆0758億円 | 5.31% |
うち建設用・鉱山用機械 | 9472億円 | 4.67% |
2位:化学製品 | 1兆4911億円 | 7.36% |
3位:原料別製品 | 1兆3642億円 | 6.73% |
4位:特殊取扱品 | 1兆2454億円 | 6.15% |
5位:雑製品 | 1兆0703億円 | 5.28% |
うち科学光学機器 | 5224億円 | 2.58% |
図表3-2 対米貿易(輸入、2023年1月~12月、0.5兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 11兆5336億円 | 100.00% |
1位:機械類及び輸送用機器 | 3兆4714億円 | 30.10% |
うち原動機 | 8629億円 | 7.48% |
2位:化学製品 | 2兆2224億円 | 19.27% |
3位:鉱物性燃料 | 1兆8372億円 | 15.93% |
うち石油ガス類 | 1兆0291億円 | 8.92% |
4位:食料品及び動物 | 1兆6292億円 | 14.13% |
5位:雑製品 | 8488億円 | 7.36% |
うち科学光学機器 | 5444億円 | 4.72% |
6位:原材料 | 7803億円 | 6.77% |
対米貿易については、また対中貿易とは違った姿が見えてきます。
輸出に関しては、化学製品、原料別製品などの「中間素材」もたしかに多いのですが、最も多いのは最終製品である自動車、原動機などであり、いわば、自動車産業が対米黒字を牽引している格好です。
これに対し輸入面では、機械類、化学製品といった中間素材と並び、鉱物性燃料(とりわけ石油ガス類)や食料品等の輸入が多く、このことから、米国は最終消費地であるとともに資源国としての顔を持っていることが見えて来るでしょう。
ちなみに日本は、対米貿易では8兆7307億円の貿易黒字を計上しています。
日豪貿易
続いて3番目の貿易相手国である豪州の状況です(図表4)。
図表4-1 対豪貿易(輸出、2023年1月~12月、0.5兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 2兆3559億円 | 100.00% |
1位:機械類及び輸送用機器 | 1兆7929億円 | 76.10% |
うち自動車 | 1兆4167億円 | 60.13% |
2位:鉱物性燃料 | 2313億円 | 9.82% |
図表4-2 対豪貿易(輸入、2023年1月~12月、0.5兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 9兆1304億円 | 100.00% |
1位:鉱物性燃料 | 6兆8462億円 | 74.98% |
うち石炭 | 3兆8317億円 | 41.97% |
うち石油ガス類 | 2兆9154億円 | 31.93% |
2位:原材料 | 1兆2954億円 | 14.19% |
うち鉄鉱石 | 7989億円 | 8.75% |
3位:食料品及び動物 | 5968億円 | 6.54% |
対豪貿易については、正直、品目としてはあまりパッとしません。
貿易高が上位3番目に食い込んだ理由はおそらく、「鉱物性燃料」の輸入額が6.8兆円にも達し、それで対豪輸入額が9.1兆円にまで膨らんだためです。実際、輸出額については2.4兆円に過ぎません。国際的な資源高の影響で、豪州との貿易高が膨らんだ格好だといえるでしょう。
極端な話、日本で再稼働可能な原発がすべて稼働するなどしたら、豪州は日本にとっての貿易相手国の上位から転落する可能性が濃厚、というわけです(停止中の原発がすべて近日中に再稼働する見込みがあるのかどうかは別として)。
ちなみに豪州との貿易での赤字額は6兆7745億円で、これは対中貿易赤字を抜いて、2023年の日本にとっては最大の貿易赤字計上相手です。
日台貿易
続いて、いまや4番目に重要な貿易相手国となった台湾の状況を見ておきましょう(図表5)。
図表5-1 対台貿易(輸出、2023年1月~12月、0.3兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 6兆0162億円 | 100.00% |
1位:機械類及び輸送用機器 | 3兆0851億円 | 51.28% |
うち半導体等電子部品 | 9947億円 | 16.53% |
うち半導体等製造装置 | 5775億円 | 9.60% |
うち自動車 | 3691億円 | 6.13% |
2位:化学製品 | 1兆0735億円 | 17.84% |
3位:原料別製品 | 7106億円 | 11.81% |
4位:特殊取扱品 | 4735億円 | 7.87% |
5位:雑製品 | 4140億円 | 6.88% |
図表5-2 対台貿易(輸入、2023年1月~12月、0.3兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 4兆9882億円 | 100.00% |
1位:機械類及び輸送用機器 | 3兆3715億円 | 67.59% |
うち半導体等電子部品 | 2兆5479億円 | 51.08% |
2位:原料別製品 | 3964億円 | 7.95% |
3位:特殊取扱品 | 3605億円 | 7.23% |
4位:化学製品 | 3540億円 | 7.10% |
これで見ると、台湾との貿易に関しては、日本から生産財を輸出するだけでなく、むしろ逆に、日本が台湾から半導体等電子部品を輸入するなど、日台貿易は一方通行ではないことがわかります。
台湾との貿易では、日本は1兆0281億円の貿易黒字を計上しているのですが、台湾からの輸入額が増えているがために、貿易黒字額は縮小傾向にあるようです。このことは、日台両国の経済の一体化が進んでいるという証拠でしょう。
実際、台湾の半導体メーカーTSMCは日本の熊本県に大規模な工場を建設するなど、とりわけ半導体産業における日台両国の産業の結合が進んでいることは見逃せないでしょう。
日韓貿易
最後に、韓国との関係についても確認しておきましょう(図表6)。
図表6-1 対韓貿易(輸出、2023年1月~12月、0.3兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 6兆5850億円 | 100.00% |
1位:機械類及び輸送用機器 | 2兆4869億円 | 37.77% |
うち半導体等電子部品 | 5356億円 | 8.13% |
うち半導体等製造装置 | 5255億円 | 7.98% |
2位:化学製品 | 1兆2853億円 | 19.52% |
うち有機化合物 | 3154億円 | 4.79% |
3位:原料別製品 | 1兆0677億円 | 16.21% |
うち鉄鋼のフラットロール製品 | 3574億円 | 5.43% |
4位:特殊取扱品 | 6188億円 | 9.40% |
5位:雑製品 | 4771億円 | 7.25% |
6位:鉱物性燃料 | 3396億円 | 5.16% |
うち石油製品 | 3320億円 | 5.04% |
図表6-2 対韓貿易(輸入、2023年1月~12月、0.3兆円以上の品目)
品目 | 金額 | 構成割合 |
合計 | 4兆3597億円 | 100.00% |
1位:機械類及び輸送用機器 | 1兆1574億円 | 26.55% |
2位:原料別製品 | 8793億円 | 20.17% |
うち鉄鋼のフラットロール製品 | 3546億円 | 8.13% |
3位:鉱物性燃料 | 7802億円 | 17.89% |
うち石油製品 | 7738億円 | 17.75% |
4位:化学製品 | 6815億円 | 15.63% |
日韓貿易は日本にとって貿易額ベースで5番目に重要であり、また、構造としては日台貿易とよく似ていて、日本からの輸出高は台湾と比べて韓国の方が多いですが、ただ、台湾との大きな違いがあるとしたら、韓国からの輸入高自体は台湾と比べて少ない、という点でしょう。
とりわけ、輸出品目については「モノを作るためのモノ」が多いことは間違いないのですが、輸入品目に関しては台湾と比べ、半導体等電子部品の金額は非常に少なく、このことから、とりわけ半導体産業における日韓両国の結合は強くない、ということが伺えます。
実際、日本にとっての対韓貿易の収支は2兆2254億円の黒字で、この金額は台湾の倍以上であり、それだけ日本が韓国から輸入する品物が台湾と比べて少ないということを意味しています。
中国、台湾、韓国の3ヵ国と日本の関係
このあたり、日本にとって台湾と韓国は「川上産業における川下産業への輸出相手国」という意味では非常によく似ているのですが、台湾企業が日本に工場を設けたことで、今後、日本にとっての重要性が「台湾>韓国」となってくるであろう可能性が高いことについては、十分な留意が必要でしょう。
いずれにせよ、総合的なランキングでいえば、資源高の影響もあり、豪州が貿易額で3位に浮上している格好ですが、産業的な結びつきという意味では中国、台湾、韓国の3ヵ国が日本にとって重要であり、そのなかでもとりわけ台湾の重要性が浮上してきているという構図が見えてきます。
こうした傾向が今後数年でさらに進展していくのかどうかについては、注目すべき論点のひとつといえるかもしれません。
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GIGAZINE 2024/01/30 韓国から中国へ15億円相当のアメリカ製チップが密輸されていたことが判明
https://gigazine.net/news/20240130-south-korea-china-smuggling-chips/
これって過去のフッ化水素絡みの事案の再現じゃないのですかねえ…
韓国当局がいち早く迂回輸出を検出した成果と見るか、構造的な仕組みは変わっていないと見るか…
米国政府は勿論、日本政府も経緯を精査して、現状の韓国がグループAに相応しいかの調査聞き取りと発表をしっかりやってほしいものだと感じます
21世紀生まれのミレニアム世代、ぼちぼち新社会人としての存在感が高まって来ているところでしょう。彼らはきっと日本経済新聞などあてにしなくなると当方は予想します。昔自称言論機関というものがあってだな、大陸進出をしきりに喧伝して日本を弱らせたのだよ。職場の老翁たちがそう語り継ぐことがあまねく普遍化して行くのではないでしょうか。
台湾と韓国の両国はまさに教科書通りの「加工貿易」ですね。まあ、加工貿易の本場は言わずと知れた日本な訳ですが。
加工貿易の成否を握るのは、その加工に必要な技術をいかに国内で確保するかです。知的財産の部分で海外に資金流出してしまうと、同じだけ原料を輸入して完成品を輸出しても、手元に残る利益は減ってしまいます。
この問題への対処は台湾と韓国の両国で結構違っていると感じます。地道に国内で技術を積み上げる台湾とパクり(対価の支払いを巧妙に逃れて技術を導入すること)の韓国と。まあ、手段を問わずという観点でどっちも有力な加工貿易を成立させる方法ではあるのですが。
あと、加工貿易は付加価値をつけることこそが肝なので、陳腐化した商品生産はどんどん海外移転して、国内生産は高付加価値製品の生産に集中させなければなりません。生産の海外移転は、国内の手を空けるための手段であるとの認識は忘れがちですが重要です。シフトすべき高付加価値製品がないのに海外移転だけ考えてしまうからおかしなことになるのです。
あと、加工貿易国はどんな国とも交流をうまく出来なければいけません。日本は軍隊を持たず、どこの国にも上から目線にならず誠実に、を実践しているからこそ、ごく少しの例外(1民族2か国)を除いてはいい関係を保っています。中国ロシアも「立場変われば人(国)変わる」であまり気にすることないです。
台湾は加工貿易国として日本に匹敵するレベルまでくると思います。ライバルだけど敵じゃない。そんないい関係が続くと思います。
日台産業は相補関係にあります。日韓はそうではありません。彼らは日本社会と日本産業をそうは見ていないのです。台湾側国内世論に注目すれば台湾はその事実を深く理解していると分かります。
「日本は軍隊を持たず」などと信じているのは日本人だけで、他の国はそんなこと信じていないと思いますよ。「自衛隊」と呼び名を変えていても、世界でも有数の軍隊です。日本は米国、ロシア、中国という大軍事国に囲まれているのであまり目立ちませんが、トップテンに入るぐらいの軍事大国です。
>日台産業は相補関係にあります。日韓はそうではありません。
垂直統合が当たり前だった半導体製造に水平分業の新境地を切り開いたTSMCを連想しました。
既に立志伝中の人物で知られた話ですが、台湾当局から世界に互す半導体産業の立ち上げ要請を受けたモリス・チャンは、台湾の既存リソースでは上流の設計は難度が高すぎるため、要は台湾の特徴を生かすために製造請負特化を目指したそうです。
当時は垂直統合が当たり前の時代だし、台湾当局も当初は垂直統合産業を目指していたそうですがその方針を受け入れたそうです。
モリス・チャンというシリコンバレー育ちの傑出した人物によるところは大だとしても、台湾当局の柔軟さにはその文化が表れているのかと思いました。これが韓国だったらどうだったろう、と考えてしまいました。丸パクリで安く売る考えに収斂したのではないかと。
AMD CEO の Lisa Su 蘇姿豐、Nvidia CEO の Jason Huang 黃仁勳はどちらも台湾出身者ですし、TSMC の Morris Chang 張忠謀はほんの最近 MIT でアルマニ講演もしている。
自分たちは世界をぶっちぎろうとしている。台湾人はよく分かっているのです。
TSMC や ASML の興隆はスーパー301条により日本産業がお取り潰しの目に遭ってからの話です。結果からいうと当時は危機感が足りませんでした。国際分業論の美辞麗句に酔っていた誰かさんたちはほとんど戦犯では。
なるほど、80年代のTSMC創業の時からそれを狙っていたと。
>MIT でアルマニ講演
この意味を教えていただけますか? 単に言葉の意味がわからないだけです。
卒業者が母校講演することの意味で使いました。
Youtube 動画は
TSMC founder Morris Chang on the evolution of the semiconductor industry
で検索すると掛かります。
>母校講演
ありがとうございます。
>なるほど、80年代のTSMC創業の時からそれを狙っていたと
狙っていたもなにも、アジアの経済地平線をすっかり変えたプラザ合意とスーパー301条が四小龍の飛翔を決定的に、大陸中国の興隆を可能にしたのです。台湾人はちゃんと事実を理解できている、事実はただそれだけです。
>この問題への対処は台湾と韓国の両国で結構違っていると感じます。
*同じ命題(組立立国からの脱却)を持つ両国の意識の違い。
台湾では、部素材の供給国を慕うけど、
韓国では、部素材の供給国は下請けだ。
・・。
韓国は「”負荷価値”の追求者」みたいですね。「儲けは仕入に有り!」なのにですね。
上の議論の中で、TSMCなどの台湾勢、興隆の萌芽は1980年代にあり、との話がありました。
彼の華為、設立は1980年代前半です。未だ改革解放も宣言されていない時に設立されています。そして、今や、携帯電話の基地局の通信機器のシェア世界の50%超。又、TSMC無くして世界の半導体供給は成り立たず。
何か、中華人には、世界の動きのコアが見えるのですかね?
通信機器に関して言えば、米国も日本も欧米諸国にしても、穴でしたね。どこの国にも有力メーカーが無い。
産業向け通信機器メーカー業界を調査されるといいといいと思います。
華為の通信機器はシスコのぱくりです。もっともほかの会社すべてがそうです。シスコは買収テクノロジーで大きくなってきた会社。どの製品ラインが以前はどの会社のテクノロジーだったかをそらんじることから業界修業が始まります。
華為が自信をつけたのは H3C からです。Huawei-3COM の合弁会社です。一時期 HP は H3C 製通信機器を販売していましたが、黒歴史とされ記録から抹殺されています。
問題の根幹は H3C 通信機器が国家級のスパイ装置だったことです。国際インテリジェンス界のひとたちは話さない。
まあ、そんな経緯はどうでも良くて、最終的に、その分野にターゲットを定めて、強力な「ポジション」を得たという結果です。欧米日の企業でそこに狙いを定めて死活的な事業展開をした所があったか?という事です。通信事業の核心性に注目したか?という事です。
華為がなぜあれほど憎まれるのか。ディジタル監視社会はいちにちにしてならず。
広くは知られていませんが、自国生産通信機器需要はどの国にもあって、日本においても事情はまるで同じです。Wiki 知識程度で産業を語られては困るのです。
ま、ここまでにしておきましょう。
>もしかしたら製造業などが徐々に日本に戻ってくる動きが、今後2~3年のうちに観測されるかもしれません。
日本に戻ってきて誰が作るのかな? 日本の生産年齢人口は減少中。
ロボットでしょう。
ロボットと日本人だが?
東アジアの生産年齢人口の減り方は日本の比ではない。円安になっても、工場が出て行ってしまった今遅い!とか言って悲観マウントしてる奴らと同じ穴のムジナかな?
出生率 2022年
日本:1.26
中国:1.09(おそらく本当は1を切ってる)
台湾:0.87
韓国:0.78
シンガポール:1.05
香港:0.8
「製造業 国内回帰」で検索すると、こういうページが引っかかりました。パナソニック、ダイキン、キヤノン等の記事があります。
https://newswitch.jp/keyword/detail/22723
覗いてみると、自動化、ロボット化という言葉が出てきます。単に海外の工場を国内に戻すのではないようです。
ロボットといえば、興味本位で国際ロボット展を見学したことがあります。2021年の記憶ですが、三次元カメラとAIを使ってランダムに置かれた対象物を的確に操作したり、柔らかい食品を扱ったり、人と同じラインで協働したり、動向に詳しい方はご存知でしょうが、門外漢の私には、こんなことまでロボットが? この会社がロボットを?と驚きの連続でした。
また、物流の省力化、省人化の為の、産学官共同プロジェクトによる物流拠点向けのデモも印象的でした。
ロボット展2023年のサイトでは、学生さん向けの紹介ビデオも視聴出来ます。
https://robomates.jp/chersi/
ファナックさんの紹介ビデオを見ると「深刻な人手不足の解決策として…協働ロボットを展示」だそうです。
貿易で気になっているのは、中国の経済崩壊です。
昨日も中国株式市場は上海で▲1.83%、深セン▲2.32%、香港▲2.3%の下落でてした。不動産もバブル崩壊、EVの先行きも不透明。
インドやベトナムに生産移転しても中国の補完はできないと思う。
日本に工場移転して、労働輸入しかないのかな。
日本の核国への輸出額を見て気が付いたことを一つ。
化学製品と原料別製品の割合を見てみると面白いことが。
対中貿易輸出 29.18%
2位:化学製品 3兆1552億円 17.76%
3位:原料別製品 2兆0293億円 11.42%
対米貿易輸出 14.09%
2位:化学製品 1兆4911億円 7.36%
3位:原料別製品 1兆3642億円 6.73%
対豪貿易輸出 0%
なし
対台貿易輸出 29.65%
2位:化学製品 1兆0735億円 17.84%
3位:原料別製品 7106億円 11.81%
対韓貿易輸出 35.73%
2位:化学製品 1兆2853億円 19.52%
3位:原料別製品 1兆0677億円 16.21%
30%前後を占めている中国、台湾、韓国が何を多く作っているかというと「半導体」です。
つまり、化学製品や原料別製品に半導体製造のための材料が多く含まれているのではないかと思われます。
例えば、シリコンウエハーの世界最大の生産国は日本で、全体の約半分を占めています。
その他の半導体製造のための材料も多くが日本で製造されているという事実があります。
具体的な材料とその日本のメーカーについてネットで探したところ以下のサイトがありました。ご参考まで。
https://handotai-gyokai.com/semiconductor-materials-share/
実相を捉えておく事は大切でしょう。
台湾は、日本から仕入れて、独自の(製造などの)技術で付加価値を付けている。
韓国は、技術も製造技術も真似が多いので、付加価値は余り付かない。
中国は、大方が合弁企業で、日本本社と現地会社との企業内取引が多い。
こんな印象があります。貿易と言っても、内実は、企業間取引が国の統計として集計されているのですから、実態は夫々でしょう。