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災害直後に現地入りする行動は「動く千羽鶴」=ネット

軽率にも地震直後の被災地入りした山本太郎氏らに対し、最近、ネット上では「動く千羽鶴」、「歩く千羽鶴」といった表現が見られるようです。なるほど、言い得て妙です。千羽鶴といえば「役に立たないもの」、「送られて迷惑なもの」の代名詞のようなものだからです。その一方、ネット上では明らかなデマなどに対し、それを修正するような動きも出ていることは、心強い限りです。

「千羽鶴は日本の伝統…送り手の気持ちも尊重して!」

地震などの災害に際し、被災地に絶対に送ってはならないもののひとつが「千羽鶴」である、という点については、当ウェブサイトでもこれまでさんざん指摘してきたとおりです。

なかには、『尊重すべきは「送り手の気持ち」でなく被災地のニーズ』などでも紹介したとおり、「千羽鶴は古くからの日本の文化」、「たしかに千羽鶴は実用的ではないかもしれないが、それでも送り手の気持ちも尊重されるべきだ」、などとする意見もあるようです。

「送り手の気持ちを尊重せよ」とは、なかなかに斬新な意見です。

ただ、そもそも千羽鶴を被災地に送りつけるという風習自体、「古くからの日本の文化」などでは、断じてありません。これについては以前の『千羽鶴を贈ることは本当に相手のためになるのですか?』などでも詳しく議論したとおり、昭和中期から平成期にかけて発生した極めて新しい奇習のひとつです。

またしても「千羽鶴」が暴走し始めたようです。今度のターゲットは、ロシアの軍事侵攻に苦しむウクライナ大使館だそうです。これについて考える前に、そもそも千羽鶴とはいったい何なのか、そして広島市がその対応にどう苦慮しているのか、さらには「支援を受ける側」が望むであろう「善意の発露」とはいったい何なのか、少し立ち止まって考えてみませんか?暴走する千羽鶴日本には「千羽鶴」という文化があるようです。折鶴といえば、色鮮やかな折り紙で鶴を表現する、日本人なら知らない人はいない文化です。そして、千羽鶴とは、そ...
千羽鶴を贈ることは本当に相手のためになるのですか? - 新宿会計士の政治経済評論

それに、千羽鶴自体が被災地でまったく役に立たないことはほぼ間違いありませんし、それどころか、これまでの多くの被災経験者、ボランティア経験者らによる証言によれば、、千羽鶴はむしろ現地にとって、大変な迷惑となることに関しては間違いないでしょう。

動く千羽鶴

いずれにせよ、ただでさえ被災地は道路事情が極端に悪化していて、物流すらも災害対応で混乱しているわけですし、自治体職員や避難所を支えるスタッフの手も限られているわけですから、災害支援において最も慎まなければならないのが「送り手の自己満足」です。

災害時の貴重なリソースを、何の役にも立たないだけでなく、場所を取るような折り鶴の束で浪費させることは避けなければならないのです。

ただ、「送り手の気持ち優先」、「現地のニーズ無視」という態度は、この「千羽鶴」に限られるものではありません。そして、こうしたなかで最近のネット上では、「動く千羽鶴」ないし「歩く千羽鶴」、といった表現が出て来ているようです。

なにのことかといえば、れいわ新選組の山本太郎代表のことだそうです。

山本氏といえば、災害直後の被災地に入り、松葉杖をつきながら現地で2日間滞在。岸田文雄首相に対し「現場を見ろ」などと強く批判を加えた人物です。

山本太郎氏 「現場を見ろ」被災地視察控える岸田首相を猛批判 自身は松葉杖で能登入り2日間聞き取り

―――2024/01/09 11:16付 Yahoo!ニュースより【デイリースポーツ配信】

その山本氏の行動については隣国のメディア『朝鮮日報』などでも取り上げられ、実際、災害発生からかたくなに現地入りしない岸田首相と比較されているほどです(『韓国紙、防災担当でない政務官を「平穏な日常」と批判』等参照)。

言質のリソースを浪費させた山本氏

ただ、考えてみれば、これも大変に迷惑な話です。

今回の能登半島地震では、ただでさえ地形が入り組んでいて、交通が不便な能登半島の各所で、道路が寸断され、多くの集落が孤立し、支援が滞るなどしているわけです。

ここに地元民でもなく災害救助隊でもない人がノコノコと現地入りすれば、それだけ道路渋滞の悪化につながりますし、限られた現地の食料も浪費されます。少し下世話な話ですが、水洗トイレなどの設備も正常に機能しないことが多いことに留意しなければなりません。

当然、山本氏(やその支援者ら)が現地入りすれば、それだけで限られた道路容量がさらに逼迫してしまうでしょう。

この「動く千羽鶴」という表現にも、こうした点に対する批判が込められているのかもしれません。

千羽鶴を巡っては、「現地から必要とされていない」「役に立たない」のに「勝手に送り付け」られる、という批判はもともとネット上などで頻繁に見られたものだからです。

今回の地震に際してのデマとは?

いずれにせよ、今回の地震で見えてきたのは、特定野党に加え、むしろ一部の新聞、テレビこそが「デマを振りまいている」人たちである、といった実態でしょう。

こうしたなかで、働き方改革総合研究所株式会社代表取締役の新田龍氏が11日付でX(旧ツイッター)にポストした、こんなコメントについても紹介しておきましょう。

新田氏は「地震発生からの10日間で観測されたデマ、根拠のない批判などのうちの主要なもの」として、次のようなものを列挙しています。

  • 初動対応が遅い
  • 自衛隊初動1000人は少ない/逐次投入はけしからん
  • 政府はハイパーレスキューの出動を2日も止めていた
  • 震度速報に誤報があったのは不手際だ
  • 津波避難のアナウンスはヒステリックでパニック状態!
  • 志賀原発で変圧器の火災が! 冷却水の一部が溢れ出た、異常だ
  • 中国に忖度して台湾からの支援を断った
  • 被災地は大変な状況なのに、首相は新年会をハシゴした
  • 海外にはバラまいてるのに、被災地には40億しか出さない
  • 避難所の自販機をチェーンソーで破壊、飲料と金銭盗み避難所がパニックになった
  • 物資が運べないなら空中投下しろ
  • なぜヘリを使わないのか
  • なぜ岸田は現地に行かないのか
  • 被災地の道路はガラガラ
  • 特定非常災害指定が遅い/激甚災害指定が遅い
  • ヤマザキパンが国からお金をもらっている、癒着だ
  • 七尾市の職員が炊き出しを食べている…その分を避難民に配れ

…。

むしろ社会のネット化の威力が示された

どれも、ネット上で広範囲に見られたものですし、それらの一部は当ウェブサイトでも取り上げています。

新田氏はこれらの言い分(というか難癖)に対し、ひとつひとつ、何が間違っているかについてコメントしているのですが、これらの具体的な指摘に入る前に、こうも述べています。

大正時代の関東大震災後に発生したデマは『情報不足』『無知』『無理解』によるものと言われていますが、インターネットで誰もが簡単に情報を得られるようになった100年後の現在においても、いまだにこのようなデマを発信し、それらに踊らされている人たちが存在していることを考えると、暗澹たる気持ちになりますね」。

この指摘、とりわけデマを振りまいていた一部政党や一部メディアには、かみしめていただきたいところです。

ただ、今回の災害では、インターネットの「威力」がかなり示された、という言い方もできるかもしれません。

もちろんネットを通じたデマの拡散力というものは侮れませんが、それと同時にネット上のデマに対し、即時、専門家や一般人などからエビデンス付きで「それは違うぞ」という反論が飛んでくるようになったのです。

もちろん、ネット空間ですべての人が正しい情報を把握しているわけではありませんし、なかにはデマに騙されたままの人も少なからず存在するのですが、それと同時に、「信者」ではない大多数の良識的な国民は、こうした流言飛語には騙されないようになっているようです。

その意味では、私たちはいままさに、社会のネット上の威力を現在進行形で目撃しているのではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (43)

  • 確かにSNS上で余計なトレンドを作ったという意味で
    「現地」のリソースはもちろん「言質」のリソースを浪費させてますね。

    「う〇こする千羽鶴」
    を見つけた時は吹き出しました。

  •  頑なに千羽鶴を送る事にこだわる人の考えはよくわかりませんが、どうしてもというのならば。
     良い意味で"動く千羽鶴"として、支援に向かうトラックに千羽鶴モチーフのマグネットステッカーを貼るとか、支援物資の段ボール箱に千羽鶴を印刷するとか、邪魔にならずに気持ちも伝わるようにすれば、現地にも外野にも良いんじゃないですかね。精神面のケア、応援、象徴というのは無意味ではありませんから。
     ステッカーや印刷代を対策予算から出してしまうとそんなもの支援金にまわせ、となりますけど、千羽鶴活動をしたい人たちが別途負担すれば。
     負担したくない、鶴を折りたい、というのならばもうお手上げ。

  • 何故県は能登に来ないでくれと言っているのか
    理解できない人が多くて残念でなりません。
    道路事情が悪くプロの人員を急速に送らなければ行けないのです。
    こうした行動嬉々とし行っている人達に政権はなんとしても渡しては行けないです。

    余談ですがあれだこれだ根拠無く言うネット軍師様が見受けられますがその中で
    足らぬ足らぬは工夫が足りぬ
    といったばかりに精神論を垂れ流す人達がいます。
    日頃旧日本軍に罵詈雑言浴びせている人が同じ事言っているのは憐れみ感じます。

  • 悲惨な災害や、かわいそうな人たちを目にすると、矢も楯もたまらず
    「なにかしてあげたい」
    「しないと心も身体もがまんならん」
    てな状況なのですかねえ。

    そんなもん「我慢しろ」でオシマイかと。

    なんでお気持ちがそんなに大事なのか理解できませんし、理解を示すべきではないと思いますね。

    フィリップディック的に言うなら、感情移入能力こそが、人間を人間たらしめている訳なのですが、そんなこと言ってたらトリアージとか、てんでんことか、できませんわ。

    行政と違ってメディアは民間企業だから、実務的な報道に徹する義務も必要はないのですが、
    「邪魔してる」
    という自覚はもって読者をあしらっておいてほしいもんです。

    • 日本には、善意真理教とでも言うべき、善意至上主義の方々が少なからずおられるようです。「善意は尊重されるべき」はまだともかくとしても、「善意に基づく行動は崇高なものなのだから、絶対に尊重されなければならない」とか、「善意に基づく行動を非難するのは人でなしである」などと思い込んでいる人は少なくなさそうです。つまりは、「いかような状況や条件であろうと、善意によって行われた行動は常に正しい」という善意真理教の根本教義がそこにあるわけです。
      実際、千羽鶴を追って現地に送るという行為も、ほぼ間違いなく善意に基づくものであることを疑う余地はありません。だから、善意真理教徒の人たちからすれば、それを非難されるのは大変に不本意なことであり、「デモデモダッテ...」と抗弁しようとするのです。

      このような「動機に汲むべき点があるのであれば、どのような行動であっても非難するべきではない」という考え方は、実は226事件後の軍法会議において、首謀者安藤大尉などへの減刑嘆願が全国から多数寄せられたことにも表れていたりします。なんといっても、忠臣蔵が大ヒットコンテンツになる国ですからね、我が国は。

      • 忠臣蔵=ある程度の群衆熱狂を冷却する間をおいてから全員切腹。
        その結果、江戸から明治にかけてのモラルは高く保たれた。

        226事件=熱狂世論に配慮して情に棹さして流されまくった。
        その結果、太平洋戦争に突入して大惨事に。

        アホの言うことは聞き入れる必要なし。

        「理を通せ!」
        てのは、過去を反省しているからこその全体最適への指針なんですよねえ。

      • よいポイントを突いておられると思います。確かに我が国には「純粋」な「善意」となると、理非曲直がすっかりお留守になるという深刻な弱点があるように思われます。ユーラシア大陸の東の果ての、さらにその先の海の彼方にあって、我が国民(くにたみ)は「地獄への道は善意で舗装されている」という点に思い至るまで、歴史的に「スレて」いないのかもしれませんね。と云いつつも、欧米で猖獗をきわめているポリコレの動きなどみると、「アイツらも相変わらずダメだねー
        」などと思う今日この頃です。

  • 何故かどうしても千羽鶴にこだわる人のために、現実的な解決策を結構本気でお昼ご飯の合間に考えてみました。

    何もできないけれど、被災地のために何かしたいという子供たちが千羽鶴を折ったとして、それをそのまま被災地に送れば確実に迷惑になります。
    その場合、千羽鶴にこだわって無駄ではないと言い張る方々が、その千羽鶴を高額で購入して、その代金を被災地に贈る、というシステムがあればいかがでしょう。

    つまり、
    支援したい人がチャリティーで千羽鶴を出品する

    だれかが千羽鶴を購入する

    代金は被災地に振り込まれ、購入者には千羽鶴が届く

    といった感じです。
    勿論、詐欺などが起きうるので、間に公式な窓口が入って代金は公正に取り扱う必要がありますが…。

    • 同意しますが、別案です。
      千羽鶴を現金(紙幣)で折れば誰も文句言わないのではないでしょうか。醜い取り合いになるかもですが。

    • トンチの利いたアイデアは、とてもグッド。

      でもたぶんダメ。

      ①同和利権みたいに、自称可哀想な人たちがどこからともなく多量に現れて、千羽鶴の現金化を要求してくるかと。

      ②買い取り査定機関が、利権の温床になることでしょう。

      パッと素人でも思い付きますから、最低限これらをクリヤするワンモア工夫が必要ですね。

  • 幕末の新選組が激動する社会の中で何の役割も果たせなかったのと同じく、れいわ新選組もなにもできないばかりか迷惑行為は目立ってます。
    話題にはなるけど時代のあだ花であることは共通ですね。

    • 幕末の新選組は、不逞浪士が徘徊し、極度に治安が悪化した京において武装警察としての機能をはたしていました(時代のあだ花であったことは否定しません)けれども、れいわ新撰組は、少なくとも私の目から見ればただのピエロです。同じに扱ってしまうのは、ちょっと可哀そうな気もします。

      • 龍さまおっしゃるとおり、幕末の新選組は
        京の治安を守る役割は果たしていました。
        一方で、れいわ新選組 は、、
        「米帝日帝の中国侵略を許すな」(?笑)と
        主張する過激派中核派とは近しいと知られています。
        治安を守るどころか むしろ 外患誘致では(?)
        との声もあるぐらいの真逆のものでしょう。

        『ないわ 新セン組(センは土へんに川)』
        とのニックネームがしっくり来てしまいます。
                     (^^);

  • 日経クロステックの建築ゾーンの記事は、他の記事とは異なり有用に思いました。事実に基づく現状把握に徹しているように思いました。
    https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02706/

    そういった例外を除けば、下衆な連中の自己実現による下衆な連中のための下衆な記事という風にやっぱり感じてしまう。

  • 「動く千羽鶴」「歩く千羽鶴」。
    「増税メガネ」もそうでしたが最近のネット民は短いのにピッタリで容赦無い新語を編み出しますね〜。山本太郎氏も千羽鶴も迷惑なだけ。両方ともこれに懲りて欲しいものです。

    • 山本太郎は昨年の11月、岸田総理に「増税メガネと呼ばれている政治家をご存知か」と質問していたが、今度は与党側が「カレー食う千羽鶴と呼ばれてる政治家がいるらしいね」とでもコメント出せばいいですね。

    • 天皇両陛下も被災地の石川県・富山県・新潟県に見舞金を宮内庁を経て送られています。
      自民党国会議員、自民党地方議員、自民党地域後援会はパーティー券収入を脱税なんかしないで、被災地へ見舞金を送ってもらいたいですね。

      • 山本議員は今回の行動費用を当然の如く、政務調査費から支出するのだろう。これこそ、税金の無駄使いと思うけど、本人は全く思わないのだろう。

        両陛下の御気持ちを被災者の皆様に個別に渡したら、どんなに心強いだろうか。

        当方も細やかですが、携帯電話会社のポイント全てを被災地に寄付しました。各種ポイントは所詮はオマケと思うので寄付しやすいと思いました。
        TV局の青狸募金等々は、24時間テレビの前例があるので信用出来ないですね。
        コンビニやスーパーの募金箱は、不正が発覚したら、その店舗は以後、利用しないつもりです。
        ネットの監視も不正に対しては役立てこともあるように思います。

  • 「動く千手観音」ならばそれなりに有用かもしれませんが、「動く千羽鶴」ではね。

    • 動く千手 はなかったとしても、
      千羽鶴ならまだおとなしく静かで衛生的です。

      ところが彼とその取り巻きは
      無駄にけたたましく飛び周りフンまで撒き散らす
      ヒッチコック的な『喚く千羽カラス』
      といった感じに映ります。

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