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防衛1兆円増税巡り鈴木財相「剰余金等で財源を確保」

日本の財政にはおかしな点が多々ありますが、そのなかでも最も奇妙な点は、財務省が「おカネに色はない」という事実を隠蔽し、隙あらば増税を画策しようとしていることにあります。ただ、報道によれば、鈴木俊一財相は8日の会見で、例の「1兆円防衛増税」を巡って、財源は剰余金の上振れなどで「確保可能」との認識を示したそうです。

おカネに色はない

普段から当ウェブサイトで説明している内容のひとつが、「おカネに色はない」、です。

よく、「消費税は社会保障の財源となっている(から税率を下げることはできない)」、といった主張を見かけることがあります。これは形を変えた「減税しない」論のようなものかもしれませんが、明らかにおかしな発想です。

日本には特別会計(特会)などがたくさん存在するなど、国の財政の仕組みはなかなかに複雑ではありますが、基本的には税収は一般会計に組み入れられ、歳出も多くが一般会計から支出されます。

そして、国債発行収入は「公債金」という歳入項目に、国債の元利金償還は「国債費」という歳出項目に分類されるのですが、こうした処理は企業会計の世界からすれば「あり得ない発想」です。

たとえば「銀行からおカネを借りた」ときには、企業会計上、その借りたカネは売上に計上されることはありません。あくまでも貸借対照表上の「現金預金」と「借入金」の各項目が増えるだけの話であり、陶器の損益には影響を与えません。

また、「元利金を銀行に返した」ときは、それとは逆に、返したカネのうち、利息に相当する部分だけが損益計算書(支払利息など)に計上され、元本部分は貸借対照表上の「借入金」項目が減るだけです。

トータルとして見ることが大事

会計学的な立場から見れば、いわば「借金」を「歳入」と「歳出」に入れている時点で、かなりズレているのですが、「ズレている」のはそれだけではありません。

そもそも目的税でもない限り、調達した税金は一般財源を構成するのであり、そこにあるのは「トータルとして歳出」と「トータルとしての歳入」がです。

こうしたなか、少し古い話ですが、ちょうど1年前の『税収3兆円増えているのに「1兆円の増税が必要」の怪』でも取り上げた、「防衛費1兆円増税」の話を思い出しておきたいと思います。

岸田文雄首相はいわゆる安保3文書を制改定し、(遅まきながら)防衛費を今後5年で倍増させるなどの方針を打ち出したのですが、その際に財源として1兆円を増税で賄う方針を検討するよう指示した、などと報じられました。

ここ数年、毎年のように税収が数兆円規模で上振れしているなかで、さすがにこの「1兆円増税」には無理があります。正直、国家の財政についてはすべてにいえるのですが、一般に減税すれば経済成長しますし、経済成長すれば勝手に税収も勝手に増えるからです。

鈴木財相「1兆円財源追加確保」

こうしたなか、遅ればせながら、こんな話題が出てきました。

防衛財源、剰余金上振れで「1兆円超を追加確保」=鈴木財務相

―――2023年12月8日 09:06 GMT+9付 ロイターより

ロイターの記事によると鈴木俊一財相は8日、閣議後会見で記者団に対し、例の「1兆円財源」を巡って、「6月以降の精査で2022年度の一般会計や外為特会における決算剰余金の上振れ」により「確保が見込める状況」と述べた、というのです。

さすがに税収は過去最大が続いており、上振れが見込まれる状況です。この「1兆円増税」の筋の悪さが明らかとなり、これ以上に誤魔化しきれなくなった、ということでしょうか、あるいは「増税するためのもっと他の要因を思いついた」のでしょうか?

【参考】税収は過去最大が続いている

(【出所】財務省)

日本国民vs財務省

もっとも、財務省は放っておけばすぐに増税しようと画策しているフシがあります。

財務省は最近だと「ザイム真理教の総本山」などと呼ばれることも増えていますが、この国の主権者は財務省・財務官僚ではなく、あくまでも日本国民です。

日本国民がインターネットを手に入れ、ネット上では日々、経済の専門家らが財務省のウソを暴露する言説を活発に投稿するようになりました。

その意味で、「日本国民vs財務省」の戦いは、まだ始まったばかりなのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 私は毎年10月ごろに翌年度の予算を立てる。
    たとえば翌年の支出はざっと360万円。一方収入は年金の330万円だけ。
    30万円足りない。足りない分は乏しい貯金を取り崩す。いつまで取り崩せるのか心配だ。
    翌年になったら支出は予算通りだが年金額の改定があり340万円になった。ラッキー。
    増えた10万で旅行をしよう。貯金の取崩しは予定通り30万円。
    これが岸田の言っている税収の上振れを還元して減税をということなのだろうか。

    来年孫が高校進学する。もしも私立に進学すると月2万円、年24万円は援助しなければならないだろう。少なくとも3年間は続く。これを貯金の取り崩しでやると心細い。
    いい年をして、恥を忍んで何かアルバイトをさがそうか。
    これが岸田の言っている防衛費のための増税なのか。

  • 「おのれ愚民どもめ、余計な知恵をつけやがって!」

    マスコミの怒り方と全く一緒ですね。

  • 日本国民vs財務省
    もっとも、財務省は放っておけばすぐに増税しようと画策しているフシがあります。

    財務省は最近だと「ザイム真理教の総本山」などと呼ばれることも増えていますが、この国の主権者は財務省・財務官僚ではなく、あくまでも日本国民です。

    日本国民がインターネットを手に入れ、ネット上では日々、経済の専門家らが財務省のウソを暴露する言説を活発に投稿するようになりました。

    その意味で、「日本国民vs財務省」の戦いは、まだ始まったばかりなのかもしれません。

    ここ最高でした。今のアンミカ騒動といい、日本人が自虐史観など負の遺産から脱皮しようとしてるのを感じますね。

  • 「やっぱり無かったから防衛費は削減な」の前振りでしょうねえ財務省ですし。

  • 罪人「ホレ、もっと活入れて増税しろ」
    危地「ほいほい、なんでも仰せの通りに」
    末路「政治家は無税、庶民からは毟ればいい」
    阿呆「あ、そう」

  • 財務省の唱える「国の借金」なるものが、国の貸借対照表で国債はしっかり「負債」として計上される一方、その有力な貸方であり、実は相当の資産増に成功している身内である日銀の財務状況については。知らぬ顔で無視を決め込み、「資産」の項目にそれが顔を出さないように細工が」なされていること、また過去の国債発行を通じてこれまで回して来た経済活動の結果として恒常的に生じている経常黒字、そしてその一部として積み上がっている外為特会の増加額についても、これまた貸借対照表に含めないなど、数々のトリックを用いた末の過剰宣伝であることは、最近、自称「山手線の駅名を冠した金融評論家」を初めとする多くの経済金融専門家によって論駁されてきています。

    これらのほとんどはネット記事。意識的に探す人でなければ読めないし、さらに新聞テレビなどの論調とも比較して批判的にその優劣を判定できる人でなければ、そこに含まれる論旨を納得するには至りません。おそらく数にしたら、未だオールドメディアの論調を鵜呑みにする人の方が多そうです。しかし、最近のネット上のやり取りを見ていると、「Z」だの「Zのポチ」だのと、○務省、○経新聞を、根拠まで挙げた上で嘲弄するような内容のものが、日々増えてきている印象を受けます。

    指弾される彼らとて、おそらく足元が徐々に掘り崩されていることには気付いてはいるでしょう。そして彼らがこれまで自らに付与されていると信じ込んでいた「権力」というのが、実は選挙という国民の審判を受けたものでも何でも無い、過剰の楼閣に過ぎなかったことに、今更ながらうそ寒い思いを感じ始めているのかも知れません。

    防衛増税、子育て支援目的の社会保険料値上げを目論む財務省にとって、いきなり減税などととち狂ったことを言い出した、「自我に目覚めた?」岸田首相は最早用済み。そこでキシダ下ろしを仕掛けたなんて巷説が出回っていますが、もしそれが本当で、バレてる上にそれでもやらかしたとなったら、「一体何様のつもりか」と、それこそ国民の怒りはむしろ自分達の方に向くんじゃないかと、今になって躊躇し始めたんじゃないでしょうか? 

    この度の鈴木財務大臣の、防衛財源、剰余金上振れで「1兆円超を追加確保」発言は、隠し資産のほんの一部とは言え、これまで頑なに予算の原資には使えないとしてきた「剰余金」が、十分来年度予算の防衛費増に回して余りあるものであることを認めた、言わば財務省がここに来て急に「日和った」ことを示しているように思えます。批判的な国民の目からこれ以上事実をごまかし切れなくなった末の、苦渋の決断ということであれば、サイト主さんご愛用のフレーズ「利権の3法則」の第3法則…利権は保有者の怠惰や強欲で自壊する、の端緒ともなりうる事象、まことに痛快事とすべきかも知れません。

    ついでながら、政治、経済分野で親中反日の論陣を張る横綱級のオールドメディア、朝日新聞と日経新聞が、このところやたら中国に批判的な記事を掲載し始めています。まあ、現今の情勢下、中国アゲアゲ記事なんか書いたら、それこそ馬鹿にされるだけでしょうが、それもネット世論への対抗が難しくなってきていることの、ひとつの現われでしょうか?

      • 「(自信)過剰の楼閣」でよろしいのではないでしょうか。最後は崩れてしまうのはお約束で。

  • 30年の税収のグラフはなかなか味わいがありますね。

    30年国のGDPの成長率が2.5%あったらGDPは2倍になり税収も2倍だったのにね。

    一般財源の内訳の消費税の割合が高すぎてびっくりするね。
    税金の本来の目的は富めるものからそうでないものへの所得の分配だったはずなのにね。

    このグラフから見ても、消費税率が上がるたびに消費税の税収の平行移動が顕著になっているね。
    ここ数年の急激な上昇は消費税が物価上昇に連動していることを表しているよね。
    消費税が全体の3割超えてますね。所得税の総額を抜くのも近いですね。
    所得の再配分は行われないようですね。

  • グラフを見れば所得税と法人税、減り続けてますね。
    代わって増えてるのは、「消費税」です。

    そういうことです。