萩生田光一・自民党幹事長が「原油高は恒常的になっていて、脱炭素なども考えるとある程度の金額には国民にも慣れていただくことが必要」と述べた。まったく、けしからん――。そういう反応が、X(旧ツイッター)などで溢れています。ただ、事実関係を冷静に調べていくと、萩生田氏がそう述べたと報じているのはTBS1社のみであり、しかも萩生田氏本人がそう述べているシーンはありません。これをどう見るべきでしょうか。
暫定税率部分を廃止すればガソリン価格は27.61円下がる
現在話題のガソリン税にかかる「トリガー条項凍結解除」とは、減税(暫定税率部分の廃止)によりガソリン価格を引き下げるべきだ、とする議論です。
この「暫定税率」のもとでは、ガソリン1リットルあたり25.1円が課税されています。本則税率が28.7円、その他諸税あわせて56.6円、というわけであり、レギュラーガソリンがリットル当たり税込み187円で販売されていたとすると、逆算してガソリン本体価格は113.4円です(図表)。
図表 ガソリン価格の内訳
項目 | ℓあたり |
ガソリン税(本則税率) | 28.7円 |
ガソリン税(暫定税率) | 25.1円 |
石油石炭税 | 2.04円 |
温暖化対策税 | 0.76円 |
上記合計 | 56.6円 |
ガソリン本体価格 | 113.4円 |
消費税・地方消費税 | 17円 |
小売価格 | 187円 |
※税額 | 73.6円 |
(【出所】当ウェブサイト作成)
つまり、あなたがガソリン1リットルを購入するために支払う187円のうち、ざっと4割にあたる73.6円が税金であり、もしガソリン税を本則税率に戻せば、暫定税率25.1円プラス消費税等2.51円、あわせて27.61円、今すぐ下げることができるのです。
「取って配る」の構造か?
もっとも、このガソリンの本体価格が113.4円、という点にも、複雑なからくりがあることは事実です。
全国のガソリン価格がリットルあたり170円以上になった場合、1リットル当たり5円を上限に、燃料油元売りに対して補助金が支給されているからです。トリガー条項凍結を解除し、暫定税率を廃止した場合には、財源の問題から補助金制度をどうするかという問題が(おもに財務省あたりから)出てくることも間違いありません。
個人的にはこの手の「税として取り上げてから補助金として配る」という仕組みには非常に強い嫌悪感を覚えていますが、ガソリン価格も典型的な「取って配る」の構造だといえるでしょう。
萩生田氏の発言に怒り殺到!?
さて、本稿で取り上げておきたいのは、こんな話題です。
萩生田光一政調会長がガソリン価格を巡り、「原油高は恒常的になっている」、「脱炭素なども考えると、ある程度の金額には国民にも慣れていただくことが必要」、などと述べた――。
これが、X(旧ツイッター)に投稿されるやいなや、X上では萩生田氏に対する非難で溢れ返っている状況となりました。
なかには著名人の方がXで「国民に喧嘩売ってどうするの」、「それなら、政治家の給料も国民の平均収入くらいにして、国民の生活感覚に慣れるべきじゃないの?」、などと綴った、などとする反応もあったようです。
「青汁王子」三崎優太さん、「ガソリン高に慣れてもらわないと」自民党政調会長の発言報道に「国民に喧嘩売ってどうするの?」
―――2023年12月2日 21時41分付 中日スポーツより
たしかに、この萩生田氏の発言、国民感覚からすると、なかなかに非常識です。
というのも、ガソリンにはさまざまな税金(ガソリン税・本則税率、ガソリン税・暫定税率、石油税、消費税・地方消費税など)が課せられており、ガソリン価格を高止まりさせている原因のひとつが税金だからです。
「ガソリン価格を押し上げている要因が暫定税率だ」、とする立場からすれば、この萩生田氏の発言には、イラっと来ることは間違いないでしょう。
発券したのはTBSの動画のみ
ただ、不思議なことに、萩生田氏がそのように発言したという記録がなかなか見つかりません。
記事によれば、この発言は「民放の報道番組で報じられ」たものだそうで、探してみると、TBS NEWS DIGが11月30日付で配信したこんな動画に行き当たります。
問題のナレーションは、これです(動画の0:36~)。
「このガソリン価格を巡り自民党の萩生田政調会長は、『原油高は恒常的になっていて、脱炭素なども考えるとある程度の金額には国民にも慣れていただくことが必要』との考えを示しています」。
ただ、動画では萩生田氏が記者団に対して何かを喋っている様子が映されているのですが、肝心の萩生田氏がそのように述べる場面は出てきません。
しかも、この「原油高は恒常的になっていて、脱炭素なども考えるとある程度の金額には国民にも慣れていただくことが必要」、とするくだりを検索してみても、TBSによるものを除いて、そのように報じているメディアは見当たりません。
果たして本当に萩生田氏はそう発言したのでしょうか?
いずれにせよ、当ウェブサイトでは萩生田氏が本当に「ガソリン価格に慣れていただく必要がある」と述べた、という可能性を完全に排除するつもりはありませんが、ただ、現実に萩生田発言を報じたメディアがTBSくらいしかないという点は、ひとつの事実として踏まえておいて良いでしょう。
View Comments (10)
マスコミは「時は今」とばかりに清和会潰しに「何でもアリ」モードに入ってたりして。
モリカケでっちあげ失敗敗退の
雪辱戦モードなのでしょうなあ
仰る通り、取って配るのは確かに嫌悪感しかない。
中央の力の源泉こそが取って配るであり、
自民党が一番上手くそれをやるのでしょう。
ガソリン税とは、目的税で、その目的とは、道路整備。
以下の、参照先の説明によると、
・ガソリン税とは。ガソリン税の内訳や暫定税率、消費税について
(チューリッヒ保険)
https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-whatis-gasoline-tax/#:~:text=%E3%82%AC%E3%82%BD%E3%83%AA%E3%83%B3%E7%A8%8E%E3%81%AE%E4%BD%BF%E7%94%A8%E7%9B%AE%E7%9A%84,%E3%81%AB%E5%89%B5%E8%A8%AD%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
上記リンク先からの引用:
「ガソリン税の税率には、本則税率とされる税率がありますが、道路財源の不足を理由にしてさらに上乗せされた臨時の税金があり、それがガソリンの暫定税率と呼ばれるものです。
ガソリン税の暫定税率は、本則税率の2倍で長期にわたり継続し、道路特定財源として道路を作り続けるしくみとなっていました。
しかし、いつまでガソリン税の暫定税率を続けるかについての見なおしにより、2010年4月に廃止されました。
ただし、同額分の特例税率が創設され、25.1円分の暫定税率分は現在も徴収され、使用目的も道路財源ではなく、一般財源に充てられています。」
ということで、暫定是率部分は、2010年から「一般財源」になっているようです。
日本は、もうそんなに沢山道路を作る必要が無くなったということでしょう。
一方、ガソリン諸税の税収額は、
・燃料税収、21年度は過去20年で最少 先細り確実で課税懸念も
一般社団法人 日本自動車会議所(2022年5月24日)
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/17486/
これは、自動車諸税の総額とガソリン諸税の総額についてグラフに描いてあるようだが、ここからは、ガソリンの暫定税率の部分は、年間1兆円に近い、数千憶円程ではないか?と推量される。
この1兆円という数字、最近の隣国との為替だか通貨だかのスワップ額、100憶ドルに近い。
隣国やその他の国への援助には、気前よく、これ位の金額をポンと出しているのに、国民からこの程度の金を巻き上げるのに、必死になるというのは、何か釈然としない。
いや、この数千億円で、ガソリン価格が1L当たり、25.1円も下がれば、どれだけ国民の生活が楽になるだろうか?
そして、その経済効果も大きいものがあるのではないだろうか?
何か、国民に優しくない感じがしないか?
萩生田氏がそのような発言をしたのが事実なら鈴木財務相とともに「小学校」からやりなおしてほしい
22年1月〜23年9月までの補助金総額 6.2兆円
トリガー条項発動による税収減 1.5兆円
トリガー条項を発動して該当しない「灯油等」に補助した方がマシ
萩生田は、将来の総理候補とも思ってましたが、統一教会の一件以降、すっかり腑抜けになりましたね。何か弱みでも握られたのでしょうかね。
個人的にはTBSの捏造だと思いますが、やっぱりこう言う発言にはイラっとします。
(TBSの思惑通りで面白くないです)
ただ、それを否定している萩生田の発言も知りませんし、反論しないという事は、認めたも同じだと思います。
取材している他のメディアから音声データとか出てきて欲しいですね。
本当に言ってたのであれば、TBSをある程度見直します。
本当は言ってなかったのであれば、もう停波しましょうって思います。
萩生田氏を潰すよりTBSを潰した方が日本国と日本国民のためになる。
と、思ってしまいました。
そうそう
もう一つありました。
NHK(日本犯罪者協会)
さすがに詳細な数字ありがとうございます。
ちなみに「EVの方が電費がいい」などとおっしゃってる一部の方たちが知らないか、あるいは知ってて無視している税金でもあります。
歪んでない税金も少ないですがその中でも歪みきってるこの謎の税金に関する謎の運用についての突っ込み記事は大好物です。