X

前原氏ら離党の国民民主への影響はそれほど大きくない

前原新党の実情は、所属議員5人のうち3人が衆院比例復活組であり、離党された側の国民民主党にとってもじつはあまり打撃は大きくないのではないか――。こんな可能性が濃厚になってきました。こうしたなか、報道によると国民民主党で1日、臨時両院議員総会が開かれ、前原氏らへの厳しい処分の声が多数を占めたようです。「雨降って地固まる」、でしょうか。

前原新党の5人中3人は比例復活組

キャリアで振り返る「前原誠司」』では、前原誠司氏が国民民主党を離党し、新党を結成したことに関連し、前原誠司氏のこれまでの「キャリア」に焦点を当て、この「前原新党」の実情を探ってみました。

そのうえで、「前原氏について当ウェブサイトで取り上げるのもこれっきり、という可能性もあります」、などと申し上げたのですが、一点、補足したい話題が出て来たので、さっそく「続報」です。

ただ、この前原新党について、実情は「探る」もなにもありません。結論的にいえば、この政党自体、門出の段階で疑問符が付くからです。というのも、所属している国会議員5人のうち、3人が「比例復活組」だからです(図表)。

図表 「前原新党」の所属メンバーの概要
国会議員(敬称略) 選挙区 備考
前原誠司 京都第2区 党代表
嘉田由紀子 滋賀県 参院、党副代表
徳永久志 滋賀第4区→比例復活
※惜敗率83.119%
立憲民主党を離党
斎藤アレックス 滋賀第1区→比例復活
※惜敗率86.278%
国民民主党を離党
鈴木敦 神奈川第10区→比例復活
※惜敗率28.630%
国民民主党を離党

(【出所】『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』をもとに作成)

前原新党のままだと先行きは見えない

比例復活のロジックは、こうです。

全国11のブロックごとに、比例代表における政党ごとの得票数を計算し、これを「ドント方式」で各政党に配分。同一順位では重複立候補している候補者のうち、惜敗率が高い順番に当選者が決まる、というものです(※ドント方式については栃木県選挙管理委員会『Q ドント方式とは何ですか?』等参照)。

前原新党に参加した5人のうち、国民民主党を離党した議員は4人で、うち衆議院議員は3人ですが、うち2人が比例復活組です。また、立憲民主党を離党した徳永久志氏も、やはり比例復活組です。

このあたり、制度設計論としては、「比例復活組」は離党したら議席を返上させる仕組みが望ましいのではないか、などと思えてならないのですが、これに関してはとりあえず脇に置きましょう。

正直、この「前原新党」のままだと、先行きは見えません。

もし今すぐ衆院の解散総選挙が実施され、各政党所属候補者の得票数がほぼ前回通りだとすれば、徳永久志、斎藤アレックス、鈴木敦の3氏は小選挙区で当選できないだけでなく、比例復活もほぼあり得ません。さすがに「前原新党」が近畿や南関東などのブロックで比例当選できるだけの票は獲得できないでしょう。

そうなると、考えられるとしたら、前原新党が來年1月1日基準日で支給される政党交付金を「持参金」として、日本維新の会あたりに合流することくらいでしょうか。

国民民主党では「厳しい処分」求める声も…

こうしたなかで、産経ニュースに1日、「前原新党」結成を受け、国民民主党が臨時の両院議員総会を国会内で開いた、などとする記事が掲載されていました。

国民民主、「前原新党」結成表明を受け臨時総会 厳しい処分求める声が続出

―――2023/12/1 16:20付 産経ニュースより

産経によると「出席者らからは前原氏らに対し除籍を含む厳しい処分を求める声が相次」ぐ一方、党執行部側は(前原氏らが内容証明郵便で送付したと説明している離党届が)「まだ党側に届いていない」と説明したのだとか。

じつは国民民主に打撃は少なく、維新合流の可能性も低い?

ただ、もしも国民民主党の比例代表での得票数が前回並みだとしたら、斎藤氏と鈴木氏が離党したことで、同党は両氏を除く他の2人を国会に送り込むことができます。つまり、国民民主党にとって4人が離党したとしても、次の衆院選で2議席はさっさと回収できることになるのです。

つまり、もしも「前原新党」が維新に合流しようものなら、(そして前原氏以外の3人が再び小選挙区で落選し、比例復活するなら、)彼ら3人が維新に合流することで、維新は比例代表で当選するはずだった3議席を彼らに取られる、ということでもあります。

常識的に考えて、とくに前回惜敗率が30%にも満たなかった鈴木氏を含めた彼らを維新が受け入れるようにも思えません。

それに今回の件で国民民主党側も「前原グループ」がいなくなることで却って結束が強まるのだとしたら、それは結果的に「雨降って地固まる」、となるのかもしれません。

いずれにせよ、当ウェブサイトとして国民民主党を擁護するつもりも応援するつもりもなく、また、「前原新党」を非難するつもりもありませんが、「数字で見た客観的事実」だけで述べるなら、やはり前原新党は大失敗に終わる可能性が、現時点では濃厚ではないか、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 新党が「”非”国民民主党」などと揶揄されなければいいですね。
    (他意は、ありません。)

  • 個人的には、排除すべき不純物が減圧蒸留とか超臨界抽出とかRO膜などの手間をかけるまでもなく、
    「さよなら」
    と勝手に自分から分離してくれたので、国民民主党からすれば結果オーライに見えますけどね。

    事前に察知できなかった執行部からすると
    「ブルータスお前もか」
    の失態かもですが。

    居座るつもりのお荷物を強制排除するのは大変ですから、それが自分から出ていってくれたのは、ある意味で僥倖つか超ラッキーでしょう。

    ツイてます。
    よい星の巡りをもってます。

    在日さんたちや不法入国さんたちも、前原を見習って
    「こんな日本には居てられません!」
    とか、どうですかね。

    流行語大賞に、滑り込みでどうぞ。

  • >維新は比例代表で当選するはずだった3議席を彼らに取られる

    そういやそうですね。当落ラインの議員は嫌がりますかね。
    でも執行部はできるだけ候補者を建てられる選挙区を増やしたいみたいですから、歓迎なような気もします。衆院の3人の選挙区は支部長立ててないみたいですし。
    総選挙一回やってロンダリングするのかな・・・どうなんだろ。
    低みの見物します。

      • 嘉田由紀子氏は元滋賀県知事でしたが、国会議員では能力発揮できないと思います。

        故に、前原新党は消滅するかもしれない。そろそろ引退の時期ですね。

        • その書き方だと滋賀県知事としては能力を発揮していたように読めますね.
          いえ,別に他意はありませんが.

  • 多分維新に合流するのでしょう。候補者は選挙区を調整するのでしょうね。
    維新にとっては、次回衆院選の候補者数が増える以外にメリットは無さそうですが。
    維新合流後の前原氏が気になります。野党間で候補者の調整をやるべきだとか言っていますので。鈴木宗男議員の二の舞にならなければ良いのですが。

  •  私は、前原新党は、いずれ維新に合流すると見ています。
     また、かなり先になるかもしれませんが、立憲民主は衰退していき、維新と自民の二つの勢力争いになると見ています。
     自民党を認めつつも自民党に飽き足りない勢力は、いつもそこそこいて、彼らの選択肢が、自民か維新か、になるのではないか、と考えています。もちろん百田新党が、維新に取って代わる可能性も充分あります。
     いずれにせよ、岸田政権だけは早く退陣してもらいたい。

  • >それに今回の件で国民民主党側も「前原グループ」がいなくなることで却って結束が強まるのだとしたら、それは結果的に「雨降って地固まる」、となるのかもしれません。

    これが、全てではないですか?

    比例で当選したものは、何の戦力にもならない。
    次回選挙で、取り返せる数。

    選挙区で当選した2人は、選挙区で勝った者だとしても、政治家としての実力は無しだから、党に貢献する力は無い。
    しかも、力が無いのに、プライドだけは高くて、注目されたがり屋。
    こんなのは、いない方がいい。

    よって、「地固まる」の効果がある。
    今回のことは、雨が降ったことにもならない。
    つまり、どこにも誰にも、何の影響も与えないから、小雨少しパラついた程度。

    維新に関して言えば、比例で当選した人間なんか要らないし、選挙区当選の2人の内、1人は次回当選するかどうかは分からない人物。
    1人は、当選するだろうが、1人位なら要らない。人物に問題があるから。

  • 前原離党が果たして「雨降って」に相当するほど大層なことでしょうかね?w
    真に怖いのは手強い強敵ではなく無能な身内、とも言いますし、玉木氏にとっては獅子身中の虫をパージできたのは僥倖でした。
    あとはしっかり「除名処分」までやっておくことが肝要。

    前原の維新との合流は最初から既定路線でしょう。維新は滋賀が手薄なところに、独自候補を立てるという建前に前原一味は丁度よいピースになるので。当選するかどうかは別問題ですがw