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民放テレビ局中間決算、スポンサー離れの影響が鮮明に

テレビCMの減少が続いているようです。在京5局と大阪の朝日放送(ABC)の合計6局の親会社に関し、最新の中間期決算短信のセグメント開示を調べてみると、どの社もメディア・コンテンツなどの事業において、減益となったことが明らかになりました。フジ、ABCについては単体で営業赤字です。テレビ局は事業多角化を図っているためか、多少の減益でただちに経営に影響が出るというものではありませんが、それでもテレビ業界からのスポンサー離れが続いていることは間違いなさそうです。

民放6社の中間期セグメント開示

テレビ局の経営状況が、なかなかに厳しくなっているようです。

在京民放5局(フジ、日テレ、TBS、テレ朝、テレ東)と大阪の朝日放送の6局に関し、その親会社(ホールディング)の決算短信から「メディア・コンテンツ事業」などのセグメント開示を調べてみると、どの社に関しても、2023年9月期は前年同期比減益だったのです。

これを一覧にしたものが、図表1です。

図表1 民放親会社のメディア・コンテンツ事業等の中間決算(2023年9月期、カッコ内は前年同期比)
会社略称 外部顧客売上高 セグメント利益
フジ 2122億円(+132億円) 41.6億円(▲20.5億円)
日テレ 1807億円(▲39億円) 150.4億円(▲31.1億円)
テレ朝 1102億円(▲8億円) 11.7億円(▲37.4億円)
TBS 1416億円(+31億円) 18.6億円(▲24.8億円)
テレ東 457億円(▲23億円) 5.8億円(▲18.8億円)
ABC 358億円(+11億円) ▲7.3億円(▲11.4億円)

(【出所】各社決算短信。なお、会社略称と各社のセグメント名称の対応表は、図表2のとおり)

図表2 会社略称と各社セグメント名称の対応表
会社略称 会社名 セグメント名
フジ 株式会社フジ・メディア・ホールディングス メディア・コンテンツ事業
日テレ 日本テレビホールディングス株式会社 メディア・コンテンツ事業
テレ朝 株式会社テレビ朝日ホールディングス テレビ放送事業
TBS 株式会社TBSホールディングス メディア・コンテンツ事業
テレ東 株式会社テレビ東京ホールディングス 地上波・BS放送事業
ABC 朝日放送グループホールディングス株式会社 放送・コンテンツ事業

(【出所】各社短信等をもとに当ウェブサイト作成)

増収の社もあったがすべて減益

これは、なかなかに驚く結果です。

6社のうち、「メディア・コンテンツ事業」ないしこれらに準じる事業が増収となっているのが3社ありましたが、セグメント利益だけで見たら、6社すべてが減益であり、しかも朝日放送(ABC)に至っては営業損失状態にあります(連結決算で9億92百万円の営業損失)。

また、フジテレビに関しても、グループ全体では営業利益を確保しましたが、単体決算で見ると営業赤字に転落しており、決算説明資料(※PDFファイル、P19)によると、「フジテレビジョン」の営業利益は1億73百万円のマイナスでした。

テレビ業界全体が、徐々に厳しい状況に陥りつつある、ということです。

共通しているのはCMの出稿量の減少

この点、営業損失となったABCの短信を読むと、こんな趣旨の内容が記載されています。

  • 放送・コンテンツ事業の売上高は、主力のテレビスポット収入等が減少となったものの、コンテンツ関連の収入の増加等により収入を伸ばしたことで前年同期比増収となった
  • (しかし)テレビ番組制作やコンテンツ制作にかかる費用の増加等により営業費用が増加した結果、営業損失に転落した

また、単体決算で営業損失に陥ったフジテレビに関しては、決算短信にはこんな趣旨の記載があります。

  • 株式会社フジテレビジョンは、物価上昇の影響等によるテレビ広告市況の悪化や視聴率の苦戦により主力の地上波テレビ広告収入が振るわず、放送・メディア事業は減収となった

ほかにも、日テレ、テレ朝、TBSなどの短信でも、この「テレビの広告収入の減収」が減益要因として挙げられているのですが、興味深いのがTBSのこんな記載でしょう。

テレビ広告市況のスポット広告費における関東地区投下量は推計で前年同期比91.4%となりました」。

スポットCM投下量が前年同期比で、ざっと8%以上も減った、ということです。

この点、株式会社電通が毎年公表している『日本の広告費』というレポートによれば、テレビ広告費は最近、(コロナ禍の2020年を別とすれば)おおむね横ばいが続いていた格好です(図表3)。

図表3 広告費の推移

(【出所】株式会社電通『日本の広告費』等をもとに作成)

しかし、ここにきて企業のテレビ広告への出稿が減り始めているというのは、非常に気になる兆候です。

三重苦は続くのか

もちろん、多くの新聞社などと異なり、テレビ局の場合は早くから事業の多角化に取り組んでおり(たとえばTBSは不動産事業が好調です)、多少の減益でただちに経営に深刻な影響が生じるというほどに不安定なものではありません。

しかし、今回のセグメント開示の内容自体、当ウェブサイトで以前から指摘している「三重苦仮説」――テレビ業界からの①視聴者離れ、②広告主離れ、③製作者離れ――を部分的に裏付けるものであることは間違いないといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • 良質な記事、いつもありがとうございます。
    会計士様の経済記事はそのまま、マスコミや財務省に毒されたザイム真理教信者達に対する特効薬に使えるレベルです。

  • (別に民放テレビ業界に限った話ではありませんが)テレビ局は、画期的な方法で業績を回復してくれることを願って、業界外部から社長を招くことを(少なくても)検討しないのでしょうか。(もちろん、それでかえって業績が悪くなることもあります)

    • 横から失礼します。個人的意見としまして、彼らは自分たちを正義のジャーナリスト(笑)、不正をただす正義の味方、権力に抵抗する正義の獅子というゆがんだプライドの持ち主ばっかりが集まったのがマスゴミというものだと思っています。そんな連中が自分たちと違う意見ややり方をしようとする人を中に入れたいと思うでしょうか。

  • テレビを見る人が少なくなっているー>広告を出しても効果が小さいー>広告予算をテレビから他の媒体(インターネットとか)に移す。
    これが原因でコマーシャル収入が減っている。
    一方テレビを見るのは高齢者だー>高齢者が買いそうな商品を扱う会社の広告が増えるー>膝が痛い、肩が痛いに効くサプリメント、補聴器、老眼が進んでもつまみを回せば調節できる老眼鏡、薄毛を隠すかつら、墓所等々のコマーシャルがすごい勢いで増えている。

  • 民放はバラエティー番組が多すぎる。CMが多く番組を見ていられない。テレビの映画はアニメが多く外国の映画がなくなった。

    NHKは同じニュースと天気予報を一日中流している。紅白だけお金を投入しても視聴率が下がっている。

    テレビの視聴者離れの原因を解消しない放送局は淘汰されます。

  • スポンサーがつかないとテレビはどのようになるか?
    例がある。地上波イッツコムテレビは渋谷のビルの上からのライブカメラで景色を流している。
    TokyoMXは猫がじゃれてる映像を流していた。

  • 決算書に詳細が書いてあるのかは分からないが。
    2000年からずっと、TVの広告費は横這いで、ネットの広告費は急増している。
    TVの広告費は、横這いなのに、TV局の利益は減少傾向にあり、マイナスの局もある。
    これは、広告費単価を下げて、広告時間を増やして、広告収入の総額は維持しているが、経費増の分はカバー出来ていないという事なのか?
    最近のTV番組(ネットの見逃し配信を視聴)は、芸人とアイドルのバラエティ番組と質の劣化したドラマ(本気で作る気あるの?)ばかり。
    見逃し配信でも、広告は流れているが、それがどれだけTV局の広告収入に寄与しているのか?上記の決算内容から見ると貢献度は低いようだ。
    いずれにせよ、コンテンツのレベルが年々下がり続けているのだから、経営が上向く事はない。
    ネットフリックスなどのネット配信専門企業も伸びているし、番組はそちらの方が断然面白い。
    TV局、早く無くなって欲しい。低俗な番組しか作れず、報道と言えば、偏向報道ばかり。これは、社会的存在価値あるのだろうか?

  • いくら不動産など副収入があるとしても、本業が赤字になったらどこまで耐えられるのか?
    スポンサーも広告主もいつまでもお金を出してくれる訳ではないし……

    新聞とテレビ、どちらが先に「もうだめだ」になるか、とても興味深い。

    • その両者だったら、まずは新聞じゃないでしょうか?あと十年持つかどうかというレベルですからね。地方局は意外と早くアレしちゃうかもしれませんがww

      • 確かに新聞が明確に部数減少と言う形で寿命が見えているのに対し、
        テレビの方は視聴率が下がりこそすれどまだ寿命が見えてこないんですよね。

        ジャニーズ騒動をはじめとする最近の不祥事連発でも新聞に比べると
        ダメージが少ない様に見える……

        もしテレビ側が新聞よりも先に倒れるとするならば、「NHKスクランブル化」
        「動画サイト視聴の一般化」など何かしら劇的な起爆剤が必要でしょうかね。

  • 業績回復見込みなし、清算廃業予備軍ということで、年々減って行く新社会人たちに一顧とされない産業のひとつなのは間違いありません。

  • 民放各社は民間企業なのですから、お金さえ出してくれるならスポンサー企業の国籍などどこでも良いこと。
    今はまだ番組制作者を汚染させているレベルで表には出ていないようですが、
    そのうち真生の特亜スポンサーが隠しだてすることなくCM流したり、番組コンテンツ自体を提供するようになるのでは?

    • 末期にはそうなるかも知れませんね。ただそうなると、そこまでいっても
      テレビを見続けてくれる層は相当限られてくるでしょう。

      スポンサー側が「支払った金に見合った影響力がない」と判断したら
      それまででしょうし、一時しのぎで終わるのかなあ?

  • 今日のテレビで言ってたけど例のチャリティー番組、出演タレントはちゃんとギャラもらってるとのこと。
    どこがチャリティーだよ。

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