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相次ぐテレビ関係者の着服は「業界の構造問題」なのか

「日本テレビ系列の『24時間テレビ』で募金の着服事案が発生した」。「読売テレビで幹部職員が下請け会社を通じて不正請求を行った」。相次いで、こんな話題が目に付きました。テレビ業界では、着服がひとつのトレンドなのかもしれません。そして、これらが氷山の一角ではないと、誰が断言できるのでしょうか。

相次ぐ着服

テレビ業界では、着服がひとつのトレンドなのかもしれません。

というのも、いくつかのニューズサイトで、こんな記事を見かけたからです。

読売テレビ 「カミオト夜」担当の管理職社員が1383万円の不正請求で懲戒解雇処分 番組は年内で休止

―――2023/11/28 14:05付 Yahoo!ニュースより【スポニチアネックス配信】

「24時間テレビ」募金着服でチャリティー委員会が声明「全額の回収、同額の補填強く求める」

―――2023年11月28日 14:57付 東スポWEBより

前者は大阪の読売テレビで28日、40代の男性管理職従業員が飲食費用などを番組制作会社に不正請求させる行為があったとして、同従業員を同日付で懲戒解雇処分にしたうえで、上司を減給処分などとした、とする話題です。

また、後者は日本テレビ系『24時間テレビ』を巡り、系列地方局の元幹部従業員が募金の一部を着服していた、などとするもので、『24時間テレビチャリティー委員会』が28日、『お詫び』と題した声明を出した、などとする話題です。

『24時間テレビ』は『お詫び』をひっそりと公表

正直、元サラリーマンの身としては、どちらもにわかには信じがたいものです。

とくに『24時間テレビ』は「チャリティ」などと銘打って、一般視聴者などからの募金を福祉、環境、災害復興などに支援を行うという名目のものであり、募金者からの善意で成り立っているものだと考えると、なかなかに悪質だという見方もあります。

しかも、この『お詫び』は、(少なくとも現時点で見る限りは)日本テレビ『24時間テレビ愛は地球を救う』のサイトではなく、「公益社団法人24時間テレビチャリティー委員会」のサイトに、わかりづらくひっそりと掲載されているのみです。

メディアは政治家の不祥事に際しては舌鋒鋭く批判するわりに、自分たちの不祥事にはだんまりを決め込む傾向があるというのは、いかがなものでしょうか。

下請けを通じた不正請求

ただ、個人的に興味深いのは、『24時間テレビ』の件よりも、前者の不正請求の件です。

読売テレビは『24時間テレビ』と同じ日テレ系列の放送局ですが、組織内の内部統制と従業員不正という観点からは、なかなかに驚くからです。

あくまでも報道ベースですが、手口はこうです。

  • 40代男性管理職従業員(以下「X氏」)が飲食した際の領収書を毎月まとめて番組制作会社(以下「A社」)に対し渡す
  • A社はX氏から預かった領収書を番組の「追加演出費」に上乗せして読売テレビに請求。読売テレビはA社に「追加演出費」を含めた経費をA社に支払う
  • A社は領収書の合計額と同額を現金でX氏に支払う

…。

よくこんな行為をA社が受けたものです。

A社にとっては不利益こそあれ、利益など何もないからです。

A社自身がX氏の業務上横領に「共犯者」として関わっていることになるほか、消費税法上は仕入税額控除が効かない、法人税法上は使途不明金ないし使途秘匿金として重加算税の対象となり得ます(X氏も多額の現金をA社から受け取っていた場合、所得税の申告漏れという可能性が出てきます)。

記事によると今回の不正が発覚した直接の原因は、番組経費が毎月の予算を大きく上回る状態が続き、経理局が精査したからだそうです。

ここから先はあくまでも想像ですが、番組を制作しているA社は読売テレビの下請けという立場にあり、X氏の機嫌を損ねることがあってはならない、などとする判断から、やむを得ず、こうした不正に手を染めていたのではないでしょうか。

テレビ利権はどうなる?

そうなると、これは単にX氏という個人の不正ではなく、テレビ業界自体の構造的な問題がもたらした事件だ、という可能性も出てきます。下請けの立場としては、どんな理不尽な要求であっても断ることが難しくなることもあるからです。

とりわけテレビ業界は、典型的な利権業種でもあります。

これに関し、当ウェブサイトでは普段から、利権というものにはだいたい3つの原則が成り立つと述べています。

それは、利権は「理不尽な仕組み」であり、「外から壊すのは難しい」という特徴があるものの、それを持っている者の強欲や怠惰で、案外あっけなく自壊したりするものだ、というものです。

利権の3法則
  • 利権の第1法則…利権は理不尽な仕組みである。
  • 利権の第2法則…利権は外から壊すのが難しい。
  • 利権の第3法則…利権は怠惰や強欲で自壊する。

©新宿会計士の政治経済評論

テレビ業界も、電波利権という強固な利権を持っていて、下請け会社としては電波利権を持っている得意先には逆らえません。

今回の事件についても、「氷山の一角ではない」と、いったい誰が断言できるのでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (26)

  • >テレビ業界自体の構造的な問題がもたらした事件だ、

    直接関係はないかもだけど、放送業界の下請け企業に対する扱いについての資料があったので載せておきますね

    下請け企業からの価格交渉に応じたか?価格転嫁を受け入れたのか?って観点で整理されたものだけど、27業種の中で放送コンテンツは24位と26位だったそうなのです♪

    中小企業の価格転嫁に関する調査結果(速報版) 価格交渉促進月間(2023年9月)フォローアップ調査
    https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231128005/20231128005.html

    • 資料を眺めてて頭に浮かんだコントなのです♪
      実際にこんなことが行われていないことを願うのです

      制作会社)良い映像を作るには良い人材が必要なんです。なによりも、社員の生活を守るためにも労務単価を上げて下さい(;´人`)
      放送局)バカなことを言わないで下さい。そんなことして生活が楽になっちゃうと、政府の物価高対策の不備を追求できなくなるじゃないですかヽ(`Д´)ノ

    • パワポ資料、面白かったです。いろいろ示唆に富む資料でした。
      原材料費の比率が高く、人件費の比率が低い業種ほど価格転嫁率が高い・・・賃金上昇のハードルは相変わらず高そうです。

      3問題児の一つ「放送コンテンツ」は、業界規模が縮小中でもありますしね・・・泣きっ面に蜂。

      • 元雑用係様

        返信ありがとです♪

        交渉に応じたけど価格転嫁には応じなかった3問題児は労務費の割合が高いってそうなのです♪
        労務費の適正価格って算出が難しいってのはわかるんだけど、それでも労働にはお金を払いたくないって意識が透けて見える気がするのです♪

        ちょっと飛躍しちゃうけど・・・
        人材不足と言いつつ人にはお金を出さないって、ブラック企業体質が濃いんだろうなって思うのです♪

  • こういう時に、とばっちりを受けるのが、直属上司から上2階級上位までか?
    管理責任を問われて、問責を受ける上に、出世の道が閉ざされたりする。何しろ、ライバルは沢山いるのだから、少しのマイナスも響くことになるかもしれない。
    上司も、部下を良く見ておいて、何か変なことやっていないかをチェックすることが必要な時代かもしれない。部下の不審な点が分かったら、さっさと人事異動で自分の下から外すことがよいだろう。自分の下にいる時に発覚すると、例え前任者の時代にやっていたことでも、形式上、管理責任を問われるのは現上司になるのが、組織の成り立ち。
    ネット時代、案外こんなことは、バレることが多くなるのかもしれない。
    管理職も安穏としていられない。

  •  どっかの政党が、熊本地震の募金をそっくり懐に入れてたって話もありましたね。
     公金チューチューと言い、他人のカネを最初から自分のモノのように躊躇いも無く湯水のように使うのはパヨクの性癖なんでしょうか。

  • 番組制作会社Aの社長Bはテレビ局時代Xの後輩。
    XからBに「Bちゃん、こないだ一緒に行った六本木のクラブの請求書、ちょっと会社には請求できないんだよね。何とかなんないかな~」
    「わかりました、例のXさんの番組経費に混ぜて請求しておきます。任せてくださいよ」
    「わるいね~、今度は銀座連れて行くからさ。」
    こんな感じかな? 人をチャン付けで呼ぶところなんかいかにも業界っぽいでしょ。

  • >経費が毎月の予算を大きく上回る状態が続いたため経理局が精査。
    もしも請求される経費が予算内に収まっていたら精査されなかったんだろうね。
    下請けとグルになられたら発見は難しいということ。
    テレビ業界なんかこんな話いくらでもあると思う。

  • 募金、献金みたいな類は全てマイナポータル経由でさせるとか、マイナンバーと紐づけてその気になればインとアウトが付き合わせられるような形が理想なのかも
    不正の温床でかつ不正の悪どさが許せませんね

  • 製造業的に言えば、あの業界にはPDCAサイクルのC(チェック)のプロセスが存在しないから、不適合が排除されず居残り続けるのですな。

    経費をチェックしない。
    誤字をチェックしない。
    証拠をチェックしない。
    効果をチェックしない。

    寄付のネコババなんざ、祝儀や香典のネコババと同じくらいに、
    「絶対にやられる」から
    「絶対にやらせない」対策してて当たり前。
    (だから普通は受付を誰もやりたがらない。)

    チャリティーイベントは、その警備費用だけでも採算に合わないから、普通の感覚だと余程でないと企画せんだろうに、自分からヤロウヤロウとするからには、余程オイシイからでして。

    道義的には社長の首を飛ばしてもよい話かと。
    軽い人たちですなあ。

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    テレビ局:「テレビのチャリティーは、テレビ局員のためのチャリティーである」
    これって笑い話ですよね。

  • 先ほどテレ朝で24時間テレビの募金着服事件をやってた。
    テレビ局の不祥事だからスルーしちゃいたいところだけど「善意の募金の着服」だからそうもいかない。
    集まった募金は「賽銭」のように銀行に持ち込むまで正確な金額がわからず、持ち込むまでの1-2日はテレビ局の金庫に保管してあったらしい。この金庫のカギをもっている経理部長の仕業。
    こちらは防ぐ方法はあったはず。たとえば募金をケースや封筒に入れて封緘するとか。
    テレビ局に保管せずに銀行の夜間金庫を使うとか。

    • >この金庫のカギをもっている経理部長の仕業。

      こういう犯罪予備軍の不良社員を炙り出す為に、撒き餌をしたのかなぁ?これも、リストラの方法だっりして。
      これからは、囮リストラがあるかもしれない。

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    日テレ:「来年から24時間テレビに代わりに23時間テレビを始めます」
    これって笑い話ですよね。

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