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「子持ち様」への怒りの裏側にある「保育園発熱問題」

いいかげん、「37.5度問題」に本腰を挙げて対処せよ!

X(旧ツイッター)に、とあるユーザーが、「子持ち様」に対する強い不満をポストしました。子持ち様が「『お子が高熱』とかいってまた仕事を休んだせいで私の仕事は1.3倍になった」。ずいぶんとお怒りです。その怒りを向ける対象は上司や経営者ではないか、といった点は脇に置くとして、現実問題、小さい子供は頻繁に発熱します。ここで改めて37.5度問題と病児保育の使い勝手について考えてみましょう。

とあるユーザーの強い不満

子供を持ちながら働くのは、ずいぶんと厳しい時代なのでしょうか。

先日、X(旧ツイッター)で「子持ち様」というワードがトレンドに上がっているのに気づきました。該当するポストのひとつは、こんな具合です(X上でバズを起こしていますが、本稿ではポスト者の情報は伏せたうえで、表現についても少し修正して部分的に引用します)。

  • 子持ち様が「お子が高熱」とかいって、また急に仕事休んだ。そのせいで、部署全員の仕事が今日1.3倍ぐらいになった。私は自分の1.3をこなし切ることが出来ず、頭を下げて0.1を人にふった。そもそも私のせいじゃないのに、なぜ私が他人に頭を下げているのかわからない
  • 「子どもは日本の未来。子どもを産んでくれている人たちには感謝すべき」みたいな風潮あるけど、なんで?その分、国から子ども手当とか貰っているんじゃない?全国民が感謝する筋合いはないよ
  • 子持ちの人が「子どもが高熱で…」って仕事に穴をあけるから、しょっちゅう私たちが1.3倍の仕事したりするのに、彼女の仕事がいつも1.0なのはなんで?

…。

ずいぶんとお怒りですね。

ツッコミどころは多々あるが…

「児童手当はちょっと所得が上がるとすぐ所得制限にひっかかってもらえなくなる」、といったツッコミはとりあえずしないでおきましょう。また、子供を持つのも持たないのもそれぞれの人々の自由なので、子供を持つこと・持たないことが良い、悪い、という話でもないことは付言しておく必要はあるでしょう。

また、このツイート主の別のポストによると、この方の職場では7人で仕事を回しているのだそうで、1人が欠けた場合、単純計算で仕事量が1.3倍になるのはおかしい、といった指摘もあるようです。単純計算だと、仕事量は1.17倍になるはずです。

これに加えて「スジ論」からいうならば、従業員の立場であれば、職場のメンバーが突発的に仕事を休むことで生じる負担についての不満を述べるべき本来の相手は、その「子持ち様」本人ではなく、その職場の上長ないし経営者でしょう。

ただ、こうした細かいツッコミどころは脇に置くとして、この人のいう「子持ち様」という表現には、「自分の都合で仕事を突発的に休むことで周囲に迷惑をかけている」という点に対する当てこすりが込められていることは間違いありません。

あえてこのユーザーの気持ちに忖度(そんたく)して申し上げれば、「子供を持つというのはその人の『選択』(?)なのだから、その『お子』が勝手に発熱して勝手に休むのもその本人の責任だ」、といったところではないかと思います。

そもそも37.5度で預かってくれない

このように考えると、子育てをしながら働くのは、意外と大変です。

正直、子供が小さいうちは、すぐ熱を出すからです。

ちなみに多くの場合、37.5度の熱が出れば、保育園は預かってくれません。自宅療養が基本となります。

もし子供はそこそこ元気でも、熱がギリギリ37.5度、という状況が続けば、保育園には登園できません。頼れる両親や親戚が近所に居ればまだ何とかなるのですが、そうした親戚がいない人は、必然的に仕事を休んで面倒を見なければならなくなります。

また、多くの保育園では解熱してから24時間は登園できませんので、もし保育園にいるときに、たとえば月曜日の午後1時ごろに37.5度以上の熱が出てしまった場合は、すぐにお迎えに行かねばならず、しかも次回登園できるのは早くても2日後、水曜日です。

月曜日の午後1時から起算して24時間後は火曜日の午後1時ですが、多くの保育園では給食の関係もあり、当日の受入は正午までとされているため、結局、火曜日には登園できないのです。

必然的に、親は月曜日に半休を、火曜日に全休を取らなければなりません。たった1回の発熱で、1.5日も有休を使ってしまう(または欠勤状態となる)、というわけです。

病児保育の使い勝手の悪さ

さて、どうしても仕事が外せない場合には「病児保育」を使う、といった手段もないわけではないのですが、とある東京特別区のケースだと、病児保育を使うためのは、以前に医師による診断書が必要であるほか、オムツだ、着替えだといった細々した用品を準備しなければなりません。

たとえば出勤時間が朝9時、通勤にかかる時間が保育園から30分だったとすれば、子供を8時半までには預ける必要があります。しかし、子供が急に発熱をしたときは、子供を医療機関に受診させ、医師の診断書を準備したうえで、その病児保育施設に電話して空きがあるかどうかを尋ねる必要があるのです。

酷い場合だと、施設によっては前日までの予約が必要で、当日利用が不可、というケースもあります。

要するに、「その日の朝、突発的に熱が出てしまった」というケースで、病児保育を使うのは難しいのです。

このあたり、よく熱を出す年頃のお子さんを持つ親御さんにとっては、「通常の保育園に病児保育を併設してほしい」、「もう少し使い勝手を良くしてほしい」、などと考える人は、意外と多いのではないでしょうか。

ちょっとした制度の改善でずいぶんよくなる(かも)

ただでさえ日本は勤労者からの税金、社会保険料を取り過ぎている国ですので、子供を育てるためには一生懸命働くしかなく、それなのに子育てをしていると保育園から頻繁に呼び出しがかかり、仕事もろくにできなくなる――。

ちなみに出産も自己負担が発生しますし、過去に存在していた年少扶養控除は民主党政権時代に廃止済み、ちょっと働けば社会保険料も取られ、所得税も住民税も取らるうえに、子育ての必需品である紙オムツには10%の消費税を取られるのです(ゴミのような紙には8%の軽減税率が適用されているのに)。

こんな国で子供を産み育てようとする人は、よっぽど物好きではないか、などと思えてなりません。

この点、世の中には「子どもを産んだら1000万円の手当を支給すべき」、などとする意見もありますが、著者自身はなにもそこまでする必要はないと思います。

少なくとも子育て用品を含めた食品・日用品に対する消費税率をゼロ%にするなども有益かもしれませんが、そもそも論として、とくに子供が小さいうちの支援を、「制度の使い勝手を改善する」という形で実施することは、さほど予算を掛けずに実施できるのではないかと思います。

とりわけ最近の少子化の影響もあってか、一部の自治体では、すでに保育園の「待機児童」が解消しているそうですが、そうであるならば、突発的な発熱という(おそらくは3~4歳ごろまでの)幼少期特有の事象には、社会全体としてもう少し効率的に対処できるようにすべきではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (26)

  • この問題は「いつ発熱するかわからない子供」vs「責任ある仕事、締め切りのある仕事、チームでやる仕事をしている母親」ということ。
    前者を解決できないのであれば後者で調整するしかないのでは。

    フレックスタイム、リモートワーク、短時間労働、子供が大きくなるまで他の仕事に一時的に異動。
    「言うは易し」かな。

  • 出生率 2023年(日本:1.26)

    中国:1.09(おそらく1を切ってると言われてる)
    台湾:0.87
    韓国:0.78
    シンガポール:1.05
    香港:0.8

    確かに、こう並べてみると東アジアは日本より明らかに酷い子育て環境の国ばかりですね。
    日本だけでなく、東アジアは子供に対する意識をなんとかしないとマジで滅びます。

  • 気になって調べてみたら、うちの自治体(富山市)は、病院併設の病児保育一日2000円で対応してるようです。共働きが確か日本一だかなので死活問題なんです。

  • こういう意見に賛同して、熱を出した子の親が、委縮して休みづらくなるような環境にしてはダメですね。気持ちはわからなくもないけれど。やはり文句を言うなら経営者や上司でしょう。

    で、経営者や上司がなぜ動かないかという事を考えれば、やはり制度に不備があると言わざるを得ないんじゃないかと思う。これは少子化対策につながる話だと思うから深く書きませんが、ホストやAV、LGBTなどに多額の税金を投入するくらいなら、もう少しお金の使い方を考えてもいいんじゃないかと思います。

  • 仮にこの投稿者が女性だとしていつかは自分もそのシステムに助けてもらう日が来るかもとか考えられないのだろうか?

  • 託児、放置子、子持ち様
    子供絡みの悪意ある言葉は沢山あります。

    何なら、上の言葉に撃退の文言を付けた物も多数見かけます。きっと害獣の類いなのでしょう。
    当然、親もそれらを気にします。

    挙げ句、
    熱があるのに黙って子供を登園させざるを得ず、園では非常識扱いされる。

    学校から帰って友達の家に遊びに行くと、非常識扱いされる。

    急いで仕事から帰っても、1人留守番させてると非常識扱いされる。

    正直、近所に父母が居ない家庭だと八方塞がりです。
    勿論、有給も子供関係の行事や突発でしか使えません。

    イザベラさん、いつから日本はこんな狭量な世の中になってしまったのでしょうね。

    • 核家族化とそれに伴う地域社会における地縁の薄弱化でしょう。
      でもね、現状を声高に憂う人が同じ口で地縁血縁の濃い助け合いが常態化した地域社会を閉鎖的な田舎と糾弾していたりするので…

  • 個人的には迷惑をかける側なので、申し訳なくは思います。

    先日は、小学校から「元気がなくて、体温が36.9度だった」と、担任から連絡を頂きまして。「保健室で休ませて頂き、様子を見て頂けませんか」とお願いしたら、「校内でインフルエンザが流行っていて、病院に行かれた方が良いのでは」と断られました。
    担任の主張も理解は出来ますが、朝は平熱でしたし、発熱してしばらくしないとインフルエンザかどうかの確認が難しい、という事実を考えると、「病院に行っても」と。
    結局、早退して病院に行きましたが、診断結果は問題なし。翌日は元気に学校に登校していきました。

    個人的に体験したことを一般化するつもりはありません。

    しかし、子育ては何かと大変であり、周りに迷惑をかけてしまう結果になったうえ、誰のせいという訳でもありませんから、冒頭の「子持ち様」に不満を持った方にも広い心をもってトラブルがあっても多少のことは甘受頂ければと思います。

  • 以下のコメントは、問題の根本解決についてということではないが。
    この問題、「制度の問題」と実際の「職場の問題」の2つの面があるように見える。そして、冒頭のX投稿は、職場の問題についてであり、その中身には「2つの観点」がある。
    一つは、周りの人間の仕事が増えるという「物理的な現実」と、それに対する仕事が増えた人の「迷惑感」という「精神的な問題」という2つの観点。
    このX投稿の中身のニュアンスには「精神的な問題」の色合いが強いように見える。
    制度や仕事の分量という物理的な問題解決には、それに要する社会的な、又は企業内での環境整備に時間とコストが掛かる。
    しかしながら、周りの人達の「精神的な問題」は、心の持ち様や物事の見方などによって、緩和されたり、逆にボランティア精神・お役に立つという貢献精神が産まれたりする。
    例えば、会社として、子育て中の社員には会社という共同体の中で、精神的にバックアップしようという雰囲気を作っていく、などして。現在、身体障害者の雇用が企業に義務付けられているが、これは、企業が制度的に雇用すれば済むという事ではない。やはり、一緒に働く周りの人間の優しいサポート精神が必要だ。
    子供が病気ではないが(知恵)熱を出すのは子育て中の2〜3年程なのだから、しかも、毎週毎月出るというものでもない。
    そういう子育て中の社員に対しては、職場として、サポートしようという雰囲気作りも、精神的な問題=周りの社員の感じ方の問題を緩和したり、積極的な貢献精神を育てたりすることになる。
    勿論、協力を受ける側も、いざという時に周りの協力を得易いように、普段の仕事において周りとの親和感のある仕事の仕方をして、周りの心理的なバリアがないようにしておくことも必要だ。

    • 精神的な痛みや迷惑感などは、感じ方の面も大きい所がある。感じ方で、心理的なものが緩和されたり、逆に積極的なお役立ち精神が生まれたりすることは多い。
      個人的な経験でもよくあること。いつも、ブスっとしている近い職場の中年男性がいたが、横をすれ違ってもこちらを見もせずブスっとした顔で通り過ぎて行く。それで、ある朝、こちらから、おはようございます、と声を掛けたら、満面の笑顔で返して来た。以降、会うと彼の方から笑顔で挨拶をして来るようになったし、その他の場面でもとても良い雰囲気で接することが出来るようになった。多分、その時、彼に頼み事をされたら心良く協力したと思う。お金を貸す以外は。
      武者小路実篤に、「仲良きことは良きことなり」という言葉がある。案外、職場の問題もその精神で問題では無くなることも多いのかもしれない。

  • 突然休まれる事が度重なると、いやな気分になると思います。
    待遇(給与)に少しの差をつけるのはいかがでしょう。
    少しは、ましな気分(諦めかな?)で働けるのではないでしょうか。
    職場の状況が許せばですが。

    • 事は有給休暇の消化にも見て取れますが、ギリギリの人員体制で廻している職場はそもそも意図的にこういった状況に対応できる冗長性を持たせていないので、「これは経営者が能無し」という認識を一般化する方向が是正の近道かもしれません。
      インターネット社会様様の方向性ではありますが…

  • ポスト投稿の内容から、急な休みとなった方のフォローをしているのに「感謝をされていない」ことへの不満ではないかと感じる。
    職場での不公平感に不満を覚えることは、決して不適切な物ではないと思う。

    上司からフォロー対応をしている部下に高評価を伝えることが効果があると思う。

    休んだ本人は都度フォローしてくれた職場の人へ感謝を伝える必要もあると思う。
    各自の仕事は責任を持って対応するものだから、それを代わりに対応してくれた感謝は忘れてはいけない。
    子育て対応で大変ではあるが、職場の円滑な人間関係を作るには必要なこともあると思う。

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