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中国人リピーターには「密かな日本旅行」が現在人気?

中国では「密かな日本旅行」が人気だ、とする記事が出てきました。中国政府が再び反日キャンペーンを仕掛けるなかで、SNSなどに積極的に投稿せず、密かに日本旅行を楽しむ中国人リピーターがいる、というのです。ただ、個人的な関心事は中国人の日本旅行動向もさることながら、それ以上に日本人が中国をどう思っているのかという「国民感情」だったりもします。

サイレントクレーマー気質?

あくまでも「俗説」かもしれませんが、私たち日本国民は、世界的にも、「あまり主張しない国民性」だといわれることがあるようです。

とりわけ、飲食店にせよ、ホテルにせよ、日本人は得てして、サービスになにか不満があってもその場で指摘せず、後になって口コミで「あのときはこんな目に遭った」、などと喧伝して回るという特徴がある、といった指摘です。こうした行動をとる人のことを、「サイレントクレーマー」と呼んだりすることもあるそうです。

ただ、こうした「サイレントクレーマー」ぶりを客観的に統計データなどで示せるのかといえば、そこは微妙でしょう。

実際、インターネットで「サイレントクレーマー」で調べてみても、発見されるのは、個人が運営していると思しき、「政治経済評論」と称する、見るからに怪しいウェブサイトに掲載された『イタリアと「サイレント・クレーマーとしての日本人」』といった記事くらいしか見当たらないのです。

ただ、著者自身は「日本人はサイレントクレーマー気質を持っている」とする説を信じており、とりわけいちど定着した悪印象というものは、滅多なことでは覆せないと考えています。

近年、日本人の中国に対する親近感は悪化の途を辿る

この仮説が正しいのかどうかは、日本人の中国に対する印象がどう変わるかを見極めてみるのが手っ取り早いかもしれません。これについてはこれから公表されるであろう内閣府の『外交に関する世論調査』と称する調査あたりが参考になるでしょう。

同調査はだいたい年1回公表されており、多くの場合は「その年の10月頃に実施した調査を取りまとめ、同年12月ないし翌年の1月頃に公表される」、というパターンが多いようですが、その実施・公表時期は、年によって多少のブレがあります。

いずれにせよ、ここ数根、中国に対する日本国民のイメージは悪化の一途を辿っていますが(図表)、今年は福島第一原発処理水を中国政府当局者が「核汚染水」などと罵倒し、中国本土からは日本各地にいたずら電話が相次ぐなどの「事件」もありました。

図表 日本人の中国に対する親近感

(【出所】内閣府『外交に関する世論調査』をもとに著者作成)

日本人の中国に対する印象がどう変わるか――。

すくなくとも昨年よりも好転する可能性が高いとは思えませんし、それ以上に「サイレントクレーマー」的な日本人の発想がどのような影響をもたらすのかは興味深いところです。

中国人の日本旅行はコロナ前には戻らず

さて、その一方で中国人は日本のことをどう考えているのでしょうか。

先日の『9月も訪日外国人は過去最多ペース:観光公害対策急務』でも報告したとおり、日本政府観光局(JNTO)のデータによれば、2023年9月に日本を訪れた外国人は4ヵ月連続で200万人を超えましたが、訪日外国人のうち中国人は3位で325,600人に留まりました。

コロナ前の2019年9月には819,054人の中国人が日本を訪れていたわけですから、ずいぶんと減ったものです。

ただ、中国では10月に国慶節という大型連休を迎えていたため、10月の訪日客は増加している可能性はあります(これについては11月15日に発表されるであろう10月分の訪日外客統計をみて判断する必要があります)。

こうしたなかで、ウェブ評論サイト『ダイヤモンドオンライン』に30日、こんな記事が掲載されました。

中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?

―――2023.10.30 12:00付 ダイヤモンドオンラインより

記事タイトルにもあるとおり、久々の中国版「秋のゴールデンウィーク」では、中国政府が始めた激しい反日キャンペーンなどの影響もあり、中国国内で日本ツアーがキャンセルされる事例などが相次いだものの、中国人客が「こっそり日本旅行を楽しんでいたようだ」、などとするものです。

リンク先記事はこれについて、こう述べます。

実際、団体旅行の需要は減ったものの、日本行きの人気はそれほど下がらなかった。/ブルームバーグが日本語でまとめた<中略>記事によると、<中略>海外旅行航空券数のランキングでは<中略>日本と韓国でトップ6位を占拠している」。

また、日本のメディアが「中国国慶節連休で中国人観光客の人気旅行先が日本だ」と報じた、などとして、中国共産党の機関紙『人民日報』系のタブロイド紙『環球時報』が批判する論評を掲載したのだそうですが、それを報じたとされる日本語記事を中国メディアが誤訳するなどの騒動もあったそうです。

ただ、こうした批判記事が掲載されること自体が、現在の中国における反日の空気を象徴しているようなものでしょう。

「見えない旅楽しむ中国人」?

そのうえでダイヤモンドの記事では、こう述べます。

一方で、そんな観光客たちも国内のムードをおもんぱかり、『(広範な人の目に触れる)SNSのタイムラインには日本での見聞を流さないようにした』と述べている」。

実際に自分の旅ブログに東京の旅について書き込んだブロガーが、激しい非難コメントにさらされるケースも起きており、彼らはあえて『見えない旅』を楽しんだようである」。

日本で「見えない旅」を楽しんだ中国人観光客が何人いたのか、そのデータはどのみち来月15日には出てきますが、これについてリンク先記事は、このSNS全盛時代に「自分の楽しい旅の様子をアップできないのは残念」としつつも、こう結論付けます。

あえて喧伝しないことで、静かで誰にも知られない旅をじっくり楽しむことができる。そんな『二重生活』あるいは『二枚舌生活』は、中国で生きるためのすべになってしまった。/反日キャンペーンの中で日本旅行を選んだ人たちの中には、リピーターも多くいたという。そんな彼らが次回は堂々とまた遊びに来られるよう、期待したいものである

…。

すなわち、政府挙げての反日キャンペーンのなか、日本旅行を密かに楽しんだ「リピーター」もいた、ということです。

もっとも、「中国人が日本をどう思うか」という視点だけでなく、「日本人が中国をどう思うか」という視点も踏まえるならば、たとえ「日本ファンの中国人」が根強く存在していたとしても、「中国ファンの日本人」というものが根強く存在するかどうかは微妙ではないでしょうか。

いずれにせよ、個人的には10月における中国人の日本旅行の動向についても知りたいところですが、やはり早ければ年内にも公表されるであろう『外交に関する世論調査』の内容も気になるところなのです。

新宿会計士:

View Comments (5)

  • 中国では二面人?と呼ばれる面は習近平に従い裏では何もせず寝そべるという官僚が多いそうです
    一般の中国人の中でもそういう人がいるのかも

  • >「中華民族の感情を損なう」服装を禁止、中国が法改正案 BBC News JAPN 2023/9/6
    https://www.bbc.com/japanese/66748434

    上記記事に掲載されている写真のようなジャパニーズアニメ、ロリコン風衣装が「中華民族の感情を損なう」のかと思っていたら、「漢服」を着ていてた女性が、日本の「和服」着用と勘違いされて、公園を追い出されそうになったなんて、笑い話としか思えない話まで出てきました。

    >漢服を着た女性、「日本の服装だめ!」と職員から注意=中国ネット「和服は違法なの?」
    Record China 2023/9/7
    https://www.recordchina.co.jp/b920133-s25-c30-d0052.html

    習近平のことだから、そのうち「正しい中国人民たるもの、須く人民服を着用すべし」くらいは言い出しかねない気もしますが、とりあえずは「日本文化」を連想させる外見は御法度ということみたいですね。なにかもう、ものすごい文化的なコンプレックスを感じます。

    このダイアモンドオンラインの記事、実証的な調査に基づいて書かれているわけではないでしょうが、日本に来る中国人が、自国文化に愛着を持たず、日本文化により親和性を感じていることはありそうな気がしますね。

    ひと頃、京都の和服レンタルの店が中国人女性観光客で溢れ、着付けと髪型を整えてもらった「美貌を誇れるくらいの」レベルの同国人女性が通りに現われるやいなや、あっという間に人だかりができて、スマホで写真を取りまくられる。当のご本人も、通行を妨げられつつも、結構ご満悦、なんて記事を読んだことがありました。

    「習近平思想」教育と、日本文化の浸透力。中国の一般民衆にとっては、どちらに分があるか。まあ、面白い見物ではありますね(笑)。

  • とてもとても分かりやすい「下半身親日」のサンプルですね。

    中国の外に出られる機会と金がある中国人なら、自国が他国と比べてどれだけヤバいか
    気付く確率も上がるもの。でも中国政府がそんな発言を許す訳ない。

    こういう「下半身親日」の人々が中国を変えてくれると言う期待など持てないから、
    引き続き油断ができない時代が続きますね。

  • 個人で来ている中国人リピータ-はそれなりにルールを守り、大声を出さない普通の人達が多いと思っています。 

    ですが、その後外国に移住する中国人富裕層は最初は常識があり歓迎されますが(オーストラリアやカナダがそうでしたね)、本人達はそうなのかもしれませんが、そこを頼りにする一般・貧困中国人がシロアリの様に押し寄せて来るのが問題なのですね。 伝統ある場所にある日突然、赤と金色のカオスが出現し、ゴミの問題とか騒音とか・・・。 たぶん少し前の東京だと記憶していますが、カキ採取を許された地域でカキを大量に採取し殻を大量廃棄し続ける中国人とかいましたね。 その辺の商店に売ってたんだろ?

    ここを許せば、かつての属国が裏金を貰って「・・・だっ~!!!」て大騒ぎするのは目に見えてますよね。