パチンコ業界としては史上最大の負債総額での倒産が発生したそうです。帝国データバンク(TDB)が配信した記事によると、パチンコホールを運営する株式会社ガイアとそのグループ企業6社が30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請したそうです。負債は7社合わせて1133億円だったそうであり、これについてTDBはパチンコホール運営業者運営者の倒産事例としては「過去最大」と指摘しています。
目次
パチンコは違法賭博!
以前からしばしば当ウェブサイトにおいて議論してきている通り、パチンコというものは、事実上の違法ギャンブルです。
「三店交換方式」、つまりパチンコ屋、景品交換所、問屋の三者間を流通させる仕組みを使い、「店から直接、おカネを払い戻されているわけではない」という体裁を作っていますが、経済的性質に着目したら、間接的にパチンコ屋から客にカネが払い戻されているのとおなじです。
これを「合法だ」と断言するのには、相当の無理があると言わざるを得ないでしょう。
ちなみに以前の『日本語力不足?パチンコを「合法」と言い張るコメント』では、パチンコが「合法だ」と断言した読者コメントについて取り上げたことがありますが、「パチンコが合法な賭博であるとする法的根拠を指摘してほしい」と依頼してみたものの、最後までその具体的な条文に基づく合法性は示されませんでした。
現状、パチンコ屋の三店交換方式そのものを巡って、刑事訴訟になったことがなく、したがって三店交換方式を巡って最高裁は「違法である」とも「合法である」とも判断していませんが、だからといって、それを「パチンコの景品買取が賭博罪に該当せず、合法である」とする根拠にすることはできません。
結局のところ、警察が三店交換方式を取り締まっていないというだけのことを、「警察が三店交換方式を合法だと認めた理由」にすることはできないのです。
実際問題、パチンコ業界は衰退している
ただし、当ウェブサイトでもしばしば指摘してきたとおり、パチンコそのものの合法性という論点と、産業としてのパチンコの将来性という論点は、まったくの別問題です。
『「大型化」で生き残り図るパチンコは新聞業界の未来か』でも指摘しましたが、「全日本遊技事業協同組合連合会」(全日遊連)の『全国遊技場店舗数及び機械台数(警察庁発表)』というデータから店舗数を集計してみると、2022年のパチンコ・パチスロの店舗数は7,665店でした(図表1)。
図表1 パチンコ店・パチスロ店の店舗数
(【出所】全日遊連『全国遊技場店舗数及び機械台数(警察庁発表)』をもとに著者作成)
存在するデータのピークの1995年では、全国の店舗数は18,244店でしたので、最盛期と比べてざっと60%ほど減った計算です。
店舗の減り方はここ数年加速気味
それだけではありません。年を追うごとに、その「減り方」が加速してきているのです。ここ5年間ほど、前年と比べて何店舗減ったかを並べてみたものが図表2です。
図表2 パチンコ店・パチスロ店の店舗数の前年比増減
年 | 店舗数 | 増減数 | 増減率 |
2018年 | 10,060店 | ▲536店 | ▲5.06% |
2019年 | 9,639店 | ▲421店 | ▲4.18% |
2020年 | 9,035店 | ▲604店 | ▲6.27% |
2021年 | 8,458店 | ▲577店 | ▲6.39% |
2022年 | 7,665店 | ▲793店 | ▲9.38% |
(【出所】全日遊連『全国遊技場店舗数及び機械台数(警察庁発表)』をもとに著者作成)
2020年の減少ペースが604店舗、減少率でいえば6.27%に拡大した理由を巡っては、「コロナ禍のためだ」、という説明を見かけたことがありますが、しかし、2021年には577店舗・前年比6.39%、22年には793店舗・9.38%と、減少ペースが拡大していることは、コロナ禍だけで説明がつくものでしょうか。
この点、パチンコ店が減少している要因としては、コロナ禍だけでなく、人口減少・遊戯人口の高齢化、さらには警察当局による規制強化などの影響もあるのかもしれませんが、毎年600~800店舗ずつのペースでパチンコ店が姿を消していけば、パチンコ産業は消滅する計算です。
もう少し業界がシュリンクしたら取締も容易に!
このあたり、パチンコは本来、事実上の違法ギャンブルではありますが、それと同時にこれまでの長い期間、「換金可能なグレーゾーン」として生存してきてしまったという事情もあるため、事実上、これを一気に消滅させるのは困難でもありました。
ことに、パチンコ店最盛期の1995年の時点で、全国2万近い店舗を「違法だ」という理由で一気に摘発するには、警察のマンパワーだと不十分だったに違いありませんし、また、当時はまだまだ暴力団などの反社会的勢力の力も強かったのです。
しかし、30年単位でようやく、パチンコ産業もコントロール可能な水準になって来たといえるかもしれません。このペースで業界が縮小(シュリンク)していけば、業者の数も減っていくからです。
しかも、近年ではパチンコ店の大型化も進展しています。
図表3は、先ほどと同じ情報源のデータをもとに、日本全国のパチンコ・パチスロの総台数を店舗数で割って計算した「店舗当たりの台数」です
図表3 店舗当たりの台数
(【出所】全日遊連『全国遊技場店舗数及び機械台数(警察庁発表)』をもとに著者作成)
なかなかにわかりやすい「右肩上がり」グラフが完成しました。
衰退する産業は消滅する直前に業者の統廃合が進み、規模の大型化が発生するのは、ある意味では古今東西共通の現象ですが、それにしてもここまで「露骨なグラフ」ができあがるとは、なかなかに興味深いところです。
店舗の集約化・大型化が進んでいるということは、経営体力のない中小事業者が廃業に追い込まれているということであり、業界としての裾野がどんどんと消滅している、ということでもあります。
パチンコホールとして過去最大の倒産
そして、業者の数が絞られてくれば、ひとつひとつの店舗に対する監視の目も行き届きやすくなるでしょうし、また、遊戯人口が減れば、それだけギャンブル依存症対策も立てやすくなります。
この次に発生するのは、いったい何でしょうか。
これについては以前の『パチンコ業界に見る「衰退産業の転進事例3パターン」』などでも議論したとおり、大きく分けて①隣接する業態への転換(たとえばパチンコ店を廃業してカラオケ店・ゲーセンなどに衣替えすること)、②不動産などの既存資産を有効活用すること、③余力が残っているうちに廃業、などが考えられます。
そして、これらの3つに失敗してしまえば、たとえ大型店舗であったとしても、あっという間に資金繰りに窮して経営破綻してしまう、という可能性が出てくるのです。
こうしたなかで、30日にはこんな報道が出てきました。
パチンコホールとしては過去最大の倒産 ガイア(東京)など7社が民事再生法の適用を申請
―――2023/10/30 19:00付 Yahoo!ニュースより【帝国データバンク配信】
帝国データバンク(TDB)が配信した記事によると、パチンコホールを運営する株式会社ガイアとそのグループ会社の合計7社が30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日、保全・監督命令を受けたとのだそうです。
TDBによると負債はガイアが約850億円、その他6社が約283億円で、合計すれば約1133億円であり、「ガイアの負債はパチンコホール運営者として過去最大」だそうです。
2020年以降はコロナ禍で臨時休業を迫られるなどし、年収入高はピーク時の2006年5月期の約5853億円と比べ、直近の23年5月期には1895億円に減少。これに電気代高騰や新台確保などの要因もあり、資金繰り悪化に歯止めがかからず、31日期日の手形決済が困難となったものだとしています。
このあたり、同社はパチンコホールに加えて不動産賃貸・売買事業なども手掛けていたものの、記事から判断するに、パチンコ事業の売上高に占める比重が大きく、物価高・電気代高騰等の影響で利益が圧迫されるなどの影響が大きかったのではないでしょうか。
新聞社さんにとっても参考になりますね!
もちろん、民事再生法手続ということは、法的再建を目指すというものであるため、とりあえず廃業するわけではないのですが、それにしてもパチンコ史上最大の倒産とは、なかなかのインパクトです。
いずれにせよ、大手に吸収合併されて生き残りを賭けるのか、売れる社屋があるうちに資産を売却し、すべての従業員に割増退職金を支払って解雇したうえで秩序ある廃業を目指すのか、さらには業態転換を図るのか、これらの対策に失敗して無秩序に倒産してしまうのか――。
こうしたパチンコ業界の動きは、「従業員が外国の空港で爆弾を炸裂させただけでなく、某純資産の部を上回る額の繰延税金資産を計上しているなど、経営不安が常に噂されている、資本金1億円の中小企業である某新聞社」などにとっても、非常に参考になるのではないかと思う次第です。
View Comments (21)
>結局のところ、警察が三店交換方式を取り締まっていないというだけのことを、「警察が三店交換方式を合法だと認めた理由」にすることはできないのです。
あのコメント者が挙げた自動車に絡めて言えば、それまでの自動車人生が無事故無検挙である事をもって「私の自動車人生は無事故無違反でした!」と胸を張るようなもの。
無違反と無検挙の間には、ちゃんと壁があるのです笑
>これについては以前の『パチンコ業界に見る「衰退産業の転進事例3パターン」』などでも議論したとおり、大きく分けて①隣接する業態への転換(たとえばパチンコ店を廃業してカラオケ店・ゲーセンなどに衣替えすること)、②不動産などの既存資産を有効活用すること、③余力が残っているうちに廃業、などが考えられます。
これからの時代は集客力のある娯楽施設はなかなか考え難く、お客さんも高齢化してるでしょうし、老人ホームや葬儀場を併設するのが良いのかもですね。
あとは…訪日外国人向けの民泊ぐらい?
おはようございます。
記事を読んで、平家物語を思い出しました。
「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」
タバコ銭程度のやり取り程度から、依存症を生み出すほどに驕った報いかと思います。
不動産業も厳しいようですが、個人的に思うのは倉庫業です。地方在住なので、駐車場を備えるための広大な敷地向き、賃貸住宅と違い、倉庫なら設備維持費負担が少ない。企業向けの物件が少ないので、以外に高額な賃料になるかも?、と個人的にオススメしたい業種転換です。
済みません。単純に疑問と関心から
お訊きしてみたいのですが。
>倉庫なら設備維持費負担が少ない。企業向けの物件が少ないので、以外に高額な賃料になるかも?、と個人的にオススメしたい業種転換です。
今は、倉庫専門企業でも、倉庫という建物の中の空間を貸すだけの業態では、顧客を掴めなくて、倉庫の形態を変えたり、顧客層や保管商品をセグメント化したりしています。
つまり、空間を貸すという事だけでは、顧客を掴めなくてなっているようです。
それから、倉庫とは物を保管する所ですから、今は、その場所へのアクセス性がとても重要です。高速道路のインターチェンジの近くとか、空港の近くとか。
それから、社会のデジタル化によって、倉庫内は、LANなどのIT設備が必要とされています。これらは、倉庫業者が設備していなければ、そもそも顧客の検討対象物件にはなりません。
今は、倉庫業もかなり高度なマーケティング能力が必要です。建物があるだけでは成立しない業態になっているように認識しています。
又、もし、お住まいの地域で企業向けの倉庫のニーズがあるようであれば、倉庫専業企業が既に進出しているようにも思えます。
今、そんなおいしい地域があるとは!と思ってしまうのですが。
パチンコは何を売っているかと言えば、射幸性を売っている。射幸性を売ることは、ギャンブルなのだが、射幸とは、小さなリターンでは満足度が小さい。業界を野放しにしていたら、勝手に射幸性を大きくして、あれよあれよという間に業界規模が大きくなってしまった。それにつれて、社会的な弊害も大きくなった。
それで、射幸性に制限をかけたら、制限の度合いに応じて、業界の規模が小さくなって来た。パチンコ業界の規模に制限を掛けるには、単純に射幸性をコントロールすれば良い。ほぼ射幸性をゼロにすれば、業界は消滅する。完全に、業界を消滅させるのか、或いは、ある一定規模の産業として残すのか、射幸性への制限の掛け方を決める警察の胸三寸という所。
今の射幸性で、どれくらいの市場規模に落ち着くのか?結局、射幸性という商品のマーケティングに落ち着くような感じがしなくもない。
それにしても、パチンコ屋の業態転換の場合の3つの選択肢。3の廃業は兎も角、他の2つを見ても、将来性がないとつくづく思う。日本の将来産業って何がいいのだろう?と。何と言っても、駅前の一等地に不動産があって、そこをテナントビルやオフィスビルにした所で、空きが出来てしまうというのだから。
少子高齢化のせいで、経済規模が大きくならないのか、或いは、従来の延長上にはない新しい何かを創り出さなくては、経済は発展しないのか?
又は、社会的に所得の配分方法を変えなくてはならないのか?つまり、所得の格差で所得の偏りがあると、社会的なお金の遣い方に偏りが生じてしまうから、経済が活性化しないのか?
何故か、パチンコ産業の衰退の話から、富の格差・所得格差と経済規模拡大の関係がありやなしや?の話になってしまった。
そして、何となく、富裕層相手のビジネスばかり増やしても、経済は発展拡大しないような気がしてきた。
パチンコで一発逆転を狙う人がいなくなるほど、日本は不況になったのでしょうか。
蛇足ですが、そのうち、パチンコ店は「お客様にパチンコ玉、還元セール」を打ち出すのでしょうか。
パチンコ産業に金を貸し続けている金融業は社会制裁の対象にならないでいいのでしょうか。
なるんじゃないですかね。
制裁を受けていないからといって合法とは限らない。定期
ブンヤさんにパチ屋倒産を他山の石と出来るだけの見識があらんや
これから現れるのは起死回生中興の祖かハタマタ仕舞い屋か
店舗当たりの台数のグラフは綺麗ですね。
パチンコの衰退は日々街中を見ていても実感するものですが、ギャンブル総需要は減っているんでしょうかね。
パチンコの衰退の結果増えている別の何かがあるのかないのか気になるところです。それが管理された賭博ならよりよいのでしょうが、地下化したギャンブルならパチンコの方がマシかも知れませんね。
オンラインカジノはヤバいらしいですが、市場規模などよくわかりません。
ちなみにJRAの売上げは2010年以降右肩上がりのようですね。
https://jra.jp/company/about/outline/growth/pdf/g_22_01.pdf
朗報&興味深いデータのご提供ありがとうございます。
このまま、加速度的に業界が滅びる事を切に願います。
業界はこのまま滅びてしまえばいいのですが、遊戯メーカは生き残りをかけてどうするんでしょうね。IRなんかが最後の希望でしょうか。
パチンコ屋の開店前から人が並んで待っている様子を見て、そんなにやりたくて仕方がないものかと不思議に思っていました。しかし、パチンコ台の調整は釘師と呼ばれる人がするそうですが、店内の多くは一般的な玉の出に(つまり店が儲かる)しておき、少数台は大当たりが出るように調整しておくと聞いたことがあります。よって早くから並んで開店を待っている人々はよく出る台に座るためだと納得しました。裏を返せば、それが分かるほど通いつめていることになります。
IRにしろパチンコにしても、須らくギャンブルは胴元が儲かるように出来ている筈なのに倒産するとは、よくよくの事情なんでしょう。その筋への付け届けが足りなかったのか、大きくなって目立ち過ぎたのでお仕置きを受けたんでしょうか。
昔、建設現場で「先週までパチンコの店員をやってました」という中年男性の方と会ったことがあります。仕事ぶりは真面目だし「何もきつい現場で働くなくても」と思いましたが、パチンコ業界もこういう人達の受け皿になっている一面があります。だから合法というわけではありませんが、店員の他に釘師、パチンコ台を作るメーカー、パーツや電子部品を作る会社等、結構すそ野が広いようです。もし、大阪でIRが開業するならスロットマシンの横にパチンコ台を置くといいかも。
攻撃型原潜様
朝店に並んでるのは、狙い台に座るためですよ、きっと
私もときどき土日の午前だけ打てるときがあり、スロットしかやりませんがいけるなら朝入場抽選を受けます
理由は折角打つなら負けたくないしなるべく楽しい時間にしたいから、適当に座るとほぼ負けます。
いまどきは各種サイトで出玉情報が公開されており、近場に優良店がありますが集計すると自分の打つ機種はほぼ機械割100パーセント営業です。
設定が1から6まであり、機種によりますが機械割が96%から109%くらいです。
100%ということは換金ギャップでしか利益を取れてないことになります。
また、ベースが100だと、しっかり狙いを定めていくと個人で102から103%にするのは容易ですので、ちゃんと打ってる人は負けようがないとまで言えますが、多くの人は適当に打って負けてるのです。
ちなみに、件のガイアは基本ベタピンぼったくりチェーンですので集計したら多分96%付近になると思います。勿論ガイアでは打てません。
電動パチンコはあまりやったことがなくて、レバーを動かないようホールドしていても玉が同じ強さで打ち出されていないと感じていましたが、しっかり狙えるんですね。知りませんでした。
普段ご興味の無い方にはピンとこないと思いますが、スロットには釘がなくて6段階の設定があります。
狙うのは設定が良い台で、大当たりの出現率が違うのと挙動が異なったり設定示唆機能もあります。
また、店側も設定を据え置いたり客側がある程度出やすい台が推測しやすいように工夫します。
そうしないと稼働が弱くて困るからです。
こうして読みと状況察知を駆使するのですが、打つ側からすると何が楽しいかというと、その感覚は「釣り」に近いとよく言われます。
さより 様
返信ありがとうございます。
さより様の提示している大規模な倉庫ではなく、資材置き場用の小規模倉庫の需要がある、ということです。言葉足らずで申し訳ありません。
最近は建築現場での機材や資材の盗難が多くなっているそうで、そういう物品用の保管倉庫が不足しているそうです。
それと、安価な中古住宅の出物の問合せもあります。外国人研修生、留学生の居住用だそうです。
このような動向を聞くと、世知辛い世の中になったな、と実感しています。
ありがとうございます。
よく分かりました。世相を反映した重要ですね。
重要 → 需要
でした。需要は重要だからか、変換ソフトは先回りする位に頭が回り過ぎるようです。頭がいい人と付き合うのと同じ、かな?