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回答者が高齢者に極端に偏るNHK世論調査=内部資料

NHKの2023年10月における世論調査の回答者は70歳以上が全体の3分の1以上を占めており、また、無職が全体の4分の1以上を占めていたことが明らかになりました。資料を公表したのは浜田聡・参議院議員の秘書である末永ゆかり氏です。ちなみに回答率で見ると、固定電話は携帯電話を圧倒する高さだそうです。

浜田聡氏の興味深い調査の数々

「NHKから国民を守る党」の浜田聡・参議院議員といえば、なかなかに個性的な議員活動を行っている人物として知られています。

その活動ぶりにをどう評価するかどうかは人により差がありそうですが、少なくとも当ウェブサイトとしては、浜田氏自身は事実上の少数会派でありながら個性的な質問で存在感を示していることについてはそれなりに評価して良いと考えている次第です。

浜田氏の活動でひとつだけ事例を挙げておくと、『「行政の無駄:有識者会議は多すぎ」=浜田聡参院議員』でも取り上げた、「参議院調査室や国立国会図書館の協力を得て、日本政府の有識者会議の数を調査してみた」というものがあります。

日本政府の有識者会議はどれくらいあるのか調べてみた

―――2023/9/11付 参議院議員 浜田聡のブログより

浜田氏は「どういう会議を有識者会議に含めるかによって調査結果での数字が異なってくる」としつつも、大まかな数を省庁ごとにカウントしているのですが、その数は873個にも及ぶそうです。内訳は国土交通省の182個を筆頭に、厚生労働省174個、文部科学省89個…、といった具合です。

こうした調査は、参議院議員という立場だからこそできるものでもあるのかもしれません。

浜田氏のこうした調査結果は、ブログなど(現在のところは)だれにでも簡単にアクセス可能なウェブサイトにアップロードされており、折に触れて引用されていくことでしょう。

ちなみにこの有識者会議の件数に関しては、口先だけはやたらと舌鋒鋭い、東京・山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士が運営するウェブサイトあたりが今後、偉そうに官僚機構などを批判するときに、頻繁に引用することになりそうです。

末永ゆかり氏のXポスト

さて、それはともかくとして、その浜田氏の秘書である末永ゆかり氏もまた、なかなかに興味深い情報を頻繁に発信しています。そうした情報のひとつが、X(旧ツイッター)に投稿された、こんなポストでしょう。

末永氏は『選挙ドットコム』というウェブサイトに13日付で、浜田聡事務所がNHK経営企画局から入手したとされる、NHKの世論調査の全設問や回答者属性がわかる資料についての解説とその原文をアップロードしています。

【調査資料】NHK世論調査の属性があまりにも高齢者・無職に偏り過ぎていたという実態

―――2023/10/13付 選挙ドットコムウェブサイト『末永ゆかりブログ』より

回答者は70歳以上だけで3分の1、60歳以上だと過半数

末永氏がGoogleドライブにアップロードしたPDFファイルは当ウェブサイトにもダウンロードし、保存しておりますので、もしご興味があればご一読ください。

末永氏がGoogleドライブにアップロードしていたPDFファイルのリンク(当ウェブサイト)

これは2023年10月分の『政治意識月例電話調査』と題した資料で、調査期間は2023年10月7日から9日、調査方法は「固定電話と携帯電話による電話法(RDD追跡法)」、母集団は全国18歳以上の2,366人で、このうち51.5%に相当する1,219人から回答を得たということです。

まずPDFファイルの4ページ目から紹介すると、「性別」としては「男性55.1%、女性44.9%」とありますが、これに続き、年齢階層についてはこんな記述があります(図表1:わかりやすく表形式に変更しています)。

図表1 回答者の年齢階層
年齢 割合
18~19歳 0.9%
20~29歳 4.8%
30~39歳 7.1%
40~49歳 13.0%
50~59歳 16.7%
60~69歳 17.2%
70歳以上 33.6%
無回答 6.6%

(【出所】末永氏ブログ)

いかがでしょうか。

70歳以上が回答者全体の33.6%(つまり3分の1以上)を占めており、これに17.2%の60代を足せば全体の50.8%と半数以上に達し、これにさらに16.7%の50代を足せば全体の67.5%と3分の2に達してしまいます。

明らかに、高齢者層に偏っています。

携帯電話と比べて高い固定電話の回答率

気になってPDFファイルの冒頭に戻ってその記述に目を落とすと、現実の回答者数は固定電話が495人、携帯電話が724人で、だいたい4対6の割合で携帯電話の方が多いのですが、注目すべきはその回答率です。

調査相手(おそらく「電話を掛けた相手」)は固定電話が748人、携帯電話が1,618人でしたので、調査に応じた割合は携帯電話の44.75%に対し、固定電話が66.18%、という計算です。これをまとめたものが図表2です。

図表2 固定電話と携帯電話の調査相手と回答数、回答率
区分 調査相手 回答数 回答率
固定 748 495 66.18%
携帯 1,618 724 44.75%
合計 2,366 1,219 51.52%

(【出所】末永氏ブログ)

回答率は固定電話の方が明らかに高いようです。

ちなみに総務省『令和4年度版・情報通信白書』によると、2005年に90.7%だった固定電話の世帯保有率は2021年には66.5%にまで低下する一方、2010年に9.7%だったスマートフォンの世帯保有率は、2021年にはじつに88.6%に達しています。

回答者属性を見ると70歳以上だけで3分の1以上を占め、60歳以上で過半数、50歳以上で3分の2という、高齢層に極端に偏っていることと、固定電話の回答率が携帯電話のそれと比べて明らかに高いことの間には、それなりの関係があるのかもしれません。

無職は全体の4分の1以上

これに加えて興味深いのは職業構成でしょう。

回答者の3分の1が70歳以上であるという時点で何となく想像がつくのですが、やはり蓋を開けてみると、「無色」が26.3%と全体の4分の1強を占めていることがわかります。「勤め人」「自営業」はあわせて半分弱、といったところでしょうか(図表3)。

図表3 回答者の職業
職業 割合
農林漁業 3.0%
自営業 9.7%
勤め人 37.3%
主婦・主夫 15.1%
無職 26.3%
学生 2.1%
その他、無回答 6.5%
合計 100%

(【出所】末永氏ブログ)

なかなか興味深い限りです。

このあたり、今回はNHKの内部資料に基づく分析ですが、正直、「回答者属性の極端な偏り」という意味では、他の世論調査も似たようなものではないか、という疑念を抱くには十分でしょう。

いずれにせよ、「メディアの世論調査は信頼に足るのか」という疑念は、当ウェブサイトにて常々取り上げている問題意識のひとつなのですが、今回の末永氏の公表資料が大変に興味深い資料であることは間違いないところだと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (17)

  • テレビを持っていないからNHKも見ない人がこの世論調査の対象になったら
    NHKはどうするんだろう?それはそれとしてちゃんと調査の対象に含めるのか、
    それとも理由をつけて対象から排除するのかな?

    それと、怪しい電話には答えないって人は若い程多いのかな?
    老人がオレオレ詐欺に引っ掛かりやすい心理と関係ありそう。

  • 今、企業のマーケティング調査では、従来の伝統的なやり方よりは、実態をより正確に掴む手法をいろいろ考え出している。
    4.インターネット空間に飛び交う言葉・情報などを分析する。
    5.自社のサイトに、消費者が自由な書き込みができる場所を作る。
    4は、どこの国でもやっているサイバー監視のインテリジェンスみたいなものだが、実際、大企業などでは、自社に対する否定的な意見などがないかをチェックして、企業イメージを調査し、それに対する対応をやっている所もある。
    5は、ある製菓会社は、ここへの書き込みのお陰でヒット商品を連発する効果をだしている。
    ネットなどで集められた情報を効果的に分析するデータマイニングの手法も多々あるので、それらを駆使して、消費者のウォンツやニーズを把握し効果を上げている。
    要は、民間企業は、従来の統計手法に拘らず、結果を出せる調査を効果的にやっている。
    マスコミの世論調査も、デジタル時代に沿った、より効率的・効果的な方法を考え出したらどうなのだろう?そこまで、やる気は無いか?

  • 最初からNHKは「高齢者の世論を調査する」と言えば問題ないのでは。確かに高齢者も国民であることには間違いないのですから。

  • 回答者の過半が60歳以上、4割が働いてない人(無職と主婦主夫)。
    これは正に「生存者バイアス」
    こういうバイアスのかかった統計の結果で何か意味のあることが言えるのか。

    • 更に問題なのは、従来の統計手法では、この「生存者バイアス」の掛かった調査結果しか取れない可能性が高いということ。
      年寄りに保守系が多いとすれば、今の自民党支持率や内閣支持率は実際どうなのか?過大なのでは?という事にもなります。
      ただ、投票に行くのが年寄りの方が多いとすれば、このバイアスの掛かったデータが、選挙では意味があるかもしれないというように、採取できるデータの偏りが実際には有効という事もあり得ます。
      統計データの採取の仕方とその結果の読取り方は難しい。

  • 浜田聡さん、国会質問も含めていい仕事しますね。松原仁さんと並ぶ、一押しの人です。
    (私の中で)

    私は統計学の専門家ではないですが、人口比率と回答数って相関関係にある様な気がします。例えば、10代と60代の人口比率が1:3の場合は、10代の回答者10%に対して、60代の回答者が30%あれば、世論に添った回答なのかな、と。
    今の人口ピラミッドがどのような形かわかりませんが、このNHKの調査は当たらずも遠からず、のような気もします。

    •  こんな美しい逆三角形なんてどこの亡国…と思ったものの。

      https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2021np/index.html

       日本の人口ピラミッド(2021)を見るに、ボリューム層は75と50で突出しているものの、各年齢の40万人を足切りした(この40万が在宅層への偏りの理由か?若齢ほど外出し高齢ほど在宅であったと想像したとして)場合であれば、案外操作でもないのかも……

       いや40万足切りが操作っちゃそれまでなんですが。

  • 世論調査の回答者と、主たる情報源がテレビの人との一致度って高いんじゃないですかね。
    それならマスコミ人は「マスコミの報道は今でも世論形成に絶大な影響力がある」と勘違いするかもですね。

    いや、それは動機かな?
    「マスコミは世論形成に絶大な影響力があるべきだ」(笑)

  • オールドメディアの世論調査や、企業や行政のアンケートなんて、ただの証拠作り、アリバイ作りです。韓国のホワイト国復帰の際の政府の意見募集なんて、その最たるものです。
    オールドメディアや企業行政に良心があるなら、その属性や質問の中身、アンケート方法等、国民や消費者が疑問に思っている事を詳らかにすべきと思います。

  • 私も70歳の高齢者ですが、昔からNHKは大嫌いでした。
    契約の自由という憲法で保障された権利を蹂躙するNHKは、既得権益者の代表だと思います。
    どうしても料金を請求したければ、スクランブルをかければ良いのに、それをやろうとしないのは不思議です。
    放送内容も朝日放送や毎日放送と大差がない内容です。
    その内容は左寄り一辺倒で専門性がありません。
    とても見るに堪える報道内容とは言えないと思います。
    ジャニーズ問題を見ても分かる通り、地上波放送局は既得権益を守るだけの不要な存在になり果てました。

  • 新聞の場合は、煽りのような見出しを付けて一面トップで報じていても、後ろの方のページに詳細が載っているから、まだマシだけど、テレビのニュースには、それがないですからね。視聴者にとっては放送された情報が全て。

    あ、でもNHKは、自社のニュースサイトでは詳細を解説してるのかな? 最近は、海外で大きな事件が起きたり、国内で自然災害が起きたりしても、特別編成にはせず 「最新情報はネットで随時更新しています」 だし。そしてテレビ画面にはQRコードを表示して視聴者をネットに誘導。なんでだろう?

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