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円安デメリット主張なら金額単位くらいは合わせるべき

比較をするなら単位くらい合わせるべきです。「円安が進めば1万円の現金はドル建てで6,600円になる」などと主張するユーザーがX(旧ツイッター)に出現したのですが、これはこれでなかなかに強烈です。「円安悪玉論」の支持者の方なのだとは思いますが、単位が異なるもの同士をむりやり比較したら、結論がメチャクチャになります。

インフルエンサーの出現

インターネット環境が発達するなかで、個人ブログ、独立系ニューズサイトなどが乱立するだけでなく、X(旧ツイッター)など、インターネットのライトユーザーでも気軽に使用できるSNSが普及したことで、新聞社やテレビ局といった「大手マスコミ」の関係者でなくても、誰もが気軽に情報発信できる時代が到来しました。

これは、素晴らしいことです。

私たち一般人にとっては、「情報の受け手」として、得られる情報が多様化するという利点が得られるだけでなく、以前の『社会のネット化でだれもがOSINTジャーナリストに』などでも触れたとおり、情報の「出し手」に廻ることもできるからです。

こうしたなかで、SNSやYouTubeなどでは、「インフルエンサー」と呼ばれる個人ユーザーも出現してきています。

「インフルエンサー」に明確な定義はありませんが、一般的にはXの場合だと、数千人から数万人、あるいはそれ以上のフォロワーを抱えているようなユーザーのことを指すことが多いです。つまり、「インフルエンサー」になるための資格というものは、別に必要ないのです。

緯度とメートル法を比較するというのも…

そして、「フォロワー数10万人前後以上のXユーザー」を「インフルエンサー」と定義するとしても、一説によると、日本だけでも数千人から数万人はいるようであり、世界レベルで見たらさらに多いでしょう。そのなかには何かとツッコミどころだらけの情報を見かけることもあります。

たとえば、こんなツイートです。

エジプトの大ピラミッドの緯度が北緯29.9792458であり、これは真空中の光の速度(299,792,458m/秒)とほぼ一致している、と主張する人がいる、というものです。

陰謀論者が喜んで飛びつきそうなネタですが、ちょっと待ってくれ、と言いたいところです。

そもそもメートル法自体がフランス革命後の1790年代に国民議会での提案に基づいて制定されたという経緯があり、紀元前2530年頃のエジプトのファラオがメートル法を知り得る立場にあったとは考え辛いところです。

したがって、ピラミッドの北緯と拘束が一致しているというのは、単なる偶然の一致でしょう。

(※いちおう、元ツイートでは「これは単なる偶然」などと記載されていますが…。)

円安悪玉論

ただ、こうした「比較の単位」がメチャクチャだという事例は、ほかにもあるようです。先日見かけたポストのなかで、こんな趣旨のものを発見しました(本人のプライバシー保護のため、情報源の明示は控えます。また、表現は微妙に修正しているほか、便宜上、行ナンバーを付しておきます)。

  1. 「円安は輸出企業が儲かる」って本当?
  2. たとえば米国で1万ドルで売れる日本製品
  3. 1ドル100円なら売上高100万円
  4. 1ドル150円なら売上高150万円
  5. しかし円の価値が34%下がってるので、150万円✕66%=約100万円でプラスマイナスゼロ
  6. 輸出企業は損はしないかもしれませんが、国民の現金は34%目減りします。

1行目と2行目はともかくとして、3行目と4行目は設例としては正しいです。

関税や輸送コストなどを無視すれば、1ドル=100円のときに、売価100万円の日本製品をそのまま輸出したら1万ドルであり、その1万ドルの製品の価格を据え置いたら、1ドル=150円で売上は150万円に増えます。

あるいは日本円で売上高が100万円となるように価格を据え置くのであれば、ドルでの売価は6667ドルにすれば良いため、ドル建てで見れば大幅な値下げが実現しますので、その製品は飛ぶように売れるようになるかもしれません。

これこそ、普段から当ウェブサイトで指摘している「輸出競争力の上昇」そのものです。

「円安で1万円の現金が6,600円に目減りする」

しかし、5行目以降が、かなり意味不明です。

円の価値がドルに対して33%切り下がっていることは事実ですが、売上高が1万ドルならば、150万円です。どうして円換算された150万円に、さらに67%を掛ける必要があるのでしょうか?比較をするなら単位くらい合わせてほしいところですが…。

そのうえで6行目の記述もメチャクチャです。

「国民の現金が33%目減りする」というのは、「ドル換算したら」、という話であす。100万円をドル換算したら、1ドル=100円のときに1万ドル、1ドル=150円のときに6667ドルですが、それは「ドル換算」ベースの話であり、円の世界では円高になろうが、円安になろうが、100万円はあくまでも100万円です。

なにより、円の価値が「ドルに対して」33%切り下がっているならば、1万ドルの現金を持っている人にとっては、それを円換算したら、1ドル=100円のときに100万円、1ドル=150円のときに150万円と、1.5倍に増えるはずです。

このように、「円安=悪」という自説に沿って単位を捻じ曲げるから、議論がメチャクチャになるのでしょう。

ちなみにこのユーザーの方は、一般人からの「円安になっても1万円は1万円では?」と問いかけられ、これに対し「ドル建てで考えたら6600円」、と返答したそうです。

なんだか、強烈です。

いずれにせよ、「インフルエンサーだから発信する情報が正しい」という話ではないことは、間違いないといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (23)

  • 主語が違いますね。

    ドルと触れる輸出企業と、ドルと基本的に無縁な日本国民をごっちゃにしてる主張で、単なる詭弁ですね。

  • たしかにトリック探しクイズのような
    まったく滑稽な主張ですなあ。

    けれど、
    立憲民主党さんとかは
    「おおお 素晴らしい主張だ!」
    とさっそく党のメインの主張に
    すえようと飛びつきそうにも
    思います。

  • 日本国内に住んでいる日本国籍の日本人のうち何割が、全資産をドル建てで保有しているのでしょうか。
    全てでなくとも資産の大半をドルで保有している人が社会に多い、そんな状況であれば、ドル建てに直す必然性が発生しますけど。

    • ドル建て保有している人間は日本で生活する限りウハウハですね。
      その場合もドル換算してプラマイゼロとなるのでしょうかね。

  • 人間の知識には偏りや思い違いがあり、それは、誰でも、一つや二つどころか、かなりあるように思います。そういうことですから、自分が確信出来ない事は、事前に調べてから発信したいものです。
    思い違いをしている事を正しいと思い込んでいる場合は、恥をかくのは仕方ありません。
    先頃、厚生労働関係の議員が、記者発表会で「手当」のことを「てとう」と読んでいて、周りから驚かれたことがありました。しかも、彼女の本業の厚生労働関係では、手当は、核心的な事柄ですから、この方、本当に厚生労働が専門?とまで思われてしまいました。
    実は、偉い人だと、周りが気がついても注意しづらいということがありますから、ずっと思い違いが直らないということもあります。
    自分の誤りを直すことは難しい。

    • さよりさま

      知り合いの自称知識レベルの高い人がいました。
      女性も居た何かの集まりの挨拶で「だんこんせだい」と躊躇なく言ってたのを思い出した。話の前後から多分「団塊世代」の意味だと思ったけど「男根世代」かも知れないかもと?
      注意してあげようと思ったけど止めました。

  • こういうのは簡単!貴方は日本でドル通貨で暮らしてるんですね。で終わり。

  • 日本では千円札1枚あればOKの、大戸屋の「しまほっけ定食」が
    NYではチップ込みの値段で四十 ンドル。
    日本円にすると6000円強ですと。

    『エコノミスト』誌発表の「ビッグマック指数(円換算)」でいうなら、
    1位 スイス 925円
    2位 ノルウェー 864円
    ・・・・
    6位 米国 710円
    ・・・・
    41位 日本 390円
    (2022年のランキング。1$=137.87円)

    為替レートなんかより、肝心なのは使用価値。

    >2022-10-23 Hatena Blog より
    https://www.morelife.work/entry/2022/10/23/ootoya-shima-hokke

    • 外国人観光客の皆さん!

      安~い日本で
      懐具合気にせずに
      ジャンジャンおカネ使ってくださいね(笑)。

      それでは宮津節の旋律に乗せて、どうぞ。

      二度と行こまい日本の東京(鎌倉、京都、大阪、奈良 etc.)
      縞の財布が空になる
      日本の東京(鎌倉、京都、大阪、奈良 etc.)で
      ピンと出した

      二度と行かずに 三度来た
      日本の東京(鎌倉、京都、大阪、奈良 etc.)で
      ピンと出した

  • 以前にしまホッケのことは書いたが、
    世界中でしまホッケ定食1人前を食べられるお札のことを1シマホッケと呼ぶとする。
    日本ではこの1シマホッケが1000円と交換できる。
    アメリカでは1シマホッケを40ドル出さなければ交換できない。

    つまり1000円と40ドルが等価。1ドル=25円

  • この問題、国内の材料を使って日本人が働いて海外(例えば米国)に輸出すれば、円安の影響でドル建て価格を安くできます。結果、価格競争力げ上がって日本企業の円建ての売上利益があがるといのはわかります。

    同じく日本企業がドル建てで海外の材料を買って海外の工場で生産したモノを海外(例えば米国)で売った場合、ドル建て価格は変わらないのでドルの売上は変わりません。ただし、円安のためドルから円に戻す際に差益がでます。

    以上を考えると円安は日本の競争力をあげGDPアップに貢献します。だから円安がいいと言う人が多いのもわかります。

    しかし、個人の生活を考えた時、日本人が豊かになったかと言えばそうでもありません。海外旅行に行けば安い円では以前の様にたのしめませんし、日常生活では輸入品の価格はじわじわと上がるし、それに見合った給与値上げはありません。これは円安で儲けた分を労働者に還元せずに、業績向上を理由に経営者が横取りしたためです。

    結果、派遣を増やして人件費を減らしたため、共稼ぎして30年前の世帯収入を維持するのがやっととなりました。つまり、中流が没落して格差が広がり少子化が進んだのです。

    金がなければ子育てなどできません。派遣の増加は学業での競争を激化させました。多くの家庭は無理をして大学進学をさせましたが、低偏差値の大学では大した就職先はありません。大学は役人の天下りのために増やされましたが、今は進学バブルも終わって定員割してます。

    • 》これは円安で儲けた分を労働者に還元せずに、業績向上を理由に経営者が横取りしたためです。

      結局、資本主義だと転職で給料アップが王道ってことかと。
      (人余りの事務職なんて給料を上げる理由が無いし。)
      政府がリスキリングに言及したり、失業保険の受給を簡単にしてるのはそういうこと。

  • ああ、毎日の様に炎上している例のあの人ですか!
    今回もいつもの様に突っ込まれまくっては逆ギレしまくっていると言うパターンですね。
    それでどうやって収入を得ているんだろう?

    この人、以前は朝日のWeb論座で書かせてもらってたんですが、お仲間の朝日関係者からも
    ブーイングが来ると言う大惨事。いつのまにか解約されていたらしいですね。

    恐らくはSEALDSの奥田氏の様に「後継者を育てようと若者をピックアップしたら
    あまりにも使い物にならなかったので見捨てられた」と言う流れだったのでは……
    と勝手に想像しています。本名すら分からない人なので、あくまでも勝手な想像ですが。

    • >若者をピックアップ
      この主は、アイコンは若者になっているが、実は高齢者なのではないかと疑われている模様。その理由は、この主が「民主党政権時代は安倍政権時代と比べて暮らしやすかった」という趣旨のツイートを繰り返しているため。

      https://note.com/joyous_cosmos162/n/n1ef7181f53ed

      また、コミュニティノートがたびたび着弾している主でもあるようです。
      https://togetter.com/li/2198027

      • 老人が若者になりすましていたのもSEALDSの常套手段でしたね。
        民主政権時代に20代だったのならまだギリギリ30代かも知れませんし、
        あるいは当時まだ10代だったのにさも当事者の様に騙っているだけかも
        知れないから、何とも言えない所ですが……

        コミュニティノートに関しては御多分に漏れず「ネトウヨ!ネトウヨ!」と
        喚き散らし、「コミュニティノートは俺には効いてないけど」と
        強がっていると言う、さして珍しくもないパターンですね。

        彼らは未だにツイッターの代わりを用意できない様で……

  • 友人がハワイに行った話をしていました。
    パスタ1皿70ドル、チップが25%で、計約90ドルで13000円程。その他飲み物などを入れて、家族4人で夕食1回が7〜8万円。それでも、店は、各国の観光客で満席状態で、誰もお金を気にしている風はなかった、と。ただし、日本人は一人もおらず、と。
    日本人は、どんなに画期的な製品を作っても、原価プラス適正利益で価格を付けて、市場価格で売ろうとはしない。つまり、市場性から見てもっと高く売れると思っても、ボロ儲けは罪だと言わんばかりに高くは売らない、と。
    高性能、高品質、高アフターサービス、高接客、で、低価格。今や、日本は、竜宮城並みの異次元世界ですね。
    内需に注力して、一種の鎖国世界でやって行くのがいいのかも知れません。
    或いは、国内価格と輸出価格を変えて売る。しかし、ダンピングの反対で、輸出価格を高くして輸出でボロ儲けする事にする、とか。
    円安を最大限に活用する方向に戦略的に転換しないと。

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