韓国の外貨準備高が公表されました。これによると韓国の外貨準備に占める現金預金・有価証券の合計は3900億ドルで、前月比39億ドルほど減りました。ちなみにこれはコロナ禍直後の2020年3月末の3893億ドルに近い水準です。想像するに、ウォン安が進むなかで韓国銀行が9月も為替介入を余儀なくされたのでしょう。ただ、通貨危機に備えるためにはここらで利上げに踏み切っておきたいところですが、そうもいかない事情もありそうです。
2023/10/06 15:00追記
記事タイトルが誤っていましたので修正しています。
韓国の外貨準備が今月も減少
なんだか、統計を見るたびに減っている気がします。
韓国銀行が6日に公表した、2023年9月における同国の外貨準備統計を見ると、外貨準備合計は前月比ちょうど1%減って4141億ドル、うち現金預金と有価証券の合計が3900億ドルで、これも前月比約1%減っています(図表1)
図表1 韓国の外貨準備(2023年9月時点)
区分 | 金額 | 前月比増減 |
外貨準備合計 | 4141億ドル | ▲41.83億ドル(▲1.00%) |
うち金 | 48億ドル | ±0.00億ドル(±0.00%) |
うちIMFRP | 148億ドル | ▲2.48億ドル(▲1.65%) |
うちSDR | 45億ドル | ▲0.58億ドル(▲1.26%) |
うち現金預金+有価証券 | 3900億ドル | ▲38.78億ドル(▲0.98%) |
(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成。なお、金の金額が前月比動いていないのは、韓国の外貨準備統計上、金については取得原価で評価されるため)
原因は為替介入
この原因について韓国銀行の説明は、こうです。
- 米ドル以外の外貨資産の米ドル換算額が減少(米ドル指数は9月を通じて約3%上昇)
- 外為市場変動制緩和措置(国民年金との為替スワップによる一時的効果を含む)
韓国の外貨準備が米ドル以外の通貨で構成されているとする話題は、当ウェブサイトでも以前からしばしば取り上げて来たとおりですが、韓国の外貨準備高が減少している要因はそれだけではありません。
ウォン安の進行を防止するために、おそらくは外貨準備をさらに溶かしたのでしょう。
図表2は、韓国の直近5年分の外貨準備高の推移を一覧にしたものです。
図表2 韓国の外貨準備の推移
(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)
これによると韓国の外貨準備高のうち「現金預金+有価証券」は2021年7月に過去最大となる4457億ドルを記録したのですが、これが先月には3900億ドルと、ピーク時と比べ557億ドル減少した計算です。
韓国の外貨準備はコロナ禍が始まった直後、2020年3月に3893億ドルにまで減少していましたが、今回の水準は当時以来です。
ウォン相場と密接な関係にある韓国の外貨準備
ちなみに韓国の外貨準備高は、とくにコロナ禍以降、為替相場と密接な関係が認められます。
図表3は、韓国の外貨準備高とUSDKRW(※反転表示)を並べたものです。
図表3 韓国の外貨準備(現金預金+有価証券)とUSDKRW(反転表示)
(【出所】韓国銀行データをもとに著者作成)
USDKRWを反転表示すると、とりわけコロナ禍以降に関しては外貨準備の動きと大体重なっています。
これについて仮説を挙げるならば、コロナ以降のUSDKRWは、米FRBの金融緩和により韓国など新興市場諸国にマネーが流入してウォン高となり、それを防ぐために韓国銀行がウォン売り・外貨買い介入を行った結果、外貨準備高が急増(2021年7月ごろまでの動き)。
FRBの金融引締め以降はこの流れが見事に逆転し、急速なウォン安を防ぐための為替介入(ウォン買い・外貨売り)を余儀なくされた、というものです。
通貨危機か金融危機か:100億の日韓通貨スワップで防げるのか
こうしたなか、昨日の『韓国「トリプル安」発生状況と家計債務不安の現状整理』でも指摘したとおり、韓国は現在、金融危機と通貨危機がせめぎあっている状況にあります。
通貨危機とは韓国からの外貨の流出、金融危機とは韓国の不良債権問題の深刻化です。
さらには、日本経済が回復基調にあり、日銀がゼロ金利を解除したり、イールドカーブ・コントロール政策を撤回したりすれば、それだけで日韓金利差が縮小し、韓国から米国に対してのみならず、日本に対しても資金が流出する、という事態も生じ得ます。
ウクライナ戦争などの要因もあり、新興市場諸国の資金フローが不安定化しているなかで、通貨危機を防ぐためには利上げをしておきたいところですが、もしも韓国が金融危機を防ぎたければ、韓国銀行はこれ以上の利上げに踏み切ることは難しいのが実情です。
ちなみにコロナ禍以降で韓国に流入し、流出した資金は、ざっと550億ドル前後とみられますが、ここで「500億ドル」は韓国の通貨危機の可能性を論じるうえで、ひとつの基準値のようなものでもあるのでしょう。
また、韓国の企業などが外国の金融機関から借り入れている金額は4000億ドル弱で、このうち外貨建ての債務が3000億ドル前後とみられますが(著者私見)、その一方で韓国の外貨準備には流動性が低いものが相当に含まれている可能性も高いのが実情です。
こうした事情もあってか、やはり韓国はいざというときにいつでも使える米ドル建ての通貨スワップラインを、500億ドルか、理想をいえば1000億ドルほど必要としているのではないか。
ただし、韓国の外貨ポジションが脆弱であるのは、韓国自身が自国通貨の国際化に向けた努力を怠ってきたことによる「自業自得」という側面が強く、個人的にはあまり同情できません。
そして、どうしてそんな国を、日本国民の血税を原資として蓄え込んだ日本の外貨準備で救済しなければならないのか、岸田文雄首相の日本国民に対する説明が十分でないこともまた間違いないといえるでしょう。
もっとも、日本政府が韓国に供与すると決めた100億ドルの通貨スワップではいざというときの危機を防ぐには心もとないことも間違いなさそうですが…。
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大事な事なので念押し。
どうしてそんな国を、日本国民の血税を原資として蓄え込んだ日本の外貨準備で救済しなければならないのか、岸田文雄首相の日本国民に対する説明が十分でないこともまた間違いないといえるでしょう。
グリースパン回顧録の中でFRBが韓国銀行幹部に「なぜ外貨準備を使わないのだ」と問うと「残っていないからだ」との答えが返ってきたという一節がある。
今韓国が「ある」主張する外貨準備本当にあるのかね?
最近は貿易収支が赤字基調だし、また大恥かくんじゃないの?
韓国は経済危機まったなしなのか?
岸田のアホはなんで韓国に肩入れするのかな。毅然と突き放すことをしないと国民から見放されるぞ!ま、オレは見放しているけどな。
外貨準備高の規模は8月末基準で中国が3兆1601億ドルで最も多く、日本(1兆2512億ドル)、スイス(8652億ドル)、インド(5982億ドル)、ロシア(5817億ドル)、台湾(5655億ドル)、サウジアラビア(4269億ドル)、香港(4184億ドル)。韓国は9位
外貨準備高を増やす、とは何かを調べて見たら、国内に外貨を買う金があるか?貿易(外も含む)収支で外貨を稼げるか?外国からの投資があるか?ということのようです。
多分、この国には、この3つとも無いようです。
少なくとも、戦後の日本がやっていたように、国民の海外への渡航制限や外貨持ち出し額の制限でもすればいいのに。
ただ、それをすれば、やる事がなくなった民衆は、毎日いろんな理由をかこつけてデモをやるんでしょうね。いやはや。
国民の意志に反するのが岸田の内閣だ。岸田を落選させねばならないと思う。広島選挙区の有権者は重責をになっている。「落とそう岸田。倒そう岸田内閣」合言葉だ。
韓国が本当に危なくなっていると言われて久しいですが、それを証明するかのごとく
ここ10年くらいは「韓国経済すごい、日本ダメダメオワタ」の論調をマスコミから
見た覚えがない。昔は随分と持ち上げていたのに。
同様の現象は中国や北欧に関しても起きています。マスコミが褒めたくても褒められないって、
一つのバロメーターになりそうですね。
つい1年前までこの手の記事がYahooニュースを賑わしていた。
野口悠紀雄大先生は常連寄稿者だった。
https://toyokeizai.net/articles/-/605395?display=b
数年前までは 「インボイス制度は絶対に必要」 と書いていたのに、自分の読者層がインボイス反対の人ばかりだとわかったら、何も言わなくなった野口悠紀雄先生じゃないですかー
最近の報道で日本で発行するとか言っていたサムライ債は外平債とかなんとかだと。
それって為替介入資金を日本が提供するってこと?
外貨準備がドルではなく、ルーブルとかなのでは?