IMFの外貨準備構成通貨に関する最新統計が、日本時間の金曜日夜までに更新されました。相変わらず米ドルのシェアは低落傾向ですが、興味深いのは日本円です。米ドル換算で見ると外貨準備の日本円のシェアは下がっているのですが、円換算してみると、日本円建ての外貨準備の額は87.19兆円と過去最大に達しているのです。また、これとは対照的に、中国の通貨・人民元は足踏みが続いているようです。
目次
IMFの外貨準備統計の最新版
本稿は、ちょっとした速報です。
国際通貨基金(IMF)が四半期に1度公表している『COFER』と呼ばれる統計の最新データ、つまり2023年6月時点の状況が、日本時間の金曜日の夜までに更新されました。
この『COFER』、英文の正式名称は “Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves” ですので、日本語に直せば「公式外貨準備通貨別構成」、といったところですが、その名の通り、世界各国の外貨準備の内訳を通貨別に示したものです。
ただし、この統計からわかるのは、「世界各国の外貨準備の合計高に占める通貨ごとの金額(ドル換算)とその割合」であって、個別国の外貨準備の内訳ではありません(というよりも、残念ながら、各国の外貨準備の内訳について詳細に示した統一的なデータは存在しないようです)。
ランキング一覧
この詳細な分析は後日行うとして、取り急ぎ本稿では、まずはそのランキングを示しておきます(図表1)。
図表1 世界の外貨準備・通貨別内訳(2023年6月末時点・前四半期比)
通貨 | 2023年3月→6月 | 構成割合の変化 |
内訳判明分 | 11兆1500億ドル→11兆1704億ドル | 92.70%→92.66% |
うち米ドル | 6兆5717億ドル→6兆5769億ドル | 58.94%→58.88% |
うちユーロ | 2兆2084億ドル→2兆2303億ドル | 19.81%→19.97% |
うち日本円 | 6104億ドル→6029億ドル | 5.47%→5.40% |
うち英ポンド | 5430億ドル→5445億ドル | 4.87%→4.87% |
うち人民元 | 2883億ドル→2741億ドル | 2.59%→2.45% |
うち加ドル | 2706億ドル→2784億ドル | 2.43%→2.49% |
うち豪ドル | 2216億ドル→2197億ドル | 1.99%→1.97% |
うちスイスフラン | 277億ドル→206億ドル | 0.25%→0.18% |
うちその他通貨 | 4083億ドル→4230億ドル | 3.66%→3.79% |
内訳不明分 | 8777億ドル→8848億ドル | 7.30%→7.34% |
合計 | 12兆0277億ドル→12兆0553億ドル | 100.00% |
(【出所】International Monetary Fund, Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves をもとに著者作成)
米ドルは長期的に見て凋落傾向
ランキング自体に変動は生じていませんが、米ドルの割合が微妙に下がり、ユーロの割合が微妙に上がるなど、細かい変動は生じています。ただ、長い目で見て世界の外貨準備高に占める米ドルの割合が徐々に低下していることは間違いありません(図表2)。
図表2 世界の外貨準備に占める米ドル建ての資産とその割合
(【出所】International Monetary Fund, Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves をもとに著者作成)
日本円は「円建て」で見れば過去最大
このCOFERに関しては、ほかにもさまざまな角度から確認していきたいところですが、本稿では差し当たって外貨準備における世界3番目の通貨である日本円についてのこんなグラフについても紹介しておきます(図表3)。
図表3 外貨準備の日本円(米ドル表示と日本円表示)
(【出所】International Monetary Fund, Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves 及び The Bank for International Settlements, “Download BIS statistics in a single file”, US dollar exchange rates (daily, vertical time axis) をもとに著者作成)
外貨準備の世界における日本円の金額や割合は前四半期と比べてじわりと減っているのですが、国際決済銀行(BIS)のデータを使って日本円に戻してあげたところ、円建てではむしろ、世界の外貨準備に占める日本円の額は増えていて、その額、87.19兆と、じつに過去最大値です。
何のことはない、世界各国が円建の外貨準備を増やしたものの、円安のため米ドル換算した金額が目減りしただけのことです。
人民元は足踏み続く
一方、外貨準備の世界で最近、存在感を増してきていたはずの人民元に関しては、ちょっと様子が変です。足踏みが続いているのです(図表4)。
図表4 外貨準備の人民元(米ドル表示と人民元表示)
(【出所】International Monetary Fund, Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves 及び The Bank for International Settlements, “Download BIS statistics in a single file”, US dollar exchange rates (daily, vertical time axis) をもとに著者作成)
人民元に関しては、米ドル表示した金額が2021年12月の3373億ドルをピークに減り続け、23年6月末時点で2741億ドルとなってしまいました。いうまでもなく、人民元も米ドルに対して下落が続いているからですが、それだけではありません。
人民元建てに換算した金額についても同様に、21年12月の2.14兆元をピークに減り続けており、直近では1.99兆元と前四半期の1.98兆元からは少しだけ持ち直しているものの、やはり元建ての外貨準備が増えていくという状況にはなさそうです。
「決済通貨としては広まっているが準備通貨としては不人気」…?
このあたり、先日の『人民元のSWIFT国際送金のシェアが過去最大水準に』でも議論した、「国際送金の世界では人民元のシェアは着実に高まっている」とする話題とは一見矛盾しています。
人民元の決済通貨シェアが過去最大水準となりました。国際的な送金における人民元のシェアが高まっていることは間違いありません。ただ、もう少し詳細に分析してみると、これは人民元の地位が上昇しているからというよりはむしろ、ユーロの決済シェアが急落していることと関係がありそうです。実際、米ドルや日本円なども、決済シェアを拡大させているからです。SWIFT『RMBトラッカー』最新データここ数ヵ月、国際的な送金における人民元のシェアが上昇しています。SWIFTが毎月公表している『RMBトラッカー』というレ... 人民元のSWIFT国際送金のシェアが過去最大水準に - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、敢えてSWIFTデータとIMFデータの整合性を考えるならば、こんな説明は仮説として成り立つかもしれません。
「人民元はアルゼンチンなど通貨不安に直面している国を中心に利用国が増えているが、外貨準備に組み込む通貨としては不人気である」。
この仮説が正しいのかどうかはわかりません。
ただ、このCOFERのデータを色々と眺めていると、新たな発見があることも事実です。
これについて、余裕があるようならば、近日中に当ウェブサイトでもう少し深く取り上げたいと思う次第です。
View Comments (5)
>世界各国が円建の外貨準備を増やしたものの、円安のため米ドル換算した金額が目減りしただけのことです。
データで議論するこのサイトの面目躍如の記事ですね。
財務省傀儡の財政破たん論者がこれを何と評価するか楽しみです。
個人的には、このデータの意味するところは、
世界の多くの政府は”今後円高に振れる=円の信認は暫く揺るがない”と考えている。
という事だと思います。
外貨準備高というのは、いわば税金だろう。蓮舫じゃないが○位じゃなくともそれなりのポジションならいいんじゃないか、、とは思うけど為替変動や信用のリスクヘッジがあるのなら仕方がないとは想う。しかし国民を助けず他国まで支援しているのをみるとどうかとは思う。助けるばっかりだもんなぁ。税金さげろよ。
なんだか為替と株価のベーストレンドみたいですね。
ド短期の為替変動で株価が連動して変化しますが、おおむね
「ドル換算したら不変」
なトレンドがあるように素人の野次馬には見えます。
円高にふれたら株価サゲ。
円安にふれたら株価アゲ。
つまり、もしかしたら
「ドル換算での円建て有価証券残高が一定」
というルールで資産運用してる人たちが多いのかな?とか。
株価の上下で一喜一憂する前に、そういう為替のノイズは差し引いて分析したいものです。
日本円の信認ガーっ!と無理スジな理論を叫ぶ人たちは、多くの場合
「??」
よくわからないことが多いですわ。
この数字は政府や中央銀行のモノなのでしょうが、ちょっと前に韓国のニュースで、韓国の小金持ちたちが為替安に目をつけて必ず騰がると円建て預金をするのが流行っている、などとするニュースがありました。幾ら韓国でも金融機関なら円建て預金を募集したなら集まった資金に応じてウォン売り円買い(の直接取引は無いでしょうが米ドルを介してその様に)して居るでしょうから、他の国でも多少は似た動きがあるのかも知れませんね。
>「人民元はアルゼンチンなど通貨不安に直面している国を中心に利用国が増えているが、外貨準備に組み込む通貨としては不人気である」
*対中決済にだけ有効な人民元。借り増してまでストック(外貨準備)する必然がないのでしょうね。