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日本はインドネシア高速鉄道延伸の入札に「関心なし」

中国が建設を請け負い、開業が当初予定より4年遅れたインドネシアのジャカルタ・バンドン間高速鉄道を巡り、同国東部のスラバヤ迄延伸させる計画があるそうです。これに関し、インドネシア側は日本の参加を期待しているようなのですが、四方敬之・内閣広報官はこれについて「中国が建設する既存の高速鉄道との互換性は技術的に難しい」、「日本の『ブランド』への毀損も懸念される」として否定的な見解を述べたようです。

インドネシア高速鉄道騒動

インドネシアといえば、日本にとっては何かと因縁浅からぬ国です。

とりわけ以前の『インドネシア高速鉄道建設コストが「順調に膨張中」?』などでも取り上げた、同国の最大の都市でもある首都・ジャカルタと、同国3番目の大都市であるバンドンを結ぶ高速鉄道に関しては、私たち日本人としても複雑な思いを抱かざるを得ないプロジェクトかもしれません。

この鉄道は全長142㎞で、構想段階で日本が地質調査などのレポートをインドネシア側に提示し、日本が建設を請け負う条件などを提示し続けていたものです。

たとえば経済産業省とJETROは2012年(平成24年)11月時点で、ジャカルタ・バンドン間に限って軌間1435ミリ・車体幅3350ミリ・車体長25メートル(つまり日本の新幹線と同じ)の12両編成を想定し、プロジェクトに政府保証を付けることを条件として建設を提案しています(外部リンク削除済み)。

ところが、インドネシア政府側は、日本側が調査した「高速鉄道バンドンルート」のルート選定図、縦断線形図などを中国政府に漏洩し、結果的に受注を巡って日中が争う形となり、最終的には中国政府が「インドネシア政府の政府予算や債務保証なし」という、国際常識から著しく逸脱する条件で落札しました。

開業は結局4年遅れ:さらに延伸計画も…?

これを受け、2015年9月には当時の内閣官房長官だった菅義偉総理大臣も、ジョコ・ウィドド大統領の特使として日本を訪れたソフヤン・ジャリル国家開発計画相に対し、「理解しがたく、極めて遺憾だ」と異例の強い不快感を示したほどです。

高速鉄道 中国案採用 ソフヤン特使訪日で通達 菅氏 「理解しがたく、極めて遺憾」

―――2015年09月30日付 じゃかるた新聞より

当たり前のことですが、インフラ開発案件の「円借款事業」において、受入相手国の政府が債務保証を行わないというのは極めて異例であり、国際的な商慣行にも反しています。しかも、日本側のレポートを中国側に手渡すなどの行為も、非常識そのものです。

ただし、中国が請け負ったこの鉄道も、当初は2019年に完成させる予定だったそうですが、完成が大きくずれ込みました。現在のところ、10月1日に開業のめどが立っているとのことですが、これに「延伸」という話も出て来ているようです。

中国の李首相、インドネシア高速鉄道に試乗 延伸に前向き

―――2023年9月7日 08:13 GMT+9付 ロイターより

ロイターによると中国の李強首相は6日、この鉄道に試乗したうえで、この鉄道をさらに同国第2の都市・スラバヤまで延伸し、全長700㎞超にする可能性をインドネシアのルフット調整相と協議したのだそうです。

在来線?高速新線?

これについて日本が協力する可能性はあるのでしょうか。

じつは、インドネシアの鉄道については、日本風にいえば「在来線」にあたる路線の改良・高速化なども、長年の課題です。

つまり、今回開業する高速鉄道はジャカルタ・バンドン間に限られており、ジャカルタから東部のスラバヤに至る部分については、高速鉄道の新線建設案だけでなく、既存の幹線鉄道の線形改良、複線化・複々線化などを通じて高速化するという案もあるようです。

日本でも、「新幹線を作るか、在来線を改良して高速化するか」が論点となることがありますが、インドネシアの場合も日本と同様、「在来線」は軌間が1067㎜の狭軌であるため、「在来線の高速化」ならば、日本がインドネシアに協力をすることは「技術的には」可能でしょう。

しかし、さすがに今回開業する高速鉄道について、バンドンから先のスラバヤまでを建設するとなった場合、それを日本が請け負うというのは、少し無理があるでしょう。

これに関連し、『レコードチャイナ』というウェブサイトに、こんな記事が掲載されていました。

日本はジャカルタ高速鉄道の延長プロジェクト入札の意思なしか―香港メディア

―――2023年9月13日 13時00分付 Record Chinaより

同サイトは2023年9月13日付の香港メディア『香港01』の記事を引用し、「インドネシアのジャカルタ―バンドン高速鉄道について、日本が延長プロジェクトに入札する意思がなさそうだ」としている、というものです。

ただ、この記事は「引用の引用」となっています。9月12日付で『ジャカルタポスト』に掲載されたという四方敬之(しかた・のりゆき)内閣広報官のインタビュー記事を香港のメディア『香港01』が13日付で取り上げ、それを『レコードチャイナ』がさらに引用している、というわけです。

したがって、どこからどこまでが四方氏の発言で、どこからどこまでどのメディアの見解なのか、よくわからなくなってしまいます。

四方氏の発言詳細

そこで、『レコードチャイナ』には申し訳ないのですが、元報道を探ってみましょう。これについては『ジャカルタポスト』のウェブサイト(TheJakartaPost)で調べてみたところ、その原文は見当たりませんでしたが、『香港01』というウェブサイトに、次のような記事を発見することができました。

日本無意投標印尼雅萬高鐵延長項目 稱技術上難與現有系統兼容

―――2023-09-13 00:37付 香港01より

おそらくこの記事が、『レコードチャイナ』が直接に引用している記事の原文でしょう。

翻訳エンジンなどを参考にしつつ、記事の内容を要約すると、こんな具合です。

日本はかつて、インドネシアのジャカルタ・バンドン間の高速鉄道プロジェクトに積極的に参加していた。しかし、現在はこの高速鉄道の延伸にほとんど関心を持っていないようだ。中国が建設する既存の高速鉄道との互換性は技術的に難しいと指摘するとともに、日本の『ブランド』への毀損も懸念している」。

具体的には、四方氏が12日、ジャカルタポストとの独占インタビューで、「異なる国の技術を混在させるとプロジェクトが複雑になる可能性がある」、「たとえば中国の高速鉄道プロジェクトについては、問題が発生した際、私たちとしては責任を負うことができない」と述べたそうです。

四方氏は、ジャカルタ・バンドン間の高速鉄道の構成や鉄道システムについて「何も知らない」ため、「『日本のブランド』を傷つけないよう、協力の可能性を慎重に探る必要がある」と指摘。

そのうえで、インドネシアが「日本の重要な友人」であり、ジャカルタ・バンドン高速鉄道の延伸についても「支援したい」と考えているものの、それと同時に「いかなる協力にも商業的実現可能性を確保するために民間企業の参加を含める必要がある」とも強調した、などとしています。

四方氏の発言は、まったくの正論です。

『香港01』の記事によると、インドネシア政府はこの700㎞の「ジャカルタ・スラバヤ高速鉄道」構想に日本の参加を望んでいるとされているようですが、日本が参加するなら中国が建設したジャカルタ・バンドン間高速鉄道を延伸するのではなく、日本がまったく新しい鉄道を建設するのが筋でしょう。

ひとつの高速鉄道に異なる国の2つ以上のシステムが混在することは、運行の安全性を確保するうえでの重要な制約条件となりかねませんし、運行していて何らかの事故が発生したとしても、日本としては責任を取ることなどできないからです。

『香港01』は「日本も(高速鉄道プロジェクトに)参加できれば事業のペースを速めることができる」と指摘していますが、常識的に考えて、日本がこれに参加する可能性は非常に低いのが実情ではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (21)

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    日本:「どうなっても、インドネシア高速鉄道延伸は中国が受注することに決まっているのでしょう」
    素朴な疑問ですが、インドネシアは首都を移転しますが、となると高速鉄道の延伸の採算性は、どうなるのでしょうか。

  • コレもある種の抱き着きかしらん? 中共の??
    インドネシアも既に造った中共鉄路を活かして日本不在のバス活用してけばイイのに
    前回はるかにウワマワル"リスク要因"アリアリなのに日本企業もそんな栗拾いにいかんでせう…

  • これって土地の買収価格の問題でルート変更したとか、中国が勝手にルート変更したとか言われてて、現状の終着駅はバンドン駅から車で1時間以上かかる田んぼのど真ん中になってて現状採算取れる見通したってないとかになってませんでしたっけ?バンドン駅に行くには乗り換えが必要だったかな?あと、終着駅周辺の再開発を中国が提案してきてるとかなんとか。それと結局インドネシア政府が金出してましたよね
    インドネシアは、高速鉄道での件もそうですが、中国と違って丁寧に現地人材教育しながら建設した地下鉄建設でも日本が協力してることを徹底して隠して、一方中国協力の鉄道は中国の支援を積極的にアピールしたりで、できればあまり関わりたくない相手ですね

  • 前回の我が国をバカにした行為は、忘れられない。膨大な労力を使い調査をし挙句のはてに中国のが安いからと裏切りにも等しい扱いを受けたのだ。受注したはずの中国は費用が見合わずと工事を放り出し、またインドネシアは日本に色目を使いだした。冗談ではない。一度裏切ったのだ。また引き受けたら、日本は
    甘い国と笑われるのがオチだ。高速鉄道ならフランスもドイツにもある。岸田文雄のウルトラスーパースペシャル大バカならいいかっこしいで引き受けるかもしれないがもう遅い。覆水盆に返らず。日本はこの件だけでなくインドネシアは信じない。

  • インドネシアにすれば、次回の入札が中国だけで、競争相手が無ければ賄賂を貰えなくなります。
    日本に参加させて、賄賂のお替りを目論んでいるのでしょう。
    こんな国に関わってはいけません。

  • 東南アジアは入札やめた方がいい。
    土壇場でワイロでひっくり返される。
    バンコクの交通システムでもやられたと記憶している。
    確かシーメンス。

  • ジョコは習近平のお尻を舐めていればいいでしょう。こっち見るなフランスかドイツに頼め。

  • >「日本も(高速鉄道プロジェクトに)参加できれば事業のペースを速めることができる」

    ジョコ:ぜひ、延伸工事をお願いできないだろうか?
    習近平:まずは、「日本作の設計図」を持って来い!
    ・・。

    • 新ルートは地質調査からルート図まで、ゼロから計画から作らないといけないんですね。それはちうごくさんには無理でしょう。計画完成だけで20年はかかる。緻密な計画書だけ日本に作らせようという下心がミエミエですね。こんな見え透いた手に引っかかるのが我らの岸田氏。ちょっとばかり嫌な予感。

    • さすがにお人好しの日本人も、また日本側が調査したレポートを中国政府に漏洩する可能性を考慮したのですね。外交は騙される方がバカですね。
      こういった思考を外務省・岸田さんは、なぜ欠落するのかは日本の7不思議です。

      >習近平:まずは、「日本作の設計図」を持って来い!
      インドネシアはどうやって設計図を鉛筆ナメナメで作り上げるのか楽しみです・・・。

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