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形骸化著しいG20、今度はAU加え「G21」に変化

なんだか、ますますわけがわからない組織になってきたのかもしれません。もともと形骸化が著しいG20に、アフリカ連合(AU)が加わって「G21」になるのだそうです。組織が拡大するのは良いのですが、この組織に何らかの意味はあるのでしょうか?

G20といえば、G7にBRICSなどを加えた20ヵ国・地域からなる連合体として知られています。

G20とは?

G7の7ヵ国にアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコの12ヵ国、及び欧州連合(EU)と欧州中央銀行(ECB)を加えた協議体のこと

このうちG7諸国は、日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの7ヵ国に欧州連合(EU)を加えた協議体であり、自由・民主主義といった「基本的価値」を共有する国々の共同体であるとともに、ひとりあたりGDP水準も似通っているなど、比較的まとまりやすい組織でもあります。

この点、G7諸国について、人口と面積だけで見るならば、米国以外は大したことはありません。

米国以外はどの国も世界10位圏には入っておらず、また、面積で見ても、米国・カナダを除けば、どの国も正直、本国のサイズ自体は世界的に存在感を示しているというものではありません。世界人口のうちG7に所属するのは10%弱です(図表1)。

図表1 G7諸国の人口・面積
人口(2021年) 面積
米国 3億3700万人(3位) 983万㎢(3位)
日本 1億2550万人(11位) 38万㎢(61位)
ドイツ 8341万人(19位) 36万㎢(62位)
英国 6728万人(21位) 24万㎢(78位)
フランス 6453万人(22位) 55万㎢(48位)
イタリア 5924万人(25位) 30万㎢(71位)
カナダ 3816万人(39位) 998万㎢(2位)
G7合計【A】 7億7512万人 2165万㎢
世界全体【B】 79億0930万人 1億3009万㎢
A÷B 9.80% 16.64%

(【出所】総務省統計局『世界の統計2023』第2章データをもとに著者作成。なお、面積には海外領土等を含まない)

しかし、経済規模で見ると、(2020年のデータですが)どの国もGDPは1兆ドルを超えており、合計すれば世界経済の半分近くを占め、1人あたりGDPでも日本・イタリアの両国を除けばいずれも4万ドルを超えていることが確認できます(図表2)。

図表2 G7諸国の経済規模(2020年)
GDP 1人あたりGDP
米国 20兆8937億ドル(1位) 62,195ドル
日本 5兆0397億ドル(3位) 39,951ドル
ドイツ 3兆8464億ドル(4位) 46,159ドル
英国 2兆7642億ドル(5位) 41,220ドル
フランス 2兆6303億ドル(7位) 40,793ドル
イタリア 1兆8887億ドル(8位) 31,742ドル
カナダ 1兆6440億ドル(9位) 43,391ドル
G7合計【A】 38兆7071億ドル 49,987ドル
世界全体【B】 85兆3283億ドル 10,882ドル
A÷B 45.36%

(【出所】総務省統計局『世界の統計2023』第2章・第3章データをもとに著者作成)

こうした共通点が、G20にはあるのでしょうか。

G20(G7諸国とEUを除く)について、図表1、図表2と同じものを作ってみましょう。

図表3 G20諸国(G7諸国とEUを除く)の人口・面積
人口(2021年) 面積
アルゼンチン 4528万人(33位) 280万㎢(8位)
豪州 2592万人(55位) 769万㎢(6位)
ブラジル 2億1433万人(6位) 851万㎢(5位)
中国 14億2589万人(1位) 960万㎢(4位)
インド 14億0756万人(2位) 329万㎢(7位)
インドネシア 2億7375万人(4位) 191万㎢(14位)
韓国 5183万人(28位) 10万㎢(106位)
メキシコ 1億2671万人(10位) 196万㎢(13位)
ロシア 1億4510万人(9位) 1710万㎢(1位)
サウジアラビア 3595万人(41位) 221万㎢(12位)
南アフリカ 5939万人(24位) 122万㎢(24位)
トルコ 8478万人(18位) 78万㎢(36位)
上記合計【A】 41億8821万人 6421万㎢
世界全体【B】 79億0930万人 1億3009万㎢
A÷B 52.95% 49.36%

(【出所】総務省統計局『世界の統計2023』第2章データをもとに著者作成。なお、面積には海外領土等を含まない)

以上の通り、G20諸国はG7を除いても、人口と面積だけで見れば、世界の約半分です。

ただし、人口が多いけれども面積はそこまで広くない国(インドネシア)、あるいはその逆に面積が広いけれども人口が少ない国(たとえば豪州)、人口も面積も存在感がない国(たとえば韓国)のように、人口、面積で見て共通点はありません。

しかし、経済発展の規模、あるいは1人あたりGDPなどで見ると、資源国でもある豪州のように、1人あたりGDPがG7諸国のそれにも匹敵する国もあれば、インドのように1人あたりGDPが2000ドルに満たないという国もあります(図表4)。

図表4 G20諸国(G7諸国とEUを除く)の経済規模(2020年)
GDP 1人あたりGDP
アルゼンチン 3831億ドル(31位) 8,506ドル
豪州 1兆4235億ドル(13位) 55,453ドル
ブラジル 1兆4447億ドル(12位) 6,777ドル
中国 14兆7228億ドル(2位) 10,332ドル
インド 2兆6647億ドル(6位) 1,908ドル
インドネシア 1兆0584億ドル(16位) 3,893ドル
韓国 1兆6379億ドル(10位) 31,592ドル
メキシコ 1兆0734億ドル(15位) 8,519ドル
ロシア 1兆4835億ドル(11位) 10,188ドル
サウジアラビア 7001億ドル(21位) 19,449ドル
南アフリカ 3021億ドル(41位) 5,138ドル
トルコ 7201億ドル(20位) 8,559ドル
上記合計【A】 23兆4652億ドル 6,444ドル
世界全体【B】 85兆3283億ドル 10,882ドル
A÷B 45.36%

(【出所】総務省統計局『世界の統計2023』第2章データをもとに著者作成。なお、面積には海外領土等を含まない)

よくぞこれだけバラバラな国をそろえたものだと思わざるを得ません。

さらには、G20がもともと金融・通貨の連合体だったことを思い出しておくと、G20自体に何らかの意味があるのかが疑わしいのが実情でしょう。

SWIFTが公表している通貨別決済シェアとランキングのデータでは、中国の通貨・人民元が2015年ごろから停滞しているというのは、『ユーロの例で考える「BRICS共通通貨」の非現実性』などでも指摘してきたとおりですが、それだけではありません。

G20諸国のうち、ロシアルーブル、インドルピー、インドネシアルピア、ブラジルレアル、韓国ウォン、アルゼンチンペソなどは、はランキングにまったく登場していないのです。ルーブルの場合は経済制裁による影響ですが、それ以外の通貨は。過去にただの1度もランキングに入ったことがありません。

以上の通り、共通点がほとんどないG20が同じ共同体を構成しているというのにも無理がありますが、それだけではありません。

なにかと理解に苦しむ記事を発見したのです。

いくつかの報道等で取り上げられている通り、アフリカ連合(AU)がG20に加わるとともに、今回の議長国だったインドの配慮のためでしょうか、ロシアに対する非難声明などもG20コミュニケでは盛り込まれなかったのだそうです。

G20 to become G21 as world leaders agree to grant African Union permanent membership

―――2023/09/10付 Independentより

アフリカ連合、というのも、なんだかよくわかりません。

これまでのG20では、アフリカ大陸からの参加国が南アフリカしかなかったためなのでしょうか。

いちおう、報道等によれば、いわゆる「グローバル・サウス」の意見をG20が取り入れることを目的としたものだ、などとしているのですが、やはり趣旨がよくわからない協議体となっていることは否定できないでしょう。

このあたり、G20自体、形骸化が激しい組織でもありますが、ここにきて

新宿会計士:

View Comments (9)

  • 中国かはいっている時点でこの組織の発展性はない、おまけにインドとは一触即発なにがおこっても不思議じゃない。しかも隣国で核保有国なのだ。韓国も名を連ねる、世界の乞食だぞ。いつカネくれーがはじまっても不思議じゃない。ま、我が国に迷惑かけなきゃそれでいい。上手くいくのかねぇ

  • 習金平氏も欠席したことだし、日本やアメリカも出席は代理でいいんじゃないでしょうか?
    国連化してしまって意味のない集まりになっていると思います。

  • オーストラリアをG7に入れてG8とすればメンバーの通貨は米ドル、ユーロ、ポンド、円、カナダドル、豪ドルになり主要通貨国 vs マイナー通貨国が完成。 または クリーン8 vs 腐敗12 になりそう。

    • 概要的には、[ G8+α vs the end ] とも言えそうですね。

      具体的な言及は控えますが・・。

  • もう忘れてしまっていましたが、G20はアジア通貨危機のような事態が今後起きないようにということで、始まったんですね。

    1999年ドイツで開かれた財務大臣・中央銀行総裁会議がその母体、2008年アメリカ開催のときから首脳会議が始まり、労働雇用大臣会合、貿易・経済大臣会合、エネルギー・環境大臣会合、保健大臣会合、観光大臣会合なんてのが、後付けで加わって今日に至る(Wikipediaから引用)って体裁のものだそうです。

    当初目的からすると、通貨体制が脆弱な国が国際投機筋に狙われ、破綻が連鎖的に周辺国に拡がった、アジア通貨危機のような事態を二度と起こさないように、国際間の協調と素早い対応を図るというのが、この組織の存在理由なんでしょう。その後の経緯を見ると、この目的はそこそこうまくいったと言えるのではないかと思います。

    だけど、現在の通貨を巡る国際的状況は、G20発足時とは全く違ったものになっているのでは? なにせ、G7を含む西側諸国は、ロシアルーブルを無価値化してやろうと、経済制裁を加えているようなもんですからね。ひょっとすると、次のターゲットは中国人民元って議論も出てくるかも知れない。

    インド辺りがいくら綻びを縫い繕おうとしても、所詮、この組織がまともに機能するとは思えないですね。

  • 現時点だって機能していないのですから、AUが参加しようがするまいが、状況が劇的に変わるはずはありません。非G7の国々でも、オーストラリアなどはすでにG7諸国と密接な関係を持ってますので、G20がどうであれどうでもいいことでしょう。
    つまり、G20の存在意義は、今となっては、そこそこの経済規模を持つ国が公に不満を垂れ流すための、一種のガス抜き装置であることです。国連総会とは違い、G20首脳会議では、"ぐろおばるさうす"の国々が、直接G7首脳に文句を言う、あるいは支援をねだる機会を得られますので、彼らにとっては十分意味があるかもしれません。要は、「場」を提供しているだけであって、それ以上でもそれ以下でもないと考えておけば良いと思います。

    まあ、将来的に、インドあたりがアメリカの経済規模を凌ぎ、一国でG7諸国と経済的に対抗できるようになれば話は変わってくるかもしれません(中国は失敗したようですが)。

  • モディは安倍さんのいない日本なんて相手にせずって感じですね。金だけ出せば用はない・・・
    FOIPも雲息が怪しくなってきた?